『鏡の魔法使いマリカ』は悪の少女である 作:薄汚いメトロン星人
異世界ダークロード。悪の皇帝の作り出した世界である。
この世界に朝はなく、常に夜の闇が広がる。
ここには巨大な宮殿があり、悪皇帝ザングルゴールの本拠であった。
ただ、セレニコが宮殿を改造して呼び出した結果突然宮殿が巨大ロボに変形。中で普通にのんきしていた怪人たちは慌てて避難をした。皇帝その人も急に崩れていく宮殿から脱出し、怪人たちを取りまとめていた。
宮殿跡地から避難した怪人たちは丘の上にいた。切り立ったそこからはダークロードの世界が見える。その丘の頂点にザングルゴールは両手を組んでたたずんでいた。彼の力は全知全能とまではいかないが魔の四天王を上回る。巨大な体は全身を黒いマントで覆われている。その表情は見えない。
赤い目が光る。すると丘の上にスクリーン上に映像が流れた。それは人間界で変身した超巨大宮廷合体 ザーングルゴーン・マキシマムが泥の怪物と対峙している光景である。ザングルゴールはそれだけですべてを悟った。
泥の怪物から感じる魔力は黒の太陽と同じ波長をしている。そしてザングルゴーン・マキシマムから感じる力は彼の部下のものだった。
「全てに決着をつけるのだ。わが眷属である貴様に敗北は許されぬ……!」
皇帝はマリカの力に信頼を置いている。スーパー・ジャスティス・ファイブとの決戦兵器として作られたザングルゴーン・マキシマムがこのような形で使われているという細かいことはよかった。
「ぐはははは! ゆけぃ! 鏡の魔法使いマリカよ!」
ザングルゴールがマントを翻して叫ぶ。その声に怪人たちもスクリーンに映るロボを動かしているのがマリカだとわかり歓声を上げた。設計したのはセレニコだが実際に作ったのは彼らである。ちゃんと動いていることと、普通に怪人たちの間では人気のあるマリカの相乗効果で応援は熱を帯びた。
全員の前にカニ怪人が立ち、両手を振るう。
「カニかにー!」
それに合わせて怪人たちも声を張り上げた。ゴリラ型は胸をたたき、様々な動物型やロボ型それぞれがマリカを応援した。なぜなら魔の四天王などの幹部の中でマリカは怪人たちに無理なお願いをしたことがないのである。また、たまに工事中にマリカはバイト帰りのパンを持ってきてくれていたりした。その姿に怪人たちは裏で『魔法天使』と呼んでいた。
ただ、末端である怪人たちはスーパー・ジャスティス・ファイブの何かと戦っていると思っていてサンと戦っているとは思っていない。そういう細かいことはやはりどうでもよかった。
ザングルゴールは両手を組んで怪人たちを見る。
(……あの小娘がここまで慕われることになるとはな)
彼の言う「あの小娘」とは今のマリカではない。
出会った頃の
不安で、泣きそうな顔をしたあの日の少女だった。
魔法の杖の力で小学校の子供たちの心を暴いた後、マリカがどんな顔をしていたか、この男は覚えていた。本人は思い出すことも『できない』過去の彼女を見続けてきたのはこの悪の皇帝である。
(くくく)
それから魔の四天王にまで上り詰めるまで悪の皇帝ザングルゴールは彼女を自ら指導した。魔力の使い方や鏡の魔法を教えた、時に厳しくしたこともあるがマリカはその修行についてきた。そして悪の皇帝の部下の中でも屈指の強者となったのだ。
まだまだ心配なところが多い小娘であるが、とやれやれと首を振るがそのことは口には出さない。その代わりに彼も怪人たちの応援の中で大声で笑う。
「グハハハハ!!!」
☆
「ええええ!?」
一方のマリカはコクピットの中で困惑していた。目の前に現れたスイッチ・ツヴァイ型の操縦管を両手で持って目を見開いていた。まさか世界の危機にゲーム機で戦うことになるとは全然想定してなかった。
「グオオオオオ!!」
「ひえっ!」
ザングルゴーン・マキシマムが現れたことで泥の怪物になったサンが咆哮する。彼女はこちらを見て口を開く。凄まじい魔力がそこに収束していく。紅い、紅い魔力が波動とともに一点に集まる。それは凄まじい熱と魔力を内包していた。
「わ、わわわわわ!!???」
スイッチ・ツヴァイを手にして慌てるみかん。巨大ロボに乗っているが操作方法が全く分からない。そこにセレニコが通信をしてきた。青い髪の悪の科学者がポテチを食べなら言った。
『高エネルギー反応が来るよマリカ君。防御するんだ!』
「ぼ、防御っていったってぇ……どう操作すれば……、ていうかバオウやシャドウはともかくゴウライは何やってんのよ……!」
『登別温泉……』
「登別温泉!!?」
最終決戦時に傷の療養をする最後の四天王『炎熱のゴウライ』の動向を知ったマリカは驚愕する。ただ、彼が怪我をしたのは全部マリカが悪い。
「ぐ、ぐぐぐ。ひ、人がこんなに大変な時に~~!!!」
ゲーム機を起動するマリカ。映し出されたのはサンとザングルゴーン・マキシマムが横から写された画面。画面上部には敵と味方のHPゲージが左右にある。そしてその中央には『99』の文字。
『マリカ君。そのHPゲージは敵のはてきとうだけど、ザングルゴーン・マキシマムが0になったら普通に爆発するから』
「爆発!?」
『あと戦闘モードになったら99秒しかエネルギーが持たない……!』
「99秒!?」
マリカは驚きに驚きを重ねる。その瞬間に画面の数字が動き出す。
98……97……!
「う、うああああ! うごきだしたぁ!!」
『よく聞くんだマリカ君。そこにA.B、X.Yのボタンと行動するためのスティックがある。そして左右にLとRがある。操作方法はこれだ!」
画面に操作方法が映る。
A・・・小パンチ
B・・・大パンチ
X・・・小キック
Y・・・大キック
L・・・シールドガード
R・・・挑発
→ ↓ ↘ + A・・・ザングルゴーンアッパー
↓↘→ + A・・・・ザングルゴーンキャノン
↑↑↓↓←→ ←→+B+A・・・自爆
『もっといっぱいるあるけど、とりあえずこれだけ覚えてくれっ!』
「お、おぼえろって、と、とにかくガード!」
マリカが『L』を押すと同時にサンは口から光線を発射した。それは炎ではなかった。
高熱が収束してレーザーとなり。紫の光が一直線に奔る。今までのサンの攻撃よりもはるかに高い熱を持った必殺の光線にザングルゴーン・マキシマムが右手を前に出し、エネルギーによるシールドを展開する。
シールドと光線がぶつかり合う。東京の中心で高エネルギー同士が巨大な光となって消える。
一瞬にも満たない閃光の後に、急速に夜の静寂が戻っていく。その中で黄金の戦闘ロボが右手をゆっくりと下す。足元の人口の光がその顔を映す。熱から白い蒸気がその右手から上る。
それに対峙する巨大な泥の怪物は大きな口を開け、咆哮する。
「グギャアアアアア!!」
世界を振動させる。空気全てが振動する。泥が形を変えて羽のように広がっていく。それは溶けながら大きく広がり、地面に落ちた泥は高温で地上を焼く。
泥の怪物に意識があるかはマリカにはわからない。だが、その中にはまぎれもなくサンがいる。