お馬鹿な武道家達の奮闘記   作:星の海

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原作九巻に突入です。


17話 恋路の道は険しさを増す

「………はぁ…………」

「ぬううぅ…………!」

憂鬱そうな顔で片肘を着いて溜息を吐く辻と情報誌『月間まほら』を片手に唸る豪徳寺。共通項はズバリ、私とっても困っていますのオーラだった。

「…どうしたんだ、あれは」

「…まあ、青春かなぁ?」

如何にも関わり合いになりたくなさそうな大豪院の嫌々ながら口に出した問い掛けに、最近頓にロリ吸血鬼の殺人稽古の所為か全身ズタボロな山下が心無し投げやりに答える。

「気にすんな気にすんなポチ。リア充のリア充的悩みに付き合ってやるこたぁ無え。解決した時に人生満喫組の幸せオーラに当てられて突発的に死にたくなっからな」

(はじめ)ちゃんは兎も角リーゼントはリーゼントの分際で生意気なんだよ、とやさぐれている中村である。

正味な話、五人の内殆どが何かしらの要素で気が沈むか立つかしている為に、教室内の空気も重く張り詰めている。基本的に所属している部活動やサークルが奇っ怪な他は普通に近い精神面(メンタル)を持つ麻帆良一般学生では奇人変人に割り込むだけの胆力は搾り出せない様である。

 

「おーいお前ら。ちっと相談してえ事が……なんだこの空気?」

其処へ間が悪く(良く?)入って来たのは魔法生徒が一人にして苦労人、篠村 薊である。教室内の生徒の視線が一斉に絶好の救世主(イケニエ)に注がれた。

「うぉっ!…なんだどうした何があったよ」

「丁度いい所に来たなしのっち。如何にかしやがれあの連中」

無言の圧力に思わず一歩下がった篠村に、妙にイイ笑顔を浮かべて中村が言う。

「如何にかって……何があったよ彼奴ら?」

「お前さんが自分で聞いてくれ。んじゃ頼むわ…そいやぁ‼︎」

「は?…うぉえぇ⁉︎」

 

中村が言い終えると同時に篠村の下半身を払うと同時に身体を掴んで投げ飛ばす。いきなりの暴挙に珍妙な悲鳴を上げながらも篠村は空中で身を捻って足から着地。篠村は笑顔で手を振る中村を振り向いて怒鳴りつけようとして、自分の眼前に瘴気を発している辻と豪徳寺を視認して顔を引き攣らせる。

そんな篠村の派手な着地音に反応してか、辻と豪徳寺が緩慢な動作で首を向け、篠村の姿を認めると顔が輝く。

 

…ヤバい、面倒な事に巻き込まれる……⁉︎

 

瞬時にそう判断して撤退を試みた篠村の反応は一歩遅く、閃いた二人の手に両腕を掴まれて敢え無く話を聞く羽目になった。

 

「丁度いい所に篠村!助けてくれ、俺は年頃の中学生女子がとんと理解出来なくて困ってるんだ‼︎」

「奇遇だな、辻。俺も全く同じ悩みだぜ。思春期の女ってのは何考えてんのか全く解らねえ!篠村、ちょっと相談に乗ってくれ‼︎」

「なんかこの時点で世界の中心で愛でも叫んでろと吐き捨てて帰りたくて仕方ねえんだけど⁉︎大体俺が女関連の相談役に適しているとでも思ってんのか他当たれよ‼︎」

尋常で無い力で拘束された両腕を外そうともがきながら勝手な事を喚く二人に篠村は抗議する。

「何言ってるんだ。あの扱いに難儀しそうな高音女史とその高音女史に首ったけの百合の花系女子佐倉ちゃんの二人を同時にいなして見事にグループの一員に篠村は溶け込んでいるじゃないか。お前に聞かずして誰に女の子の扱いを聞くんだよ?」

「本来ならお前のチャラついた一面なぞ参考にしたく無えんだが、今回ばかりは筋を通さなきゃいけねえ以上形振り構っちゃいられねえ。一つ女の喜びそうな連れ回し方を俺に伝授してくれ」

「喧嘩売ってんのかお前ら⁉︎俺の普段の何を見て女慣れしてるとか思えんだよ‼︎それから愛衣はレズじゃ無え滅多なことをほざくな阿呆‼︎…大体何があったかも知らんのにどうとも言える訳が無いだろうが馬鹿共がぁ‼︎‼︎」

目を剥いて怒る篠村に辻と豪徳寺は苦渋の顔で言ってのけた。

 

「桜咲が最近俺と会話所か顔も碌に合わせようとしてくれないんだ。何かあったのか聞こうとしても顔を真っ赤にして逃げるだけで一向に要領を得ない。近衛ちゃん達に聞いてもはぐらかされるし、部活の連中には囃されるしで程々困り果ててるんだ、頼む力を貸してくれ」

「那波の奴が何をとち狂ったか俺と学祭を回りたいとか言ってきてんだよ。俺は喧嘩一辺倒で女の事なんざ全く解らねえから周りに聞こうとしても、変態や朴念仁に天然ばっかで役に立ちそうな奴がいねえ。常識人にして女と普段から一緒に行動してるお前位しか頼れそうに無えんだよ、協力してくれ」

「黙れリア充共2chにでも逝って炎上してろ」

篠村が脊椎反射で冷たく吐き出した台詞にクラス全員が無言で同意した。

 

 

 

「…返す返すもムカつく。お前らマブダチなら何とかしてあしらえよ!」

授業が終わって最早日課と化している修業の為に公園へと向かいつつ、篠村がズカズカと荒い足音を立てながら苛立たし気に言い放つ。

「誰があんな面倒な状態の奴等を面倒みるものか。唯でさえ古が前にも増して俺に昼夜問わず絡んでくる所為で、筋違いの嫉妬に燃える中武研の暑苦しい連中による襲撃に苦慮しているのだ。他人の恋路にまで首を突っ込む程余裕は無い」

「だねえ、僕の方はエヴァさんが一向に稽古で根を上げない僕に業を煮やして最近じゃ動き過ぎて貧血だとかで、血まで吸ってくるもんだから貧血気味なんだ。…茶々ちゃんの鉄分補充料理は美味しいけれど正直身が持たないんだよねぇ…覚悟してた事だけどさ……あ、因みに一応言っておくけど、吸血は腕からで色っぽい要素や雰囲気の欠片も無いよ」

「俺は女の子とイチャイチャできる機会を寧ろ疎ましがる様な玉無しの根性無しなんぞにまかり間違っても手なんぞ貸さん!ああ妬ましいモゲればよかろうに‼︎大体俺は不定形娘達の様子を見に行ったりキャシーの差し入れ用に山狩りに行ったりで忙しいんじゃボケェ‼︎」

