お馬鹿な武道家達の奮闘記   作:星の海

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遅くなりました、辻と刹那の決着となります。


13話 まほら武道会本選第1試合 辻VS刹那(その2)

「……刹那の姉ちゃんは、俺と同じで妖怪のハーフや。日本の古妖一族、実力(ちから)の有る奴は鴉天狗なんぞとも呼称()ばれる烏族の血が流れとる…身体が人よりも強靱なんは勿論やが、何より連中は疾い(・・)素早い(・・・)。姉ちゃんの動き(・・)にはなんの絡繰も無いわ、素の速度が人と違い過ぎるんやろ……」

「付け加えるならば」

 

顔を緊張によってか或いは恐怖によってか。

大いに引き攣った表情を浮かべながら呟く様に言葉を洩らした小太郎の語りを引き継ぐ形で、対照的に愉し気な表情を浮かべたフツノミタマは言葉を紡ぐ。

 

「よほど孕ませた烏が格の高いのものだったか、それとも先祖帰りの一種か。あの小娘は白烏の血を引いているらしい。完全に使い熟せていないとはいえ、奴が使っているのは神通力(・・・)の一種だな」

「じ、じんつーりき?」

 

それに対して確実に単語の意味が解っていない体で、明日菜が鸚鵡返しに疑問の声を上げる。

 

「神に通ずる力と書いて神通力だ。正確には神話に祭り上げられる様な天津神、国津神から土地神、人に対して善性とされる妖擬きや幻獣種などの正しい(・・・)異形共が使う力の総称だな」

 

エヴァンジェリンが皮肉気に正しい、の部分を強調して会話に加わる。

 

「烏は大体の国や土地で吉兆の証や神の使いとされている()の高い鳥だ。日本では修験道だったか?熊野三山の八咫烏が有名だな。それと比べてはピンキリだろうが、末端といえ神の系列、使用(つか)う力は其処らの凡()とはワケが違うだろうよ」

 

「……ンな小難しい分類や解説はどぉーーでもいいがよぉ…………!」

 

ヒクヒクと米神を引き攣らせながら微妙に震える声で篠村が口を挟み。

 

「…どうすんだよあの有様はぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

闘技場の床にて血塗れで倒れ伏す辻と、それを見下ろす無傷の刹那という光景を前にして絶叫した。

 

 

 

遡る事僅か数分、その闘いは一方的なものだった。

 

「……では、始めましょうか辻部長?」

 

微笑みながら木剣を片手に、無造作に一歩、二歩と歩み寄り始める刹那に、呆けた状態から辻は無理矢理意識を戦闘状態のそれへ切り替えた。

 

……呆けるな!!小太郎と同じ様な形態変化なら身体能力が跳ね上がっている筈………!?

 

己の持てる最高の一撃を繰り出す為に辻が木剣を振り上げた、次の瞬間。

 

ガシュリ、という木材を何かで削った様な軽い音が辻の耳に届いた時には、既に刹那は辻の頭上(・・)へ移動を終えており、静かに下ろされた両足の鈎爪が辻の頭を跨ぐ様にして両肩へ喰い込み、鋭い痛みを感じさせていた。

 

「随分とのんびりしていますね、辻部長?」

「桜ざ……!?」

 

ゾブリ、と鈎爪が万力の如き力で辻の両肩を固定して血を滲ませて。

次の瞬間には、辻は凄まじい揚力を発揮した刹那の双翼によって、空へと浚われていた。

 

 

『…さ、桜咲選手が瞬間移動でもしたかの様に辻選手の両肩上に乗ったと思われた次の瞬間!!まるで猛禽類に浚われた小動物か何かの様に桜咲選手、空を飛んで辻選手を宙へと引き揚げたぁぁぁぁぁっ!?』

『入場した際には美少女剣士から美少女和風メイド剣士に、試合開始と同時に美少女和風メイド剣士から美少女亞人系コスプレ和風メイド剣士に二段階変身を果たした色んな意味で要素てんこ盛りの桜咲選手、更には飛行とサービス精神旺盛ですねー。あの格好はコスプレかはたまた麻保良の狂科学による真の変身なのか、飛行の原理はどうなっているのか等々、疑問は山の様にありますがそれをさて置くとして試合の状況を解説するならば、辻選手はいきなり大ピンチですねぇ』

 

 

「大ピンチですねぇ、じゃねーよ。せったんの思惑にもよるが、下手すりゃ試合これで終わっちまうぞオイ」

 

あっという間に数十m程も上空へと舞い上がり、辻を両足て捕獲したまま翼から光を放っている刹那を見上げつつ、中村は多少ならずとも引き攣った表情で呟いた。

 

「……あ、え……な、なんでですか中村さん……!?」

 

あまりと言えばあんまりな試合開始直後の超展開に魂の抜けた様な表情であんぐりと口を開けて呆けていたネギが、我に返って尋ね掛ける。

 

「いや今の動き見たろ?せったんが一瞬で辻の頭ぁ跨いで絶景晒しかねねえステキポーズ決める迄のあの動き。ありゃ瞬動じゃねえぞ、瞬発力と脚力の賜物だ」

「要するに辻が攻撃動作に移ろうとする直前に飛び出して大跳躍、多分翼の羽ばたきか何かで勢いを完全に殺して辻の頭上を取った。それだけでもすげえが恐ろしいのは、気で瞬発加速したんじゃなく強化された身体能力とはいえ普通(・・)に速く動いただけで瞬動と同等以上の速度になってる、って事だ」

「ただ純粋な気による強化だけを用いた身体能力で速く動いているだけなら、縮地レベルにでも達してない限り初動や気配を察知されて対応される瞬動と違って感知は非常に困難。つまり今の桜咲ちゃんは常時入り、抜きをほぼ悟られる事の無い縮地を継続しながら動いてる様なものだね」

「つまりは辻の超高速斬撃と同じ認識されざる動きだ。違うのは、辻は一撃必殺の斬撃を放つ際の踏み込みでしか発揮出来ない動きを、桜咲後輩は制限無しに発揮出来るという点だな」

 

「代わる代わる詳細且つ正確な解説痛み入るけどよぉ……それで辻の奴はこれから何がどうなって絶体絶命なんだ?」

 

中村を筆頭として、刹那の踏み込み一つで戦闘力を丸裸にせんとでもするようなバカレンジャーの解説ぶりに引いた様子を見せつつも、篠村は遥か上空の二人をうそ寒気に見上げつつ尋ねた。

 

「あれ程の機動が出来るならば普通に攻め立てればいいだけだ。にもかかわらず態々手間を掛けてまで空へと連れていった……」

 

応えようとした中村に先んじて、苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべながら杜崎が腕組みをしつつ告げる。

 

「考えてもみろ、お前や高音、そこの馬鹿共ならば吊り上げられようが反撃の手段はあるだろう。が、(あいつ)は純正の剣士だ。腕の動きの基点となる両肩関節を固定された状態で何が出来る?」

 

「……成る程………」

 

「それに加えて」

 

杜崎の言葉に呻く様な声で理解の声を上げた高音の後に、苦笑と呼ぶには幾分苦みの強い笑みを浮かべて高畑が続く。

 

