お馬鹿な武道家達の奮闘記   作:星の海

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申し訳ありません、遅くなりました。


24話 化け物との相対 少年少女 覚悟の闘争

時間は少し遡り、両面宿儺が復活してしまう直前の事。刹那とネギは祭壇の手前まで辿り着き、天ヶ崎 千草と対峙していた。

「…まあ、ようもここまで来れたもんやわ、自分ら。魔法使い連中だけでも充分な所を、コタに警戒させてダメ押しに土地神級の化け物無理して呼んだったゆうんに二人も抜けてくるんやからなぁ。よう頑張った(・・・・・・)、褒めたるでガキ共」

呆れながらも小馬鹿にしたような態度で二人に千草は告げる。

「…っ‼︎」

追い詰められたと言っても良い状況にも関わらず、不遜な態度の変わらない千草の様子に、ネギが怒りを覚えて詰め寄りかけるが、刹那がそれを手で制して底冷えした口調で言い放つ。

「安い挑発に乗る気は無い。何かしら狙っているのかもしれんが今更無駄だ、気配を探れば判る。貴様立っているのもやっとだろう?言っておくが傍らの縫いぐるみ擬きでは時間稼ぎにもならんぞ。無駄な抵抗は止めて大人しくお嬢様を解放しろ…お嬢様を攫って利用しただけで貴様は万死に値するが、大恩ある先輩までも傷付いた……この後に及んで斬り捨てるのを躊躇うなどと甘い事を考えるなよ……!」

気迫と殺気の篭った鬼気迫る様子の刹那を前に、しかし千草は動じない。

「…お嬢様を返せ、なぁ………」

千草はせせら笑いながら一歩、二歩と下がって祭壇の上に寝ている木乃香から遠ざかり、

 

「わかったわ。さっさとお嬢様を連れて行きぃ」

 

あっさりと木乃香を解放する旨を告げてきた。

「え…………⁉︎」

「…なに……⁈」

最後通牒のつもりで告げた解放要求に、まさかのYesを返されて刹那とネギは驚愕する。そんな二人を見て千草は笑い、尚も言葉を投げかける。

「どないした?お嬢様を解放する言うとるんや、さっさと連れ帰って介抱したりぃ」

「……何が狙いだ」

そんな千草の言葉に、猜疑心も露わに刹那が低い声で問う。

「狙いって、何の話や?」

「惚けるな‼︎貴様の目的は両面宿儺の封印を解き、お嬢様の力で意のままにそれを操ることだろう‼︎それを宿儺が復活してすらいないというのにむざむざお嬢様を解放するだと⁉︎何か裏があって当然だろうが‼︎」

鋭い刹那の怒喝に、千草は得心のいった顔になり、何でもないことのように言葉を発した。

「ああ…そういうことかいな。安心しい、お嬢様を解放することに裏も何もありゃあせんわ。お嬢様には大役をこなして頂いて、お役御免になったからお帰り頂く。それだけや」

「……なに………?」

「……どういう意味か教えて頂けますか、天ヶ崎 千草さん」

予想外の連続に困惑する刹那に代わって、ネギが自身の戸惑いと動揺を押し殺し、問いを放つ。

「説明する義理は無いんやけど…まあ、ええやろ。ウチがお嬢様を解放するのはさっきも言った通り、お嬢様はもうウチの計画にとって必要無い存在やからや。…その理由を聞きたいんやろ?まあ、焦るなやめんこい魔法使いの坊。そもそもその神鳴流の護衛が言ったウチの目的は半分(・・)しか合っとらんのや」

「…半分、だと……?」

鸚鵡返しに問い掛ける刹那に千草は頷く。

「そうや。お嬢様に協力して頂いて両面宿儺の解放を行う。ここまでは合っとる。でも、お嬢様の力(・・・・・)を利用して宿儺を操る、は見当違いもいいとこやな……そもそも考えてみいや、両面宿儺は日本書紀にも記されとる飛騨の悪鬼にして大鬼神。善悪については諸説あれど正真正銘の鬼『神』や。…そんな存在を、幾ら極東有数の素養を持つとされる木乃香お嬢様の力でも、ただ一人の力で縛り付けておけると思うかいな?下手こいたら自分がこの世から消し飛ぶかもしれん場当たり的な真似、ウチがするとでも思とるんかい?」