篠村はなんとも言えない表情になって道端に唾を吐く。

「…そうだそうだった。基本的にお前らフラグの立ってる勝ち組だったな……一人ド○クエのMMが魔物勧誘してんのと見分けのつかない奴はいるにしても……」

「あ?何言ってんだお前は?」

「わりかし全力で篠村に言われたく無いよね」

「同感だ」

「なんだと……?」

「というか俺達は真剣に困ってるのに茶化すなよお前ら‼︎」

「そうだ女相手っつったらお前らにする様に適当にあしらえ無えんだぞ‼︎」

そんな自覚が無いのは当人ばかりな会話の応酬を繰り広げながら、一同は定位置の公園内広場へと到着する。其処には既にネギ達3ーA組と高音、愛衣の姿があった。

「皆さん、今日もよろしくお願いします!」

「遅いわよ、貴方達。時間は有限なのだから、可能な限り効率的な行動規範(スケジュール)で動くことを心掛けなさい」

「うぇ〜い、すんませんジャーマネ。…マジに優等生って感じだなオイ」

「…面と向かっては言うなよそういう事は。プライドの高い女なんだ、ああ見えてムキになり易い」

ネギの挨拶の後に苦言を定する高音に対してそんなことを呟く中村に釘を刺す篠村だった。

 

修業が始められる前に、改めて全員が集まった段階で篠村達魔法使い組から提案が齎された。則ち明日菜や木乃香を始めとした、魔法関連の事柄に巻き込まれながらも戦闘力の無い3ーA女子達に対する今後の扱いについてである。

魔法使いの例に漏れず、新たに加わった高音や愛衣にしても、一般人を自分達の世界へ引き込む事には難色を示した。木乃香や明日菜の様に、血筋や身に付ける能力故に事件に巻き込まれた者達に対しては、今後もフォローが必要な為まだ理解出来る。しかし、魔法関係に対して元々なんの関わりも無かった正真正銘の一般人を、言い方は悪いが単なる好奇心だけで立ち入らせるのは如何なのか。というのが高音達の言い分であった。

これに対して篠村が、記憶操作等による対処は未然の事故や魔法の存在の露呈防止に対して有効な手段ではあるが、魔法使い(おれたち)は少し安易に一般人を遠ざけ過ぎではないか、と反論。

 

魔法とは魔法使いにとっての根幹を成す至高の力にして、その扱いは高度な知識と技術を要する。故に魔法を熱心に学ぼうとする者に、魔法使いは敬意を表する。

 

事件に巻き込まれる等して心に傷を負った様な者に対しては記憶を消して、関わらせないよう取り計らうのも間違ってはいないだろう。しかし単に魔法を知ってしまっただけの者の記憶まで問答無用で消してしまうのでは、何時迄経っても素晴らしき魔法を学べるのは、元々魔法に関わっている者の関係者だけではないか。

彼女らの中には、純粋に魔法へ興味と憧れを持ち、学びたいという意思を持つ者が、力及ばない自らの非力を悔やみながらも、少しでも力になれればと、熱心に学ぶ意思を持つ者がいる。

そんな人間の心意気を無視して、全てを無かったことにするのは果たして正しい魔法使いを目指す者として、相応しいことなのか?

勿論秘密の保持の為、そんな悠長な事を言っていられない場合もあるだろう、魔法使いの今迄を全て否定する気は無い。しかしこの場合はそうでは無いし彼女らがしっかりした人間で口も固いであろうことは自分が保証する。無論自分達の間だけで話を終わらせずに、何れ上にも報告して判断を仰ぐ。

だからもう少しだけ様子を見て、その上で判断してくれないか、と篠村は高音達に言ったのであった。

 

「…ですから貴方達一般生徒達に対しては、要監察付きが条件ではありますが、魔法に関わる事に対して目を瞑ろうと思います。…あくまでこれは私達魔法生徒の暫定的な方針ですので、改めて組織内で問題となった時は記憶を消されて、日常生活に戻らなければならないことも覚悟しておいて下さい」

高音の宣言にのどかや夕映達は戸惑い、顔を見合わせる。その様子を見て申し訳無さそうにしながらも、傍の愛衣が補足する。

「…こちらの対応を一方的で理不尽に思われたならすみません。でも魔法の秘匿は、それだけ魔法使いにとっては大事なんです。本来ならば一般人が魔法の存在を知った場合、無条件での記憶改竄が魔法使いの間では義務付けられています。皆さんのお気持ちも事情も理解していますけど…」

「大丈夫です、佐倉さん」

愛衣の言葉を途中で遮り、夕映が安心させる様に告げる。

「元より無理を言って輪に加えて頂いているのは理解していました。全て無かったことにされるのを良しとできるか、と問われれば、納得するのも現時点では無理ですが、お気持ちと温情は有難く思うですよ」

「あ、あの…ありがとうございます」

「…礼には及びません。そこの私達を説得した男に言っておあげなさい、宮崎さん」

慣れない他人との会話からか、やや吃りながらも感謝を告げるのどかに、些か苦い顔をして高音が言う。

「三人で考えての結論だ、誰が特別良いことした訳でも無えよ。…まあ兎に角この場の全員が何かしらの特訓をする事に異論は無くなった。そこで、だ。折角こうして俺の他にも魔法使いが来て監督側の人手も増えたことだし、これからはより個人個人に合わせた鍛錬をさせようと思ってな」

篠村の言葉に一同が首を傾げる。

「個人に合った鍛錬…って例えばどんなことするのよ先輩?」

怪訝そうに尋ねる明日菜に対して、篠村は我が意を得たりとばかりに頷いてビシッと明日菜を指差し…高音がその指を払い落とす。

「人を指差すのは止めなさい、それでも年長者なの?」

「高音お前……」

何とも嫌な顔で笑っている辻達を篠村は思い切り睨み付けてから、咳払いを一つして仕切り直す。

「まさに神楽坂、お前さんは鍛錬内容要見直しの筆頭なんだよ」

「………え………?」

 

魔法無効化能力(マジック キャンセル)……?なんなんですかそれ?」

明日菜が戸惑った様子で聞き慣れぬ言葉の意味を尋ね返す。

「あの爺い悪魔が言ってたろ?神楽坂の能力(ちから)を使って桜咲の攻撃を防いだって。あの夜に爺いが魔法具によって間接的に使用していたのが神楽坂、お前の持つ魔法無効化能力(マジック キャンセル)の力なんだよ。お前は、己に向かう魔法や気の類いを完全に消失させる体質なんだ」

「……あたしが………?」

「で、でも篠村さん。魔法無効化能力(マジック キャンセル)は確か、魔法世界(ムンドゥス マギクス)を含めても数人しか能力所持者が確認されていない、極めて希少(レア)な能力の筈です。本当に明日菜さんが、そんな力を……?」

篠村の説明に、ネギが驚いた、というよりは信じられないという様子で言葉を返す。

「俺も真逆とは思ったが調べてみた所本当(マジ)だった。あの事件の後に神楽坂達攫われた人間は一通り魔法的な呪縛や霊障の類いが残されていないか確かめたからな、神楽坂にはその際に本体へ害を成す類の魔法が一切発動しない事が判明したんだよ。…正真正銘、本物の魔法無効化能力(マジック キャンセル)だ」

篠村はネギの疑問に断言を持って返し、高音や愛衣も難しい顔で頷く。

 

「……そういやそれらしい現象に心当たりがあんな………」

「うむ。あの白い子供の障壁を突破したのはアーティファクトの力だけでは無かったということか…」

豪徳寺は黒衣の青年(リベリオン)に打ち込まれた火炎魔法から明日菜を庇った際に、明日菜は衣服以外に一切被害が及んでいなかった事を思い出し、大豪院も白髪の少年(フェイト)を打倒する決め手になった明日菜の一撃を同様に浮かべていた。

