お馬鹿な武道家達の奮闘記   作:星の海

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本当に大変遅くなりました。ネギと高畑の試合は一話にて終了です。


20話 まほら武道会本選第5試合 ネギVS高畑

「………………………」

 

「そんな子供みたいにブスっとした顔をしていないで、目を閉じてお休みになって下さい豪徳寺先輩。お怪我は魔法で治して貰ったとの事ですけれども、心身共に消耗しているから休息させるように、と先生が仰っていましたよ?」

 

試合が豪徳寺の棄権という形で終わってから、豪徳寺は直ぐに担架で運ばれて治癒術士と医師の集中治療を受けさせられた。

豪徳寺の受けたダメージは激戦に見合った相当なものであり、全身打撲や裂傷から始まって肋骨の半数以上が折損、胃の外壁が破れて軽度の内臓破裂まで引き起こしていたのである。

 

「『腹腔内出血と腹膜炎を併発していたのに何故君はショック状態にもなっていなければ意識消失にも至っていないんだ!?』……なんて、随分と慌てていらっしゃいましたね、お医者様も……」

「……意識不明の重体だった方が良かったみてえな言い方はそれでも医者か?…って話だがな……」

「あらあら、漸く口を開いてくれましたね、先輩?」

 

行儀良く椅子に腰掛けながら甲斐甲斐しく世話を焼く千鶴は何が可笑しいのかクスクスと口元に手を当てて上品に笑い、そんな様子を幾分恨みがましい気分でベッドに横たわった状態の豪徳寺は見上げるが、ゆったりとした服越しにも圧倒的質量を伺わせるその胸部装甲(お◯ぱい)を下から凝視する羽目となった為、一瞬の硬直の後豪徳寺は身体毎ソッポを向いた。

 

「先輩?」

「何でも無え。…………なあ、那波………………」

 

……無様な所見せちまって、悪かった……………………

 

豪徳寺は寸前まで出掛かったその台詞を呑み込んだ。

豪徳寺としては全身全霊でクウネルとの勝負に挑み、全力を出し切った。勝てなかったのはクウネルの反則擬き云々は関係無く己の実力不足が原因であり、敗北という結果に忸怩たる想いはあれど、敗けという事実自体を恥と豪徳寺は思っていない。

それでも、豪徳寺は千鶴を前にしてバツの悪い想いを抱いていた。勝つと断言して、格好の良い所を見せてくれという求に任せろと見栄を切った上での初戦敗退という結果が、単純に豪徳寺はきまりが悪かったのである。

 

とはいえ、何を言っても言い訳にしかならねえよな…………

 

加えて千鶴には、決着間際の様子からして相当な心労を掛けてしまった自覚がある。開きかけた口を堅く閉ざし、言い訳などという漢らしくない真似はすまいと、目を閉じて豪徳寺はベッドに横たわった。

 

「格好良かったですよ、豪徳寺先輩」

「…………ああ?…………………」

 

しかし、静かに微笑みを浮かべながら千鶴が投げ掛けたその言葉に、豪徳寺は即座に目を見開いて千鶴の顔を凝視する。

 

「……俺の何が。…格好良かったってんだよ、お前は?」

 

低く、唸る様な声色で豪徳寺は千鶴に言葉を返す。

 

「何が、と言われれば、そうですね………語弊のある言い方になりますが、全部という言い方になるのでしょうか?」

 

そんな、ともすれば凄んでいるとも取られかねない豪徳寺の威圧的な態度にも動じず、千鶴は言葉を重ねる。

 

「私、武道家の方達の事はよく解りません。先輩が拘っているそれ(・・)を理解しようと努めて大会を観ていましたけれど、やっぱりよくは解りませんでした」

 

クラスメートや、懇意にしている先輩達が傷付いているのは単純に見ていて辛いですしね。と、千鶴は苦笑する。

 

「…那波……………」

「でも、それでも。皆さんが生半可な気持ちでは断じて勝負の場に臨んでいない事だけは、痛い程に理解(わか)りました」

 

気遣いか、謝罪の言葉か。何事かを告げようとした豪徳寺を静かに遮り、千鶴は正面に豪徳寺の顔を捉えてはっきりとそう続けた。

 

