お馬鹿な武道家達の奮闘記   作:星の海

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遅くなって申し訳ありません、単純なラブコメを描くのは作者には困難な様です。


5話 少年少女の恋模様 〜豪徳寺と千鶴〜

「…哼‼︎」

「が、はぁぁぁぁぁっ‼︎」

 

鋭く打ち込まれた崩拳を懐に飛び込むようにして躱し様、大豪院の放った撃統頂肘が功夫服を来た大柄な男を真面に捉え、男はまるで巨人の掌に薙ぎ払われたかの様な勢いで宙を舞い、地面に激突して倒れ伏す。

 

「それまでアル‼︎」

 

その様子を最後まで見届けた大豪院が掌に拳を合わせ、緩やかに一礼すると、古の鋭い決着を告げる声が辺りに響き渡り、直後に周りの観客から歓声が降り注いだ。

 

時刻は正午を過ぎて程無く、中武研が行う演武及び対練の場にて古と大豪院は、それぞれ部長と副部長としての役割を果たしていた。

 

「アイヤ、ご苦労だたアルねポチ」

「労う気があるのならばまずお前がキチンとこの分からず屋共にいい加減妙な逆恨みで俺を潰しに来るのを止めさせろ。揃いも揃って対練とは名ばかりな殺気を纏って突っ込んで来る脳無し共の相手はいい加減ウンザリだ。……それからこれも言い飽きたが、俺のことをポチと呼ぶな。渾名にした所で良い歳をしてそんな可愛らしい名を付けられて喜ぶ男は居ない」

 

まず大盛況と言っていい客の入り様と湧き具合に気を良くしているらしく、明るい声で大豪院に声を掛ける古に、大豪院は対象的にゲンナリした表情で文句を返す。

中武研、正式名称中国武術研究会は、形意拳、八卦掌に心意六合拳、太極拳等を収める部長 古菲と、八極拳一門を主体とする大豪院を副部長とした二枚看板を中心に内家、外家拳を問わず様々な中国武術を収めた猛者の集う、麻帆良武道系部活の中でも総合的戦力を見ればかなりの上位にランクインする強豪である。

そんな中武研の、より正確に言えば副部長としての大豪院の目下の悩みは、古以外のほぼ全部員と軒並み険悪な状態にあることだった。

その理由は大豪院にあると言えばあるのだが、大豪院からしてみればとんだ濡れ衣にしてとばっちりであるその理由(わけ)とは。

 

「さあポチ!我等が部員達が全員やられてる以上、対練の相手は私しか居ないアルな‼︎掛かって来るアル‼︎」

「貴様部員達を止めなかったのは最初からこの状況に持っていこうと企んでいたからだな鍛錬馬鹿めが‼︎」

 

…そう。他ならぬ中武研部長にして部の中で圧倒的人気を誇る古が大豪院にばかり絡んでいることが原因であり、則ち理由(わけ)とは部員達の嫉妬に他ならなかった。

古は中武研の男子部員(全体の9割を超える)に対して、その天真爛漫な性格と愛らしい容貌からある種カルト的な人気を誇る。中武研のみならず一部の武道系部活男子勢すらもファンの存在するその古が、口を開けばポチはポチはと一人の男しか目に入っていない様な言動をしていれば、それは同じ団体に所属している野郎共からすれば面白くは無いだろう。

 

……古は決して俺だけに構っている訳では無いし、そもそも鍛錬相手にならん程弱い貴様等が悪いのだろうが………

 

大豪院は憮然としながら腹の中で毒を吐く。あまり親しくない相手に関しては無愛想で辛辣な面のある大豪院である。

古は決して部活での指導や部員達とのコミュニケーションを蔑ろにしている訳では無い。裏表の無い古はほぼ何事に対しても(勉学を除く)全力で取り組む。そもそも大豪院は寧ろ自分の所に来ないで他の奴に絡んでいろと明言しているのだから、大豪院の現状は理不尽極まりないのだが、理屈で納得出来るのなら人間戦争なぞ起こさないのである。感情の赴くままに今日も元気に大豪院を打ち倒そうとした連中は、若さ溢れる学生らしい、という面ではある意味学園都市という環境には相応しいのかもしれない。

 

「どうしたアルかポチ⁉︎この私に怖れを成して産気付いたアルか‼︎」

「凄まじい用文の誤りを聞いたな⁉︎何処の誰を妊婦扱いしているこの馬鹿が!正しくは怖気付くだこの馬鹿めが‼︎」

「とうとう私を唯の馬鹿扱いしたアルね⁉︎ポチは相変わらず口が悪いアル‼︎」

「いい加減喧しいわ!大体止めろ止めろと言っているのに人を望まん渾名で呼び続けるのは口どころか性根が悪いわこの馬鹿が‼︎」

 

ギャアギャアと子供地味た言い合いを繰り広げる大豪院と古に、観客はやんややんやと歓声を送る。基本盛り上がるなら何でもいいお祭り人間が多いのが麻帆良という地である。

 

「くっ……!おのれ犬畜生の名を冠する唇如きが、我等が菲部長とイチャイチャしおって…‼︎」

「糞ぉっ…‼︎…我未熟哉!今少しの力があればあんな鱈子に好きな様にはさせないのに‼︎」

「次に俺を蔑称で呼んだら本気(・・)で勁を打ち込むぞ影でグチグチと恨言を叩き、功夫が足りんからと複数で一人に押し掛ける卑怯人(ヘイチェ ジェン)共が」

 

這い蹲っていた地面から、何とか上体を起こして呪いの視線を送る中武研部員達に冷たく吐き捨てた後、大豪院は心の底から疲れた様子で嘆息する。

 

……少しは他の連中の爱人 (アイレン)共のように女らしい部分を欠片程度でも良いから出してくれんものか、この脳筋娘は………

 

大豪院からしてみれば、古がこのバトルジャンキーっぷりで何故ここまでのカルト的人気を武道系男子達から得ているのかが本気で理解出来ない。容姿は確かに悪くないかもしれんが中身は狂乱大猿(バーサーク ゴリラ)もいい所だ、と内心で毒付いていると、一向にやる気を見せようとしない大豪院に業を煮やしてか、古が他人を小馬鹿にするような目を細めた笑みを浮かべて大豪院を挑発に掛かる。

 

「フッ…そうやってグダグダと言い逃れをして逃げるつもりアルな、肝小鬼(ダン シャオ グイ)アル‼︎」

「今時そんな幼稚な挑衅(チャオ ジィ)なぞ小学生でも乗らんわ阿呆らしい」

 

古の企みを一蹴した大豪院は両手を広げ、周りの観客達にこれにて演舞と対練を終了する旨を伝えた。一部の観客は二人の対練が行われないことに不満の声を上げたが、大半の観客ーー特に麻帆良の住人や、麻帆良学園祭に通い詰めて長い()の人物程物分かり良く解散をし始めていた。

 

「…っむぅ〜〜〜‼︎ポチはホントにツレないアル‼︎」

 

それは彼らが麻帆良学園祭という盛大な祭りの実態を知り抜いているからに他ならない。

 

「ポチと呼ぶなと言っておろうがバカンフー娘が。…それに焦らんでも相手は近々してやる」

 

中武研が行った程度の模擬戦闘(デモンストレーション)ならば至る所で行われているから?学園祭を楽しむ上でのメインは麻帆良の異常とも言えるレベルで発達した各種の超技術を用いた各種のテーマパークだから?