「恐らく刹那君は空中に辻君を放り出す気すら(・・)無い。今から始まるのは、嬲り殺しだ……いや、死にはしないだろうけどね」

 

 

 

「ぐぅっ!?…くっ、そ……!!」

「無駄ですよ辻部長。烏族の鈎爪は一度喰い込んだら獲物(・・)を決して放しません」

 

肉を突き破って血を飛沫かせる鈎爪を引き剥がそうと体をよじる辻に、 状況を考えればいっそ不気味な程穏やかな声で刹那が告げる。

 

「では辻部長、これから貴方を痛め付けますので。… 死んでしまわない程度の加減はしますので防御に集中していてください 」

「何を……っ!?」

「行きます。…安心してください……」

 

言うが早いか、刹那の両の翼に目映い光が生まれ、直ちにその白光は刹那の全身を覆い尽くした。

 

「単なる遊覧飛行(・・・・)ですよ」

「~~~~っ!?」

 

何を(・・)されるかを半ば本能的に理解した辻は身を強張らせ。

 

直後、刹那は光の矢と化して会場内の空を舞い狂った。

 

 

『直進、宙返り、捻り込み、急降下、急上昇、ジグザグ飛行、急旋回ぃぃぃぃぃっ!!辻選手を捕獲したまま、まるで曲芸飛行の如く上空を縦横無尽に飛び回る桜咲選手!こ、これはどういう闘いだぁぁぁぁぁっ!?』

『ブラックアウト《高重力負荷による貧血性視界暗転》狙いでしょうか?破裂音が聞こえないので幸い音速は超えていないでしょう。まあソニックブームによるダメージは無いにしろ、常人ならばとっくに速度差による過剰接触で()んでいるでしょうね』

 

『『『『ヴ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"ッッ!!!!』』』』

 

「冷静に解説しとる場合かぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

蜻蛉かヘリコプターを思わせる様な遠慮の欠片も無い刹那の飛びっぷりを淡々と解説する喧囂に、沸き上がる観客の声援の中小太郎が噛み付く。

 

「いやコレ決着(きま)ったんでね?」

「解らねえぞ?桜咲の奴も一応加減して音速超えてねえし、辻もまだ意識あんだろうよ」

「意識保ってたとして、今どっちが空でどっちが地面かも解らなくなってると思うけどね」

「最後には上空から叩き落されるのか空中で斬り刻まれるのか……何れにせよ大勢は決した感があるな」

 

「だからなんでそんなに冷静なんですか皆さんもぉぉぉぉぉぉっ!?」

 

ハハハと笑い合いながら語り合うバカレンジャーにネギが全力でツッコミを入れた。

 

「五月蝿え。ギャアギャア騒いだら如何にかなるようなモンでも無えだろうがこんなん」

「大体俺ら桜咲に付いてっしなあ」

「まあ辻には簡単に負けてほしくは無いけどねー、一緒に切磋琢磨した仲だ、大会開始の景気付けとばかりに雑魚キャラみたいなやられ方は見たくは無いよ」

「まあ黙って見ていろネギ。どうせなる様にしかならん」

 

「ちょ、ちょっと木乃香大丈夫!?」

「う〜ん、せっちゃんが、せっちゃんが辻先輩にDVしとる………」

「正確には二人はまだ所帯を持ってはいませんが……のどか、しっかりしなさい」

「ゆゆゆゆえ〜〜!?」

「……アレあのまま振り回されてたら死ぬアルよ辻」

「容赦の欠片も無いでござるなぁ刹那は…」

「桜咲さん、思い詰めそうな性格していたものねえ………」

「そ、そういう問題じゃ無いですよこれはもう〜!?」

「……篠村?」

「……今止めに入ったら冗談抜きに殺されんぞ。それもおそらく両方に…」

『あ、あわわわわわわわ………‼︎』

「落ち着け幽霊娘、死にゃしねーヨ………多分」

「まあぶっちゃけ半殺し所か八割殺し位にはしそうな勢いですネ〜」

「…アルビノ鳥系獣人要素付きスレンダー生真面目微百合ヤンデレ美少女和風メイド剣士…khorosho(ハラショー)…………」

「言っとる場合かぁぁ!?」

 

「……やれやれ喧しいことこの上ない。ご苦労なことだよ貴様らも」

「皮肉は聞き飽きたわ吸血鬼」

 

「……君は随分楽し気だね、フツノミタマ君?」

「気安く私を呼ぶな若僧(・・)。……愉しいとも、外敵で無い分あの鳥娘は此れまでで一番、主を追い込んでくれそうだからな……」

 

騒がしい周囲を鬱陶し気に一瞥しながらも、フツノミタマは嗤う。

 

「さあ、真の貴方を見せてくれ主」

 

 

 

「意識はありますか、辻部長…?まあ、容赦をするつもりはありませんが」

 

何度目かの急上昇を果たした後、螺旋状に弧を描きながら徐々に高度を下げていた刹那は、聞こえないのを承知で両脚で捕獲している辻へそっと囁く。

直後、刹那は羽ばたく翼の角度を変えて急激に進路をほぼ真下の方向へ切り替え、落下していると言っても過言では無い急降下で闘技場内へと舞い戻る。

 

『さ、桜咲選手急降下ぁーっ!?』

『漸く戻ってくるようですね』

 

朝倉と喧囂の声を背後に、流星の如く真っ逆様に落下(おち)て来た刹那は、闘技場の床に頭から激突する数m前で双翼を広げて急制動。減速しつつ上体を海老反り気味に起こしながら反動で脚に掴んでいる重り(・・)を思い切り振り降ろして、同時に鉤爪を開いた。

 

擬音にすれば、ゴガン‼︎とバシャアン‼︎を組み合わせたかの様な、鉄塊と水風船を同時に足元へ叩き付けた音を何十倍にも増幅した様な音が会場中へ鳴り響く。

轟音と共に巨大なクレーターを形成しながら、辻は木材を水飛沫の様に巻き上げつつ闘技場に半ば埋もれた。

 

「…………、お…………!…ゴ…ッ、グェェアァッ!?!?」

 

辻は暫くの間ピクリとも身動ぎをせずに横たわっていた。軈て緩慢に上体を起こし、おこりの様に全身を一度激しく震わせ、焦点の合っていない両の目を瞬かせた後。

思い出したかの様に、赤黒いものが混ざった吐瀉物を大量にぶち撒けた。

 

『…玩具か何かの様に超高度から叩き付けられた辻選手、ダメージは甚大だぁぁぁぁっ!吐血混じりの吐瀉物を吐き戻しています‼︎』

『三半規管と内臓の幾つかにダメージが入った様です、まあ普通なら赤黒いシミになっているのですから当然でしょうね。今の速度で叩き付けられたのならば、下手な高層ビルから飛び降りたよりも衝撃の度合いは大きいでしょうからね』

 

解説実況の声を遠くに聞きつつ、辻はバラバラになったかの様に痛みを通り越して感覚の無い五体に鞭打って身体を起こす。辻の視界は廻っているどころか見えるもの全てがドロドロに溶け合っており、思考も混濁した前後不覚にも程がある状態であった。次の瞬間に倒れ伏そうとなんらおかしくは無い重傷であったが、この試合に懸かっているものの大きさが、辻の意識をギリギリの淵で保っていた。

