お馬鹿な武道家達の奮闘記   作:星の海

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凄まじい長さになりました。次回で二章は終了の予定です。


25話 一刀両断

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ遠い‼︎畜生間に合わねえぞ畜生ぉぉぉぉっ‼︎」

「吼えるな馬鹿が‼︎口を動かす暇があったら足を動かせ‼︎」

「…っていうか何か始まってるっぽいよ⁉︎ヤバいんじゃないの辻達‼︎」

「糞が二重三重に祟りやがるぜあの白黒コンビがぁ‼︎」

「…なんかゴメンね大豪院先輩」

口々に悪態をつきながら疾走(はし)るバカレンジャー。明日菜は四人の本気の疾走について行けないので大豪院に担がれていた。

「気にするな神楽坂後輩!この程度重量の内に入らん‼︎」

「つーか山ちゃんマジで担がなくて大丈夫かぁ⁉︎フラついてんじゃ無えかよ無理すんな⁉︎」

「この位無理の内に入らないよ大丈夫‼︎それよりも、あれ‼︎」

山下の言葉に皆が木々の僅かな隙間からも明瞭に視認できる輝く巨人を見やる。

「なんじゃありゃあ‼︎」

「弓と…矢だよな⁉︎何だあのガタイで武器まで使うのかよ巫山戯んな⁉︎」

「…戦闘姿勢を見せたということは間違い無く誰かが闘り合っているな‼︎神楽坂後輩、ネギと連絡は取れたか⁉︎」

「…なんか、辻先輩がリョーメンスクナとか言うのと闘おうとしてるって⁉︎」

「んだとぅ⁉︎」

明日菜の言葉に騒然となる一同。

「あの馬鹿まーたんな無茶やってんのか⁉︎」

「上半身だけで城並みにデカイんだぞ‼︎人が相手をするサイズ差じゃ無えだろウ○トラマンでも呼んで来いよ‼︎」

「というか神楽坂後輩、近衛後輩はどうなったのだ⁉︎」

「えっと、取り戻すことは取り戻せたらしいわよ⁉︎」

「はあ⁉︎だったら逃げようぜ幾ら何でもあんな…⁉︎」

豪徳寺の言葉の途中で、両面宿儺が体の割に素早い動きで上腕の弓に矢を番え、斜め下の軌道で矢を打ち込んだ。

 

刹那世界に、轟音と共に激震が響き渡る。

 

「うぉぉぉぉぉ⁉︎」

「おわぁっ⁉︎」

「キャアアッ⁉︎」

数km程も離れているというのに、間近に旅客機が墜落してきたような震動を感じ、口々に悲鳴を上げる一同。揺れは一瞬で収まったが、森の彼方此方で異変を感じとった動物達の鳴き声や鳥の羽ばたきが響き渡る、まるで大災害の前触れだ。

「…あんなん放っておいたら、ここら辺一帯が焦土と化すよ⁉︎」

「待て‼︎だからってここら辺を更地にしちまいそうな奴に立ち向かうのか⁉︎矛盾が生じてんぞ‼︎」

山下の言葉に豪徳寺が反論する。

「…勝ち目が無いとは言いたく無えが、正直あのロリババア以上にヤバいんじゃねーのこいつ⁉︎」

中村の言葉に暫しの間沈黙がその場を支配するが、やがて絞り出すように大豪院が言う。

「…辻が闘っているなら、逃げられまい。あれを野放しには出来んと、そういうことだ‼︎」

その言葉に、泣き笑いの様な表情を浮かべつつも、バカレンジャーはややあって頷く。

「…仕方無えよな畜生‼︎」

「ロリ吸血鬼の一件からこっち、死にそうになってばかりだなホントに!」

「あのデカブツもまだ戦闘姿勢を解いてない、闘ってるってことだしね辻達が‼︎」

大豪院は苦い表情でそれでも無理矢理笑みを浮かべ、自分の背後の神楽坂に言葉を放つ。

「神楽坂後輩、お前はここで…」

「嫌よ、あたしも行くわ」

言葉を遮り、明日菜がはっきりと宣言する。

「止めとけ阿呆、顔を出したら消し飛ぶかもしれねーんだぞ」

「それは先輩達も同じでしょ‼︎てゆーかあんなのが暴れだしたら何処にいたって対して危険なことに変わりはないじゃない‼︎」

明日菜の言葉に、唸る一同。

「大体あの女がクラスの皆や町の人に手を出さない保証なんて無いでしょ?友達や知り合いの人が危ないかもしれないのに、私だけ逃げるなんて御免よ‼︎連れてって、先輩達‼︎」