 

「ン?どういうことアルか?」

 

それらは理由の一つではあるが、一番の理由は違う。

 

「自分で出場(・・)しようと誘っておきながら忘れたか?今日の夕暮れ時にはまほら武道会の予選、勝ち上がれば明日には本戦が行われる。…お前の功夫が相応しい域に達していれば、必ず巡り会うだろうよ」

 

熱き武道家同士のぶつかり合いが見たいのならば、学祭初日の午後五時を以って開催される『まほら武道会』を見物しに行けば良いからだ。

 

まほら武道会とは、今から数十年前の麻帆良において隆盛を誇った古い歴史を持つ大会だ。最も現在は麻帆良の近代化に伴い規模が縮小され、現在では大会エントリー数が十人集まれば上等という程度の、麻帆良学園祭イベントの中では極小規模な大会でしかない。

しかし今回ばかりは事情が異なり、まほら武道会には麻帆良学園内有数の猛者が続々とエントリーしており、その数は百人を軽く上回っていた。あまりの参加人数の多さに、急遽麻帆良学園祭で行われる予定だった複数の格闘大会にM&A(合併と買収)が行われ、まほら武道会はかつての盛況を取り戻したかの様な一大イベントと化していた。

 

「…ふ、そうだたアルね。なんだかそこらの部長クラスが後からぞろぞろ入って来たからポチと試合するには苦労しそうアル」

「…まあある意味俺達全員の知名度を軽く見過ぎだ故の自業自得ではあるがな……」

 

そう。寂れた伝統だけが売りの小規模大会に、今年に限って強豪が集った原因は大豪院達バカレンジャー及びネギ達3ーA一行にあった。

空手における腕前は麻帆良一、かつて中学二年にして『外』の全日本無差別級空手選手権大会において優勝を果たしたが、試合において相対した選手を全て病院送りに、一部を選手として再起不能に追いやったが為に表の大会を永久追放された、『破壊旋風』中村 達也。

自称喧嘩三十段、中学生の頃から全国行脚にて各地の腕自慢を喧嘩にてぶちのめし、とうとう著名な格闘選手迄を半殺しにしてしまったが為に地元の学校を退学になった、『不沈戦艦』豪徳寺 薫。

ある日ふらりと麻帆良に現れ、当時の柔術部に道場破りを仕掛けて激闘の末全部員を打ち倒し、麻帆良に入学した以降は誰彼構わず道行く武道家に絡んでは決闘を繰り返していたかつての狂犬、『流麗武踏』山下 慶一。

転校初日に当時既に幅を利かせていた中村と通称『ポチ事件』を起こし、その際に中村を意識不明の重体に追い込み、その後も決闘を挑まれる度に必ず相手に全力(・・)での打ち込みを行い、武道家としての再起不能者を山と造ったやり過ぎていた男(・・・・・・・・)、『崩山裂海』大豪院 ポチ。

中学時代に転校して来てから現在に至るまでに一貫して麻帆良武道家武器組の頂点(・・)に立ち続け、その実力はバカレンジャー随一との呼び声も高いが、近年では大会そのものに顔を出すことの無かった素手組、武器組を問わず垂涎の的、『疾風刃雷』辻 (はじめ)

 

麻帆良の武道家達にとってとてつもないネームバリューを誇るこの五人に加えて、その実力は大豪院と互角以上との名も高い中武研部長、古 菲。麻帆良忍術部部長がその実力に太鼓判を押し、忍術部副部長から一方的に敵視されている紛れもない実力者でありながら武道とは全く関係の無いさんぽ部に属し、これまで大会の類いに一切顔を出すことの無かった長瀬 楓。大会の類いには楓と同じく一切出場経験が無いながら、バカレンジャーの一人、辻 (はじめ)が部長を務める剣道部内において最強を誇り、武器組No.1は彼女にこそ相応しいとの声もある桜咲 刹那といった面々の全員が全員、まほら武道会に参加を表明したのである。

知り合いの武道家、麻帆良報道部等が理由を尋ねるも、『倒さねばならない奴がいる』との言葉以外を告げないバカレンジャー+αに、麻帆良の武道家達は色めき立った。

 

……あの麻帆良5強の名を欲しいままにするバカレンジャーに加えて、対戦を望もうとも叶うことの無かった未知なる実力者の二人までもが同一の大会に出場する………

……しかもこの錚々たる面子が揃って打倒目標として挙げるようなまだ見ぬ実力者がまほら武道会には出場する、ということだ………

 

どこまでも己が強くなることを望み、強者との相対を至上の喜びと公言して憚らない純粋なる武道バカ(バトルジャンキー)達は歓喜に奮え、我も我もと挙ってまほら武道会へ己のエントリーを捻じ込んだ。その結果が最早当初の原型を留めていない、一大武道会と化したまほら武道会であった。

 

「まあ誰が立ちはかだろうとも私は負けないアル‼︎ポチ、私と当たるまでに負けたら承知しないアルよ⁉︎」

「正しくは立ちはだかる、だ日本語は正確に覚えろ。俺達の目的はあくまでクウネル・サンダースなる巫山戯た名の男を打倒し、ネギの父親の情報を得ることだ、忘れるなよ?唯でさえ山下が最悪戦力としてアテに出来んかもしれんのだ」

 

怪気炎を上げる古を渋い顔で諌める大豪院。エヴァンジェリンとの恋路に決着を着けるとの山下の他にも、負けられない一戦の直前にデートをかましているある意味不誠実な輩が三人も居るのである。正直大豪院としてはそれぞれ上手くいかなかった場合、試合において実力の発揮に著しい悪影響が出そうなので不安要素を増やす様な真似は止めて欲しいのだが、どいつもこいつも今後の人生が賭かっていそうな以上文句を言う訳にもいかず、一人悶々とする大豪院であった。

 

「そうアルねー……でも山下に限らず皆上手くいけばラブラブパワーみたいな何かを発揮して凄く強くなるかもしれないアルよ?」

「そんなテンションが振り切れた様な高揚状態での試合なぞ危険以外の何物でも無いわ。武道家に求められるのは感情に左右されない実力だ」

 

ふと洩らした古の戯言を素気無く切って捨て、大豪院は今時分、年頃の学生らしく青春しているのであろう悪友達のことをふと想った。

 

……色恋沙汰は俺には解らん…が、上手く行くことを祈るぞ、貴様らの為で無く女共の為にな………

 

 

最も、その祈りは一組には届かず、もう一組は未だ今後の関係を如何するのか決めかねている状態なので、結果として無駄なものであったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

「……悪いな、待たせたか?」

「いえ。私が待ちたい気分だっただけですので、お気になさらず」

 

待ち合わせに指定した時刻の十五分前。公園の噴水前に淑やかに腰掛けていた千鶴に対して豪徳寺は謝罪したが、柔かな笑顔の千鶴にそう返された。

豪徳寺 薫と那波 千鶴。普段の二人を知る者がこの場に居たとしたら、二人の余りな変わり様に声の一つでも上げていたかもしれない。

千鶴は自分の外見年齢が実年齢(齢15の女子中生)よりも上に見られがちだとの自覚がある為、普段はモノトーン系の配色を主に、派手派手しい色合いのものや過度の露出を嫌った落ち着いた雰囲気のファッションを好み、所謂年相応(・・・)の格好をせずに居た。如何に大人びて見えようとも千鶴はまだ多感な年頃の中学生なのである。他者の評価で似合っていない、ならばまだしも、若作りしている、等と欠片でも思われる様な事態になったら当分立ち直れない確信があった。