 

「こ…なんで……寝て、られねえん、だ…………‼︎」

 

譫言の様に呟きながら、辻は叩き付けられ様と手放さなかった木剣を正面に構える。

 

「神鳴流奥義………」

 

されど、そんな辻の執念を嘲笑うかのように、その声は響き渡った。

 

「百烈桜花斬‼︎」

「が…………っ!?」

 

春風に舞う桜の花びらの如く。

宙を舞う様に無数と疾走(はし)った斬撃の嵐が辻の全身を打ち据え、血飛沫と共に辻はゆっくりと再び闘技場の床へ崩折れる。

 

そうして僅か試合開始から三分と経過()たない内に、冒頭の光景は出来上がった。

 

 

 

『辻選手、桜咲選手の容赦無い追撃により再びダウン‼︎カウントを始めます!』

『これは、決定打が入ってしまったかもしれませんね……』

 

朝倉のカウントが響き渡る中、中村はポツリと呟く。

 

「さって、こっからだな」

「何処がよ!?辻先輩くたばりかねないじゃないあれじゃあ〜〜!?」

 

耳聡くその声を聞きつけた明日菜が狼狽気味に絶叫する。明日菜の言う通り辻は身動ぎもせずに床へ突っ伏している状態である。悠然と佇む刹那は未だ擦り傷一つ負っていない現状、こっからどころかどう考えても試合終了一歩手前である以上、明日菜の言葉は最もだろう。

しかし中村だけでなく、豪徳寺山下、大豪院の何れもが、明日菜の叫びに対して否を返した。

 

「大丈夫…じゃねえが、桜咲は止めを刺しに行ってねえ。辻は立つぜ」

「……いやさっきのアレがもう止めやろ!?刹那の姉ちゃんは獣化して斬撃の威力も跳ね上がっとる!下手すりゃ死ぬで本当に!?」

 

「死なないさ、これ位(・・・)なら中学時代で慣れっこだ」

 

ある種非情とも取れる言葉に声を荒げる小太郎だが、山下の声は揺るがない。

 

「何度も何度も僕らは他の四人を意識不明の重体にして、病院送りにしたりされたりしていたんだ。馴れ合いじゃ無く死線を潜って僕らは腕を磨き合った。これで大人しく寝てる様なら、辻はとっくに僕ら四人に殺されてるよ」

「そして口惜しい事だが、述べ三百を超える真剣勝負に於いて、辻は俺に僅かといえ勝ち越している。他も僅かに勝負回数の上下はあっても勝率は同じ様なものの筈だ」

 

「そういうこっちゃ」「あくまで暫定だけどな」「結果は結果だ。今現在に於いて…」

 

「「「「俺(僕)達の最強は辻 (はじめ)だ(なんだよ)」」」」

 

「剣道屋を馬鹿にする訳じゃねえが、桜咲に負け越してる辻は本気の辻じゃ無え。もう一度言うぜ……こっからだ」

 

 

 

『つ、辻選手立ち上がりました‼︎開始早々その姿は満身創痍!最早試合はおろか生命が危ぶまれる負傷ですが……‼︎』

「闘るよ、闘るに、決まってる……!」

 

僅かに足取りが覚束ない様子ながらも、10カウント前に立ち上がり、木剣を構えた辻に場内はどよめきにも似た歓声に満たされる。実況の朝倉の心配気な視線に短く切る様に答え、辻は目の前で木剣を泰然と構えて待つ刹那へ向き直った。

 

「……とはいえ実質俺はもう、負けか?待っててくれたもの、なあ?桜咲……?」

「…これは野試合ではありません。倒れた相手への追撃はギブアップ目的の寝技以外禁止されていますよ、辻部長。…それに私は先程の一撃、二度と起き上がらせない心算で放ちました。立ち上がった事自体が、私としては驚きです……」

 

血塗れの顔で場違いな迄に明るく笑い掛けて来る辻に、刹那は軽く眉根を寄せながらそう答える。刹那としては十二分に手応えを感じていただけに、フラつきながらも起き上がって来た辻の姿は予想外と言えた。

辻はそんな刹那の言葉を聞いて、何故かクツクツと笑声を漏らす。

 

「……まあ、お前相手には負け越してた俺だからなあ。舐められるのも無理ないか…?でも桜咲、これ位の重傷は、さ。慣れてるんだ、わりかし俺はさ。中学時代の俺も、エヴァンジェリン女史と闘った時の俺も、お前は知らないんだから、しょうがないんだけど、な………」

 

まあ遠慮無しに掛かって来い、まだまだ俺は元気だぞ?と辻は和かに告げる。

刹那は、何時の間にか足取りも確かに、明確に呂律も回り出している辻の回復の早さを、素直に不気味に思った。されど刹那の行動は既に決まっている。

 

……この人を、完膚なきまでに叩き潰す…………‼︎

 

そうすれば。桜咲 刹那は辻 (はじめ)よりも遥かに強いと、そういった烙印を押す事が出来れば。

 

辻は刹那を、断ちたくとも断つ事は叶わないと、そういう事に出来る(・・・)から。

 

「斬空閃‼︎」

 

刹那は木剣から収束させた気の斬撃を飛ばす。人の形態を保っていたその頃よりも、遥かに大きさと密度を増したその三日月は、高速で辻へと飛来して。

辻はフラリと、倒れ込む様な右手側への足取りで、その一撃を掠めたのみの紙一重で躱した。

 

「………っ‼︎」

 

しかし刹那としては、単発の牽制に等しい一撃を回避されるのは予想の範疇だった。辻の傍らを斬撃が通り過ぎるか過ぎないかのタイミングで、刹那は全力の踏み込みを持って己が身体を颶風と化す。

最早知覚不能に等しい超速度を持って刹那は辻の左手側を突き進み、すれ違い様に辻の胴を薙ぎ払わんと木剣を全力で振り切った。

 

そして。

 

その一撃を身体毎振り回す様な全力の斬り上げで完璧に迎撃した辻の一撃によって、刹那の身体は勢い余って突き進んでいたその方向へ打ち上げられ、宙を舞う。

 

「………?………っな………っ!?」

 

回る視界に一瞬前後不覚に陥った刹那は呆けた様に呟きを洩らし。

逆さまに己が視界に映る、木剣を天高く振り上げた(・・・・・)辻の姿に、背筋を悪寒が走り抜けた。

 

次の瞬間、一瞬で距離を詰めると同時に振り下ろされた辻の斬撃を咄嗟に体軸に合わせて立てた木剣で受けた刹那は、その凄まじい一撃の威力によって己の手首が妙な方向へと捻じ曲がるのを知覚しながら、斜め下方へ打ち下ろされて闘技場外の水面へ着弾した。

 

 

『な、あ……!?……桜咲選手の先制攻撃を回避した辻選手でしたが、次の瞬間には己の背後目掛けて大上段からの斬撃を一閃‼︎何時の間にか後方を吹き飛んでいた桜咲選手を場外水面まで弾き飛ばしたぁぁぁぁっ‼︎』

