ガールズラブは一応。
書きたかっただけです。
「じゃあ次、横切るね〜」
「…分かった」
じゃきん。
心地の良い音が響く。
なぜかユーベルは鋏を使う。
理由を聞いても、
「だって、こっちの方が良いでしょ?」
としか言わない。
何が良いのかわからない。
「思ったけどさぁ、ゼンゼ様って良い髪してるよね」
「急になんだ」
「いやぁ〜?切りやすくて良い髪だなぁって思っただけだよ」
また、あの笑みだ。
まるで私の奥底を見透かすような表情。
私は彼女に勝てないんだと思い知らされる。
そしてそれを知ってか知らずか、ユーベルはニコリと笑う。
「やっぱりあなたは可愛いね」
「どこかだ、私みたいに髪が長いとかえって不気味だろう」
「その諦めてる顔が可愛いんだよ」
ユーベルが私のほおをつつく。
その指には鋭利な冷たさと、奇妙な熱が混じっていた。
クスリと軽く笑ったユーベルは、あらためて鋏を持ち直した。
上機嫌なのか、鼻歌を歌いながら。
「楽しみだねぇ、短髪のゼンゼ様」
「柄でもない、様付けはやめろ」
はいはい、とユーベルは軽くあしらう。
ユーベルは誰かに対して媚び諂うような人間じゃない。
だからこそ、冗談でも敬われたりすると、どこか気持ち悪い。
「最後は前ね」
「…あまり切りすぎるなよ」
「分かってるって」
ユーベルは私の前に移動した。
そして髪を丁寧に切り落としていく。
伸びすぎた髪を整えるように、けれど切りすぎないように。
狂気的にさえ見えるユーベルにも、人間の一面がある。
誰かの顔を見て笑い、誰かに対して気遣いができることなど。
それを強く理解した。
ふと、目の前のユーベルの顔に目がいった。
真剣に私の髪を見つめている。
その瞳孔には曇り一つ見えず、澄んだ紫晶の様な瞳は透明な光を持っている。
私はなんとなく、こそばゆさを感じた。
「…終わり」
ユーベルがそう声を出して、私の頭に手をかざした。
柔らかな風が頭を包む。
そよ風を吹かす魔法か何かでも使ったのだろう。
頭に残った髪の毛の切れ端が、はらはらと落ちていく。
その内の一本が、私の鼻の上に落ちる。
むず痒くて顔を顰めていると、ユーベルが切れ端を取ってくれた。
にっこり微笑んだユーベルは、その切れ端を吹いて飛ばした。
その顔を見て、私の口元は少し緩んだ。
私は別に、ユーベルに心を許したわけじゃない。
けれど、ユーベルによって私の最大の武器を奪われること。
そのことに何だか、なんとも言えない想いを感じる。
その想いに名がつくのは、多分もっと先なんだろう。
「ほら、可愛い」
「…やめろ」
雑な閉じ方で申し訳ない。
一体どんな人なんだろう、そよ風魔法を使う人。