だが、今日の千鶴はピンクのフェミニンデザインな、シフォン生地を生かした膝丈のプリーツスカートを履き、ネイビーのテーラードジャケットを合わせたフェミニンかつ柔らかな印象の若者らしい服装に身を包んでいた。それでも年齢不相応な成熟したスタイルと落ち着いた佇まいから女子中生には見え難いが、千鶴の余所行き姿などほぼ初めて見ると言っていい豪徳寺からすれば、千鶴の姿は何処にも無理をしている感じの無い、魅力的な女子として映っていた。

 

「…なんだ、ちゃんと年相応の格好も出来るじゃねえか。普段の格好が似合っていないとは言わねえが、こっちの方が自然な感じで良いと思うぜ?」

「……ふふっ、豪徳寺先輩、嬉しいことを仰ってくれますけれど、それは些か褒め過ぎと言いますか、お世辞の感が強いですよ?私下手をしなくとも大学生以上に見られることなんてザラにありますから、寧ろ今のファッションが無理をしている様に見られていないか、実の所気が気でないんです。…出掛ける時もこの服装で本当に良いのか、結構迷ったんですから」

 

千鶴は自然体でまず服装を褒めてくれた豪徳寺に、実は結構こなれて(・・・・)いるのかしら?と内心で苦笑しながらも、大人びて見られることにコンプレックスの様なものを抱いている千鶴としては素直に豪徳寺の言葉は嬉しかったので、微笑みを返しながらつい言うつもりの無かった台詞を口に出す。すると豪徳寺は眉根を寄せて軽く鼻を鳴らし、やれやれ、とでも副音声の付きそうな態度で首を振りつつ言葉を紡いだ。

 

「前にも言ったろ?お前んとこの騒がしい連中と比べればそりゃあお前は大人びて見えるがよ、俺からすればお前は普通に歳下の女の子(・・・)でしか無えぞ?」

 

というか上に見られんのが嫌なら普段からそういう格好貫いてりゃいいんだよ、と続ける豪徳寺だったが、堪えきれないといった様子でクスクスと笑う千鶴に口をへの字に曲げて軽くドスの効いた声で尋ねた。

 

「……おい、何が可笑しいんだよお前は?」

女の子(・・・)に凄んじゃ駄目ですよ、豪徳寺先輩?…失礼しました、何だか余りにも先輩らしいなあ、なんて思ってしまいまして……」

「だから俺のことについて知ったような口を利くなと言ってんのにお前は……」

 

渋い顔をする豪徳寺は、おそらく自分が不快だからと言うのでは無く、以前注意したように男を勘違いさせかねない様な言葉を軽々しく吐くなと言いたいのだろう。

 

…無骨で、誤解され易そうだけれど…ちゃんと気が使えて、思っていたよりもキチンと合わせてくれて、でも譲らない自分をしっかり持っている人……

 

確かに、こんな短い時間で解ることなど、その人の一面でしかないのだろうし、それだけで相手のことを理解(わか)ったつもり(・・・)になるのは失礼だし、また危ない話なのだろう。

 

……でも女の子がイイな、と感じて、その感覚が間違いじゃ無いって確信するには………

 

そんなに時間なんて要らないんですからね、と口の中で小さく呟いてから、千鶴は渋面の豪徳寺に悪戯っぽい微笑みと共に宣言した。

 

「あら、でも豪徳寺先輩って案外分かり易い人ですよ?」

 

「………そうかよ……」

 

矢鱈と楽し気な千鶴の様子に、これ以上苦言めいたことを言う気が失せて、豪徳寺はやや力無く、そう締め括った。

 

 

 

「……初っ端からイチャイチャした会話を繰り広げておるなあの軍艦頭は………‼︎」

「オノレ硬派を謳っていながら所詮は奴も軽薄にして惰弱な現代っ子か‼︎日の本の国に産まれ落ちた日本男児の心は何処へ行った⁉︎」

「不純異性交遊が何故取り締まられているのか奴らには解らんのか⁉︎……それが取り締まられるべき悪しき所業だからに決まっておろうが‼︎」

 

じゃあ行くか?、はい、との軽いやり取りと共に連れ立って歩き出した豪徳寺と千鶴に建物の影から怨嗟と嫉妬のドロドロした視線を送りつつ聞き苦しい台詞を吐いているのは何の変哲も無い極一般的な服装をした高校生から大学生程度の男達である。……首から上を除いては。

その男達は頭から覆面レスラーが使用(つか)う様な白いマスクを被っており、更にマスク男達の内一人はハンディのビデオカメラを並んで歩く二人に向けて廻していた。

見た目はどう贔屓目に見た所で変質者であるが、この湿った男達が何かといえば、その名は『し◯と団』。異性にモテない侘しい己の現実から目を背け、リアルを充実させているカップルの野郎側に襲い掛かっては袋叩きにして風の様に消えて行く、紛う事無き変質者にして犯罪者集団であった。

 

最も現在(いま)の彼等は中村 達也という名のもっと凄い変態による、思想修正という名を持った容赦の無い暴力によって心をへし折られており、自分達からちょっかいを出すことも許されない陰湿な盗撮ストーカーにまで堕ちているのだが。

 

「……心の底より無念だが、今は黙って奴等のデート風景を追け回す他あるまい………‼︎」

「ああ、もう殴られたく無いもんな……」

「次に奴の正拳を腹に喰らったら一週間はメシが食えん自信があるぞ…」

 

一瞬仰々しい喋り方を止めて素の口調で怯えた様に呟くマスク男。平気で野郎をフクロにする割に自分達がやられるのは嫌らしい、勝手な連中である。

 

「……む?奴等を見失ってしまう。行くぞ同志達よ」

「承知」

「無様にデートコースの選択に失敗して気不味くなるがいい豪徳寺よ……‼︎」

 

 

 

「……そういえば、今日は髪を下ろしていらっしゃるんですね、豪徳寺先輩?」

「……ああ、まあな…」

 

千鶴に並ぶ豪徳寺は、何よりも特徴的なポンパドールを下ろして髪を後ろで一括りに纏めていた。服装も長ランからジーンズにきっちりと糊の効いたポロシャツ姿であり、顔立ち自体は少々厳つい印象を与えはするものの意外に整っている為に、今の豪徳寺は一般的に美少女と文句無しに評されるであろう千鶴と並んでいる事自体に違和感は無い。ポンパドール及びリーゼントのヘアースタイルに長ラン、ボンタン等という一昔前の番長スタイルは格好良い、悪い以前に時代錯誤だというのが一般的な意見である以上、デートを行う身として何も間違った選択では無いのだが、豪徳寺は少しばかり浮かない顔である。

 

「そりゃあ女とデートに行くんだ、何時もの格好は俺のポリシーだが、女受けしないと解ってるのに押し通すのは例え己が定めたルールだろうと漢らしくは無えからな」

「あら、私としては何時もの番長さんスタイルで現れて下さってもよかったんですよ?私はあちらの豪徳寺先輩も格好よろしいと思っていますから」

 

拳を握り締めて豪徳寺自身が日頃から唱える漢とは〜、の言動、通称漢道を語る豪徳寺に対して千鶴はそんなことを宣う。

 