「……えっと、要するにあたしは魔法とかそういうのが効かないってことなんでしょ?それってそんなに凄い事なの……?」

明日菜が今一事の大きさが解っていないという顔で篠村達に尋ねる。

「凄いも何も…魔法無効化能力(マジック キャンセル)者は私達魔法使いの言わば天敵ですよ。貴女の前では魔法という超常の力を振るう優越種…失礼、古い選民思想的な言葉を使ってしまったわね…魔法使いは只の人、場合によってはそれ以下と成り果てるのだから」

魔法世界(ムンドゥス マギクス)で公式に活躍している魔法無効化能力(マジック キャンセル)者の方は皆優れた戦士であったり対魔法使い(キル ウィザード)をしてらっしゃるんです!神楽坂さんは能力を極めれば世界有数の実力者になれるかもしれない力を秘めているんですよ‼︎」

「……う〜〜ん…………」

明日菜が一つ唸って腕を組み、頭を傾げる。花の女子中生には少々住んでいる世界の違い過ぎる話だったらしい。

「…まあ実感湧かないのも無理は無いが……神楽坂、お前はまた何かあった時に、ネギ先生の力になりたいから鍛えてんだよな?」

「…んー面と向かって言われるとなんか照れ臭いけど、まあ、そうよ。あ、後最近はネギに負けず劣らず辻先輩達も無茶するから、先輩達の為にも、っていうのもあるかも」

篠村の確認に、明日菜はほんのり頬を染めながらも頷き、答える。

「…へっ、泣かせるじゃねえかよ明日ニャン」

「泣かなくていいわよ、あんたは理由に入ってないから、変態先輩」

「あんだとコラァ⁉︎だぁーいぅ意味だてめえぅるぁぁ‼︎」

「日本語喋りなさいよ‼︎日頃の行いが理由に決まってんでしょこのセクハラ男‼︎…で、それがどうしたのよ、先輩?」

尚も何か喚こうとした中村が辻と山下のツープラトンで頭から落とされるのを横目に、明日菜が尋ねる。

「ああなんだ、それならそれで辻に剣道だか剣術だかを習うよりも先に、貴重な才能を鍛えてみないか、って提案だ」

 

 

空中に複数の魔法の射手(サギタ マギカ)があるものはゆっくりと円運動を、あるものはピタリと静止してそれぞれ浮遊している。その中心には明日菜が立ち、難しい顔で周囲の光球を睨んでいた。

「神楽坂ー、さっき一、二発ぶつけた魔法の射手(サギタ マギカ)を掻き消した時の感覚を思い出せ。何分文献が少な過ぎて能力行使のアドバイスは出来ないが、自分を害する魔法を無意識にしろ無効化している以上お前は能力を使ってる(・・・・)んだ。心配しなくてもお前に魔法は効かない。怖がらずに落ち着いて集中しろー」

「解ってるわよー………ねえ先輩ー、本当に離れてる(・・・・)魔法を消す(・・)なんてこと出来るわけ?」

助言を送る篠村に答えた明日菜だが、取り組む姿勢は何処か懐疑的である。

「まあいきなりはまず無理だろー。魔法無効化能力(マジック キャンセル)能力者は何れも接触した魔法・気の類は消せるらしいが、自分から離れた所にある魔法を消せるようになるには余程訓練を積まなきゃ出来ないらしい。兎に角出来るってことは判明してはいる。成果が見えなくても拗ねたり焦ったりしないことだー」

「了ー解。まあやってみるわよー」

言って明日菜は再び己から最も近い場所をゆっくり移動している光球に視線を戻して唸り始める。

図らずも悪魔(ヘルマン)から判明した明日菜の能力(ちから)。篠村達は、もし上手く発言出来れば対魔法戦において大きな力となるであろう魔法無効化能力(マジック キャンセル)を何とか習熟させられないかと考え、魔法世界(ムンドゥス マギクス)に散逸する資料を組織の電子媒体を検索。調べた内容を明日菜に伝えての訓練を開始していた。先例が少な過ぎる故に些か以上手探りな方法ではあるが、試してみるだけの価値を篠村は感じていた。

 

その他、篠村の手が空かない故に中々本腰を入れて教えられなかった夕映、のどか、木乃香組には愛衣が基礎中の基礎、魔力の発現を。

篠村よりも座学方面全般で優れた知識を持つ高音が、ネギに有用な魔法習得の為の選択講義を行うと同時に、バカレンジャー及び楓、古、小太郎らに魔法戦闘においての従者(ぜんえい)の定石を叩き込んでいた。

なお、高音と愛衣が加わっても今だ教育方面の人手が不足している為に、基礎的な講義の必要無い刹那が千鶴に対して一から魔法、麻帆良の魔法組織、現在に至るまでのネギ達の経緯等を、情報収集及びその編集を得手とする朝倉を交えて説明していた。

 

 

「「「プラクテ・ビギ・ナル……」」」

「ええと、漫然と力ある言葉を唱えずに己の中にある魔力の存在を意識してそれを杖に対して集めて、詠唱によってその魔力を弾けさせる様なイメージをしっかり持って練習して下さい!」

やや辿々しいながらもポイントを押さえた愛衣の指導に夕映達は頷き、己が中の()を意識する。

 

まず魔法を習得しようとする者が初めにぶち当たる壁が、己の魔力を感じ取る事であり、人によってはこれを成すのに半年以上を要する者もいる。それだけ今迄意識していなかったものを意識するのは難しい、ということであり、本来ならば全くの素人である筈の夕映達が一朝一夕に成し得る事では無い。

しかし、夕映達は既に最初の壁を乗り越え、己が中の魔力を現象(・・)として現そうとする段階に入っていた。何故ならば夕映達は、所属する部活(・・・・・・)において魔力を感じ取る訓練を入部した中学一年生の頃から、既に二年以上も続けていたからだ。

 

「それにしても、皆さん凄いですね…事前にお兄様から少しだけ指導を受けていたといっても、こんなに早く魔力を感覚として捉えられる様になるなんて普通じゃ考えられません。幼少期から魔法による治療や検査の一切を受けていない皆さんは、身体が魔素に晒されて感じ(・・)を掴んでいない分、魔法学校の初等生よりも更に条件が厳しい筈なんですが……」

驚きを通り越して疑念を抱き始めている愛衣に、心当たり(・・・)のある三人は慌ててフォローに掛かる。

「え、え〜とそれはやなぁ〜そう!篠村先輩の教え方がえらい解り易かったからなんよー、なぁ夕映ー⁉︎」

「そ、そうなんです‼︎先輩の指導は的確且つ理解し易く、私達にたちまちコツを掴ませてしまったのですよ、佐倉さん!殆ど私達に時間を割く事は出来なかったというのに、努力の人とはあんなにも深く取り組んでいるものの事を知り抜いているものかと感動したものです、そうですよね、のどか‼︎」

「ふぇ⁉︎あ、う、うん、そうなんだ、佐倉さん。し、篠村先輩って、本当に凄い人、だね……?」

三人揃って慌てふためきながら不自然な程に篠村のことを誉め殺す様は、誰がどう見ても怪しいものだった。しかし、佐倉 愛衣という少女は基本的に育ちが良く素直な娘であり、そして篠村を心の底から尊敬していた。