『私もよくは見えませんでしたが、どうやらあの飛ぶ斬撃に続いて斬り掛かって来た桜咲選手を剣で後ろへ弾き飛ばし、追撃を仕掛けた様ですね辻選手は』

 

「……疾いねぇ、辻君。どうやら素であの速度っぽい桜咲ちゃんも相当アレだけど………」

「良ぉし辻 (はじめ)ぇっ‼︎そうだそれこそが我がライバルだぁ‼︎」

 

「……今のが?」

「応。最も儂に振り下ろした一発と違い、コレ(・・)は全力の様じゃがな……口惜しいのぅ」

 

「うげヤバい‼︎桜咲が空中で防禦(うけ)る一瞬しか見えなかったけど手首折ったよあの娘!?」

「加えて押された木剣がそのまま胴体にめり込んだ!下手すりゃ肋骨痛めたぞアレは‼︎」

 

 

「フン、これでもまだ五分では無いが、解らなくなって来たなこれは…ククク……!」

「くははははは流石だ主‼︎今の一閃、正しく雲耀の如し、だ。果たしてこの会場で見切るのはおろか視認できた奴が何人居るのやら!」

 

「なんでそんなに楽しそうなんだよお前らは!?」

 

含み笑いを浮かべるエヴァンジェリンと哄笑するフツノミタマに篠村が目を剥いてツッコんだ。

 

「せっちゃ〜〜ん!?」

「ちょっとー!?」

「でぇじょぶだって、精々手首と肋数本イッた位だから」

「寧ろ今ので致命傷与えられなかったのは痛いな。依然として辻が不利だぜ」

「しっかし相変わらずあの良く解んかい原理で見切ったんだろうけど凄いねつくづく。桜咲ちゃんの二撃目、僕だったら不完全に受けるか避けるかするのが精一杯なんだけど」

「あいつは昔から見て(・・)対処したとしか言わんからな。詳しく聞いても中心線がグニャリと歪むとお前らが動くだの益々理解(わか)らん」

 

「……それは、辻先輩の言っていた、人や物の正中線に添う様に見えるという、線なのですか……?」

 

肩を竦めた大豪院に、震えるのどかを宥めていた夕映が尋ね掛ける。

 

「…さあな、当時の奴は詳しくは語りたがらなかった。が、まあ話を聞いた今にしてみればそうなのだろうよ……」

「……んー?、ポチ、線が歪むと見切れるって良く解らないアル。身体の真中の線が見えてるのが何で見切りの良さに繋がるアルか?」

 

古が首を傾げながら会話に加わってくる。他にも試合内容の凄惨さに気圧されながら会話自体は聞いていたのか、幾人かが大豪院達へと顔を向けていた。

 

「……推測になるがな、単純と言えば単純な話だ。武道の基礎の一つは、例外もあるが軸をブレさせずに正中線を保つ(・・)事。初動を悟らせず予備動作無く動ければ対峙する相手は反応出来ず攻撃を無防備に喰らうと、そういう原理だ」

「でもまあ、実際に身体動かして攻撃やら何やらすんだから、ぶっちゃけ軸を全く動かさないなんてのは物理的に不可能だわな?未熟な奴の瞬動の入りなんかが察知されんのは身体が沈んだり身動ぎしたりして見切られっからなんだわ。だからそういうのが察知されない位までブレを殺して、僅かな予備動作を隠せるレベルまで行ってんのが縮地とか無拍子とか呼ばれる。まあ軸なんつっても実際に軸が目に見える訳じゃ無えんだから、人間様の知覚領域じゃ認識出来る限度があるって話だわ」

「でも辻はさ、それが見える(・・・)んだよね、原理は不明だけど」

 

中村に続いて山下が語り出す。

 

「辻は人や物の中心に線が見える。…まあ話を聞いた限りじゃ、正中線っていうよりはその対象を等分に両断する為のガイドラインみたいなものなのかな?兎に角そんなものが見えるなら、僅かな体軸のブレや身体の重心なんかが擬似的に知覚出来るのと同じって事だ。辻の防禦()けが昔から堅いのは多分これのお陰なんだろうね。だから今のも、桜咲ちゃんのブレを察知して迎撃したって寸法だと思うよ」

 

「……真ならば、辻殿は凄まじいアドバンテージを戦闘に於いて得ているのでござるな…………」

「まあな。つっても別に辻のそれは万能でも無敵でも無えよ。試合開始早々の一撃にしても、桜咲の奴が獣化?した驚きに付け込まれてああして重傷負ってるしな。要は見えてても辻が対処出来なきゃ一緒だ……桜咲も出て来た、始まるぜ」

 

豪徳寺の言葉通り、水面から上がって来た刹那が再び辻と対峙していた。

 

 

「…………ふっ‼︎」

 

刹那は完全に折れたらしい右手手首を考慮して木剣を左構えに持ち替え、時折瞬動を交えながら辻の周囲を高速で円状に回り、時折接近して斬り掛りつつ気の斬撃を飛ばす波状攻撃&ヒットアンドアウェイに戦法を切り替えていた。

しかし辻は殆ど動かぬままに雨霰と飛んで来る斬空閃を僅かな捌きで回避し、不意に飛び込んで来る刹那の一撃も木剣で的確に迎撃する。

 

「っ……!……はああっ‼︎」

 

業を煮やした刹那が放つのは百烈桜花斬。無数の斬撃が疾り、辻にあらゆる方向から襲い来る。

 

「無駄だ、桜咲」

 

しかし、その時には辻の姿は遥か後方へと後退しており、斬撃の全ては空を切った。

 

『……火を噴く様な激しい桜咲選手の猛攻‼︎しかし目にも留まらぬ高速の連撃を見事に捌き、躱している辻選手!重傷を負っている身体とは思えない動きです‼︎』

『敢えて言うならば、桜咲選手も辻選手の一撃を喰らって以来動きが少々鈍い様にも思えますね。何処かを負傷したのかもしれません。因みに辻選手が最後の斬撃を躱したあの後ろへの瞬間移動の如き滑る様な動き。あれは薙刀部部長、太刀嵐選手の『逃げ水』と呼称()ばれる後方への瞬動と呼ばれる技術だそうです。辻選手は過去の激戦でこの技を習得したそうですねー』

 

「いえーいその通りー、辻くーん良いキレだよー‼︎」

 

「……はは」

 

辻は観客席からの太刀嵐の声援に小さく顔を綻ばせる。

 

「……桜咲。お前その身体慣れてないんだろ?何時もより僅かだけど所作が大きいし、体軸のブレも大きい。身体が急成長したからだな。加えて俺の斬撃で肋骨痛めたろ、無意識に庇う動きが出てるから()の歪みが更に解り易い。初手で不意を突いてから一気に決めるなら兎も角、俺相手には悪手だぞその身体。迎撃のタイミングはシビアだけど、動作が荒いから読み易い。精密な斬撃はお前の長所だろうに」

「……普通はそれが見えなくて、更には見えていたとして対応出来ないものなんですよ、辻部長………」

 

刹那は苦笑して、左手一本で保持している木剣の切っ先を辻に突き付ける。

 