「…あのなあ那波。お前の言うそれこそ見え見えの世辞ってもんだろうが?俺は凡そ小学六年からこの格好始めて、一度も女子供から格好良いなんて言われた覚えは無えぞ?」

 

社交辞令は要らん、と豪徳寺は素気無く返す。豪徳寺本人は普段の格好がこの世で一番キマっている、と信じて疑わないが、世間一般の流行からは逆走している自覚が無い訳では無い。如何にバカレンジャーという枠で中村 達也(本物の馬鹿)と一括りにされていようとも、豪徳寺はそれ程自身を中心に世界が回っていると考えてはいないのである。

千鶴はそんな豪徳寺の言葉にまたクスリと笑みを洩らし、心外ですね、と言葉の割には弾んだ声で返事をする。

 

「私がデートに誘って下さいとお願いしたのはいつもの(・・・・)豪徳寺先輩だったのに、ですか?」

「………ぬぅ…………」

 

私、デートの際の服装を指定した覚えはありませんよ?と言い放ち、上機嫌な様子で豪徳寺よりも二、三歩前へ先行し、歩き出す。豪徳寺は一見すると怒っているような顰めっ面で背中を見せる千鶴を暫し睨んでいたが、やがて一つ息を吐いて緩く首を左右に振り、恨めし気に呟いた。

 

「…やっぱり女には口じゃ勝てねえな……楽しそうだからいいけどよ」

 

 

 

……よかった、特別怒っている様子じゃ無さそうね………

 

千鶴は直ぐ後方を歩く豪徳寺の表情をこっそりと盗み見て、内心で安堵の息を吐く。

傍目には余裕の貫禄で豪徳寺を翻弄しているように見えた千鶴だが、内心ではそれ程、というか全く余裕など有りはしなかった。

3ーAのみならず麻帆良の女子校生徒全般に言えることだが、女子校という年頃の異性と普段接触する機会の無い環境故に、交際所か異性の手を握ったことも無い純粋培養な女子中学生というのは麻帆良にはザラに居る。ましてや千鶴は那波重工という大企業の一人娘であり、言わば良い所のお嬢様である。どちらかといえば子煩悩に該当する千鶴の父親は、実家に千鶴が居る際等にも可愛い一人娘に悪い虫が付かないよう目を光らせていたが為に、千鶴はこれまでに恋人が出来た事はただの一度も無い。千鶴にとっては豪徳寺とのデートが産まれて始めての異性交遊なのだから、余裕など抱き様が有る筈も無かった。

それでも千鶴が刹那の様に盛大にテンパってアタフタした様子が欠片も無いのは、良家の令嬢に生まれ落ちた故の教育と経験の賜物だろう。淑女としての英才教育と誕生パーティーや社交パーティー等での人間経験によって、千鶴は異性との付き合いは知らずとも異性のあしらい方は齢十五にして身に付いている。だからこそ豪徳寺に対して、何とか表面上は普段の千鶴から大きく外れることの無い振る舞いを出来ていた。

それでも緊張と高揚を抑え切れずに、言うつもりの無かったことを口にしてしまったり、何時にも増してからかう様な言動になってしまっていたりと、所謂ハイな状態になっており、己が暴走気味であることを千鶴は自覚していた。

 

……いけないわね、あまり余裕ぶってばかりいたら可愛気の無い女だなんて思われてしまうわ、ちょっと落ち着かなければね………

 

千鶴は自らを嗜める。ただ並んで取り留めの無い会話をしながら歩く、ただそれだけのことが予想以上に楽しかった。風体と言動から男性優位なものの言い方をする印象のある豪徳寺だが、実際は会話において自分はこうだ、とはっきり意志こそ示すが、決して意見を押し付けようとはせずきちんと相手の話を聞く。端的な言い方の為に誤解されがちだが、充分に相手を尊重した上でコミュニケーションを取ることの出来る男だということを、千鶴はこれまでの決して長いとは言えない付き合いの中で理解していた。

 

……気になる(ひと)に自分を良く見せたいのは全ての女の子に言えることですよ、豪徳寺先輩………

 

仄かに赤い顔色を後ろの豪徳寺に見られたくないから。千鶴は顔の火照りを静めながら、少しだけ早い足取りで豪徳寺の前を歩く。

 

 

 

「っ〜〜〜〜〜〜〜〜‼︎‼︎」

「おのれ‼︎おのれおのれおのれおのれおのれおのれオノレオノレオノレェェェェェェェェェッ‼︎‼︎‼︎」

「@○♯%<〒☆€✖️*〆〜〜‼︎‼︎」

 

端から見ていれば何とも背中がむず痒くなってくる様なやり取りを行いつつ歩く豪徳寺と千鶴を追け回しながら、序でにビデオカメラも廻しながら。

し◯と団の面々は物陰で団名通りの溢れんばかりな嫉妬の心を沸き上がらせつつのたうち回っていた、見苦しい連中である。

 

「ハーッハァァァァッ……‼︎…ともあれ、この距離ならば流石にあの元軍艦頭も我々には気付けん様だな。このまま続行だ」

「生きとし生ける全てのリア充男子に制裁を加えるべくして集う我等正義の集団が、獲物を前にしてただ手をこまねいているこの現状は何だ⁉︎…私にもっと力があれば……‼︎」

「耐えるのだ、同志よ!夕方だ、夕刻までの時間を乗り切りさえすれば奴はまほら武道会に出場する‼︎その時に如何なる手を用いてでもズタズタにすれば良いのだ‼︎」

「ぐぅ……無念だ、神は何故我等に此れ程の試練を………⁉︎」

 

聴く者が聞いていれば満場一致で『日頃の行いの所為に決まってんだろボケ』とツッコミの飛んできそうな自覚の無い台詞を吐きつつも無駄に高めなスペックを用いて隠行へ励みつつ、しっ◯団は豪徳寺と千鶴を再び追け回しに掛かる。

 

「……むぅ、奴等どうやらバーチャルゾーンへ向かう様だな」

「ふんっ‼︎初デートでついつい選びがちだが、時間ばかり掛かる割に会話などが殆ど出来ない為進展の難しい映画を観に行かん辺りは多少弁えているらしいが、然りとてこの麻帆良科学の粋たる超技術がふんだんに発揮された夢の空間とて、初心者の貴様らに適した空間とは言い難いのだよ‼︎」

「問答無用のど迫力でお客を楽しませる様々なゲーム要素を詰め込んだ超空間‼︎間違い無く楽しめ(・・・)はするが、男女の価値観の違い故についつい一方が彼氏彼女そっちのけでどハマりし、後ほど気不味くなったり喧嘩になるパターンがしばしば麻帆良学祭では見られる光景よぉ‼︎」

「クハハハハァ‼︎貴様もどうしようも無い男の(さが)を発揮した挙句、巨乳美少女から愛想を尽かされるがいいわぁ‼︎」

 

 

 

「やあ豪徳寺君!そちらの美しいお嬢さんは初めまして‼︎僕の名は金剛 力也、己が人生の全てを筋肉の為に捧げ、筋肉の筋肉による筋肉の為の理想の筋肉国家をcreαtionする為に日々筋肉トレーニングに勤しむ、己の身体に発達する筋肉のみの味方さ‼︎」

「那波、悪いな入る通りを間違えた。戻るぞ」

「あの、豪徳寺先輩?」

 