「闘いが、勝負事が、争いが生き甲斐だ。……そんな考え方は正直言って嫌いです。其処まで行かずとも、暴力に訴えなければ物事を解決出来ない人も私は好きになれません。…でも先輩達は違うんですね、そういうのとは。近い(・・)ひともいるけれど、それだけじゃない。結局は生き方の一つなんだと、そう思えるようになりました」

 

強くなりたいバカレンジャーやネギ達。理由は千差万別であり十人十色だ。言わば強いのが好きだから、とでも言うべき中村や豪徳寺、愛する者の為にと理由の増えた辻や山下の様な者も居る。強さを身に付ける事が人生に於ける己が価値を高めると信仰にも似た想いを大豪院は抱く。

手段でもあり、目的でもある「強さ」という一つの価値観を豪徳寺達は重要視している、という。言ってしまえばただそれだけの話なのである。

 

「何かに情熱を持って、一生懸命になれる人を私は好ましく思います。だから、闘っていた…いえ、喧嘩している豪徳寺先輩は、活き活きしていて楽しそうで……」

 

格好良かったですよ。と、千鶴は悪戯っぽくはにかんだ微笑みを浮かべた。

 

「……………俺は…………………」

「敗けてしまったならその人は格好悪くて、みっともないんですか? 桜咲さんを、エヴァンジェリンさんを、楓さんを。…豪徳寺先輩は勝負に敗けたから、見損ないましたか?」

「違う」

 

諭すような千鶴の問い掛けを、豪徳寺はきっぱりと否定した。

 

「そうじゃねえ。そんなつもりは、無いんだ。…………ただ、俺は勝ちたかった。ネギの為にも、俺の矜持の為にも………後は、お前に大見栄切ったから、な。……敗けたけど(・・)、格好良かった。なんてしょっぱい事お前に言わせたくなかったし、言われたくなかったんだ………ああ、悔しいんだよ、それが……………!」

 

何時の間にか握り込んでいたシーツに皺を寄せながら、豪徳寺はそう溢す。千鶴は笑みを困ったようなそれに変え、渋面の豪徳寺を見やっていたが、軈てそっと上体を前のめりに倒して豪徳寺の頭を掻き抱く様に抱きしめた。

 

「……っ!?おい、那波……!!」

「在り来たりな台詞になりますけれど、次がありますよ豪徳寺先輩」

 

ムニョリ、と柔らかく重厚な質量を感じさせながら己の頭を半ば包み込んでしまった千鶴の圧倒的胸部装甲(Fカップおっ◯い)の接触にいろんな意味で焦る豪徳寺だったが、千鶴は構わず額を豪徳寺の頭頂部にコツン、と当てて語り掛ける。

 

「皆さん言っていましたよ、後は任せておけって。豪徳寺先輩は、全力を尽くしたんでしょう?成果が伴わなかったのが悔しい気持ちは解りますけれど、それでも結果は結果です。直ぐには切り替えられないでしょうけれど、受け入れてください。豪徳寺先輩は、もうやる事をやったんです。……お願いですから、今は休まれて下さい先輩。こんなに傷だらけになって、あんなに血を吐いて……ボロボロに、なってしまって…………」

 

豪徳寺の頭へ上から囁く様に掛けられていた千鶴の声が、僅かに震えを帯びる。

 

「…………心配、したんですよ?…私はまだ、貴方にとって何でも無くて、厚かましいって解ってて。………それでも……………」

 

倒れた貴方を見て、胸が張り裂けそうだった。と、千鶴は小さな震える声でそう口にした。

 

「……今は、此処にこうして居て下さい。先輩………………」

「………………ああ、解った…………………………」

 

すまねえな、と。

言葉としては口にせず、胸の内だけで豪徳寺は呟いた。

 

 

 

「…………那波、大人しくしてっからもう放せ、つうか離れろ!」

「あらあら、何を慌てていらっしゃるんですか豪徳寺先輩?うふふ……」

 

 

 

 

 

 

「あ~あ~あぁぁぁぁぁ畜生!!豪徳寺の腐れ朴念仁がぁあんなええモン持ってる超美人なおにゃの子に付き添われといてどぅおぉぉぉせ敗けた何だと不貞腐れて碌に相手もしてねんだろな勿体ねえ!!何故神は欲する天才無敵最強美形様に与えようとはせず望まぬ馬鹿阿呆リーゼントなぞに与えてしまうのか世界が間違っていやがる!?」