「…なら」

ネギはとうとうと語る千草に口を挟む。

「なら貴女はどうしようというんですか?最初から無理な計画を、意地で遂行していたとでも言うんですか?」

「ちゃうわ。察しの悪い奴らやなぁ、自分ら。……ウチが何の為にいけ好かんあの連中(・・・・)と手ェ組んだと思とるんや?呼び出して餌代払えんなら、欲しがる連中(・・・・・・)に出して貰えばええだけの話やろ?」

「…何だと?」

刹那が思わず声を上げるが、千草は構わず語り続ける。

「要するにや、お嬢様はあくまで()。扉を開けて鬼神を連れ出せたら、最早用済みっちゅうことや。後はこっちでどうとでも出来る用意があるから、お嬢様はお返しする言うとるんや。自分らお嬢様を取り戻しに来たんやろ?よかったやないか、目的達成や。お嬢様連れてさっさと帰りい。ここ(・・)は今から大荒れに荒れるさかいなぁ、見逃してやるさかいとっとと逃げた方が身のためやで?」

千草の言葉に刹那が暫しの沈黙の後、夕凪を構え千草に宣告する。

「…今から大災害を起こすと宣言する相手を、むざむざ私達が見逃すとでも思うか?無論お嬢様は返して貰うが、貴様もここで捕らえさせて貰う」

臨戦態勢の刹那に、ネギも杖を構えて千草に向き直るが、千草はそんな二人の様子に失笑し、やれやれと首を振りつつ告げる。

「何処まで鈍いんや、自分ら。ぶっ倒されると解ってて人質返す馬鹿がいるかい。既に儀式は終わっとるに決まっとるやろ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

言葉の終わらぬ内に祭壇の向こうの大岩が輝き始める。

「なっ⁉︎」

「貴様…‼︎」

「だから言ったやろ」

千草は嗤い、その背後から見上げる程の二つの顔と四つの腕を持つ、異形の巨人がゆっくりと姿を現す。

「さっさとお嬢様連れて帰りぃ、ってなぁ」

 

 

 

「……タフやな、兄ちゃん」

「こっちの台詞だ、ガキ」

辻は激痛を訴える背なの傷を無視して目の前の異形の少年に返す。

辻と小太郎は揉み合いながら森の中に落下し、辻は抵抗する小太郎の鉤爪に身体を切り裂かれるのも構わず、掴んだその手を決して放さなかった。

結果木々をぶち折りながら両者は落ち、辻は地面への激突寸前に小太郎の体を蹴り込んで跳躍し衝突のダメージを減らしたが、対して小太郎は真面に地面に激突し、血を吐き散らしながら地面にクレーターを作った。

遅れて地面に激突しつつも、衝突の瞬間に地面上を転がってダメージを殺した辻は、背中の傷口が広がって吐血しながらも立ち上がり小太郎に近づいたが、辻が接近しきる前に飛び起き、辻に構えて今の状況に至る。

「…死ぬで、兄ちゃん。放っといたら失血死がいいとこや、諦めぇや、誰も責めへんわ」

「巫山戯ろ、もっと酷い傷でも俺は闘り合っていたわ。お前こそダメージは小さく無い筈だぜ?お前みたいなガキが倒れてても誰も責めないよ。大人しく沈んでろ」

小太郎の言葉に、辻がフラつく身体を支えながら言い返す。

「…俺は、負けられん。姉ちゃんの望みや、絶対に、こんな所でやられる訳にはいかんのや。兄ちゃんをぶっ倒して、あのチビと護衛の姉ちゃんを追わなあかん。大人しくしてへんなら、潰させて貰うで」

小太郎は牙を剥き、辻に不退転の覚悟を伝える。

「……わからないな。何でお前みたいなガキがこんな事に手を貸している?真っ当なことをやっている訳じゃないって事は、自分で嫌というほどわかっているだろ?そんなにその姉ちゃんとやらが大事か?」