「辻部長、そうだとして貴方のその傷は重傷の域を超えています。このまま持久戦になれば貴方は私よりも確実に不利でしょう。今の貴方で怖いのは雲耀の太刀のみですが、反応速度の上昇した今の私ならば完全で無くとも、防ぐことは可能です。……更に言わせて頂くならば」

 

刹那は紅い眼差しの瞳孔を更に広げ、辻を視線で射抜く。

 

「例え片手と言えど、その身体の貴方に未だ剣の勝負(刀面の制し合い)で負ける気はしませんので」

 

苛烈な視線を受けた辻は、しかし怯む所か小さく息を吐いた。

 

「……違うんだよ、桜咲。理解出来て、ないんだお前は。…もう、いいけどな、お前は降伏しろなんて今から言っても聞きはしないだろうし。……うん、もういいんだ」

 

辻は木剣を振り上げ、右蜻蛉の形を作る。

 

「……俺は言ったぞ、どうなっても知らないって。こんな台詞は言いたく無いが、それでも言わせて貰うぞ桜咲」

 

辻は泣きそうな顔で笑って告げた。

 

「お前だって悪いんだからな?」

 

「……何を………!?」

 

刹那が最後まで言葉を言い終えない内に、辻は再び刹那へと斬り掛かった。

 

 

 

『一進一退の激しい剣撃の応酬‼︎試合時間も中盤に差し掛かろうというこの段階になって漸く観客の皆様にも見応えのある試合となってまいりました‼︎しかし辻選手は大分出血が激しいが大丈夫かぁーっ!?』

『桜咲選手は右手が使えない分苦しいですね。押される場面が目立って来ましたが、このまま凌いで持久戦狙いでしょうか?』

 

「……どうも引っかかんな」

「おう、辻は大分無理しての全力戦闘だ。長期戦で勝ち目が無えから出し惜しみしねえのは解るが、にしちゃあ攻めが全う過ぎるぜ」

「桜咲ちゃんもね。片手で辻と闘り合うのが厳しいのは当然だけど、幾ら何でも辻があの状態でこうまで押され気味なのは解せないよ」

「…桜咲は距離を置くのを止めて激しく打ち合うことで渾身の斬撃(雲耀の太刀)を封じる心算の様だが………」

 

一見して全うな打ち合いに、しかしバカレンジャーは違和感を感じていた。

 

「もう一つあるな、辻は何か知らんが牽制以上の意味合いで桜咲の身体へ斬撃を当てようとしていない」

「攻撃パターンからして、刹那君の武器を落とそうとしているんだろうけどね………」

 

杜崎と高畑も加わり意見が出るが、何れにしても辻の狙いは解らなかった。

 

「…解らんものか、貴様らの域でも?まあ人の思考では中々発想にも至らんものかな」

 

しかしただ一人(一刀)例外として、フツノミタマは全てを理解している様子で他の全員を嘲笑う様に口を挟んで来た。

 

「……性格悪いわねえアンタ、言いたいことがあるならさっさと言いなさいよ」

 

青い顔をして心配気に刹那と辻の打ち合いを見ている木乃香を気にかけながら明日菜がフツノミタマを睨んで言い放つ。

 

「威勢がいいな小娘?まあいい、教えてやろう。主があの傷で小娘を押しているのは単純だ、主の実力が正された故に負傷した小娘では対応仕切れておらんのだよ」

 

「……いや、辻の奴は最初(ハナ)から全力だったろ」

「今迄辻 (はじめ)がずっと手加減をしていたとでも言うのかしら?貴女は」

 

有り体に辻は全力を発揮していなかった、という旨の発言に、篠村と高音が反論する。

 

「……いや、そうだな。奴が刹那を叩き斬るつもりでいるのならば頷ける話だ」

 

しかし、フツノミタマの発言に僅かに思案したエヴァンジェリン迄もが賛同した。

 

「人間は心持ち一つで発揮する力に大きな差が現れる。奴にとっての本願は刹那を二等分にする事なのだろう?ならば奴は所謂野ノっている状態だ。身体の動きに迄好影響を与えているのやもしれんぞ?」

 

エヴァンジェリンの言葉をフツノミタマは笑って肯定する。

 

「まあ正解の一つだ吸血鬼。加えて主は『何かを真っ二つにする』才能に於いては天下一だと私は見込んでいる。産まれついての認識異常、異常嗜好、剣の才、生家が一刀両断を肝とする剣の道場。主はその才覚を最大限発揮出来うる環境においてもまるで何者かが図ったかの様に備えて生きて来た。解るか?世界が主の欲求を肯定しているのだよ!つまり対象を両断しようという意志を持って主が闘うのならば主は己の才覚を存分に活かせる、断ち切りる為に闘う主はそうでない主よりも実力に於いて上なのだ‼︎これは下らん精神論などでは無い、振るわれる(・・・・・)私だからこそ断言出来る!主の剣はあの負傷を以ってして普段よりも鋭いのだからなぁ‼︎これがもつ(選ばれし)者の力だよ、世界の依怙贔屓とは何と理不尽なのだろうなあ?」

 

このままでは負けるぞ、小娘は?と、愉し気に嗤うフツノミタマの視線の先には、言葉通り疾さを増して来た辻の剣撃に、ジリジリと後退を始めている刹那の姿があった。

 

 

 

……ここまで、違うものなのか…………!?

 

木剣を保持する左手の手首目掛けて真下から蛇の様に翻った辻の斬り上げを辛くも柄で打ち払いつつ、刹那は歯噛みした。

獣化している刹那の身体能力は人の形態を保っていた頃よりも格段に増している。気の強化に加えて限定的とはいえ白烏としての力さえも解放している刹那の力は、単純な出力に於いては最早大会中でも右に出る者は居ない域にまで達しているのだ。

加えて今の辻は満身創痍、普段通りの実力が間違っても発揮出来る状態では無い。普通に考えれば、辻に異能が備わっていようと正面からの打ち合いならばゴリ押しでとうに倒せている筈である。

しかし現実は違っていた。辻は刹那の斬撃をギリギリで見切り、捌き、躱して無駄の無い動きで斬撃を矢継ぎ早に放って来る。その動作は今迄と変わりない。少なくとも刹那の目には、過去に手合わせをした時の辻と何ら変わりは見出せない。

だというのにその動きはこれ迄の辻よりも格段に疾く、強く、隙が無かった。

何も変わりが見られない(・・・・・・・・・・・)というのに動きだけが鋭さを増している(・・・・・・・・・・・・・)

そんな理不尽とも言える強さを今の辻は発揮していた。剰え辻は刹那の武器を破壊、若しくは手放させる事を狙って攻撃を繰り出しているらしく、牽制以上の斬撃は刹那の身に届いていない。にも関わらず刹那は押されている。

横から木剣の腹を鋭く打ち据えられ、その斬撃の重さに左手へ痺れが走る。

足に頼らず、翼を用いて数歩の間合いを開けようと後退するが、初動を読まれて吸い付く様に距離を詰められる。

気を放射状に放ち、敵を吹き飛ばす神鳴流の技、百花繚乱により辻を吹き飛ばそうと試みるが、脇を擦り抜ける様に瞬動で己の後方に抜けられ、避けられる。

目の覚める様な奇抜な動きをされている訳では無い。辻は刹那の攻撃をあくまで普通に捌いている。

つまり地力に於いて、刹那は今の辻に及んでいないという事であった。

 