 

「いい加減喧しいから黙れ頭の中に味噌の代わりとして糞の詰まった糞以下の大糞。もう試合も始まる頃合いだろうが」

 

選手席と席の間に跨る様にしながら大仰な仕草で天を仰ぎ、聞くに堪えない罵詈雑言を漏らしているシリーズ・人間の屑(中村)に杜崎の冷たい合いの手が突き刺さった。

 

『さあ皆様永らくお待たせしたしました!色々な意味でトンデモな、なんて第一試合からそんなのばっかりな気もしますがそれは置いておいて!!兎に角凄まじい先の第四試合に於いて重傷を負い、安否の気遣われた豪徳寺選手でしたが、先程医療スタッフから命に別状は無いとの報せがありました!これより第五試合を開始させて頂きます!!いよいよ本戦一回戦も後半に移って参りますが、この試合はある意味これまでの試合とは趣向の異なる代物と、或いは成り得るやもしれません!!たった一人で学園内幾多の抗争、決闘、馬鹿騒ぎを鎮圧し、麻帆良の半人外達の挑戦を退け続けついた渾名は死の眼鏡(デスメガネ)!!名高き学園都市の暴徒鎮圧兵器、荒くれ共の恐怖の象徴!見た目は老け顔の中年…もとい渋目の大人な教師でありながらその実力は学園広域指導員最強にして学園都市最強の呼び声も高い!!輝く眼鏡は死神の眼光か!?ハードボイルドなナイスガイ高畑・T・タカミチ、満を持してのエントリーだぁぁぁぁぁっ!!』

「老け顔は兎も角、中年呼ばわりは止めてほしいなぁ……」

 

『『『『おおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!!』』』』

『死ねや死の眼鏡(デスメガネ)ェェェェェェッ!!』

『いーや、そんなガキにやられんのは俺ぁ断じて承知しねえ!テメェを殺るのは俺だ死の眼鏡(デスメガネ)ェェ!!』

 

「高畑先生に何てこと言ってんのよーーっ!?」

「明日菜ー、落ち着きぃやーどうどう」

「あの、お嬢様…それは馬の宥め方では………?」

「まあ鼻息の荒さはそっくりアルな…だいじょぶアルか楓?」

「普通に動く分には問題無いでござるよ。拙者よりも辻殿や刹那は休んでいなくてよいのでござるか?」

 

朝倉の何気に失礼な選手紹介に苦笑しながらゆっくりとした足取りで入場して来た高畑の姿に観客(主に武道家達)が一斉に罵声とも歓声とも取れない、只管に熱が篭った咆哮を上げる。そんな盛り上がりを余所に、ウガーッ!!と般若が萌えキャラに見えてしまう様な形相で朝倉に向かって吼える明日菜をほわっとした笑顔で宥める木乃香に、辻が座っている車椅子の背後に控えながら控え目にツッコミを入れる刹那と一行はある意味平常心だ。心配気に問い掛ける古に笑顔で答えつつの楓が発した問いに、辻は苦笑しながらも答えた。

 

「まあ本当なら試合の時間迄は安静にしていた方がいいんだろうし、まだまだ本調子じゃない桜咲…いや刹那には尚更休んでいて欲しかったんだけどね……」

(はじめ)さんが征くと言うならば私が寝ている理由はありません」

 

そんな辻に皆まで言わせずにきっぱりと言い切る刹那に、辻は困った様な笑みを深くしながらも言葉を続ける。

 

「…まあこんな調子でね。 命がどうたら、って話じゃ二人共無いのは確かだ。一先ずスルーしておいてくれれば幸いだよ」

「イチャイチャしてんじゃねえよ血塗れカッポーが羨ましくなんて無いんだからねっ!?」

「黙れと言うとろうが」

「ホゲェッ!?」

 

最早息をするように宙を舞う中村を当たり前にスルーしつつも、期待六割不安四割、といった綯い交ぜな表情を浮かべている辻や何時もより表情の険しい大豪院の様子に、夕映がふ、と口元を緩めて問いを放つ。

 