バーチャル恋愛空間やら世界の格闘家とリアル格ゲーやら空想ゾンビパニックエクスペリエンスやら。もう近未来のSF空間に迷い込んだと錯覚しそうな電脳世界を売りとする通りで入る店を物色していた豪徳寺と千鶴だったが、唐突に目の前へ飛び出して来たこの場のサイバーパンクな空気に対して不釣り合いにも程がある筋肉の塊を前にして豪徳寺は迷わず千鶴の手を掴んで回れ右をしようとし、千鶴は己と同じホモサピエンスに属しているとは到底信じられない筋肉ダルマの迫力に半ば呆然としながらもいきなり豪徳寺から手を繋がれたことに頬を染めて恥らっていた。

そんな二人の様子を見て何やら訳知り顔でウンウンと頷いていた黒光りする筋肉の小山(金剛 力也)は、自分の方を一瞥もせずに立ち去ろうとする豪徳寺へ快活な野太い声を張り上げる。

 

「HAHAHAHA‼︎つれないねえ豪徳寺君‼︎僕のmuscle bodyを前に己の貧弱な筋肉量を恥じてこの場に立っていられない気持ちは良く解るけれど、些かそれはcourtesyに欠ける行為じゃ無いかい?」

「五月蝿えよ筋肉ダルマが‼︎普段ならもう少し相手してやらねえでも無えが今は取り込み中なんだよ見て解らねえか‼︎」

 

シャッ‼︎という擬音が聞こえてきそうな程機敏な動作で豪徳寺達の前へと回り込みサイドチェストをキメる金剛を豪徳寺は堪らず怒鳴り付ける。金剛はその剣幕に怯んだ様子も無しにポージングを解くと、見事に括れてはいるが艶かしさの欠片も無い腰に手を当ててチッチッ、と指を左右に振る。

 

「豪徳寺君、言わんとすることを察せない僕では無いが取り込み中などとまるで面倒事を片付けている様な言い方は止すべきだよ?それにladyの前で声を荒げてはいけないよ」

「……この野郎…………!」

「豪徳寺先輩、落ち着いて下さい。気を使って頂けるのは嬉しいですが、こちらの先輩に失礼ですよ?…初めまして、金剛先輩。私は那波 千鶴と申します、…先程は失礼致しました、先輩の外見が力強く精悍な迫力に満ちているものですから少々驚いてしまいましたわ」

 

マイペースな金剛の言動に豪徳寺が青筋を浮かべながら一歩前に出ようとするのをやんわりと制して、千鶴はにこやかに金剛へ自己紹介を終える。少々大人気ないように思える豪徳寺の態度だが、ボディビル研部長金剛 力也の格好は学祭中でありながら普段と変わらぬピチピチのブーメランパンツ一丁。筋肉を美しく見せる為、と公言して身体中にオイルを塗り込んでいるその発達し過ぎた筋肉はテラテラと黒光りしており、一言で言うならば悪い意味での18禁猥褻生物である。筋肉フェチを除くあらゆる女子にとって大凡ゴリマッチョのパン一姿など精神に多大なるダメージを与えるセクハラ映像でしか無いのだから、一刻も早く千鶴を遠ざけようとした豪徳寺の対応は寧ろ当然の部類だろう。内心はどうあれ微笑みつつ挨拶を交わしている千鶴が凄いのだ。

 

「ふぅ〜む礼儀正しいお嬢さんだ、感心してしまったよ。では那波さんと呼ばせて貰おう、那波さん。豪徳寺君は少し誤解され易い所があるがとてもattractiveな男だ。多少つれなくても諦めずにmotionを掛ける価値はあると保証するよ!」

「あらあら、嬉しい太鼓判ですね。ありがとうございます」

「てめえら…………」

 

HAHAHA‼︎、あらあらうふふ。と笑い合っている二人を前にして豪徳寺は脱力するものを覚えていたが、気を取り直して下がっていた頭を金剛へ向け、言葉を放つ。

 

「……金剛、言いたいことがそれだけなら失せるぞ俺らは。急いでる訳じゃあ無えが、ビルダーの筋肉観察に来たんじゃ無えんだからよ」

「ああいやいや。待ってくれたまえ豪徳寺君、二人に声を掛けたのは別に理由があってね。……どうだろう、此処で会ったのも何かの縁だ。僕達ボディビル研の主催するゲームに参加してみないかい?」

「考える余地も無え、お断りだ」

 

にこやかな金剛の勧誘を一蹴する豪徳寺。別段この対応は先程の件を引きずっている訳では無く、ボディビル研の企画する催しが例年碌でもないからである。

昨々年はボディビル研の筋肉ダルマ共の観点から細い(・・)男性(場合によってはカップル)を半強制的にかっ攫っての筋トレ講座『目指せ貴方もボディ美ルダー』、昨年は過激派の報道部と結託により学園都市内の報道機関全てをジャックしての、パン一ゴリマッチョ共が延々と暑苦しいポージングを決めまくる光景を放送媒体から延々と映し続ける『電脳ステージ マッスルカーニバル』という下手をしなくても犯罪である問題行為をやらかしているのがボディビル研(脳筋集団)なのだ。そういった阿呆な前歴を鑑みれば金剛の言うゲームとやらも真面な代物である筈も無いと判断した豪徳寺の思考は至極尤もと言えるだろう。

しかし金剛はまあまあ話だけでも聞いてくれたまえ、と再び立ち去りかけた豪徳寺達の前方へ回り込み、両手を広げて公正明大を主張しながら語り出す。

 

「豪徳寺君は僕達ボディビル研の企画がここ数年、teacher森崎を中心とした広域指導員の方々に今一つ理解を得られず潰されているという事実を知ってしまっているからね。そのことで僕達の催し物が害悪な代物だというminus方面の誤解を抱いてしまうのは致し方ないことだ」

「誤解じゃ無えよ、それこそが事実だよ」

「HAHAHA!豪徳寺君、大丈夫だ僕はちゃんと解っているよ。何だかんだで婦女子の前だ、筋肉こそがこの世の(ことわり)全てを司る、という一聞しただけでは男根コンプレックスに類似した歪な価値観に毒されていると感じられがちな真理を素直に認めるのは抵抗があるのだろう?しかし彼女は聡明な女性だ、きっと話せば解ってくれるとも‼︎」

「筋肉至上主義という意味合いの脳筋たるてめえと真面な意思疎通が不可能だってことだけは今理解したよこの全身ポパイが‼︎」

 

したり顔で理解者面をしてくる金剛 力也(褐色のお肉)に吼える豪徳寺だったが金剛には効きもしないし聞きはしない。多かれ少なかれ突き抜けた人間(部長クラス)は自分本意で他人の話を聞かない奴が多いのだ。

 

「兎に角だ、豪徳寺君。流石に我々も事ある毎に筋肉の素晴らしさを伝える為の機会(チャンス)を潰されるのは問題だと方針を少々見直してね。先ずは遊び心に富んだ楽しいゲーム性を企画に取り入れて、第一に日々鍛え上げている我々の筋肉の魅力を見せ付け、image upを図ることにしたのだよ‼︎」

「……この際筋肉の魅力云々の話は一旦脇に置くとして、改善策としては至極妥当なものだと思いますね…」

 