「…当たり前や」

辻の言葉に、小太郎は唸りながら言葉を返す。

「人間にも、化けモンにも、どっちにも受け入れられずに野たれ死にかけとった俺を拾って面倒見てくれたのが千草姉ちゃんや。姉ちゃんがいなかったら今の俺は無いんや!姉ちゃんの望みは俺の望みや‼︎勘で解るわ、兄ちゃんは通しちゃアカン人間や!……ここは、死んでも通さん‼︎‼︎」

小太郎の言葉に、辻は静かに一つ頷く。

「……そうか…………」

辻が呟いた次の瞬間、

「っ⁉︎⁉︎」

辻の纏う空気が一変し、小太郎の身体から負傷が原因で無い汗が滲み出る。

「…なら死ね」

辻はフツノミタマを天高く突き上げ、腰を落として構えを取る。対して小太郎も身構えるが、辻から流れてくる殺気や怒気とは明らかに違う異様な気配に、粘り着く汗が止まらなかった。

…なんや、この兄ちゃん。

…敵意はある。ただ、言葉と裏腹に殺気が薄い……いや、殺気の代わりにもっとよう解らん、ごちゃごちゃしたもんを俺に向けとる……?

 

或いは小太郎がもう少し人生を重ねていれば。

それが好事家や愛好家が嗜好品を愛でる時の情愛にも似た何か(・・)だと理解出来たかも知れなかった。

 

両者の動きが止まったまま暫しの時間が流れ、先に耐えられなくなったのは辻の纏わり付くような気当たりに消耗を感じ始めていた小太郎だった。

「っ‼︎」

予備動作をほぼ感じさせない瞬動。次の瞬間には辻の利き腕から遠い左背面に廻り込み、単純(シンプル)にして最も出の早い爪の一撃を放つ。

犬神を用いての牽制など、下手な動きを見せればその瞬間に殺られると判断しての、狗族の身体能力を活かした全力機動であり、実際小太郎の判断は正しく何の失態(ミス)も無かった。

しかし(・・・)

小太郎が瞬動の抜き(・・)を終え、鉤爪を打ち込もうとした時には、何時の間にか小太郎に向き直っていた辻の一刀が、小太郎を斬り下ろしていた。

「があぁっ⁉︎⁉︎」

凄まじい衝撃が全身を打ち抜く。視界に星が飛び身体の力が抜けて己が倒れていくのを小太郎は知覚した。

な、に……が………⁉︎

小太郎の側からすれば辻の姿を視認したかしないかの段階でカウンターを喰らったのだ、意識が飛ばなかったのは獣化して身体能力が強靭になっていたお陰だろう。

…斬られたんか、俺………?

小太郎が膝を付き、ゆっくりとその身体が前のめりに傾いていく。

……強いわ、この…兄ちゃん………

…死ぬんか、俺………?

小太郎の霞む視界に、地面が迫る。

……死ぬ………?………おいコラ。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっっ‼︎‼︎」

「‼︎」

 

地面に倒れかけた小太郎の身体が突如跳ね起き、辻に向けて突っ込む。

…悠長に、死んでる場合や、ないやろが‼︎俺ぇぇぇぇぇ‼︎‼︎

辻は残心を解いていなかった。曲がった膝を伸ばして身体を起こしかけた体勢での反撃だったが、上体を前面に押し出しながらフツノミタマを水平に振り抜き、小太郎を胴凪ぎにする。