明日菜の決意に、苦虫を噛み潰したような顔になりながら、明日菜をしっかりと大豪院は背負い直す。

「…やむを得ん、掴まっていろ、神楽坂後輩‼︎」

「オッケー‼︎」

明日菜が大豪院にしがみ付き、バカレンジャーは加速する。

「待ってろよ(はじめ)ちゃん‼︎」

中村が気勢を上げるのを横目に見やりつつ、山下は走りながらふと疑問を浮かべる。

…さっきの激震、一瞬だったからよくわからなかったけど、初期の震動が響いた直後に二つ目が重なってた…ほぼ同時だったから一つの揺れに感じたけど………

だとしたら、まさか。

…矢を斬った(・・・)、なんて言わないよね、辻……

 

 

 

『何が起こっても対応出来るように充分距離をとって上空で待機してろ』

それがネギと刹那の二人に告げられた辻の指示だった。

当然二人は納得してはいなかったが、両面宿儺が虚空から金色に輝く二振りの達と二対の弓矢を呼び出し、戦闘姿勢に入ったことで反論の機会を無くした。木乃香を抱えたまま黙って攻撃を喰らう訳にはいかないからだ。

両面宿儺が弓に矢を番えるのを見て、ネギは辻を杖に乗せて回避する旨を伝えたが、辻は自分で何とかするから早く行け‼︎と言い捨て、両面宿儺目掛け駆け出した。思わず後を追おうとしたネギは、刹那に止められ断腸の思いで宙に舞い上がった。

 

そして、辻目掛けて放たれた巨木のような矢が辻の振るった一刀で二つに断たれ(・・・・・・)、それぞれが湖に着弾して爆発的に水を巻き上げながら、湖底に突き刺さり激震を起こした。

 

 

 

「ゲホッゲホッ!…ふう、余波だけで死ぬかと思ったぞ……」

『周りが水で寧ろ幸いだったかもしれんぞ、主。土塊や岩であったら、着弾の衝撃で散弾がこちらに殺到し、意識位は失っていたかも知れん』

飛んできた戦艦主砲が玩具のように思える巨大な矢を断ち割ったはいいが、矢が通り過ぎた衝撃の余波に吹き飛ばされ、湖面が弾けて生じた放水車の放水を喰らったような瀑布を浴びて濡れ鼠になった辻は、億劫そうに立ち上がりながら愚痴を溢し、フツノミタマがそれに応える。

「……そう言われるとそうか。…しかし……」

『何だ?』

断てたな(・・・・)。凄い刀だ、お前は」

辻の言葉にフツノミタマはくつくつと笑い、言葉を返す。

『無論私で無ければ消し飛んで終わりだろうが、あれ(・・)を断てると思える主も大したものだ。普通は立ち向かおうとも思えないものだがね』

フツノミタマの言葉に辻は苦笑しながら立ち上がり、両面宿儺に構えを取りながら返す。

「勿論俺だって叶うものなら逃げ出したい。でも、見える(・・・)からな」

次弾を弓に番えようとしている両面宿儺を油断無く見やりながら、辻は言葉を続ける。

「奴の持ってる弓も矢も太刀も、奴自身さえも、ちゃんと見える(・・・)。勝てるとは微塵も思えはしないが、断てるのはわかる(・・・)。…だったら俺がやらなきゃな。他の皆には、この化け物は勝てない怪物だろうけど、俺にとっては…断てる怪物なんだから」

フツノミタマは、辻の断言を聞いて暫くの間沈黙していたが、やがて大笑いを辻の頭の中に響かせながら、至極楽しそう辻に対して告げてくる。

『はははははは!実に良い‼︎貴方はとても良いなぁ主よ‼︎‼︎それが本当に確信出来ているなら、私が断てぬものは本当にこの世に有りはしない‼︎西洋悪魔で言えば王侯貴族級の一体を迷わず断てるというその狂気!最高だ、最高だよ主ぃ‼︎‼︎』

「何にテンション上げてるか知らんが、来るぞ構…えを取るのは俺か」

『くくくく、安心しろ主よ。一度断った以上、前回よりも楽だぞ弓矢の相手は』

「何?どういう…⁉︎」

聞き返そうとした瞬間に、2発目の矢が辻目掛けて飛んでくる。

「きぇぇぇぇぇいっ‼︎‼︎」

気合の声と共に辻はフツノミタマを一閃、ちょっとした小屋程もありそうな鏃が二つに裂け、そのまま矢の全体が二つに断たれる。

そこまでは初撃と同様であったが、断たれて二つになった矢が霧散し、光の粒子となって霧散した。

「…ん?」

衝撃波や水飛沫に備えていた辻が怪訝そうに声を洩らす。フツノミタマはクスリと笑い、辻に説明する。

『初撃の矢を断った時点であのデカブツの矢は断たれている(・・・・・・)。新たな矢を用いても概念までをも断ち斬る私が及ぼす結果は無視出来ない。奴が矢を放つ威力に変わりはなかろうが、既に断たれている矢を放っていることにより存在に矛盾が生じ、威力が減衰しているのだ。流石に奴ほどの存在が放つ攻撃ともなると、一撃で攻撃そのものを無力化は出来ないようだが、今また矢を断ったことにより、断たれた結果は更に世界へ強く刻みつけられる。このまま奴が馬鹿の一つ覚えのように矢を放っているだけなら、そのうち攻撃そのものに何の威力も無くなることだろうよ』

