『鏡の魔法使いマリカ』は悪の少女である 作:薄汚いメトロン星人
魔の四天王はザングルゴール皇帝の命を受け、重要な任務に就くことなった。ある意味この組織でもっとも悪いことをした科学者セレニコと暴走しつつある魔法天使マリカの中にいる黒の太陽の化身サンに対処するというものである。
重要な任務である、彼らは集まっての会議を開くことにした。
悪の会議である。
時は夜。すでに月の出ている時間だった。彼らは一堂に会した――
場所は『マックスドナルド』略して、通称マック。ハンバーガーショップである。
「おっとっと」
レオが両手で持ったトレイに袋に包まれたハンバーガーと飲み物とフライドポテトが乗っている。彼女は落ちないようにバランスをとった。2階建ての建物の階段を上がっていく。店内は明るい。夜だというのに学生や、勉強をしている私服の若者たちが結構いた。
レオはブレザーの制服で高校の帰りだった。この機会なので『魔の四天王Rhine』というグループRhineと言われる連絡用のメッセージグループを作ったことでこの招集を可能にした。
2階に上がると窓際の席に2人はいた。
一人は青い髪の青年で和風な服を着ている。顔に刀傷があり刀を持っている。その前に座っている紫の髪の女子高生はうつむいていた。彼らの前にはそれぞれハンバーガーがあった。
青い髪のバオウ。彼は魔の四天王である『閃光のバオウ』であった。先日仲間から警察に通報され、逮捕された後に鏡の中に閉じ込められてそして食事を与えられる屈辱の日々を過ごしていた。
紫の髪の少女はもちろんマリカだった。いや、正確には柊 みかんとして女子高生の制服を着ている。そして彼女は言った。手をもじもじさせている。
「あの……ほんと……すみませんでした」
「……貴様……ザングルゴール皇帝の命でなければ今、切っていたことろだ」
バオウは普通に怒っていた。青筋を立てて彼は言う。
「そもそも私にあの屈辱を与えておいて、その償いがなぜこんな店なのだ!」
「……ぐっ……だって、最近いろいろとあって……お金なくて……」
「それだ! 貴様……私を売った理由が資金繰りに困ったかららしいな……一体私を売って何を買ったんだ」
「……え?」
みかんの目が泳ぎに泳いだ。買ったのは最新のゲーム機である。完全に私利私欲だった。しかし彼女はザングルゴール皇帝に打ち明けたとき覚悟があった。両手をぐっと握りしめてか細い声で言った。
「……スイッチ……ツ……ツヴァイ」
「なんだそれは、何かの武器か?」
「……え。武器っていうか」
その時レオが席に着いた。我関せずとばかりにハンバーガーを手に取る。彼女が口を開けて食べようとしているときにみかんが哀れな目で助けてを求めているのがわかった。レオはやれやれと言いながら言った。
「スイッチ・ツヴァイというのはあれにゃ。いろんな戦闘経験を追体験できる機械にゃ。その機械の中で魔法を使ったりすることもあるにゃ」
「…………よくわからんが、ワールドエンドのように世界を構築するということか?」
「まあ、そんなところにゃ」
バオウはゲームをしない。よくわからないが彼は不満そうにしつつも黙った。
レオがみかんを見た。そしてみかんの目の前のチキンナゲットを手に取った。
レオとみかんの視線が交差する。みかんがうなずくとともに、レオがチキンナゲットを食べる。裏取引であった。
「……それにしてもバオウの刀って大丈夫なの?」
「何がだ」
「いや、銃刀法違反でまた警察に捕まるって言いたいにゃ」
「私を誰だと思っているんだ。貴様ら……私をなめているのか? それよりも本題に入れ」
バオウはバンとテーブルをたたく。はたかれ見れば彼は女子高生2人に囲まれた男だが、本人はそのことを全く何も感じていない。
みかんはふっと表情を硬くして答えた。
「ザングルゴール皇帝からの命令でセレニコを捕まえるわ」
「……にゃ」
「……うむ」
バオウとレオが殺気だった。彼らの給料も全部セレニコの懐に送り込まれていた。その点だけはこの三人は結託していた。
バオウは言う。
「奴がどこに行ったか分からないが、我ら魔の四天王が集えば逃げ切ることは不可能だろう」
レオとみかんも頷く。彼ら『3人』ははそのまま話を続ける。
「ええ、でもセレニコがどこに行ったか分からないけれど、多分私の偽物であるサンと合流を目指すはずよ。黒の太陽の残骸をセレニコが研究所から持ち出したと聞いているわ……もしも力をサンが取り戻したらまずいわ」
「サンは芸能活動をしているからわかりそうだけど、でもにゃ~。この前みかんがぼこぼこにしたらしいから表に出てこないかもしれないにゃ」
彼らはフライドポテトを食べながら話をしている。
「いずれにせよ私の刀の錆にしてくれる……」
バオウは刀の鯉口を切るとレオとみかんがその頭をたたいた。
「何をするっ」
「こんなところで刀を抜いたら通報されるって」
「そうにゃ!」
バオウは不承不承に刀を収める。彼は目の前のチキンナゲットを食べた。みかんのだった。みかんはあっと言ったがいろいろと後ろめたいことがあるのでそれ以上言わなかった。そもそもこのガサツな男は誰のものかなど気にしてないだろう。
3人はそれぞれハンバーガーやフライドポテト、ナゲットを食べながら飲み物を飲んだりして相談を続ける。話がまとまったところでバオウが言った。
「兎にも角にもセレニコを見つけることもサンを始末するにも同じ場所になるだろう。奴らのどちらかを見つければいいのは自明……。明日からそれぞれ捜索を開始し、Rhineとやらで連絡を取り合う」
バオウはポケットからガラパゴス携帯を取り出して開けた。奇跡的にRhineアプリをインストールできた。ぼろぼろでいつから使っているかわからないが、本人は電話くらいにしか使っていない。レオもみかんも何も言わない。
「わかったわ」
「んにゃ~。まあ、今日は眠いから帰って寝るにゃ」
3人は立ち上がる。そしてトレイを所定の位置に持っていきちゃんとごみを捨てる。
その時笑い声が聞こえた。バオウが振り返ってみるとレオやみかんと同じくらいの年頃の少年たちが何かを手に持って笑っている。両手で持っているのは板のようなものだった。
「こんなところで……ゲームをしているのか。由々しきことだ、勉学に励むか鍛錬を積むことこそ男子の本道」
古臭いことを言いつつバオウはみかんに聞いた。
「マリカよ、あの少年たちのようにファミコンなどをやってはいないだろうな」
「……ふぁ……あはは。バオウあれはスイッチ・ツヴァイっていってもうファミ……」
はっとした。
みかんは口を開けて固まった。
バオウはゆっくりとみかんの顔を見る。青筋を立てて、刀に手をかけている。
レオはすでに逃げていた。