さしもの千鶴もキチガイ(筋肉バカ)の毒に当てられてか、微妙に引き攣った笑顔で若干棘のある台詞を吐くが、金剛は意に介さず我が意を得たりと頷く。

 

「HAHAHAHA‼︎そういうことさ那波さん!さしもの僕も馬に蹴られて馬の脚を折りたくはない、君達に筋肉の素晴らしさについてmake outしてもらう機会はまた日を改めて設けるよ「要らねえよ」…今日の君達にはあくまで純粋なゲームをenjoyして貰いたいんだ‼︎」

「無視かてめえは‼︎」

「あの、此方ではどのようなゲームを行っていらっしゃるんですか?」

「那波⁉︎⁉︎」

 

ウルトラマイペースに話を進める金剛へ激しくツッコミを入れるも届かない豪徳寺を余所に、千鶴は綺麗な微笑みを取り戻して金剛に尋ねる。

 

「あら、いいじゃないですか豪徳寺先輩。金剛先輩が改善した、と仰っているのですから、お話だけでもお聞きしてみれば……恐らく一通り付き合うまで解放して頂けないと思いますし………」

「………ぬう……………」

 

後半の台詞を豪徳寺の耳元に口を寄せて囁く千鶴に、豪徳寺は唸る。そう、この世界は筋肉を中心に回っていると信じて疑わない陽気な馬鹿は、確かにこのまま無視しようとして出来る様な存在では無い。有り体に言って存在感があり過ぎるのだ。無いとは思うが、このまま強引に逃げ出したとしてその無駄な筋力にものを言わせて引っ付いて来る可能性もあるにはあるのだ。

 

「……っていうかお前も嫌は嫌なんだな?」

「…面白い方だとは思いますけれど、流石に長時間このまま筋肉のお話しかされずに過ごすのはちょっと……」

「至極当たり前の感覚だ、寧ろ誇れ。……よし解った、ゲームの説明を聞こうじゃねえか金剛」

 

千鶴の意見も最もだと豪徳寺は頷いて、ある種野良犬に噛まれる様な心持ちで金剛に問い掛ける。内心であまり内容がヤバそうだったら全力の気弾ブチかましてから那波抱えて逃げよう等と考えつつ。

そんなある意味物騒な豪徳寺の内心など知る由も無い金剛は破顔して何故かボディビルのポージング、アドミナブルアンドサイをキメつつ説明を始めた。

 

「よくぞ言ってくれたね二人共‼︎ならば張り切って行ってみよぉぉぉぉう‼︎‼︎我等ボディビル研の栄えある今年の企画は、『迫り来る筋肉星人を退けろ‼︎スペースマッスルインベェェェダァァァァゲェェェェェェェェム‼︎‼︎だぁぁ‼︎」

 

 

「……結局こうなんだよな…」

「あら、面白そうですしいいじゃありませんか、豪徳寺先輩?」

 

豪徳寺は体育館程のだだっ広いスペースの一端に取り付けられている、ゴテゴテとSFチックな装飾が施された横一列のレーンをスライドするらしき移動砲台の座席にて呻く様に言った。その声に応じる千鶴は豪徳寺の真上、レーンは付いていないが、砲身の角度が手元のパネルで調整出来るらしき固定砲台の座席でコロコロと笑う。

 

「さあさあ豪徳寺君、那波さん!ルールは先程説明した通りだ‼︎ゲーム開始の合図で奥から我が部員こと筋肉星人達がspaceshipに乗って現れる‼︎二人はそれぞれタイプの違う二つの砲台でそれらを迎撃し、見事destructionさせられたのならば豪華景品をプレゼントだ‼︎豪徳寺君の搭乗している砲台は横に移動が可能な為全体を制圧し易いが、ステージと砲台の間に視界窓を兼ねた弾を発射するportのみを空けた壁が展開している為に、豪徳寺君は敵が何処にどれ位居るのかが解らない!当てずっぽうに射撃して倒される程筋肉星人達は甘く無いよ⁉︎一方高所に座する那波さん側の砲台は視界が開けている為に敵の位置がbe quite obviousだが、固定式の砲台であるが為に制圧力に欠ける!いちいち砲身の角度を調整して射撃していたのではとても全てをshoot down出来ないからね‼︎長短兼ね揃える二つの砲台!上手くクリアする為のコツはズハリloveだよL・O・V・E‼︎敵の見える那波さんが豪徳寺君に敵の位置を伝え、豪徳寺君は的確に伝えられたpointで射撃し、敵を倒す!二人のcooperationが重要となるこのゲーム、君達カップルの仲がどれだけ深いか、いざ試練の時だよ二人共⁉︎」

「……本当に存外真面なゲームで驚きだが……まず何よりも先に言っておく、俺達ぁカップルじゃ無えよ‼︎」

 

ステージ脇の実況席にて大胸筋のみでマイクを挟み込み、改めてのルール説明を行う金剛に豪徳寺はツッコむ。ちなみにステージ周りは観客席となっており、それなりの人数が入っている為に豪徳寺もあらぬ噂が流れぬよう必死であった。

最も千鶴の方は慌てふためく豪徳寺を楽し気に眺めるだけで肯定も否定もしない、堪らず豪徳寺が加勢を頼むが何やら思わせぶりである。

 

「お前もちったあ否定しやがれ那波!俺だけ騒いでて馬鹿みたいじゃねーか⁉︎」

「あらあら豪徳寺先輩。こういったことはムキになって否定すると却って疑わしく思われますよ?…それに、確かに私と先輩はお付き合いなんてしてはいませんけれど、そうあっさりと関係性を否定されるのも女の側からすれば複雑な気持ちになるんですよ?そんなに躍起になって否定なさらずともよろしいじゃないですか」

「肯定したらもっと問題だろうが⁉︎…ともあれ悪かったな女心なんて解らねえんだよ俺は‼︎」

「HAHAHAHA‼︎二人共仲が良いのはよぉく理解(わか)ったけれどもうgame startさ‼︎砲身を構えておくことをお勧めするよ‼︎」

 

金剛はジャレ合っている様にしか聞こえない二人の会話を爽やかにスルーしてゲーム開始の合図を舞台裏のスタッフへと送る。それに応じてステージの各所に取り付けられた電飾が光り輝いでスモークが焚かれ、重々しい音と共に奥の扉が開いて中からガッシャガッシャと機械音が響いてくる。

 

「…ええいこの話は後だ!やるからには勝つぞ、那波‼︎」

「承知しました豪徳寺先輩、頑張りましょうね…うふふ」

 

この名称し難きやり場の無い感情を筋肉ダルマ共に叩きつけてくれるわ‼︎と怪気炎を上げる豪徳寺にひどく楽しそうに応じる千鶴。そんな二人の前に硬質な足音(・・)を響かせながら筋肉星人達は現れた。

 

「「……………………」」

 

 

 

ステージ上は本物の戦場が如く砲弾が飛び交い、緊迫した空気の流れる空間となっていた。ステージの奥からは途切れ無く、巨大な二本の機械脚を動かして敵が豪徳寺達へと迫り来る。

 

「…豪徳寺先輩!三列分右へ、固まっています‼︎」

「……おう…」

 

千鶴が、彼女にしては非常に珍しいことにはっきりと引き攣った表情で端的に下の豪徳寺へと指示を出し、自らもパネルを手早く操作して後列の敵へ狙いを定める。豪徳寺は何かを堪える様に圧し殺した声で短く応じると素早い操作で横へスライド。指示された位置に着くと発射ボタンへ拳を振り上げる。