「…抽象的過ぎてよく実感できんが、つまりお前はどんな攻撃でもお前を用いて切り裂いて防御しているだけで、使えなくなるかもしくは威力を減衰させていくことが出来るってことか。……薄々感じてはいたが、お前とんでもなく反則級の存在だな。なんで俺の所なんかに来たんだ?」

あまりのフツノミタマのチートっぷりに、顔を引き攣らせながら辻が問う。

『さて、アーティファクトは潜在能力を引き伸ばし、具現化し、発現させられる契約者に送られるらしいのでな。主が私に合っていたというだけの話だろうよ。…人を選ぶセンスは最悪だと思っていたが、初めて当たりを選んでくれたようだな選考を行う精霊共。』

楽し気にフツノミタマが言葉を返す。

一方、両面宿儺は二度に渡る射撃を防がれた事に憤慨してか、総毛立つような咆哮を放ち、上腕と下腕の弓を同時に引き絞って辻に狙いを定める。

「増えたぞおい」

『問題は無い。私と主ならばな』

言葉を交わしながら、一人と一刀は臨戦態勢を取る。

「『……行くぞ‼︎』」

 

「…あ…………」

「………っ!…………」

「……凄え」

刹那とネギ、カモは目の前の壮絶な攻防を驚愕と共に目にする。

両面宿儺から文字通り矢継ぎ早に放たれるのは超密度のエーテルで構成された、単純な局所的破壊力ならば極大呪文に匹敵する輝く破壊の矢。

並の魔法使いならば、受ける所か避ける事さえままならない猛撃を、辻は次々と手に持つフツノミタマで断ち斬り、霧散させていく。辻は、初撃の余波で吹き飛んだ以降は一切被害を受けずに、防戦一方ではあるがジリジリと距離を詰めてすらいた。

「…ここまで凄えアーティファクトだったのかよ、辻の旦那のアレは」

カモが掠れた声で呟く。剣士として腕が立とうと、魔法も使えず最近まで只の高校生だった辻が『神』の名を抱く超越的存在に渡り合えているのだから、フツノミタマがこの奇跡のような状況を作り出している要因だとカモが判断するのは当然と言えた。

「…いえ、それだけではありません」

カモの見解を刹那が訂正する。

「確かにあの刀は異常な性能ですが、受け損ねた瞬間に即死するような攻撃をあそこまで完璧に捌いている辻部長も、尋常ではありません」

刹那の言葉に頷きながら、ネギは

……辻部長…………

刹那は辻の言葉を思い返す。

任せておけと、何とかしてやると豪語した辻は言葉通りに規格外の化け物と渡り合っている。こうなることを辻が理解していたのかは刹那にらわからない。しかし、かつてと同じように辻の背中を見ているしか無い現状に、かつてと異なり刹那は忸怩たる思いを抱える。

…あの時とは、もう違うのに………

今も昔も私は、護られるか弱い小娘では無い筈なのに………

「……刹那さん」

煩悶する刹那に、ネギが声を掛ける。

「…何か僕たちで、辻さんにサポートができないでしょうか?」

ネギの言葉に、刹那は唇を噛み締める。ネギも刹那と同じ気持ちなのだ。刹那は余程、辻の下に行こう、一緒に戦いましょうと言ってしまいたかった。

それでも、実際に刹那の口から出たのは制止の言葉であった。

「…あの鬼神に生半可な攻撃は通用しません。ネギ先生の魔法でも、私の神鳴流の決戦級奥義でも。…恐らく奴は然程痛痒を感じないでしょう。それどころか、下手をすればそれで矛先が私達に向いて、なんとか拮抗している現状が一気に崩れてしまうかもしれません。…現状、私達に出来る事はありません」

「でも!じゃあ僕達は何の為にここに居るんですか⁉︎経験の少ない僕にだって解ります!あのままじゃ辻さんは、やられないかもしれないけど、勝つことなんてできません‼︎これじゃぁ、みすみす辻さんを見殺しに…」

「わかっています‼︎」

ネギの言葉を遮り、刹那は叫んだ。

「でも、どうしろって言うんですか、先生⁉︎私達の攻撃は通用しない、お嬢様を抱えてもいる!いやそれ以前に、私たちは奴に竦んでしまっているんです!こんな状態で手助けに行って、何ができると言うんですか⁉︎私だって……私だって……‼︎」