「…そうですか……!やっぱり、やっぱりお兄様は素晴らしい人なんですね…‼︎ネギ先生の指導でお忙しくしていられたのに、皆さんへの指導もこれ程までに熱心に……しかも短期間でこれ程の成果が!お兄様に才能が無いなんて宣った見る目の無い魔法使い達に、この光景を見せてやりたいです‼︎」

感極まって涙ぐんでさえいる愛衣の様子に、多分に気まずい心持ちでひそひそと囁き合う夕映達。

「…どうしましょう、今更嘘でした等とは口が裂けても言えない具合になっていますが……」

「こうなったらウチらが頑張って嘘をホントにするしかないなぁー…」

「…部活で練習してた、なんて言っても、信じて貰えないと、思うし…「皆さんっ‼︎」…ひゃっ⁉︎」

言葉の途中で愛衣が上げた大声にのどかが小さく跳ねる。

「お兄様の心意気を無駄にしない様に私も全力で皆さんのサポートに取り組みます‼︎先ずは魔力を、使う魔法の燃料(・・)として使える様にイメージを明確に持って行きましょう‼︎」

「り、了解や愛衣ちゃん……」

張り切る余り怪気炎を身体から立ち昇らせる愛衣に、引きつった顔で木乃香が返事をした。

 

 

「…ですから先生。篠村から出足の早い魔法の射手(サギタ マギカ)関連の技術を習得し、また雷系統の上位精霊魔法が手札として有る現状、必要なのは比較的詠唱時間が短く、且つ威力又は掃討力の何れかを持つ取り回しの広い、応用性ある魔法なのです。私としては先生の潜在能力を鑑みて、上位古代語魔法(ハイ エイシエント)の習得にそろそろ取り掛かっても宜しいかと。先生の手持ち魔法は属性系統がやや偏り過ぎですので、主に習得している雷の他に適性の高い風、光系統のどちらかをお勧め致します」

「はい……!」

淀み無くネギの戦力分析から今後の方向性迄を語る高音の言葉を真剣に聞きながらメモを取るネギ。

 

「…はあ〜よくも自分以外の魔法使いの能力から傾向までこれだけ理解、分析して的確にアドバイス出来るもんだぜこの姉さん。篠村の旦那の、『ある分野に関しては天才であり尚且つ勤勉な秀才』ってな評価に偽り無しだな。……に比べてこっちはなぁ……」

高音の能力に感心したカモが一転して微妙な目線を向けるのはバカレンジャー(中高合同ver)+小太郎達に対してである。

 

「…何なんだよこの分厚い鈍器は……」

「専門用語が多過ぎて内容頭に入ってこねえぞ……」

「…っていうか所々ラテン語のまま翻訳されて無いんだけど…」

「明らかに俺達の戦闘技法とはかけ離れたものが大半なのだが本当に全て読み解く必要があるのか…?」

「…まず俺は表紙に貼られている『ラテン語学必修』の付箋にツッコみたいんだが……」

「…古、生きているでござるか…?」

「……駄目アル…………」

「…ちゅうか何で俺まで………」

辻達は広辞苑程もありそうな分厚い資料の束を相手に頭から煙を上げていた。

「情けないですね大の男が揃いも揃って。ネギ先生や愛衣はおろか篠村でも内容の一通りは理解していますよ。その資料はあくまで近接戦闘を行う魔法使いの間での最低限(・・・)の知識です。この段階で音を上げている様では到底この世界ではやっていけませんよ?」

あまりの醜態に高音がネギへの解説を一時中断して声を掛ける。その声色には多分に呆れた響きが含まれていた。

「五月蝿えよ!大体なんで俺らがこんなもん学ばなきゃいけねえんだ俺らぁ魔法使いじゃ無んだぞオイ‼︎」

中村が堪らず吠えたてる。が、高音は柳眉を逆立て逆に中村を怒鳴りつける。

「お黙りなさい!貴方達は魔法関係者としてこれより魔法を当然とする裏の世界に関わる身です‼︎貴方達は魔法に関して無知である以上、貴方達が早急に取り入れなければならないのは魔法に関する知識でしょう‼︎ネギ先生があれだけ熱心に取り組んでいるのを見て己を恥ずかしく思わないのですか⁉︎…先程ラテン語を学ぶ意義が解らないと言いましたね?貴方達が魔法使いと対峙して戦闘になったとします。その時に相手の唱える魔法の詠唱が理解出来るのと出来ないのとではどちらが有利かなど論ずる迄も無いことでしょう?」

「…ぬぅ………!」

理路整然とした反論に、中村は文字通りぐぅの音も出ない。

「貴方達が下手をすれば私達と同等かそれ以上に強いのは解ります、しかし何時迄も無知なまま場当たり的な対応で凌いでいける程、魔法使いとは甘い存在ではありません。ネギ先生の為に闘い、導くと言うのならば、先ずは教える側として足りないものを補ってみせなさい。学べば済む欠点を面倒だからと放置するならば、遠慮無く私はネギ先生に関わる資格無しと、上の方に報告させて頂きますが、如何しますか?」

高音の宣告に、辻達は不敵に笑い、姿勢を正す。

「上等だDグ○イマン。そうまで言うならやったろうじゃねえかよオラァ‼︎」

「啖呵を切られて黙って引き下がる様じゃあ漢が廃るってもんだぜ」

「仰る事はごもっとも。泣きごと言ってないでやろうか、うん」

「少々気が抜けていたようだな。仮にも師として恥は晒せまい」

「…じゃあ大変そうな語学習得は一先ず置いて、資料(これ)読み解こうか……」

その切り替えの早さに、高音は満足そうに頷く。

「良い心掛けです……私や私の親類にエクソシストは居ませんからね」

「ジ○ンプ読んでるアルか⁉︎」

「貴女が読むのはその資料です…長瀬さんでしたか?分身を置いて逃げないように」

「ふぐぅアル〜〜………」

「ござっ⁉︎」

ツッコミを鋭く切り替えされて沈む古とインチキを見抜かれ動揺する楓であった。

 

「…おい小太郎、読み飛ばすなよそんなに進んでる訳無えだろ?」

「生憎やけど俺姉ちゃんに叩き込まれてこういう基本はある程度頭に入っとるんや」

「………何?」

 

因みに、意外にも一番この場で知識を備えていたのは、打倒西洋魔術士を謳っていた千草の力になる為、苦手ながらも小さい頃から勉強を重ねていた小太郎だった。

 

 

「…俄かには信じ難い話ねえ」

千鶴は説明の一段落した後、感心した様な呆れた様な声で刹那と朝倉に言う。

「まー那波さんからすれば何だか解らない内に巻き込まれて、その直ぐ後にこんな荒唐無稽な話されても正直訳解らん、って感じだろうから一気に理解しようとしなくていいと思うよ私は。麻帆良の非常識っぷりを常日頃の取材で嫌という程理解してる私からしてもこれはとびっきりだもん」

