フラッシュさんとの恋愛日記   作:ココアポタージュ

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真面目な少女との出会い⑤

第5章 会えない一日

 

その日のあなたは授業、実技、課題提出、予想外の呼び出しと朝から忙しかった。

 

あなた

「うわ、もうこんな時間か」

 

時計を見ると、昼休み終了五分前。

 

あなた

「終わった……」

 

今からでは、中庭へ行く時間はなかった。

 

仕方なく教室へ戻る。

 

その頃の中庭。

 

エイシンフラッシュはいつもの場所にいた。

 

資料を開き、ペンを持つが、いっこうに手が進まない。

 

時計を見ると、十二時二十分。まだ来ない。

 

十二時二十五分。来ない。

 

十二時三十分。来ない。

 

エイシンフラッシュ

「……」

 

不思議だった。以前なら何とも思わなかったはずだ。

 

誰かが来る。来ない。そんなことは日常の誤差に過ぎない。

 

なのに今日は妙に気になる。

 

ページをめくると、同じ行を三回読んでいることに気付く。

 

エイシンフラッシュ

「集中できていませんね」

 

自覚はあった。理由も分かっている。

 

"あなたが来ない"

 

ただそれだけだ。ただそれだけなのに。

 

妙に静かだった。

 

昼休み終了のチャイムが鳴る。

 

彼女は資料を閉じた。

 

そして.ほんの少しだけ寂しいと思った。

 

その感情に気付いた瞬間。

 

エイシンフラッシュ

「……え?」

 

彼女は驚き、自問自答する。

 

(寂しい?)

(なぜ?)

(今日たまたま会えなかっただけだ)

(昨日は会えたし、明日は会えるかもしれない)

(なのに、どうして)

 

エイシンフラッシュ

「……」

 

胸の奥が少しだけ重い。

 

分析も理解もできない。

 

だから余計に落ち着かなかった。

 

放課後。

 

あなたは急いで中庭へ向かっていた。

 

あなた

「まずい」

 

さすがにまずい。

 

なんとなくだが、フラッシュは昼休みに中庭で待っていた気がする。

 

ベンチへ向かうと、案の定彼女がいた。

 

夕日の差し込む中庭で、彼女は一人で本を読んでいた。

 

あなた

「フラッシュ!」

 

彼女が顔を上げる。

 

エイシンフラッシュ

「?」

 

あなた

「悪い!」

 

エイシンフラッシュ

「?」

 

あなた

「昼休み」

 

その単語を聞いた彼女は、数秒止まった。

 

そして、目線を逸らしながら

 

エイシンフラッシュ

「そういえば来てませんでしたね」

 

あなた

「絶対気にしてたろ」

 

エイシンフラッシュ

「していません」

 

即答だった。

 

あなた

「今嘘ついた」

 

エイシンフラッシュ

「ついていません」

 

あなた

「さっき目逸らした」

 

エイシンフラッシュ

「逸らしていません」

 

あなた

「いや、逸らしていた」

 

彼女は少し黙る。

 

エイシンフラッシュ

「……少しだけ気になりました」

 

あなた

「やっぱり」

 

彼女は少し考えた後、小さく息を吐いた。

 

エイシンフラッシュ

「いつもいる人がいないと違和感があります」

 

あなた

「へぇ」

 

エイシンフラッシュ

「それだけです」

 

あなた

「本当に?」

 

エイシンフラッシュ

「……」

 

本当は違う。

 

だが、その感情を今は言葉にできない。

 

あなた

「俺もなんか変だった」

 

エイシンフラッシュ

「?」

 

あなた

「昼休みに中庭に行けなかったから、落ち着かなかった」

 

今度は彼女が固まった。

 

あなた

「なんでだろうな」

 

エイシンフラッシュ

「……」

 

あなた

「習慣?」

 

エイシンフラッシュ

「かもしれません」

 

だが、彼女は思った。

 

(本当に習慣だけだろうか?)

 

帰り道。ふたり並んで歩き、夕焼けに長く伸びる影。

 

あなた

「なあ」

 

エイシンフラッシュ

「はい」

 

あなた

「友達ってことでいいよな?」

 

彼女が止まった。

 

ほんの一瞬。

 

エイシンフラッシュ

「……」

 

あなた

「違う?」

 

エイシンフラッシュ

「いえ」

 

ほんの少しだけ彼女は微笑んだ。

 

エイシンフラッシュ

「私はあなたのことを友人だと思っています」

 

あなた

「よかった」

 

エイシンフラッシュ

「ですが」

 

あなた

「ん?」

 

エイシンフラッシュ

「少々特殊な友人かもしれません」

 

あなた

「特殊?なんで?」

 

エイシンフラッシュ

「毎日会っていますので」

 

あなた

「確かに」

 

二人で笑う。

 

その瞬間。彼女は気付かなかった。

 

「会えなくて寂しかった」

その感情が友人以上へ変わり始めていることに。

 

数日後。

 

エイシンフラッシュは初めて、あなたに対して明確な嫉妬を覚えることになる。

 

そしてそれはそれが恋だと自覚する、大きなきっかけだった。

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