「…刹那さん…………」

……最低だ、私は。

…ネギ先生に当たってどうする……

……どうすればいい、私は………‼︎

その時。

「…う……。ぅうん…………?」

「っ‼︎お嬢様⁉︎」

「木乃香さん!気がつきましたか⁉︎」

軽く呻きながらも、眠っていた木乃香が覚醒し、ぼんやりと薄く目を開く。

「…ぁ?せっちゃん……?ネギ君…?…あれ、ウチ………あ‼︎」

木乃香は急に顔を赤くして、両手で顔を抑え悶え始める。

「あひゃ〜アカンわ!ウチホントにあの人の言う通り、気持ちええだけやったぁ〜〜⁉︎」

「は?」

「え…?」

唐突な木乃香の言葉に、戸惑う刹那とネギ。尚も暫く木乃香は悶えていたが、やがて多少落ち着きを取り戻し、新ためて刹那の姿を見て目を見開く。

「わ……せっちゃん、その羽根……!」

「っ‼︎……」

刹那は、反射的に身を竦める。もし木乃香から、拒絶の言葉を吐かれたら……

しかし、暫く刹那の翼を見つめていた木乃香は、笑みを溢して刹那に行った。

「キレーな羽根……なんか、天使みたいやなぁ……」

「……お嬢…様……‼︎」

刹那は、反射的に溢れそうになる涙を必死に堪えた。

刹那の心配は杞憂であった。近衛 木乃香は、桜咲 刹那の親友である事にもはや疑いの余地は無くなった。

 

滲む視界を袖口で拭い、刹那は決意する。

…矢張り、お嬢様を危険な目に遭わせる訳にはいかない。

刹那は、目を輝かせる木乃香にゆっくりと言葉を伝え始める。

「お嬢様、これからお嬢様を安全な場所までお連れします。しっかり私に掴まっていて下さい」

刹那の言葉に、ネギは驚く。

「刹那さん!でも……」

刹那は、ネギを見て頷く。

「仰りたいことはわかります、ネギ先生。ですが、これが私の結論です。お嬢様を危険な目には遭わせられない。…きっと辻部長も、本当は逃げろと言いたかったんだと思います。時間が無くて私達を納得させられないから、あんな言い方をしたんです…あの人は」

辻部長ならこうしろと言うだろう。

刹那には確信があった。

「…でも……」

尚も何かを言いかけたネギが、肩の上のカモによって制される。

「それ以上は言ってやるな、兄貴。刹那の姉さんだって辛くない訳が無えんだ…」

ネギはカモの言葉に、口端を噛んで続く言葉を飲み込む。

無論、刹那も完全に割り切れた訳ではない。だが、お前にとって近衛ちゃんは何だと言う辻の言葉に対する、刹那の答えがこれだった。

…お嬢様は、私の親友だ。絶対に、傷つけるわけにはいかない。

木乃香は、刹那の言葉を聞いて暫し何事かを考え、刹那に問う。

「…せっちゃん。あの…でっかいのはどうするんや?」

そんな木乃香に、刹那はなんとか微笑みを返し、告げる。

「…あの怪物は、辻部長がなんとかしてくれます。お嬢様がここに居ては危険ですから、私がお嬢様を安全な場所まで連れて」「駄目や」

刹那の言葉に被せるように、木乃香が真剣な顔と口調で言い放つ。

「え…?」

「せっちゃん、無理したらあかん。ウチには今何がどうなってて、どのくらいここが危ないかなんてわからん。でも、せっちゃんがどんな気持ちで辻先輩を置いて行こうって言ったのかは、わかるで」

「っ‼︎……」

木乃香の言葉に刹那は目を見開き、言葉を失う。

「助けに行きたいんやろ、辻先輩を。なら、ウチの事はいいから、行くんやせっちゃん。このままじゃせっちゃん、また(・・)後悔するで」

「っそんな…‼︎そんなことが出来る訳無いやろ、このちゃん‼︎」

思わず刹那の口調が崩れる。木乃香の言葉は正しい。刹那とて行けるものなら助けに行きたかった。

……それでも………‼︎

刹那にとっては木乃香も、順番がつけられない程に大切な存在なのだ。放り出していくことなど、出来る筈が無かった。

木乃香はそんな刹那の様子を見て微笑むと、ゆっくりと噛んで言い含めるように刹那に告げる。

「なあせっちゃん。そうやってウチのこと大事に想ってくれるんは、凄い嬉しいんや。でもせっちゃんにとっては辻先輩も、負けない位大事な人の筈やで?…それにウチも……」

木乃香は自らの胸に、手を当てる。

「ウチかて、辻先輩は大事な人や。ウチは辻先輩に、いっぱいお世話になった。……せっちゃんとネギ君の顔見ればわかるわ。辻先輩、無理しとるんやろ?…せっちゃん、辻先輩を助けてあげて!せっちゃんの為だけやない、ウチも先輩を助けたいんや‼︎」

「この……ちゃん…………‼︎」

刹那は暫し顔を俯かせ、新ためて自分の未熟さを恥じる。

…また、逃げようとしていたのか……私は…………

木乃香が大事だという気持ちにも危険な目にも合わせたくないという気持ちにも嘘は無い。

それでも刹那は、今の家を助けた上で、辻をも助ける方法を、無意識の内に除外していた。辻の言葉に逆らいたくなかったのか、辻を優先することで、後に木乃香の不況を買うのが怖かったのか。