ペラペラと魔法関連の情報が記載されている手帳を捲る朝倉が苦笑気味に笑って忠告する。実の所自分達の暮らす学園都市は魔法使いの組織が治めていた等、普通の人間が聞いたら与太話も程々にしろ、の一喝で終わりである。困惑しながらも質問を挟み、理解しようとしていた千鶴は相当にマシな部類だろう。

「ふふ、それにしても先輩達は凄いわねえ。巨大な組織の陰謀に囚われそうになっている少年を助ける為に自らの身を投じて守り抜こうとする、なんて不謹慎だけど物語の主人公みたい」

「…まあ纏めると何処のラノベか漫画か此処はって私も思ったけど……」

「…私は寧ろ最近、麻帆良(ここ)は色々おかしいと気付き始めましたのであまり動じていない那波さんの態度には納得半分ですが……」

「理不尽めいた気持ちも半分、かしら桜咲さん?…最も表情が妙に張り詰めて見えるのは別の原因みたいだけど……?」

後半にからかう様な響きを乗せた千鶴の言葉に、ギクリと身を強張らせる刹那。そんな刹那をニヤニヤと笑み崩れながら朝倉が追撃を掛ける。

「んっふっふー、桜咲ってばとうとう辻先輩にフォーリンラブなの自覚しちゃったもんねえ?どうなのさ彼処でさっきネギ君の為に、ってキリッと宣言した辻先輩を見て?惚れ直しちゃった桜咲?」

「惚れっ…⁉︎ち、違います私はあくまで、そうです辻部長が男性としても魅力的な方だと再認識しただけでして……‼︎」

「いや言い訳になって無いからそれ。要するに彼氏を作るんだったら辻先輩がいいって事でしょ?」

「あらあら青春ねえなんだか」

何やら生暖かく微笑み合う朝倉と千鶴に刹那は顔を真っ赤にして抗議(むだなていこう)をする。

「だ、大体私は木乃香お嬢様をお守りするという使命があります!恋愛などに現を抜かしている暇は…!」

「ああ無駄無駄。他ならぬそのお嬢様が全力で桜咲と辻先輩の仲を応援するから」

「ぐっ……!…そ、そうです‼︎辻部長が私等に心動かされる事があり得ない以上私が騒いだ所で如何にかなるものでは‼︎」

「…桜咲さん?その言葉を本気で述べているのなら私桜咲さんを脳の医者に連れて行かなければならないんだけど……」

「な⁉︎何故です⁉︎」

「何故も何も無いでしょーが‼︎辻先輩意外にアンタの婿が居るとでも思ってる訳桜咲ぃ⁉︎」

「…そ、そそれなら那波さんはどうなんですか⁉︎豪徳寺先輩と何やら非常に親しげにしていたと伺っていますよ⁉︎」

追い詰められた刹那は苦し紛れに千鶴へと矛先を逸らそうとする。

「…桜咲〜、そんな見え見えの話題逸らしに誰も「ええ、豪徳寺先輩とは今度学祭巡りを御一緒する予定なのよ」…ええ⁉︎」

何やら魔法関連の裏事情そっちのけで恋バナ?に盛り上がる三人だった。

 

 

 

「あー結局何も成果は出なかったわねえ……」

「気にすんなや明日ニャン。試みてからまだ初日だろ?成果が出る方がおかしいべや」

 

「明日も朝から時間を作りましょう‼︎皆さんなら学祭迄に初級魔法の発動に成功するかもしれません‼︎」

「愛衣、余り気負い過ぎないように……駄目ね、聞こえてないわ。…篠村!貴方愛衣に一体何をしたのか今直ぐ言いなさい‼︎」

「何でお前は愛衣になんかあったら俺が原因だと決め付けんだよ⁉︎俺はずっと神楽坂に付いてたろうが何か出来る訳あるかぁっ‼︎」

「私、お兄様の心意気を無にしない為にも頑張ります‼︎」

「…やっぱり貴方じゃない‼︎」

「何でだよオイ⁉︎」

 

「あ、あわわわわ………!」

「あー…いらんとばっちり被せてしもたなあ……」

「篠村先輩、申し訳ありません…元凶として名乗り出はしませんが」

 

「いやー先輩、学祭デート頑張ってね、那波さん満足させるの大変だと思うけどさ?」

「お前に心配される筋合いは無えよ‼︎那波ぁ!お前はお前で話広めんな‼︎」

「あらあら先輩、別に悪いことをしている訳では無いのですから宜しいではないですか」

 

「今日も行くのか、山下?日増しに生傷が増えているぞ、本当に大丈夫なのか?」

「ん、大丈夫大丈夫。キツイはキツイけど手応えも有るからやめられないさ。…それに、偉そうな言い方になるけれど放っておけないんだよねえあの人…じゃない吸血鬼。曲がりなりにも問題提起したのは僕だから、さ」

 

「うぅ〜充実した修業出来るかと思てたのになんで勉強アルか〜……」

「首を突っ込むには実積や実力だけで無く知識も必要、という事でござるよ。気が進まんのは接写も同じでござる」

 

「せっちゃん、このままじゃ色々あかん事位解っとるやろ?那波さんを見習ってGOやGO!」

「お、お嬢……このちゃん無理、無理です私には⁉︎というか辻部長に聞こえますもっと小さな声で……‼︎」

 

「……桜咲の距離感が最早初めの頃よりも遠いんだが……俺何かやらかしたかなぁ………」

「うーん……やっぱりあの悪魔達に攫われてからああいう状態になったんですから、その時に何かあったと考えるのが妥当だと思いますね…」

「……いや兄貴、辻の旦那もよぉ………」

「カモ言うたか、無駄や無駄。新参者の俺がパッと見て解るもんが解らんなら辻の兄ちゃんは相当なニブチンや。ネギはまぁ、ガキやからやろ」

「そんなに変わんねーだろ小太郎の方も」

 

兎にも角にも高音達を加えての修業初日を終え、一同は喧々囂々に騒ぎながらも帰路に就く。

 

「じゃ、皆また明日ね」

山下が軽く手を振り、エヴァンジェリンの家へと続く小道で一同と別れる。

「気ぃつけろよ山ちゃーん!自分で解ってっと思うが下手こくと死ぬぞマジで‼︎」

中村の忠告?に後ろ手を上げ、山下は歩き去る。

 

「…本当に大丈夫かあいつは?」

「…闇の福音(ダーク エヴァンジェル)に師事を仰ぐ等気が狂っているのかと思いましたが……」

「それに関しちゃ俺もお前と同意見なんだが…こいつらによると俺らが想像してるより話が解んだとよ、悪党だが悪党故の義理は通す…だっけ?」

「ある意味俺達が道を突き詰めるか誤るかした末の姿…と俺は思うからな。考えるよりも遠い存在ではないぞ、あの女は」

理解不能、といった感の高音に篠村が同意しながらも注釈を入れ、何やら複雑そうに大豪院が告げる。と、話している者達をさて置いて、辻がフラリと道を逸れ、エヴァンジェリンの家がある方面とは逆の森へと足を踏み入れる。