「…何か落ち着かなさ気なご様子ですが、矢張りネギ先生の事が気になりますか?」

「……ま、自分の技術を教えてる時点で、そんなつもりは無くてもネギ君はある意味弟子みたいなものだからね…………」

「部活の後輩の試合を見るように、とは中々いかんな。ましてや色々と柵の多いこんな大会だ、気にせず伸び伸びとやってこいとは言ってあるが、ネギの性分からしてそう簡単に割り切れはせんだろうからな………」

「まあぶっちゃけ単純な戦力比じゃネギが勝つ確率なんざとある学園都市の改造美幼女、木◯ 那由他ちゃんの彼方に飛び去っちまう位低いんだが、教えた俺らも実際闘うあいつも闘る前から敗ける気で勝負を挑むなんざ性に合わねえんでな。勝つ算段立てて送り出した以上は結果を見届けなきゃあなぁ?」

 

「当たり前の様に復活しますね………」

『中村さん、強いですから!』

 

辻と大豪院に続けて、鼻血を滝の様に垂れ流しながらも平然と帰って来ながらあっけらかんと述べる中村のタフさに今更ながら薄気味悪気に問いを発した夕映が呟き、さよが明るく言葉を返す。側から見れば何処か歪んだ光景である。

 

「……勝算があると思うのか、そこの馬鹿?私が見た所あの老け顔は、実力的に人の世では世界で少なくとも百より上に入るであろう正真正銘の本物だ。余程の手加減でもあれがせん限りは十中八九あの眼鏡の勝ちで話は決まりだと思うがな?」

 

そんな馬鹿騒ぎに対して冷静を通り越し、いっそ冷徹とさえ形容出来る調子でフツノミタマは中村へ言葉を投げる。

 

「いんや?ぶっちゃけ敗けて元々って評価が当然だしご意見に関しちゃご尤もだよフツちゅわん。ま、上手くハマれば勝てねえではないってレベルだが策は授けてあるからなぁ。細工は流々、仕上げを御覧じろってな」

「………はっ………………」

 

暇潰しにはなる事を期待しているよ、と呟いて豊満な胸の下で腕を組み、ドッカと椅子の背もたれに体重を預けるフツノミタマの乳の揺れ具合をしかと凝視しながら中村は頷く。

 

「…あ、あのー、やっぱりネギ先生はー………」

「……ん〜まぁ厳しいアルな〜〜………」

「高畑先生が中村殿達を凌ぐ実力者であるのは紛れもない事実でござる。ネギ坊主はこの二ヶ月でめざましい成長を遂げたでござるが、両者の実力は蟻と象まで行かずとも、兎と獅子程には遠い差でござろうなぁ」

「……つまり勝負になるかどうかも怪しいレベルという訳ですね…………」

 

「……いやな、お前ら。魔法使いとしての高畑先生の事をお前らがどれ程知ってるかは俺の知るところじゃねえけど、あの人は実力に於いて本国からAA+の評価を頂いてる本物(・・)だからな?とある事情で偉大な魔法使い(マギステル・マギ)の称号こそ得ちゃいないが、それに匹敵する程の功績を上げている大魔法使いなんだ。ナンボ天才少年だろうが未だ魔法使い見習いに過ぎないネギ先生に勝ち目なんぞある訳無いだろうが」

 

不安気なのどかの声を皮切りに言葉を交わす古達に対して呆れた様に声を掛けるのは渋面を作る篠村である。

 

「……そう口にしながら随分と熱心に技術を仕込んでいたじゃない。貴方も実の所期待しているのではなくて?」

「やるからには全力を尽くすさ。可能性は0じゃあ無い(・・・・・)、そうだろ?」

「…………ふん………………」

「お、お兄様、お姉様!今は応援に集中しましょう!!そろそろですよネギ先生が出てくるの!!」

 

空気がそぞろ悪くなり始める前に慌ててフォローに入る愛衣の声に応じる様に、朝倉が高畑の後に入場する小さな影の存在を紹介し始める。

 

『続きまして、そんな麻帆良の最終兵器(リーサルウェポン)に挑むのは何となんと!!どう見ても小学生高学年を越えてはいないであろう年端もいかぬ小年です!ご存知の方も多いのではないでしょうか、齢十にして麻帆良女子中学校で教師を営む可愛らしい容貌の天才少年!そのあどけない容姿に似合わぬ多彩にして強烈な武術により並み居る麻帆良の魔人達を薙ぎ倒し、本戦進出に漕ぎ着けました文武両道の小さな怪物。英国出身の美少年拳士、ネギ・スプリングフィールドォォォォォォッ!!!!』