「ご、ぐっ⁉︎」

骨の砕ける感触が辻の手に届き、小太郎が吐血して身体がくの字に折れる。

「が……あ゛あ゛っっ‼︎」

「⁉︎」

だが、小太郎は倒れない。白目を剥きながらも、執念で辻の体を掴み、牙を剥いて辻の右肩に喰らい付く。

最早小太郎の思考は真面に働いていない。朦朧とする意識の中、小太郎は千草を想い、力を振り絞る。

…………姉ちゃん…………………

…俺は、……姉ちゃんと…………

「グゥゥゥゥゥゥゥッ‼︎‼︎」

メキメキと異音を上げて牙が肉にめり込んでいく。辻は必死の形相で己が肩に喰らい付く小太郎の顔を見下ろし、苦痛に顔を顰めながらも呟く。

「…見事だよ。お前」

辻の右腕が小太郎の頭を抱え込み、同時に左腕が体をクラッチすると、次の瞬間辻の身体が海老反りになりながら後方へ倒れ込み、全力で小太郎の頭を地面に叩き付けた。

変形のフロントスープレックスを決められ、小太郎の全身から今度こそ力が抜ける。

意識を飛ばしながらも、小太郎は顎の力を緩めようとせず、辻は呻きながら無理矢理顎を腕力でこじ開け、血塗れの肩をようやく引き剥がした。

 

「…畜生、痛い……」

辻は服を破いて肩の傷口に巻き付けていく。

『無駄な負傷だ、主よ。私で峰打ち(・・・)などをして、情が湧いたか?』

咎めるように、そして何処か詰まらなそうにフツノミタマが問いかける。

「…まあ、な。こういう懸命な子どもは、断ち(・・)たく無いんだよ…非常事態だし、甘いこと言ってられないのは解ってるんだけどなぁ……」

『……ふむ………』

言葉と共に応急手当てを終えて立ち上がる辻を余所に、フツノミタマは何事かを考え、小太郎を一瞥して歩き出した辻に言葉を放つ。

 

『しかし主。断ちたかったろう(・・・・・・・・)?あの小僧を』

 

辻は足を止め、右手のフツノミタマを見下ろす。

「………そうだな……………」

暫しの沈黙の後、苦い声で一言呟いて歩みを再開する。

『ふふふっ……ならばいいさ。行くとしようか、主』

「何がどういいのかさっぱり解らんが、まあいい確かにその通りだ、急ぐと……⁉︎」

早足から駆け足に移行しようとした辻が思わず足を止め、目を見開いて木々の隙間から空を見上げる。

『…あれは………』

燦々と照りつける太陽よりもなお輝く、両面宿儺の姿があった。

 

 

 

其れは、感情の伺えない表情のままゆっくりと視線を下ろし、ネギと刹那を見やる。

「「っ〜〜〜〜〜〜⁉︎」」

視線で撫ぜられた。ただそれだけで二人は全身の毛が逆立ち、強制的に理解させられる。

……ああ……………

化け物(・・・)だ…………

と。

奇しくも刹那は思い出す。化け物とは、違う(・・)モノだと言う、辻の言葉を。

存在感そのものの重圧(プレッシャー)が桁違いに強く、重油のプールに沈められたかのように空気が擬似的な質量を持って纏わり付く。

其れは恐怖であり、畏怖であった。存在そのものの違いを、生物としての格の違いを。ネギと刹那は感じていた。

目の前の両面宿儺(オニ)が、戦慄(おそ)ろしかった。

 

「……こんなもんやな(・・・・・・・)

千草は重圧の余波を喰らって青ざめながらも、小さく呟く。

立ち竦む二人に、千草は告げる。

わかったやろ(・・・・・・)?勝負を挑むとか、それ以前の問題や。最早お嬢様にも、あんたらにも用は無い。もう一度言うで、お嬢様を連れてさっさと逃げぇ。地元が()変えてしまうのは悲しいかもしれへんけど、死ぬよりマシやろ?」

「っ⁉︎」

「う…うぅっ⁉︎」

声にならない声を上げる、ネギと刹那。

頭の中の理性的な部分は、大人しく言葉に従って、撤退することを勧めていた。目の前の存在は、勝ち負け以前の、もっと根本的な部分で敵わない化け物だ。これ(・・)を見て、戦う気になる方がおかしい以上、正常な判断である。

しかし、彼らの善良な、気高い心の部分が、それを認めさせなかった。

ここで逃げれば、木乃香も自分達も助かるかもしれない。しかし、総本山の人間は、千草が恨みを抱く、魔法使い達はどうなるのか。幼いながらにして、他者を思いやる心を持ち育った2人の良心が、踵を返すのをギリギリで押し留めていた。

