「いやはや、面白いね君は」
「インキュベータ、今すぐに出て行きなさい」
「そう言わないでくれ巴マミ、ボクは彼が使ったものについて心当たりがあるんだからね」
「心当たり?」
魂魄が眠るベットの隣で、手を握ったまま離さない織莉子とマミを見ながら、私はお菓子の魔女の戦闘で起きたことを振り返っていた。魂魄は個性を持っている。その効果は聞いていない。ならあれが個性と考えるのが普通、でもそれだけじゃない、個性で魔女が倒せるのならインキュベータがそれに関与しないほうがおかしい。
インキュベータから離してくれるというのならありがたいわね、いつもなら聞かれないことは話さない主義なのに。
「変体刀、これはこの国の歴史改ざんの為に作られた刀だよ。四季崎記紀という占いを専門のとする家系に生まれた人間で、珍しくボク達が男でありながら関わった存在だ。変体刀を千本作り上げた彼が目指したのは歴史改変。江戸幕府の存在を消すためだった。それは成功したが、世界というものは不思議でね、明治に変わる際にそこにあったはずの尾張幕府が江戸幕府に戻っていたんだ。そもそも四季崎記紀が目的としたのは、日本の繁栄、外国による攻撃から日本を守ることだ。江戸幕府がつくられず尾張幕府が生まれたが結局たどった道筋は鎖国による敗北、君たちが授業で知る不平等条約だ。だから江戸幕府に戻されたととれるね。完全に改版しない限り世界に修正されるのがルールみたいだ」
「なぜ、その変体刀?が使えるの?」
「簡単だよ巴マミ、巴魂魄の祖先は四季崎の家系だ。魔女の結界内で言っていたはずだ嫌な予感したからと、それは四季崎記紀が持つ予知能力の遺伝だろう」
「魔女を倒せた理由は?」
「ボク達が採用した魔法少女のシステムは因果律、影響力を願いというものを通して、武器として使えるようにした魔法というもの。歴史改変に使われる変体刀にどれだけの影響力があると思う?その辺にいる魔女なら簡単に倒せるだろうね。全く君たち四季崎にはつくづく驚かされるよ、いろんな人間を見てきた仲で、ボク達に影響を与えた事柄に関して、あの家に勝るものは居ないよ」
知らなかった。だが、個性の説明はついた。四季崎記紀という巴家のルーツにいる鍛冶師が作った刀を作れる。遠い遺伝子の具現、それが魂魄の能力。
「待ちなさい、ならその変体刀の力もすべて知っているのよね?答えなさい」
「いいだろう、でもボクが知っているのは十二本だ、この刀は完成形変体刀と呼ばれ、四季崎記紀が作った千本の後ろから数えた十二本だ。もちろんその効果は計り知れない」
その後に語られた刀を聞いて私は驚いた。一本だけでも危険な代物だ。そして半分くらい刀ではない気がするけど巴マミと美国織莉子は別のことに驚き憤慨していた。
悪刀・鐚それをインキュベータは「所有者の死さえ許さず、無理矢理に人を生かし続ける凶悪な刀」と称した。
完成形変体刀十二本の中で最も凶悪な一振りとされるもので、常に雷を帯び、電極のように身体に差し込むことによって所有者の疲弊も死も許さず人体を無理矢理に生かし続ける凶悪な刀なのだそう。
つまり、体力の前借りである。虚弱体質の巴魂魄が戦えた理由がわかったが、それはつまり戦えば戦うほど危険であることを指す。ここ数日で二人が巴魂魄をどれだけ大切にしているかを知り、その重さに恐怖した、だからこそ戦わせないだろう。大切なものをなくす悲しみは何度も繰り返してきたから。