 

「なんで……」

豪徳寺は視線の先、接近してくる異形(・・)の機械を睨み殺さんばかりに凝視し、叫ぶ様に言い放つと同時に発射ボタンへ拳を叩き下ろした。

 

「なんでビルダー共がヘンテコ機械の上でポージング(・・・・)キメてんだよなんの意味があんだボケェェェェェェ‼︎‼︎」

 

言葉と共に放たれた鋼鉄(・・)の砲弾が、小さな円形ステージに機械の両足が付いているとしか表現しようの無い謎機械の上でダブルバイセップスをキメていた褐色の筋肉男の顔面に突き刺さり、血飛沫(鼻血)を上げさせながら吹き飛ばした。ゲームが始まってから早数分、息吐く間も無い筋肉の奔流への対処で余裕が無かったとはいえ、流石にスルー力にも限度があったらしい。

そんな豪徳寺の魂の叫びに朗らかな調子で答えを返すのは当然、モストマスキュラーにポージングを変えた金剛である。

 

「HAHAHA!豪徳寺君、よくぞ訊いてくれた‼︎あれこそは麻帆良工学部に頼み込んで製作して貰ったボディビルダー専用の移動機械、名付けて『ポージングリフト』さ‼︎一定基準を超えた筋量(バルク)を持つ人物が搭乗した場合にのみlaunchし、あのステージ上にて取ったポージングの種類に応じて移動を行うまさに夢のmachineだ‼︎」

「なんなんだその死ぬ程汎用性の無いクソマシンは⁉︎ほぼ間違いなくてめえらにしか使えねえじゃねえかよどれだけ深刻な馬鹿だ馬鹿共が‼︎しかも態々専用に作らせときながら遅えぞこいつら‼︎」

 

豪徳寺の言葉通り、筋肉ダルマ達の乗り込む?四脚メカの速度は精々が人間の早歩き程度であり、言うまでも無くこれならば自力で走った方が速いだろう。

 

「HAHAHA!それは今回のゲームの為に速度制限を設定してあるのさ。『ポージングリフト』は搭乗する者の筋量(バルク)、ポージングのlevel of beautyに応じてポージングを取った際の速度が上がる仕組みでね。僕が本気のポージングをキメれば時速200㎞越えは造作も無いし、平部員達でも100㎞位は出るんだけれど、それではゲームにならないだろう豪徳寺君?」

「ああそうだな如何でもいいこと聞いたわこの論理的な馬鹿が‼︎」

 

したり顔で告げてくる金剛に怒鳴り返す豪徳寺。色々余裕の無さ過ぎる対応だが、豪徳寺 薫という男、少々価値観が特殊なだけで意外に根は常識的というか真面な部分がある為に、実は理不尽な馬鹿に対する耐性は低めなのである。(筆頭の中村に関しては巻き込まれ過ぎて慣れた)

 

「あの…‼︎如何でもいいついでにお聞きしますが、金剛先輩⁉︎」

「うん?なにかな那波さん!」

 

豪徳寺が右端から急接近してきた筋肉ダルマの土手っ腹に砲弾を炸裂させているのを尻目に、千鶴は未だ引き攣り気味ながらも微笑みを取り戻して金剛へ呼び掛け、金剛は矢張り無意味にポージングをサイドチェストに変更しながら応える。

 

「明らかに撃ち出している砲弾が実弾(・・)みたいなのですが、危なくは無いのですか⁉︎」

 

そう、工学部の謎技術の所為か火薬の匂いや発射時の衝撃、轟音が一切感じられはしないが、先程から筋肉ダルマの群れに容赦無く炸裂しているのはどこをどう見ても海賊映画等で使用(つか)われる様な火薬の炸裂で金属の砲弾を撃ち出す、旧式とはいえカノン砲の砲撃であった。言うまでも無く人体に当たれば爆裂四散、とまではいかないが余程打ち所が良くも無い限りは大体死んでしまうような代物だ、千鶴の心配は至極全うなものだったが……。

 

「HAHAHAHA‼︎心配してくれてありがとう那波さん、心優しい女性だね君は!b〜ad、それは無用な気遣いというものさ!我等ボディビルダーが鍛えているのは巷のweak-kneed

な男子達がモテようとして少しばかり筋トレをして身に付けた様な細マッチョ等とは一線を画するのだからね‼︎麻帆良ボディビル研のvery hardなtrainingの果てに身に付きし剛柔兼ね揃えたperfectな黄金の筋肉は、時にPVCmaterialの如く、時にtungstenの如く性質を変えあらゆる衝撃を無効化するのさ!だから遠慮なく筋肉星人達に砲撃を浴びせてくれたまえ那波さん、これは我がボディビル研のdemonstrationも兼ねているのだよ‼︎」

「その通りです、部長ぅぅぅぅ‼︎」

「さあ遠慮なく‼︎遠慮なく撃ち込んでぇ‼︎僕達の鋼の筋肉を、そんな豆鉄砲で破れはしないんだからねぇ‼︎」

 

筋肉至上主義者達からすれば余計なお世話でしかないらしい。思い思いにポージングを取りながら爽やかなドヤ顔で接近してくるボディビル研の部員達は皆一様にスキンヘッド&褐色肌にブーメランパンツ一丁なので、遠目に見ていると個人の判別が出来ずまるでクローン人間の様である。そのクローン筋肉共による余りに常識外れなその言葉に、千鶴は困惑したように眉根を寄せるが、

 

「構うことは無えぞ那波!こんな脳筋集団気遣うだけ時間と精神力の無駄だ無駄‼︎いいから左翼辺りに展開してるらしい馬鹿の群れの鼻先に砲弾ぶちかませ!音からして結構な数が居んだろ⁉︎」

 

豪徳寺のある意味気遣いの欠片も無い言葉に一度ガックリと肩を落とし、暫らくしてからしょうがないですね、とでも副音声の付きそうな苦笑を浮かべて砲門を言われた通り左翼に固まる筋肉ダルマ達へと向ける。

 

……こういう時、紳士的に気遣って貰えたらさぞかし素敵だと思わないでもないけれど………

 

……こうして気安く接してくれるのも、それはそれで嬉しいから困りものね………

 

「わかりました、豪徳寺先輩。張り切って行きましょう」

「おうよ‼︎何なら股間に当ててやれ股間に‼︎幾らお肉が増量しまくってようが流石に耐えられまい‼︎」

「HAHAHA!豪徳寺君、女性の前でcrotch発言は感心しないよ‼︎」

 

「「「ぬぅぅぅぅぅぅん‼︎‼︎」」」

 

かくして、何やらドSな香りの漂う微笑みの千鶴と悪鬼羅刹の如き形相の豪徳寺による連携射撃は、急増とは思えない見事なコンビネーションで筋肉の群れを見事に撃退したのだった。

 

 

「HAHAHAHA‼︎いやはや見事な

coordinationだったね二人共!こうまで完膚なきまでにやられては正にtake one's hat off to somebodyと言うに相応しいね‼︎これは初めに言っていた豪華景品、服飾部部長謹製のペアネックレスだよ‼︎moneyに換算するのは無粋な話だけれど、宝飾品の類いを使っていないとはいえ0が最低でも7つ付いて、上の数字は1では利かないらしいから大事にしてくれると嬉しいね‼︎」