「……成る程!肚を決めたつもりで、覚悟が甘かった様ですね、私は‼︎……時に、辻部長!?私自身へは碌に攻撃を加えようともせずに、遊んでいるのですか、貴方は!?」

 

刹那は木剣を打ち合わせ、鍔迫り合いになった状態から刀身を滑らせ、小手を打ち据えようとしてくる辻の手捌きを、捻る様に返した刀身で押さえつけつつ言い放った。

対する辻は、実にあっさりとその言葉を否定する。

 

「いや?単に邪魔なんだよお前の剣が。最初に一撃を見舞った時もお前は剣でガードしただろ?綺麗にお前を二つにするには邪魔なんだ余計な物は。武器を弾き飛ばすなりへし折るなりしてからお前の左手も砕いたら、きっとお前を綺麗にしてやれる。ほら、右手はもう砕けてるから左手も砕かないと見た目も綺麗じゃ無いしなぁ」

 

遊んでいるつもりは欠片も無いぞ?と苦笑気味に辻はそう告げた。

全く以って普段通りの会話をする時と同様の調子で、辻はそんな歪んだ言葉を伝えて来た。

 

「……はは、成る程。私を両断、するのでしたね、貴方は‼︎」

 

己の知る辻 (はじめ)という男と一切その雰囲気に違いは無いというのに、狂った言葉を唱えてくるその得体の知れない迫力に対して、しかし刹那は戦慄する事も気圧される事も無く、ただその事実を受け入れた。

 

「そうです、か‼︎貴方(・・)が私の‼︎……惚れた男ですか‼︎」

「幻滅、したか!?口が利ける内に言っておくが、お前のその姿はとても…綺麗だ‼︎ますますお前を、断ちたくなったよ、俺は‼︎」

 

一層激しく剣の応酬を重ねながら、辻と刹那は互いに熱で浮かされた様に言葉を交わす。

 

「まさか、真逆‼︎……正直理解は出来ません!私の感覚に正しく照らし合わせるならば、気味が悪いと言うのが正しい感想でしょう‼︎…しかし貴方がそう(・・)であるのなら私は何ら抵抗無くそれ(・・)を受け入れられる‼︎痘痕も笑窪という奴で……しょうかね!?」

 

言葉の終わりに刹那は辻の木剣を横に大きく打ち払い、木剣を返し様ひ練り上げた気を螺旋状に飛ばして相手を斬り裂く、神鳴流の技斬鉄閃を辻の胴体目掛けて撃ち放つ。

 

「そうか‼︎…惜しいな本当に‼︎お前の様な良い女が、惚れてくれているというのに‼︎……応えられない自分がつくづく恨めしいよ‼︎」

 

辻は地を這う様な低い体勢を取って刹那へ突撃。気の斬撃を肩口に掠めさせながらも攻撃を躱して刹那の右手目掛けて真下から伸び上がる様な鋭い突きを放つ。

 

「何故、応えられないと決め付けるのですか!?私は、此れ程に貴方と渡り合える‼︎貴方が危惧する様な事は、決して起こさせはしない‼︎其れ程までに私を想ってくれるのならば、私の気持ちにまず答えて下さい‼︎」

 

刹那はその一撃を辛くも払い除け、辻目掛けて大上段から打ち掛かる。辻は刃を寝せて一撃を受け、反撃を繰り出す。刹那も呼応して更に斬撃を放つ。

 

「出来るものかよ‼︎物事に絶対なんてものは何一つ無いんだ!俺はお前を殺してしまうかも(・・)しれない‼︎今もお前を断ち割りたい!こうしてお前の身を心底案じている筈なのに、それと同等以上にお前を害したいんだ‼︎それなら、そんな真似をする位なら‼︎お前が他の男と幸せになるのを見ている方が、何倍もマシってものだ‼︎だというのにお前は何なんだ、馬鹿女がぁ‼︎」

「分からず屋‼︎」

「どっちがだぁ‼︎」

 

子供の癇癪のように怒鳴りつけ合いながら、二人は永遠とも言える打ち合いを続ける。

 

 

「……餓鬼の喧嘩か、全く」

「人はこれを青春と呼ぶのだろうさ。楽しめもせん酒が呑みたい気分だよ私は、吸血鬼?」

 

 

何合目になるかという打ち合いの末。

 

「ご……フッ!?」

 

辻が不意に咳き込み、新たな血塊を吐き出す。刹那はそんな隙を見て攻め入ろうとはせず、大きく翼をはためかせて風を孕み、辻から距離を取る。

 

『おおーーっと辻選手再び吐血ぅーっ‼︎矢張りダメージは甚大の様です!残り時間もそろそろ終盤に差し掛かるこの状況、決着は其れ程遠くないのやもしれません‼︎』

『桜咲選手も好機に付け込まず敢えて距離を取りました。恐らく決着の一撃を見舞おうという心算でしょう』

 

「……どう思うよ?」

「多分喧囂の言う通りだろ。桜咲の奴はこれ以上辻と打ち合っていたら残った左手も保たねえんだろうよ。あれだけ弾き飛ばしを喰らえば握力も相当怪しい筈だぜ」

「一発勝負なら桜咲ちゃんが言わずもがなで有利だよ。雷撃(・・)飛ばされたら辻に対抗手段は無いもの」

「……それでいて辻が距離を詰めにいかないのは、何か秘策があるのか……?」

 

「……いやいや待て。ンなこと言ってる場合じゃ無えだろ?いい加減止めに入るなら今じゃねえのか、このままじゃ下手しなくてもどっちか死ぬぞ?」

 

固唾を呑んで見守るバカレンジャー達とはおそらく違う意味合いで唾を飲み込んだ篠村が、いい加減限界だと言う様子で口を挟む。

 

「阿呆かお前は。無粋って単語知ってんのか?」

「阿呆はお前らだ。命の成否の瀬戸際でそんなことに構っている場合かよ!?」

 

篠村の言葉に愛衣は顔を青く染めながらも頷き、高音は僅かに迷いを表情に浮かべながらも篠村の傍らに立つ。会話がこのまま成立しないのならば実力行使に出る算段である。

 

「待て。……気持ちは解るし、立場的にも心情的にもお前に賛同だが篠村。ここは抑えろ」

 

しかし、魔法教師という地位に立つ杜崎迄もが中村達に賛同した。

 

「何故です杜崎先生!?このままじゃ……‼︎」

「そうだな、しかしこいつらは筋金入りの馬鹿なんだ」

 

篠村の抗議を途中で遮り、杜崎は苦々し気に語る。

 

「ここで止めてもあの馬鹿二人は必ず同じことを引き起こす。一生縛り付けてでもおかん限り奴等は同じ事を仕出かすだろう。…止める事は、不可能だ」

「しかし、杜崎先生‼︎」

「俺()を信じろ」

 

高音の叫びに、杜崎は重々しく言い放つ。

 