だが、心が折れずにいたところで、現実は無常である。このままここにいれば、木乃香諸共消し飛ばされる。どう足掻いても、逃げるしか選択肢が無いのは二人共理解できていた。

 

その時、刹那の頭の中で声が響き渡った。

 

 

 

『…御無事でしたか……辻部長……」

「ああ、何とかな」

辻は昼日中にも鮮やかな、両面宿儺の姿を見ながら念話を飛ばす。向こうの刹那の声は力無く、僅かに震えていた。

……当然か……………

遠目に見ただけでもわかる。あれは、正真正銘の化け物だ。平常心でいられる方がどうかしている。

だから(・・・)辻は、刹那にそう、告げることが出来た。

「桜咲、細かく問答を重ねている暇は無い。単刀直入に言うぞ、俺を召喚しろ」

『……え………』

戸惑う刹那に構わず、辻は言葉を重ねる。

「早くしろ、デカブツの相手は俺がする」

辻の言葉に、暫し沈黙してから力無い刹那の声が流れる。

『…辻部長……無理です。此れ(・・)は、人が相手を出来るものではありません…』

「解ってる」

辻は決して反則級のアーティファクトを手に入れて増長している訳では無い。見ただけで理解出来ている、あれは化け物(・・・)だと。

それでも辻は、自分が相手をしなければならないと確信していた。

……何故なら……………

 

あれが断てる(・・・)理解(わか)っているのはきっと自分だけだから。

だから辻は刹那を促す。

 

「桜咲、今すぐ根拠は示せない。それでも俺を信じてくれ。打つ手が無いんだろう?どうしようも無いと、諦めかけてたろう?……何とかしてやる(・・・・・・・)‼︎俺がお前に嘘を吐いたことがあるか⁉︎…責任取ってやるのが先輩だろうが、ナメんな後輩。いいから黙って言う通りにしろ…」

辻は変わらず、されど以前と少しだけ違う言葉を告げる。

「…部長命令だ」

 

 

 

「…貴方は………」

刹那は何事かを告げようとして、それは言葉にならないまま胸の中で溶けていった。

辻の言葉に刹那が頷く要素は何一つ無い。大戦期の英雄達が終ぞ斃せず、封印することしかできなかった怪物だ。幾ら強力なアーティファクトを持っていようと、魔法戦の経験もまだ碌に無い半素人に何が出来るというのか。

しかし、刹那は先程まで諦念と恐怖に縛られていた心が、不思議と静まっていた。辻の嘗てと同じ言葉は、奇妙な迄に刹那を安心させていた。

…何を、考えている……私は………

刹那は嘗て辻に守られた。この修学旅行の中だけでも何度も助けられた。それでも、今の状況はそんな瑣末なトラブルとは訳が違うのだ。そんな事は、刹那は解っている。

……なのに何故…………

…何故貴方の言葉は私を動かすんですか……辻部長………

「…辻部長………」

『…ああ』

返ってくる声は何処迄も落ち着いていて。その響きに押されるように刹那は言葉を口にした。

「…私達に、協力して下さい……助けて、下さい‼︎」

刹那の叫びに、返事は一瞬の間を置いて頼もしく響いた。

『…当たり前だ‼︎』

 

 

 

 

「…それで?何しに来よったんや、あんさんは?」

意識の無い木乃香を抱える刹那と傍らに控えるネギ。その三人を護る様に立つ辻に千草は詰まらなそうに聞いた。

対して辻は何でもなさそうな調子で言葉を放った。

 

「何、ちょっとそこのデカイのを断ち割ろうかと思ってな」

 




閲覧ありがとうございます、星の海です。次回で修学旅行編も終話に入れそうです。戦闘回はこの話に収めたかったのですが、中々上手くいきません。執筆も難航して遅くなりました、申し訳ありません。辻が何やらやる気ですが、規格外の化け物相手に、果たしてどう立ち回るか、次回も楽しみにお待ち下さい。それではまた次話にて。次もよろしくお願いします。

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