「あらあら、宜しいんですかこのようなものを頂いて?」

「ゲームの景品にしちゃ高価すぎねぇか…?……とはいえ良かったぜ、お前ら(・・・)にとっての豪華景品とか言って筋トレマシンだの高級プロテイン一年分とか出てこなくてよ…」

 

死屍累々とイイ笑顔を浮かべながら横たわる筋肉ダルマの群れを放置して、様々な意味で濃い空間から出て来た豪徳寺と千鶴は、自分の部員が軒並み薙ぎ倒されたというのに爽やかな笑顔を浮かべる金剛から、何かの花が咲き乱れている様子をモチーフとしたらしい大振りなネックレスを受け取っていた。

 

「にしても花のネックレスって、那波はともかく俺には厳しくねえか…?」

「いやいや豪徳寺君、なんでもこれは敢えて大振りなデザインにすることと花という女性向けのmotifを使用したことによって、男女どちらに対しても違和感無くfashionに取り込める代物らしいよ。是非とも着けてみてくれたまえ‼︎」

「いや俺は……」

「どうぞ、後ろを向いて下さい豪徳寺先輩」

「おい那波…」

 

「あら、とてもお似合いですわ豪徳寺先輩」

「全くだね!cast pearls before swineとはこのことだよ!」

「おいコラ肉ダルマ。英語は解らねえが今悪口言いやがったな?……まあいい、那波、お前も後ろ向け。着けてやるよ」

「え?……あの、私は自分で…」

「寄越せ」

「………はい」

 

「お前こそよく似合うぜ那波。やっぱりこういうのは女の子が着けてねえとな」

「……ありがとう、ございます………」

「……?如何した、那波?」

「HAHAHA!中々豪徳寺君も、a guilty manだねえ‼︎」

 

 

「じゃあな金剛、あまり言いたくは無えが中々楽しかったぜ」

「ありがとうございました金剛先輩。機会がありましたら、次は友人と遊びに来ますね」

「いやいやこちらこそ、二人がnice playをしてくれたお陰で良いpresentationになったよありがとう‼︎」

 

ちなみに今年のまほら武道会には僕もparticipationするから宜しく頼むよ豪徳寺君!という、豪徳寺からすれば楽しみながらもネギの事情を考えると気の重い台詞と共に金剛ことボディビル研の魔窟から別れを告げて、二人は祭りの空気を冷やかしつつ並んで歩く。

 

「少し早いが飯にするか?買い物巡り位ならまだ出来なくも無えが…」

「そうですねえ……」

 

豪徳寺の問い掛けに返事を返しながらも、千鶴は別れ際にこっそり金剛から告げられた言葉をなんとは無しに思い返していた。

 

『このネックレスのmotifになった花はプリムラ。非常に種類の多い花でね、品種や色によって様々なmeaning

を持つんだよ。プリムラ・シネンシスやポリアンサならば『永遠の愛情』や『無言の愛』、またプリムラ・ジュリアンなら『青春の喜びと悲しみ』というやや悲観的なイメージを持つんだ。……プリムラ全体の花言葉には『early youth(青春のはじめ)』『young love(青春の恋)』なんて意味合いがある。正に英名Primrose(プリムローズ)の如く美しく、また豪徳寺君との距離間を定めかねて(・・・・・)いる今の君には相応しいflowerだと僕は思うね!…豪徳寺君は気難しい所があるけれど非常にnice guyだ!惹かれる自分を感じたならば、いっそ流れに身を委ねてpositiveにアプローチを掛けてみてもいいと僕は思うよ‼︎何にせよ君も豪徳寺君もまだまだadolescenceだ!後悔しない様にこの麻帆良祭を過ごして欲しいね!』

 

命短し恋せよ乙女、と言うじゃないか‼︎と爽やかに締め括った金剛の分厚く巨大な存在感を思い出しつつ、千鶴はフ、と口元が緩むのを感じる。

 

……フィーリングを重視して、なんて如何にも博打めいて感じられるから、頷けなかった恋愛観だけれど………

 

もう少し気軽に、気楽に考えてみてもいいのかもしれない、と千鶴は思う。考えてみれば豪徳寺へモーションを掛ける様な事をしたきっかけは、何となくいいな、なんて軽い気持ちだった気もする。

言ってしまえば千鶴にとって今回のデートは、豪徳寺がどんな男なのか確かめたい、というある意味お試し感覚の様なものであったが、千鶴はこれまでのふれ合いから後少しだけ、踏み込んでみても良いんじゃないかと考え始めていた。

 

「……波、おい那波?」

「……あっ、はい!」

 

そんなことをツラツラと考えていた千鶴は、自らに対して呼び掛けている豪徳寺の声にようやく気付いて、やや慌てて返事をする。

 

「大丈夫か?此処らは随分人が多いからな、気分が悪いなら…」

「いえ、大丈夫です豪徳寺先輩、少し考え事をしていただけですから。心配をお掛けして申し訳ありません」

「そうか?ならいいけどよ……」

 

言いつつも若干眉根を寄せて、千鶴を心配気に見やる豪徳寺の様子を見て、千鶴は心の中に今日何度目かの浮き立つものを感じる。

 

……そうね……恋なんて頭で考えてするものでは無いし…………

 

……折角楽しい時間なんだから、単純に楽しめばいいのよね………

 

クスリ、とアプローチめいたことは散々行っている割にいざ接するとなると頭の固い自らを軽く笑うと、千鶴はなるべく気軽な様子に見えるよう、努めてさりげなさを装って豪徳寺の腕を取る。いきなりな千鶴の行動に目を白黒させる豪徳寺に、千鶴は微かに高鳴る鼓動を抑えながら微笑み掛ける。

 

 

「…さあ行きましょう、豪徳寺先輩?楽しいデートは始まったばかりですよ?」




閲覧ありがとうございます、星の海です。今回は何やら難産でした。千鶴姉さんはせったんの様に原作で登場機会が頻繁な訳でも無いので、作者にとっての違和感無い千鶴姉さんの恋愛描写に非常に手間取りました。正直描き上げた今でも皆様に受け入れて頂けるか不安ではありますが、作者にとっての千鶴姉さんは、気に入った人には結構アプローチを掛けますが、その癖考えて恋愛をするタイプの様に思えます。少なくともフィーリングが合うだけで何も考えずに突っ走るタイプでは間違い無く無いかと。更には結構見栄を張ってしまいがちだけど人恋しい一面もあり、気安く、近い距離で接して欲しいとも思う。普段周囲から頼られがちな分、頼れる存在(しっかりした歳上とか?)に甘えたい願望を持ち、それでいて恋愛経験が無いので遠慮なくこられ過ぎると身を引きそう…と、あくまで作者のイメージに過ぎませんが、こうして並べてみると結構面倒臭い人ですね笑)理想が高い、という言い方は少し違うかもしれませんが、付き合う上であいてに求める条件は結構多そうです、千鶴姉さん。豪徳寺も中々大変ですが、そもそもこの男デートしている癖に現時点では千鶴姉さんと付き合いたいとか思ってませんしね。大体エヴァンジェリン相手にしてる山ちゃんよりは万倍マシでしょう笑)ともあれ次話で終わる予定の豪徳寺&千鶴姉さんの初デート回、次回も楽しみにお待ち頂ければ幸いです。…次はもう少し早く上げてみせます。
それではまた次話にて、次もよろしくお願いします。

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