…いずれにしろ私は、諦めていたんだ。死力を尽くしていなかった。

刹那は顔を上げ、木乃香の瞳をまっすぐに見て問いを放つ。

「このちゃん、私人間じゃ無いんです。化け物の血が混ざってます。…そんな私でも、変わらず友達でいてくれますか…?」

木乃香は刹那の言葉に、一瞬キョトンとした後、眉根を吊り上げて言い放つ。

「せっちゃん…怒るで。例えせっちゃんが、生身で超合金ロボに変形しても、せっちゃんはウチの、親友や‼︎」

「いや、何故に超合金……?」

「か、カモ君……‼︎」

黙って聞いていた外野のカモが、思わずツッコミを入れる。

「ふ、あはははははははははっ‼︎」

刹那は笑う。笑いながら木乃香を抱いた手に力を込める。

「…せっちゃん」

「はい。…ありがとうございました、お嬢様。もう私に、怖いものはありません(・・・・・・・・・・)

刹那は懐から呪符と四本の独鈷を取り出し、空中に放って呟く。

「…四天結界 独鈷錬殻 」

空中に、三角錐型の結界が張られ、刹那はその中に木乃香を導く。

「…お嬢様、ここで待っていて下さい。あの木偶の坊を直ぐに倒して、辻部長と一緒に帰ってきます」

「…ん!ファイトやせっちゃん‼︎」

刹那が笑顔で頷き、傍らのネギとカモに振り向く。

「…ネギ先生!カモさん‼︎」

「はい‼︎」

「応よ‼︎」

刹那の呼び掛けに、一人と一匹は元気よく応じる。

「辻部長を今から助けに行きます。力を貸してください‼︎」

「「了解です(だぜ)‼︎」」

 

 

「…流石に慣れてきたがなぁ‼︎」

『ああ、向こうも本気らしいな』

すでに二桁を超える矢を撃墜した辻は、両面宿儺の気配の変化を敏感に感じ取っていた。

それを証明するように、両面宿儺は二振りの弓を虚空に投げ返し、腰に手挟んでいた二振りの太刀を引き抜き、対の両手で握り締め、辻を睨み据える。

「…接近戦か」

『あの大きさでは、こちらからすれば遠距離攻撃も近距離攻撃も変わりはないがな』

違いない、と辻は呟き、口端を歪めて笑う。

『…主よ』

「何だ?」

『…流石の私も鬼神を断ったことは、無い』

「…俺も当然無いな」

『だから…』

「ああ、わかっている」

 

「『…断ってみたいな…こいつを』」

 

…桜咲達を遠ざけておいて良かったよ。とても今の顔は見せられまいから。

…ああ、こいつを断ったら…どれ程気持ちいいんだろうなぁ(・・・・・・・・・・・・・・)………‼︎

 

辻は桟橋を全力で駆け出し、水面に降り立ち尚疾走(はし)る。

バカレンジャーの中で虚空瞬動が使えるのは山下だけだが、水などの液体が足場としてあるならば、所謂水面走りを他の四人も可能とする。飛び跳ねるように水面を走りながら、辻は両面宿儺に肉薄する。

『主よ、両面宿儺の剣撃は断とうとするな』

「…何故?断てないものは無いんだろう、お前?」

『無論。だが、奴の初撃の断った矢が尚大地を揺るがしたことからも解る様に、私をもってしても奴の力は相殺仕切れん。奴が莫大な気を込めて放つ斬撃は一撃で断てない可能性がある。私は折れはせんだろうがそうなれば待っているのは主とあのでかブツの力比べ(・・・)だ。身長差五十倍以上の巨人に腕相撲で勝てるというなら止めはせんがな』