俺と高畑先生(広域指導員)が居る限り、断じて人死になぞ出させはせん」

 

杜崎の断言に、静かに頷いて賛同を示す高畑。

 

「…木乃香………」

「ウチ……ウチ。せっちゃんと、辻先輩を、信じるわ…………‼︎」

 

身を案じる明日菜の言葉に、木乃香は掌を強く握り締め、はっきりと答えた。

 

「……どうかしてるぜ、畜生…………!」

 

篠村の力無い言葉を背に、刹那と辻は再び間合いを置いて対峙した。

 

 

 

「……長くはもう。保たないのでしょう?辻部長。……これで最後にしましょうか…………」

「………そう、だな……………」

 

地上から数mの高さにて静止しながら唱える刹那に、辻は失血により青白い顔をしながらも確かに頷いた。

 

「……体勢は私に有利ですが、よもや文句はありませんね?……あったとしても聞き入れませんが」

「此の期に及んで無粋な事は言わんさ、好きに仕掛けて来いよ桜咲。……全く、 不器用なものだな俺もお前も…………」

「……そう、ですね…………」

 

二人はクスクスと場違いに軽妙な笑いを浮かべ、暫しの間を置いて表情を引き締める。

 

「……では、行きます」

「来いよ」

 

「貴方を誰にも渡さない」

「お前を二つに断ち割りたい」

 

「「………………………っ‼︎‼︎」」

 

二人の間に闘気が満ちて。

 

『……か、観客の皆様、身を低く…!?』

『総員防御体勢を‼︎』

 

「ちぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇいぃぃぃっ‼︎‼︎‼︎」

「神鳴流決戦奥義‼︎真・雷光剣‼︎‼︎」

 

刹那、斬撃と雷撃が交錯し、闘技場内は光に包まれた。

 

 

 

「…………どうなったや?」

「……闘技場吹っ飛んでんぞあの阿呆共…………」

「……阿呆共じゃ無くて阿呆でしょ……吹っ飛ばしたの桜咲ちゃんじゃん…………」

「……関わっている時点で辻も同罪だろうよ…………」

 

凄まじい衝撃と爆風が観客席内を襲ってから数瞬経過()って。

身内を庇ったバカレンジャーが些か煤けながらぐったりとした様子で言葉を交わす中、慌てた様な朝倉の声が場内に響き渡る。

 

『……ご、ご来場の皆様、ご無事でしょうか!?何やら辻選手と桜咲選手の渾身の一撃?により光と衝撃に包まれた場内でしたが、二人の安否はどうなっているのでしょうか!?』

『いやはや、凄まじい威力でしたね。水蒸気と土埃で何も視認出来ませんが、果たして……?』

 

喧囂の言う通り、もうもうと舞う二つの粒子によって闘技場内は完全に隠されていた。軈て僅かな風により煙幕が徐々に散らされ、内部の様子が露わになると同時、観客席からは低いどよめきが上がった。

 

最早跡形も無く破壊され、所々が水堀から流れ込む水によって浸水した闘技場の隅。全身から黒煙を上げる辻がピクリとめ身動ぎをせずに倒れ伏していたからである。

 

『つ、辻選手ダウーン‼︎どうやら桜咲選手の何だかよく解らない光る一撃?を真面に喰らった様子です‼︎これは今迄の負傷も相俟って辻選手の生命が危ぶまれますが……‼︎』

『……皆様、逆側のやや上方をご覧下さい。桜咲選手は未だ宙に浮遊しています』

 

喧囂の言葉に煙の晴れた空へ皆が視線を向けると、其処には依然として翼を広げ、宙に浮かぶ刹那の姿があった。

 

「せっちゃん‼︎」

「え……これ、刹那さんの勝ち…ってこと!?」

 

倒れ伏す辻と飛び続けている刹那。一見して明瞭に分かれている勝者と敗者の図に、思わず声を上げる少女達。

 

「……いや………これは………‼︎」

「寧ろ危険なのは、桜咲だ……‼︎」

 

しかし、杜崎と高畑が発した言葉に、3ーAの少女達の頭に疑問符が浮かぶ。

 

「……ど、どういう…………」

「桜咲さんは空中に居たのです、普通に考えて無傷の筈では…………」

 

「……違うアル…………‼︎」

 

夕映の言葉を否定するのは、冷や汗を浮かべて拳を握る古だった。

 

「…辻の斬撃は、確かに届いてたアルよ、刹那に…………‼︎」

「……宛ら飛ぶ斬撃。…刹那の斬空閃と同様の一撃で、ござろうな…………‼︎」

 

「え………………!?」

 

心無しか顔の青い楓の言葉に木乃香が空中の刹那を振り仰いだその刹那。

 

空中の刹那の頭頂から股間迄に、一直線の線が走り抜け、次の瞬間溢れた鮮血が宙に舞った。刹那はそのまま糸の切れた人形の様に力を失って落下し、闘技場へ墜落すると床の残骸に血溜まりを作った。

 

「……っっ‼︎せっちゃん!?!?」

「刹那さん!?」

 

木乃香と明日菜と時を同じくして会場内から複数の悲鳴が上がる中、刹那と辻を結ぶ同一線状の観客席の屋根、座席、床材。更には闘技場の床迄もに一直線の亀裂が走り、深い断裂を生んだ。

 

「……うっわ危っな〜〜……‼︎」

「つ、辻 (はじめ)め‼︎私達を殺す気か!?」

 

「あ、危ねえ、何が……!?」

「ざ、斬撃だ‼︎辻の野郎の斬撃がここまで‼︎」

「巫山戯んな!?漫画かなんかじゃあるめえし……‼︎」

「実際に起こってんだから認めろよ‼︎」

 

幸い数名の武道家達が事前に一般人の観客を避難させていた為に怪我人は発生しなかったが、常識外の超現象に観客達は動揺を隠せずに騒ぎが引き起こる。

 

『皆様‼︎只今被害確認の為にスタッフが参ります‼︎お怪我のある方は直ちにお申し出を………‼︎』

『凄まじい一撃の応酬でした。結果として二人共闘技場内に倒れた状態となった為、実況の朝倉に代わって私喧囂がダブルノックダウンの定義に於いてカウントを初めさせて頂きます』

 

「言ってる場合か馬鹿野郎……‼︎」

「待てや、篠村」

 

この後に及んで試合の中止を告げない大会側の対応に業を煮やした篠村が闘技場内へ飛び込もうとすると、中村がその腕を掴んで制止した。

 

「……いい加減にしろよテメエ……‼︎手を離せや、ぶち抜くぞ!?」

「こっちの台詞だボケ。それによく見ろや、立つぞ二人共」

 

「せっちゃん!?」

 

時を同じくして響き渡った木乃香の悲痛な悲鳴にハッと篠村が闘技場内を振り返れば、刹那と辻が緩慢に身を起こそうとしている光景が目に飛び込んで来た。

 

「……は……は。身体が、いうこと…聞かねえや。……流石だ、なぁ、桜咲…………‼︎」

 

辻は未だ全身から煙を上げながらも緩慢に上体を起こし、同じ様に泥土の中でもがく様にして身動ぎをする刹那へ呼び掛けた。

 