「あれ?辻先輩何処行くの?」

「…ちょっと身体を動かし足りないからさ。主さま(・・・)に挑む気は無いけど、少し森を巡って来るよ。皆は先に帰っててくれ」

明日菜の疑問に辻は普段の彼からすればやや素っ気ない様子で答え、歩みを進める。

「オイオイ山ちゃんの無茶が移ったかよ(はじめ)ちゃん止めとけって。そっちはよりにもよってヨルムンガンドの縄張りだぜあのデカ蛇唯でさえ容赦無えんだから、半年前にプロレス研の部長が全身複雑骨折で郊外の細道に放り出されてたの忘れた訳じゃ無えだろに」

「そうだそうだ、この前の爺い悪魔達程じゃ無えにしてもそれに準ずる位には強えぞ麻帆良四大魔獣は」

「だからどんな魔境だよ麻帆良(ここ)は⁉︎」

唐突な辻の宣言に中村と豪徳寺が止めに入り、日本の学園内を語っているとは思えないその説得内容にカモが絶叫地味た声でツッコミを入れる。

辻は二人の言葉にも足を止めず、呟く様に告げる。

「……ちょっとした気分転換だよ。俺の難儀な性分(・・・・・)だ」

それを聞き、バカレンジャーの面々の顔が僅かに緊張を帯びる。が、それも一瞬の事で、大豪院が他を遮る様に応じて辻を行かせに掛かった。

「解った、余り無茶をするなよ?」

「ああ。…また明日な、皆。…桜咲」

「は、はいっ⁉︎」

唐突に掛けられた声に裏返った声で返してしまう刹那。

「…すまんが明日、部活の朝練は欠席する。副部長達(バカ共)にそう言っておいてくれ」

「……わ、解りました」

真面目な辻のサボタージュ宣言に、刹那は訝しく思いながらも返事を返した。頼む、と短く応じて森の中に入っていく辻を黙って見送った一同だったが、辻の姿が見えなくなると、帰路を歩みながらも会話を再開する。

 

「…何か、様子がおかしく無かたアルか、辻は?」

「仕方が無いのだ、古。桜咲後輩がヘタレて辻を避けた所為であの鈍い男は自分が何か仕出かして避けられているのかと傷心なのだから」

?マークを頭に浮かべながらの古の疑問に、嘆息交じりに大豪院が返す。

「な⁉︎違いますよ!何で私が原因なんですか‼︎」

「桜咲よぉ鈍いもそこ迄行くと犯罪だぜまあ辻も他人の事言えねえからこの場合お互い様だけどよぉ」

心外な様子の刹那に半眼で中村がツッコみ、当然とばかりに他の面々も刹那を追撃する。

「せやせやせっちゃん、辻先輩ナイーブなとこあるんやから一旦距離置くにしてももっとさり気無くやらんと〜」

「やっぱり早目に学祭で蹴りを着けた方がいいな。というか見ていてイライラするからさっさとくっつけよお前ら二人」

「何なんですか皆さん揃って⁉︎」

「いや刹那さん、この学祭で乙女の大半は腹を括らなきゃいけないのよ。…そう、あたしもね…………」

「な、なんだか神楽坂さんが沈んでますよ⁉︎」

「無自覚ラブラブカップルの余波喰らって己の現状を思い出して死にたくなってんだよ!お前らみたいな奴等が居る所為でモテない男が苦渋を噛みしめるんじゃあ‼︎」

「五月蝿えぞ馬鹿急かす様な真似ばっかすんな‼︎」

ギャアギャアと此処の所顔ばかり赤くしている刹那を中心に言い争う面々を見やりつつ、夕映は蚊帳の外で首を傾げる。

 

……有耶無耶にされた感がありますが、辻先輩は何をしに森へ……?

 

大方腕試しという名の謎生物との大乱闘なのだろうが、普段口数の少ない大豪院までもが積極的に茶化しに行き、誤魔化しに掛かったのが夕映にはどうにも気になった。

「…まあ、いいです。のどか、遅くなりましたが学祭の準備に参加しましょうか、後の日数から言って余裕がありません」

「う、うんー…」

 

 

 

 

 

 

一見して緩やかに動いている様に見える少女と青年の動きは、然し無駄な動作や無理な動きをした瞬間相手に絡め取られ、叩き落とされて致命傷を負いかねない、悪手(ミス)の許されぬ詰め将棋にも似た緊迫感溢れる手合わせだった。

 

「…面倒な男だ。幾ら元の才覚が違うとはいえ短期間で此処まで腕上げおって」

 

踊る様に身体を回し、片手に掴む山下を己から左側へと流し、山下が反射的に倒れまいと踏ん張った瞬間に急制動。己の右側へと全く逆の回転を掛け、両足から片足に偏り(・・)、重心の上がった山下をまるで玩具の様に浮かせて(・・・・)投げ落とす。

片手での変形空気投げの様な技で容赦無く山下を地面へと叩きつけたエヴァンジェリンは、振られた遠心力を利用して腕を切り、転がって受け身を取って跳ね起きた活きの良さっぷりを見て、ウンザリした様に呟いた。

「そんな事を言われた直後にこうも軽々と投げられてたんじゃ僕はちっとも褒められた感は無いんだけど?エヴァさん」

擦り傷塗れの泥塗れな山下は、しかしへたばった様子も無く苦笑と共に返す。

「褒めていないのだから当たり前だな……少し休みだ。元気の良さと才能ではお前に軍配を上げてやるよ、山下」

鼻を鳴らしてそう言ってのけると、エヴァンジェリンは傍らに控えていた茶々丸からタオルを受け取り、軒先のベンチに腰を降ろす。

エヴァンジェリンはそうか休憩かいやあ流石に疲れたねえ、と快活に笑いつつ身体中の汚れを払い落としている山下を睨む様に見やり、山下の動きが一段落した所で声を掛ける。

「…貴様はよく平気な面をしているな」

「うん?何がだいエヴァさん?稽古の事なら最近は骨折や脱臼も無くなってきたから寧ろやる気満々なんだけど?」

「それもだが違う。…仮にもすっぱりフッてやったというのにその後も顔を出して剰え稽古の算段まで取り付けて。好意の欠片も伺えぬ位に痛め付けてやっても辛そうな顔もせん。…貴様洒落や冗句のつもりで私に想いを告げたんではあるまいな?」

「………うん?」

山下は首を傾げ、エヴァンジェリンから放たれた言葉を脳内で反芻する。

 

……僕は何時エヴァさんに告白をしたというのだろうか?…………

 

何かの比喩表現かな?と思いつつもエヴァンジェリンの様子が真剣そのものなので、真面目に答える山下。

「エヴァさんとの稽古が辛く無いのはまあ、強くなる為に自ら望んで来たからだねえ。僕らは鍛錬と称して殺し合い地味た手合わせまでやったこともあるから、傷や痛みじゃ嫌にはならないよ。成果が出ない方がよっぽど御免だしねえ」

「…私が聞いているのはそういった事じゃ無いのは理解(わか)るよな?」

イライラした調子でエヴァンジェリンは先を促す。

 

「おっかないなあ。……まあ、あれだね。エヴァさん例え男をフるにしてもそんな遠回しなやり方しないで直接口に出してフるでしょ?約束反故にはしなくてもそれはそれとして宣言するよね多分?」

「………………、ちっ……!」

 

だから芯から嫌われてるとは思って無いねえ、と笑う山下を見て心底忌々し気にエヴァンジェリンは舌を鳴らす。

 