「…了解だ!」

一際長く跳躍する辻に、両面宿儺は雄叫びと共に右の太刀を振り下ろす。容易く太刀が音速を越え、大気が爆発して巨大なギロチン(断頭刃)が落ちてくる。

辻は全力の瞬動で左に飛び、斬撃の範囲から逃れる。

直後、再び世界が激震する。

甲高く、巨大な破裂音と共に湖面が二つに割れ、両側に津波の様な水飛沫が発生する。斬撃を喰らった湖底は海溝の如き深い亀裂が生じ、一拍遅れて湖の水が滝の様に流れ込む。

そんな超絶的な一撃を辻は何とか躱したが、発生した津波のような水飛沫によって、水の中に飲み込まれそうになっていた。

「おおおおおおおおおおっ⁉︎」

牙を剥く急角度の水面を山を駆け上るようにして走り抜け、両面宿儺へと近づく辻。

『水煙に紛れて近づけるかと思ったが、どうやらこちらの気配を察知しているらしいな』

大時化のように荒れる湖面の中、的確にこちらを視界に捉えている両面宿儺を確認して、嘆息と共にフツノミタマが呟く。

「アリンコみたいなサイズの生き物も見逃さないとか、デカい図体の割に気の小さい野郎だ、な‼︎」

一際大きな波を乗り越え、辻は怒鳴るように言い返す。

両面宿儺の返す左の斬撃が、次は横殴りの軌道で湖面上を薙ぎ払う様に放たれる。

『届くまでもう一息だ……‼︎』

「その前に真っ二つにされそうだが、な‼︎」

辻は斬撃の届く直前、水面を全力で蹴って斜め上に跳躍、横薙ぎの斬撃を飛び越えて躱す。最早長大過ぎる両面宿儺のリーチでは、上手く辻に太刀で攻撃することは不可能なまでの懐に、潜り込むことに成功する。

しかし。

「何ぃ⁉︎」

『…しまった、な…‼︎』

両面宿儺の前面の口内に、莫大な気が収束し、明らかに辻に狙いを定めている。直後、放たれるのは極大呪文一歩手前の威力であろう鬼哭咆哮。破壊の波が、辻に迫る。

「おあぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎」

今だ体が空中に有り、回避する術の無い辻はフツノミタマを全力で振り下ろし、破壊の波を両断する。またしても割れた衝撃波に湖面が爆砕し、余波を喰らって辻は弾き飛ばされ水面に叩きつけられた。

「ガハッ‼︎」

『主‼︎』

全身を走る衝撃に辻が苦鳴を漏らす。フツノミタマの鋭い呼び掛けに痛みを押し殺して目を開くと、両面宿儺が引き戻した右の太刀を辻目掛けて、今にも振り下ろそうとしている姿が見えた。

…ヤバい、避けられる体勢じゃ、無い……⁉︎

これでフツノミタマを斬り上げても、先程フツノミタマが言った通り圧倒的な膂力差で潰される未来しか辻には見えない。かといって不完全な体勢で跳躍しても、振り下ろされる剣圧の破壊範囲内は広大だ。掠めたで人など簡単に弾け飛ぶだろう。

つまり、打つ手は無い。

…それでも……‼︎

辻は覚悟を決めてフツノミタマを振って来る斬撃に対して構える。辻は諦めるなど選択肢に入れるつもりは無かった。

死の一撃が辻に届く、その寸前。

『っ⁉︎』

「うおぉ⁉︎」

何者かに辻の身体が横抱きに攫われ、間一髪のタイミングで斬撃は湖面を烈断するだけに終わった。

 

「な、何…⁉︎」

『…小娘?』

急激に上昇する視界に軽くパニックになっていた辻は、フツノミタマの疑念の声にハッとして自分を抱えている存在を仰ぎ見る。

「大丈夫ですか、辻部長?」

白い翼を羽ばたかせ、高速で空に舞い上がる少女ーー桜咲 刹那は、心配そうな顔で辻の顔を見返した。

「桜咲‼︎お前、なんでここにいる⁉︎」

「まず辻部長の体勢を入れ替えます、身体を起こして下さい」

「あ、はい…」

上体を起こした辻の腹を抱え込む様に刹那が抱き着き、体勢が安定する。

「オホン…近衛ちゃんはどうしたんだよ桜咲⁉︎」

『締まらんなぁ』

「五月蝿いよ⁉︎」

仕切り直してから問い詰める辻にフツノミタマがツッコむ。

「お嬢様は現状で私が張れる最強の対魔結界内でお待ち頂いています。私とネギ先生も両面宿儺撃破に協力します、一緒に戦いましょう、辻部長」

「馬鹿かお前は‼︎」

辻は思わず刹那に怒鳴り返す。

「お前は近衛ちゃんの護衛で、親友なんだろうが‼︎こんな所で一人にして、まかり間違って攻撃が飛んでいったらどうするんだ⁉︎中途半端な真似をするなよ!今すぐ戻って一層の事一緒に逃げろ‼︎‼︎」

「お断りします‼︎」

辻の怒喝に刹那は大声で言い返す。

「なっ…」

「これはお嬢様を含めて私達全員の総意です。貴方だけに危ない思いはさせません。辻部長が両面宿儺を倒せる算段があるなら、私達がサポートします!」

「そんなの、お前…」

「そもそも今しがたやられそうになっていたじゃないですか!一人で何とか出来ないなら大きな口を叩かないで下さい‼︎」

「ぐぅ⁉︎」

痛い所をつかれて、辻は言葉に詰まる。

「…辻部長。私は確かにお嬢様の護衛で、親友です。何に変えても私はお嬢様を守りたい。…でも辻部長。貴方だって捨て石みたいな扱いが出来る様な、どうでもいい存在じゃ無いんです」

「…桜咲……」

刹那は語気を緩め、辻に優しく語りかける。

「貴方は確かにやってみせる(・・・・・・)人です、私も何度も助けられました。本当に感謝しています。…でも、それは貴方に全て負担を押し付けていい理由には、ならないでしょう?私はもう、貴方の背中を守れます…ようやくそう、自信を持って言えます。こればかりは譲れません。私も一緒に、戦います」

