フラッシュさんとの恋愛日記   作:ココアポタージュ

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真面目な彼女との出会い⑧

第8章 夕焼けの駅前

 

その日の外出は、特別なものではなかった。

 

あなた

「またこの間の本屋行かない?」

 

エイシンフラッシュ

「本屋ですか?」

 

あなた

「うん。だって欲しい資料あるんだろ」

 

エイシンフラッシュ

「ありますけど」

 

あなた

「じゃあ決まりだね」

 

エイシンフラッシュ

「その決定方法は少々強引です」

 

あなた

「でも来るだろ?」

 

少し沈黙。

 

エイシンフラッシュ

「……行きます」

 

あなた

「よし」

 

この時点ではただの休日の買い物のはずだった。

 

駅前の商店街

 

あなた

「人多いな」

 

エイシンフラッシュ

「休日ですので」

 

あなた

「手慣れてるな」

 

エイシンフラッシュ

「予測可能です」

 

あなた

「さすが」

 

二人で歩く。

 

最初は少し距離があったが、気付けば自然と近くを歩いている。

 

あなた

「そういえば」

 

エイシンフラッシュ

「はい、何でしょう」

 

あなた

「こういうの初めてだな」

 

エイシンフラッシュ

「こういうのとは?」

 

あなた

「こうして休日に二人で出掛けるの」

 

彼女が少しだけ止まる。

 

エイシンフラッシュ

「……そうですね」

 

言われて初めて気付いた。確かにそうだ。

 

毎日会って話しているが、休日に二人だけで街を歩くのは、今日が初めてだった。

 

その事実を意識した瞬間。なぜか少しだけ緊張した。

 

本屋。参考書コーナー。

 

あなた

「どの本?」

 

エイシンフラッシュ

「こちらです」

 

そう言ってあなたに厚めの参考書を数冊手渡す。

 

あなた

「読む気が失せる厚さだな」

 

エイシンフラッシュ

「ですが有益な内容です」

 

あなた

「武器になりそう」

 

エイシンフラッシュ

「それは本来の用途ではありません」

 

そう言ってあなたを注意する。

 

あなた

「真面目か!」

 

エイシンフラッシュ

「真面目です」

 

即答。

 

あなたが笑う。

 

つられて彼女も少し笑う。

 

最近こういうあなたの冗談に自分が返答し、笑い合う時間が増えた。

 

そんな時間があることを以前なら想像すらしていなかった。

 

買い物を終えた後。

 

カフェのこの間と同じ夕方の光が差し込む窓際の席。

 

あなた

「疲れたー」

 

エイシンフラッシュ

「あなたは歩いていただけでは?荷物は自分で持っていましたし、あなたは自分のものを何一つ購入していなかったように見えましたが」

 

あなた

「そうだけど、精神的な話」

 

エイシンフラッシュ

「意味が分かりません」

 

彼女はおでこに手をやり、やれやれと言った表情をしている

 

あなた

「フラッシュ相手だと頭使うんだよ」

 

エイシンフラッシュ

「それは申し訳ありません」

 

そう言う彼女は本当に申し訳なさそうな顔をする

 

あなた

「いや褒めてるから」

 

エイシンフラッシュ

「どう言う意味です?頭を使って接する相手というのは褒め言葉なのでしょうか?」

 

あなた

「話してて楽しいってこと」

 

彼女の動きが止まる。

 

エイシンフラッシュ

「……」

 

あなた

「フラッシュ?」

 

エイシンフラッシュ

「いえ」

 

視線を逸らす。心拍数が少し上がる。

 

最近こういう現象が増えていると感じる。

 

あなたに何気ない言葉を言われるだけで、妙に嬉しくなる。

 

帰り道。

 

夕焼けの駅前広場。

 

空は橙色に染まり、人の流れも少し落ち着いてきた。

 

あなた

「今日は楽しかったな」

 

エイシンフラッシュ

「はい」

 

あなた

「実際には本屋しか行ってないのに」

 

エイシンフラッシュ

「本来ならそうですね」

 

あなた

「?」

 

彼女は少し考える。

 

そして静かに言った。

 

エイシンフラッシュ

「目的地は重要ではなかった気がします」

 

あなた

「へぇ」

 

エイシンフラッシュ

「……」

 

言った後で自分でも驚く。なぜならそれはほとんど答えだったから。

 

あなた

「それって」

 

エイシンフラッシュ

「はい」

 

あなた

「俺といたから?」

 

彼女とあなたの両方の心臓が跳ねる。

 

エイシンフラッシュ

「……」

 

否定できない。いやできなかった。

 

なぜならそれは本当の気持ちだったから。

 

本屋が楽しかったわけでも、カフェが楽しかったわけでも、ましてや街が楽しかったわけでもない。

 

あなたといた時間。それ自体が楽しかった。

 

その瞬間、彼女はようやく理解する。

 

昼休みにあなたと会えなくて寂しかった理由。

 

あなたが他の子と話しているのを見て落ち着かなかった理由。

 

あなたに名前を呼ばれるだけで嬉しかった理由。

 

全部答えは一つだった。

 

(これは恋だ)

 

エイシンフラッシュ

「……」

 

あなた

「フラッシュ?」

 

返事がない。

 

彼女は夕焼けを見上げる。

 

冷静になろうとするが、無理だった。

 

なぜなら心臓がうるさく、思考がまとまらない。

 

理論で整理できない感情。そのような感情を抱くのは人生で初めてだった。

 

エイシンフラッシュ

「……帰りましょうか」

 

あなた

「え?」

 

エイシンフラッシュ

「少し」

 

あなた

「?」

 

エイシンフラッシュ

「考えたいことがあります」

 

あなた

「そうか」

 

あなたは気付かなかった。

 

彼女が今、人生最大級に混乱していることを。

 

その晩、彼女は部屋でいつものように机に向かっていたが、今日は参考書は閉じたままだ。

 

エイシンフラッシュ

「……」

 

結論は出ている。あとは認めるだけだ。

 

自分はあなたのことが好きだ。

 

友人ではなく、特別な存在だ。

 

会いたい。話したい。笑っていてほしい。隣にいたい。

 

その全てが恋心だった。

 

エイシンフラッシュ

「……困りました」

 

そう呟くが、口元は緩んでいた。

 

そして翌日から彼女の恋はさらに加速していく。

 

なぜなら今度はあなたの方も、自分の気持ちを意識し始めるからだった。

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