「オーゴ主人若エ男トイチャツイテ楽シソウジャネエカ羨マシイゼ」

「いやー照れるね零さんははは」

「腐っとんのか貴様の目玉は‼︎山下貴様も反応するなというか否定をしろ阿呆‼︎」

ケケケと笑いながらからかいに走る茶々零とのほほんと笑う山下を同時に怒鳴りつけるエヴァンジェリン。

「オイオイゴ主人俺ノ目玉ガ腐ル訳無ーダロ人形ナンダカラヨ、熱デモアンノカ?」

「よし今日こそ粉々にしてくれる其処に直れ毒舌人形‼︎」

山下は全身から魔力を垂れ流すエヴァンジェリンと笑い続けながらも長大な鉈を取り出した茶々零を見ながら笑みを溢し、傍らの茶々丸に話し掛ける。

「エヴァさんと零さんは仲が良いねえ茶々ちゃん」

「はい、姉さんはマスターがまだ若く未熟であった頃から苦楽を共にして来た一番最初の家族だと、前にマスターが言っておられました」

無表情な中にも何処か身内を誇る様な喜悦を滲ませ、茶々丸は答える。

「…そっか……」

 

……最初(・・)の家族か…………

 

吸血鬼には親って居ないものなのかなあ、と山下はぼんやり考えるが、何とは無しに違うと感じていた。

 

……超歳上の女性に対して失礼なものの見方だけど、家庭環境碌でも無かった人間が挙句に致命的に身内との関係拗らせて終わった人間特有の人格してるもんなあ、エヴァさんって…………

 

麻帆良にキワモノが多く出揃っているのは一部の麻帆良人達が良く知る事だが、そのキワモノ達は何の理由も無く、自然と麻帆良に集まり行く訳では無い。

何かが突出してしまった人間で周囲と上手く折り合ってその場で生きていける人間は、思うよりもずっと少ない。変わり者の集う街(麻帆良)には、望んで来る人間と来ざるを得ない人間が存在するのであった。

ある意味でそんな強烈で外れた人間の筆頭、麻帆良武道系部活のお歴々とつるんで来た山下には、エヴァンジェリンの頑なな態度は見覚えの無いそれでは無かった。

 

……まあそんな事例の中でもとびっきりの何か(・・)なんだろうけどね、この女性(ひと)は………

 

ギャアギャアと言い争うエヴァンジェリンの横顔を見つつ、山下は問いを放った。

 

「エヴァさん、エヴァさんはナギさんの事、どうするか決めた?」

それまでのピタリと動きを止め、エヴァンジェリンは山下を睨み付ける。その表情には少なからず苛立ちと怒気が滲み出ていたが、山下は怯まない。

「…貴様は何故それを気にする。よしんば理由があったとして私がお前にわざわざ教えてやる義理があるのか?」

「つれないなあ。……まあ何故かと言われれば問題提起をしたのは僕だからねえ、悩みの元凶はナギさんでも悩みの原因は僕だから気にするのは当然だと思わない?…それと、答えが決まってるなら僕に語る必要は確かに無いねえ。だから決まってるならいいよ、僕に馬鹿めと吐き捨てて我が道を進んで下さいなエヴァさん。唯決まってもいないのに僕を黙らせる為だけに嘘は吐かないで欲しいかなあ」

他ならぬ貴女の言葉が安くなるからね、と微笑む山下をエヴァンジェリンは無言で見やり。

 

「…私はナギが爺いになる前に見付け出し、私のモノにする。答えは変わらん」

 

顔を歪めながらも意外に静かな口調で山下に告げる。

「あ、教えてくれるんだ?」

「訊いておいて何だ貴様は。ほら満足かフラれ男?」

だから僕何でフラれたことになってんのさ?と首を傾げながらも、山下は尚問いを放つ。

 

何だか今の彼女は見ていられなかった(・・・・・・・・・)から。

 

「気を悪くしちゃうのを承知で言うけどフラれ女はそっちもでしょ?略奪愛でもかますのかいエヴァさん?」

本当に遠慮の無い山下の言葉に小さく青筋を浮かべながらも、エヴァンジェリンは答える。

「だったらなんだ?みっともないから止めろとでも言いたいのか山下 慶一?」

「いいや。愛情に貴賤は無いと思うしこの場合悪いのは男の方だし。そうしたいなら好きにすればいい、と僕は思う。…けどねえ……」

「何だ?」

またもイラつき始めるエヴァンジェリンに、山下は暫し迷った後に言い放った。

 

「エヴァさんってそもそも、幸せになりたいって思ってる?」

 

「……っ‼︎……………」

透徹した眼差しと共に叩きつけられた言葉に、エヴァンジェリンは何故か激しく一つ、動かぬ筈の心臓が鳴り響いた様な錯覚を覚えた。

「…何を……」

透けて見える(・・・・・・)んだよねえ、悪いけど。諦念と惰性って奴が。出会った頃の親友と、その親友の未来の嫁さんが最近までしていた顔だからよーく解るよ」

山下はエヴァンジェリンの抗弁を遮り、先を続ける。何時の間にかその顔からは笑みが消え、何処か不愉快そうな表情が浮かんでいた。

「エヴァさんにナギさんしか居ないだけならまだ(・・)いいさ。気に入らない答えではあるけれど僕の意見はそれこそどうでもいい。半ば貴女の愛情(それ)が惰性に見えようと貴女がいいならそれで良い。後になって苦しみを得ようと、貴女は受け入れて進むだろうからね」

唯、と山下は遂に睨み付ける様に眼光鋭く、エヴァンジェリンを見て告げる。

 

「貴女が幸いを得ようとしていないのははっきり言って無いだろう。貴女はそんな投げやりな生き様で愛する男に共に生きようと告げるのかい?愛する女性(ネギ君のお母さん)が側にいるかもしれない男に対して?……だとしたらその様で愛なんて語らないでくれよ、エヴァさん。幸せになりたくないのに惚れた男を探そうなんて、そんな巫山戯た真似は自分自身すら救えないから」

 

言い終えた山下の頬を何か(・・)が掠め、後ろの芝生を抉り取る。

「黙れ糞餓鬼」

エヴァンジェリンが凍える瞳で山下を宙から見下ろしていた。全身からは膨大な魔力とそれ以上の殺気が溢れ、山下を腹の底からの悪寒が襲う。

 

「少しばかり相手をしてやった程度で訳知り顔で私の理解者気取りか?巫山戯ているのはお前の方だ小僧。私の、何が、解る訳でも無い若造が。知った風な口を叩くな……殺すぞ?」

 

「……それだけ怒るならさあ、少なくとも言った事の幾らかは図星だろう、エヴァさん」

ひょっとしたら死ぬかもしれないな、と山下は思うが、それにしては奇妙な程の落ち着きを保っていた。

「僕にこんなことを言う資格が無いのなんて百も承知だよ、エヴァさん。というか僕だってできれば言いなく無いさ。僕が殺されたくてこんなこと言っているとでも思ってるのか」

エヴァンジェリンの目が更に細まり、山下は叩きつけられる圧力に顔を歪めた。しかし、言葉は止まらず、溢れ出る。

「それでも誰かが言わなきゃそのまま進むだろう、貴女は。自分から不幸せになりに行くだろうが、エヴァさんは‼︎だから後ろ向きなその面せめて引っ込めてから進めって言いたいだけなんだよ、こっちはぁ‼︎小僧に知った風な口叩かれたく無いなら、いい歳して人生に血迷ってんじゃ無いよアンタは‼︎」