…こいつは、本当に………

辻はこんな状況にも関わらず、笑い出しそうになった。何処まで人間出来ているのだろうか、この少女は。

「…お前なぁ……今からそんなにいい女になってどうするんだ……嫁の貰い手、いなくなるぞ?」

刹那は虚をつかれたたように、少し目を見開くが、

「…その時は、辻部長に責任を取ってもらいますよ……」

クスリと笑って言い返した。

『…二人の世界を作っている所悪いがな、主』

何処と無く面白く無さそうな口調でフツノミタマが告げる。

「いや、そんなんじゃ無い妙なこと言うなよ。何だ?」

『洒落にならん一撃が飛んできているぞ』

両面宿儺の鬼哭咆哮が辻達に迫っていた。

「うぉぉぉぉぉぉ⁉︎避けろ桜咲ー⁉︎」

「え?うわぁぁぁぁぁぁっ⁉︎」

刹那は慌てて旋回し、何とか回避に成功する。

「辻さーん、刹那さーん‼︎大丈夫ですか⁉︎」

「イチャつくのは後にしろよ二人共‼︎」

ネギとカモがこちらに飛んで来ながら声をかける。

「五月蝿いよイチャついて無いわ⁉︎兎に角助かった、ありがとうフツノミタマ⁉︎」

『…まあ、いいのだがなどうでも……』

「と、兎も角‼︎私達がサポートします、辻部長‼︎」

刹那が若干赤い顔になりながらも、助力の旨を告げる。

「……わかった、確かに俺とフツノミタマだけじゃ厳しかった所だ。…命預けるぞ、皆‼︎」

「「「はい(応よ)‼︎」」」

辻達は両面宿儺に向き直り、仕切り直す。決着の時は、近い。

 

 

 

「…つくづくツキが無いんかわからんが、上手くいかんもんや……」

千草は両面宿儺の肩の上で愚痴を溢す。

無謀にも挑みかかって来る男を潰そうと試みればどういうことか両面宿儺の攻撃はことごとく凌がれる。ようやく潰せるかと思えば逃げ出したと思っていた神鳴流剣士と少年魔法使いが男を助け出し、どうやら全員でこちらに挑むつもりのようである。

「…舐められたもんやわ……」

千草は忌々しげに呟き、並行していた作業の進捗状況を確認する。

…もう、少しやな…………

「…最悪西の馬鹿共に一撃かますんは、諦めないかんかもなぁ……」

業腹だが、それならそれで構わない(・・・・)。だがその前に……

「散々邪魔してくさったガキ共には、お返しせえへんとなぁ……」

千草は両面宿儺に指示を出す。

ここから先は、全力だ。

 

 

 

風霊召還(ウァルキュリアールム)剣を執る戦友(コントゥベルナーリア)‼︎」

ネギの周囲に複数の武器を手にしたネギそっくりの風精が現れる。

「…行きます、辻部長‼︎」

「ああ‼︎任せたぞネギ君‼︎」

「はい‼︎」

「武運を祈るぜ、お二方‼︎」

「…光羽翔翼‼︎」

刹那と辻が光の矢となり飛び出し、その後を追うように風精が散開して飛ぶ。

両面宿儺の口内に再び気が収束し、鬼哭咆哮が放たれる。扇状に展開するそれは、しかし高速でありながら機動力の凄まじい刹那の全力飛行を前に掠りもせずに虚しく大気を引き裂く。

両面宿儺は苛立った様に鬼哭咆哮を連射し、両の太刀を、鋭い爪を振り回すが、纏わり付くように周囲を飛び回る刹那を捉えられずに空を切る。また、合間を縫って風精達が両面宿儺の顔面や千草に向かって殺到し、それへの対処で狙いが絞りきれないのも一因であった。

 

『ゴァァァァァァァァァァァ‼︎‼︎』

一際大きな咆哮を両面宿儺が上げ、口内にこれまでとは比べものにならない量の気が収束する。

 

「…デカイのが来る‼︎任せたぞ桜咲‼︎」

「はい‼︎」

刹那は対抗するように翼の光量を増し、最大速度で両面宿儺に突っ込む。迎え撃つ両面宿儺は、口内の気を拡散させて鬼哭咆哮を吐き出す。最早光の爆発が刹那と辻に迫る。

「命預けます、辻部長‼︎」

「任せて、おけぇぇぇぇぇぇぇぇ‼︎」

辻のフツノミタマによる迎撃。爆発全体がかき消えはしなかったが、二つに裂けた爆発の中心を刹那は抜けた。

目も眩むような光の中を抜けた刹那達を待ち構えていたのは、二振りの太刀と二本の腕を構える両面宿儺。絶対に叩き落とすという殺気が刹那達を叩いた。

 