「…………、こちらの、台詞です、よ……辻部長…………‼︎……何時、この様な、斬撃を身に付けられたので…………!?」

 

刹那は夥しい血液を正中線に走った傷から溢れさせながらも、徐々に身体を起こしつつ尋ね返した。

 

「……こっそり、な……お前の技が羨ましくて……練習して、たんだよ……単発とはいえ、ここまでの威力は、過去最高だが、な…………‼︎」

 

二人は凄絶な笑みを浮かべながら、喧囂が10カウントを告げるその前にその両脚で闘技場の床を踏み締めた。

 

『た、立ち上がりました両選手‼︎両者共既に言葉で言い表せない程の重傷です‼︎ 二人共生命尽きるまで止まる事は無いとでも言うのでしょうか!?』

『……いえ、桜咲選手の傷は…………!?』

 

「だな」

「ああ、頭蓋骨までイってねえ」

「内臓は肋骨(ほね)守護(まも)られたね。まあ普通に重傷だけれど、生命に関わる傷じゃ無いよ」

 

豪徳寺と山下の言葉通り、刹那の身体に走る傷はギリギリの所で急所を断ってはいなかった。

 

 

「……手加減、されたのですか?辻部長?」

 

傷口が泡立ち、止めどなく溢れていた血液の量が次第に減少し、塞がっていく。

刹那は目元に流れ込んだ血を拭いつつ、静かにそう尋ねた。

 

「まさか、な……お前の、身体が人のままなら、両断出来てたんじゃあ、ないか……?…………強いなあ、桜咲。断つつもりで、全力で。……振るったのに、届かなかったのか………………」

 

辻は今にも倒れそうな足取りで一歩、二歩と前に出ながら、力の無い笑みを浮かべてそう告げる。

 

「……ええ、そうですよ辻部長……私は、貴方にはやられないって、…そう、言ったでしょう…………?」

 

刹那も覚束ない足取りながら前へと足を進め、二人は鼻も触れそうな程の近距離で見つめ合った。

 

 

『こ、これは……』

『朝倉。……実況解説失格だが、今だけは黙ろうか…………』

 

 

「……どっちの、勝ちなんだろうな、これは…………?」

「……さて。もうそんな取り決めに…………いえ、始めからそんなものに、意味は無かったのでは、無いですか……?」

「…………俺が、受け入れるか、どうかだと?」

「はい」

 

迷い無く頷いた刹那に、辻は目元を掌で覆いながら語り掛ける。

 

「……桜咲…………」

「はい」

「………俺は、異常者なんだ…………!」

「知っています」

「…………俺は、お前を二つに断ち斬りたくて、仕方がないんだ………‼︎」

「承知していますよ」

「……………俺は、俺は………………‼︎」

「大丈夫です、辻部長。貴方の望みも如何にかして叶えさせてみせます。私は元より化け物の身です、必要とあらば、定命の定めすら打ち破って更なる人外へと、身を墜とす事に躊躇いはありません……‼︎」

 

刹那の言葉に、帰る家の定まらない少年の様であった辻の眼に、確かな力が宿る。

 

「……桜咲」

「はい」

「…………沢山、沢山迷惑を掛けることになると思う。でも、それでも……………………‼︎」

 

 

 

「……俺と生涯、添い遂げてくれ…………‼︎‼︎」

「喜んで。離せと言われても、離しません…………‼︎‼︎」

 

 

 

二人はしっかりと抱き合い、愛の言葉を交わした。

 

 

「…………ああ、安心した、ら…………力が、抜けちゃいました………………!」

 

痛い程に抱き締め合ってから暫く。

刹那はへたり込む様に腰を下ろし、辻に両肩を支えられていた。

 

「……御免な、桜咲…………」

「いいんです、こうして私を受け入れてくれたんですから…………!」

 

刹那の身体に走る数々の負傷を見下ろして、悲痛な表情で謝罪する辻に対して、刹那は朗らかな表情で受け答える。

 

「……桜咲、棄権しろ。後の事は俺が引き受ける」

「………しかし、辻部長の方が余程…………」

「お前の本願は、果たされたんだろ?……安心しろよ、お前の()を信用しろ…………」

 

辻の言葉に躊躇いを見せる刹那に、辻は静かに屈み込んで目線を合わせると静かに、されど力強くそう告げた。

 

「………………解りました」

「ああ」

「…………後は、お任せします、…………(はじめ)、さん…………」

「……任せておけ、刹那」

 

二人の顔はゆっくりと近付き、ゆっくりと互いの唇が合わさった。

 

 

 

 

 

 

「……棄権します、朝倉さん」

「…………こんの馬鹿……‼︎……心配掛けさせんじゃ無いわよ、本当に…………‼︎‼︎」

 

朝倉は目元に浮かんだ涙を拭い、マイクを構えると高らかに宣言した。

 

『皆様‼︎只今桜咲選手が棄権を告げました、まほら武道会第一試合の勝者は、辻選手です‼︎』

 

その言葉に、会場中から地鳴りのような歓声が上がった。

 

『何を隠そうこの試合、単なる勝敗の他に二人の恋の行方も掛かっておりました‼︎先程の光景をご覧頂いていた皆様にはお解りのことと思いますが、今この瞬間‼︎この麻帆良に新たなカップルが誕生致しました‼︎新たな人生の旅路を比翼連理にて歩むこととなる二人に盛大なる拍手をお願い致します‼︎‼︎』

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ‼︎‼︎」

「恋の成就に殺し合いとか阿呆かお前らーー‼︎」

「お幸せにぃぃぃぃぃぃぃ‼︎」

「盛大に爆発しやがれ辻ぃぃぃぃっ!?」

 

 

「……おい朝倉………………」

「散々心配掛けた罰ですよヘタレ先輩!先ずはお嫁さんの大親友をどう宥めるかお考えになったら如何ですかぁ?」

 

フン‼︎とそっぽを向いた朝倉の言葉に首を向ければ、半泣きになった木乃香を筆頭に顔見知りの連中が闘技場内へ雪崩れ込んでくる光景が辻と刹那の目に入って来た。

 

「……どうしますか………?」

「……素直に謝るしか、無いんじゃないか…………?」

 

顔を見合わせて同時に笑み溢れ、刹那と辻は穏やかな表情で互いの身体へ回した手に込める力を強めた。

 

 

 




閲覧ありがとうございます、星の海です。
いやはや、いざ書き始めるて中々当初のプロット通りとはいかないものです、納得の行く決着を書き上げるには思いの他時間が掛かりました。
辻と刹那の勝負は、刹那の粘り勝ち、でしょうか?もっとも辻は最後の一撃、本気で断ち斬るつもりであっただけに、耐え切った根性勝ちとも言えるやもしれません。
はてさて次回は場合によってはこれ以上に酷い光景が広がるであろう山下とエヴァンジェリンの試合です。UQでは何やら刀太と雪姫のカップリングが濃厚な気配になってまいりましたがこちらはこちらの恋愛観を突き詰めさせて頂きます。次回も楽しみにお待ち下さい。
それではまた次話にて、次もよろしくお願いします。

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