「黙れ‼︎」

エヴァンジェリンは目にも止まらぬ速さで山下の首をひっ掴むと後頭部から地面に叩きつけ、衝撃に歪む山下の顔を射殺す様な視線で睨みながら、押し潰す様に叫ぶ。

「お前に私の何が解る‼︎私が何をして、どんな思いで生きて来たかを知りもせんガキがぁ‼︎私は、もう人並みの幸せなんてものを得るには、それを拾い上げられない(・・・・・・・・)程に手を染め過ぎたし、長すぎる生は自分にそんなもの(幸福)が舞い降りてくるなんて幻想も殺し尽くしたんだよ‼︎そんな腐れた生の中で、唯一()を見てくれた男に‼︎…側に居て欲しいと、それだけ(・・・・)を願って何が悪い⁉︎ポッと現れて浅い同情で言葉を吐いているだけのガキは黙っていろおぉぉぉぉっ‼︎‼︎」

ギリギリと、エヴァンジェリンは吸血鬼の剛力で山下の首を締め上げる。何故か突き刺さる山下の言葉は、エヴァンジェリン自身も到底信じられない程に、その心を揺さぶっていた。

「か、あ゛っ……‼︎……っ山戯んなよ…!…其処まで、一人の男が拠り所、なら゛‼︎」

山下はエヴァンジェリンの両手を掴み取り、渾身の力で抵抗しながら必死に言葉を紡ぐ。

 

「其処から先の未来をどうして紡げ無いんだよ‼︎俺みたいな、若造にだって解ってることがある!人を、殺しただの、なんだのと後ろめたいなら!…最初(ハナ)から惚れた男と添い遂げたいなんて願うなよ‼︎好きな男と一緒に居たいのに、幸せを望まないなんて矛盾してると思わないのかよ⁉︎半端に虫の良い事を願えるなら、図々しいのを貫き通せばいいだろうが‼︎」

「っ!わかった様な口をぉぉぉ‼︎」

「身の上話の一つも話さない癖にお前に何が解るだぁ⁉︎話してから言えよそんな台詞は‼︎」

「っ、五月蝿い…五月蝿い‼︎黙れぇぇぇぇぇぇぇ‼︎‼︎」

 

エヴァンジェリンは山下の腕を無理矢理に振りほどき、固めた拳を山下の顔面へと振り下ろした。

 

 

 

「オウオウ、死ンダカト思ッタゼ。案外タフジャネエカ」

「…どうも零さん」

山下が目を覚ました時にはエヴァンジェリンの姿は既に無く、茶々零がひょっこりと顔を覗き込んでいた。

「随分ナ男前二ナッテンゼ?無茶スンナアオ前モ」

「っ痛‼︎…些か熱くなり過ぎたのは認めるけどね。吐いた言葉を撤回する気は無いよ。零さんはエヴァさんに代わってトドメでも刺す気でいるのかい?」

見事に腫れ上がって視界を塞いでいる右目周辺を抑えつつ、山下は茶々零に問う。

「マサカナ、ソレナラテメエガ寝テル間二殺ッチマッテンヨ。…ブッチャケ俺ハドッチカッテートオ前寄リナンダヨ」

ゴ主人ニハ言エネエケドナ、と肩を竦める茶々零を山下は意外そうに見やる。

「…そりゃまた何で?」

「短イナガラナギノ野郎トハ俺モ付キ合イアッカラナ。アノ男ハ靡カネエヨ、女ニ餓鬼マデ産マセテンナラ尚更ダ」

「……そう」

山下は俯き、何事かを考え込むが、暫くして徐に立ち上がると茶々零へ告げる。

「…まあ兎に角僕は一旦帰るよ。とてもエヴァさん今日は話を聞いちゃくれないだろうから。零さん、すまないけどエヴァさんによろしくね」

「……待テヤ」

踵を返そうとする山下を茶々零は引き止め、振り返る山下に静かに尋ねる。

「オ前ハドウシテゴ主人ニココマデ絡ム?オ節介ニシテモ度ガ過ギテルゼ。ウダウダ余計ナ理由ハ要ラネエ、ズバリ聞クゼ。…オ前ハゴ主人ニ惚レテンノカ?」

山下はその言葉に天を仰ぎ、下された言葉を胸の内に投げ掛ける。やがて顔を下ろした山下は、困った様な中にしかし決意を秘めて、茶々零へ言葉を返した。

「今になって疑問だったよ。…本当、僕はどうしてあんなに熱くなってたのかってね」

告げた理由の他に、自覚していない。否、無意識に認めようとしていなかった理由があった。

「僕は単純に、甲斐性の無いコブ付き男に熱を上げてるエヴァさんが面白く無くて、僕につれないエヴァさんにムカついてたんだよねえ」

「…ソレハヨ」

「うん」

伺う様な茶々零の言葉に山下は頷く。

 

「何時の間にやら。…好きになっていたんだねえ、エヴァさんを」

 

いやはや辻や桜咲ちゃんを笑えないや、と苦笑する山下の姿を見て茶々零は笑う。

「ケケケケ。…ナラ踏ミ込ム理由ニャ充分過ギンナ」

「だねえ。……零さん」

「オウ」

山下はボロボロの顔で、しかし爽やかに笑い、宣言する。

 

「また来るよ、今度はきちんと口説きにね」

「ゴ主人ニハ幸セニナッテ貰イテエ。期待シテンゼ、モノニ出来ルモンナラヤッテミテクレ、優男」

 

 

 

「……山ちゃんよ、何があったや?」

「まあ気にしないでよ、私的な事情さ。おまけに助けも必要無いんだ」

昨日にも増してズタボロで首には締められた様な赤い痕。挙句の果てに鈍器で殴られた様に腫れた右顔面とあっては気にならない訳が無い。中村達のみならず入室して来た杜崎にまで心配されたが、山下は自分で解決せねばならない問題だから、と頑として事情を話さなかった。

 

「それより僕が顔を出す前に皆で話し込んでたじゃない。何かあったんでしょ?今朝は顔の見えない辻の件?」

「いや、それも少なからず問題だし、問題っていやあお前の方がよっぽどみてえだが……まあ何かネギ達のクラスで出た(・・)らしくてよ」

豪徳寺が山下を心配気に見やりつつも促され、事情を語る。

「出た?」

首を傾げる山下に、大豪院が嘆息して両手を胸の前で垂らし、告げた。

 

(グイ)だよ。…日本語ならば幽霊(・・)の事か」




閲覧ありがとうございます、星の海です。相変わらず遅いですが、なんとか更新ペース復調の第一歩です。次は一週間を切りたいですね。豪徳寺や辻。山下と各々恋愛事情に大小様々な問題が出てまいりました。今の所ぶっちぎりで難易度ルナティックなのが山下ですね笑)何やら思わせぶりな辻ですが、次回には詳しい描写と共に、そろそろなりを潜めていた異常性が首をもたげるかと思われます。楽しみにお待ち下さい。それではまた次話にて。次もよろしくお願いします。

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