風花 風塵乱舞(フランス サルタティオープルウエレア)‼︎」

左を大きく回って近づいて来ていたネギが魔法で烈風を巻き起こし、水面に着弾した風が水を巻き上げて水煙を作り、刹那が急降下して水煙の中に紛れ込む。

両面宿儺は一瞬動きが止まるが、肩の千草が指示を出して空いている腕を一閃、巻き起こった爆風が水煙を吹き飛ばす。

しかし、水煙の晴れた先に刹那の姿は見えず、煙と一緒にかき消えたかのように姿を消していた。

 

 

 

「ちっ…小細工仕掛けよって…‼︎」

千草は唸りながら、全方位を知覚する。何処から仕掛けて来るのか知らないが、刀を持った男の斬撃でしか両面宿儺にダメージは入らないと千草は推測している。ならば接近して斬りつける過程を踏む以上、どう不意をついても直前には姿を現す筈だと千草は予想していた。

果たして直後、全身に光を纏った刹那が下から(・・・)両面宿儺の背面に向かって飛び出して来た。

…水の中から⁉︎

千草は驚愕する。空を飛ぶ相手が水中を通って来るという意識上の死角をつかれ、千草の対応が遅れた。

…だが、甘いわ‼︎

「宿儺ぁ‼︎」

千草の声に応え、両面宿儺の後面(・・)の口内に気が収束し、鬼哭咆哮が放たれる。

…これを防御させれば一瞬隙が出来るわ‼︎

そうなれば、両面宿儺の迎撃体勢が整い、奇襲は失敗する。そうなれば再び千草のペースで殲滅を行える、という算段だった。

しかし(・・・)

刹那は襲い来る鬼哭咆哮に対しあっさりと背を向け、両面宿儺から遠ざかり一撃を躱した。

「は……………?」

渾身の奇襲の機会をあっさりと棒に振る行為に、千草は訳が解らず疑問の声を上げる。二度同じような手段は使えない以上、相手の考えが千草には理解出来なかった。

 

『ゴァァァァッ‼︎』

その時、両面宿儺が頭上を仰ぎ、鋭く咆哮を上げる。

…っ⁉︎

反射的に宙を見上げた千草はその光景に驚愕する。

「なっ……⁉︎」

そこには生き残った風精が浮かんでいる。しかし、それだけならば千草はここまで驚きはしない。

千草が驚愕したのは、その風精の身体にしがみつくようにして共に浮かんでいるーー辻 (はじめ)が原因であった。

 

 

 

仕掛けはネギが水煙を作り、刹那が突っ込んだ時の事だった。

刹那は水中を通って両面宿儺の背面に抜ける前に辻を水面に落とし、ネギが風精の生き残りに指示を出して辻を拾い上げた。後は刹那が背後から奇襲して注意を引いている間に、辻は風精に掴まって両面宿儺の上方に移動したのだった。

 

 

 

「…終わりだよ」

辻は呟き、風精を蹴り付けて逆落としに両面宿儺へ落下する。

両面宿儺が迎撃しようと口内に気を収束させ始め、二本の腕が辻に伸びるが、

雷の暴風(ヨウィス テンペスタース フルグリエンス)‼︎」

「神鳴流決戦奥義、真・雷光剣‼︎」

ネギの雷風が、刹那の雷球が。両面宿儺に炸裂し、有効なダメージにはならぬものの刹那の時間を稼ぐ。

そして。

 

「ちえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぃぃ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

辻が猿叫と共に放った斬撃が、両面宿儺の脳天を捉え、一気に頭部の半ばまでを斬り下ろす。

『ゴァァァァァァァァァァァァァァァァァっ⁉︎⁉︎』

両面宿儺は苦痛の咆哮を上げながらも、切断面に気を収束させて、辻の斬撃を止めようと全力を込める。果たして、辻の落下速度が鈍り、フツノミタマが両面宿儺の肉体に挟み込まれて止まりかけ………

「きえぇぇぇぇぇぇぇああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎‼︎」

辻が両面宿儺の首元を踏み締め、腰を落としてフツノミタマを自重と踏み込みで更に押し込み、同時に右肘と左手の握り柄頭の全てを自らの臍に集める様に手元に引き切った。

薬丸自顕流。雲耀と称される必殺の一撃が、両面宿儺の抵抗を捩じ伏せる。

 

 

 

斬撃が上から下に疾走(はし)り抜け、両面宿儺が二つに断たれた。

 

 

 

「………あはは…ひひ、はははははははは…………‼︎‼︎」




閲覧ありがとうございます、星の海です。いやはや、普段の倍近い長さになってしまいました。もう少し一話毎の展開ペースを考える必要があると痛感しました。バランス悪くて申し訳ありません。次回か、次々回で二章も終わりです。辻と刹那はなんか、もう、あれですね笑)ちなみにラストの笑声は辻のものです。それではまた次話にて。次もよろしくお願いします。

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