 

『ヘーイ!!ガンバルよショーネン!!』

『うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!気張れネギ先生、デス眼鏡のクソ野郎を討ち滅ぼせぇぇぇぇぇぇ!!』

『キャアァァァァッ!頑張ってネギ君〜〜!!』

 

「……………っ!よし!!」

 

朝倉の紹介に促される様にネギは気合いの声と共に闘技場内へ足を踏み入れる。予選で雌雄を決した半人外(部長クラス)や可愛いもの好きの女性客達から歓声や声援の上がる中、ネギはゆっくりと階段を上り高畑に正対した。

 

 

 

 

「……そういえば中村、前の試合で豪徳寺をパンチ一発で吹き飛ばしたとかいう褐色の巨漢が現れた時にえらく取り乱してたらしいが、何だったんだ?」

「……ん~~まあ何だ、ヤベえ奴だってのは他の連中も見た瞬間に解ったみてえだから俺が特別どうこう、ってんじゃねえと思うんだけどよ?なーんかこう、クるモンがあったんだよ気になるっつーかなんつーか……後とりわけイケメンでも

無え筋肉達磨だったってのに妙にムカつく感じがしてよ~~……」

 

何だったんだろなあれぁ?と、中村は首を傾げる。どうやら当人にも過剰反応した明確な理由は解っていないらしい。

 

 

 

「…緊張しているかい、ネギ君?」

「……うん、正直ね…………」

 

ふ、と微笑んで声を掛けてくる高畑にややぎこちない笑顔で応え、ネギは一つ大きく息を吐いてから高畑へと言葉を放った。

 

「タカミチ。僕、今日は頑張るよ。…父さんに負けないために、っていうのも勿論あるけれど、何より僕を此処まで鍛え上げてくれた辻さん達に応える為に。だから……」

「ああ、解ったよネギ君」

 

高畑はネギに皆まで言わせず、こくりと頷いた。

 

「本気でいっていいんだね?」

「…うん!!」

 

 

『最強の学園広域指導員VS噂の子供先生!!トトカルチョは死の眼鏡(デスメガネ)・高畑圧倒的人気です!確かにこの対戦、結果は火を見るより明らかにも思えますが………!』

『しかし組み合わせに比較的恵まれたとはいえ、まぐれ(フロック)や単なる勢いだけでやられる程麻帆良の部長クラスという概念は安くはありません。予選で見たところ、子供先生は五強バカレンジャーのそれぞれ納める武術をかなりのレベルで習得している様です。外見で判断してはいけないという話でしょうね』

 

「……やれやれ、高畑先生も程度はどうあれやる気(・・・)か。大人しく収めてはくれんようだし、どうなることやら…………」

「…まぁ今更穏便に試合収めた所で遅えダロ。一回戦の半分が漏れなく血塗れジョートー魔法バレジョートー、テカゲン?何ソレ美味しいノ?的なR-18指定確実の凄惨試合だったんだからヨ」

「マァあのヒゲ先生が幾らか手加減したとしても、順当に行けばネギセンセーに勝ち目が無いのはお馬鹿大将の言った通りですヨネー、どうするつもりなんでしょうカー?」

「………高×ネギ?ネギ×高は無いカ…………」

 

「やかましいわ」

 

ぷりんの頭をポパチョン!と水っぽい音を立ててはたきながら杜崎は溜息を吐く。

 

……自分の立場は兎も角、心情的には好きにやらせてやりたいとは思うのだがな…少々意味合いは違うが、すまじきものは宮仕え、か…………

 

落ち着いた静かな表情こそ保ってはいるものの、入場する前の様子からして明らかにネギとの試合を楽しみにしている様子だった高畑の姿を思い返して渋面を作る杜崎に、中村がへらへらと軽い笑みを浮かべながら声を掛ける。

 

「へいへーいどうしたよゴリランボー?何がンなに心配かは知らねえがあんま怖え顔すんなやガキが泣くぜ?」

馬鹿(同類)が見ても一目でそれと解る様な大馬鹿面よりはマシだろうよ。……それよりも貴様ら、ネギ先生に余り妙な事を仕込んでいまいな?一緒になってお祭騒ぎに参加している以上偉そうな事を言えた義理では無いが、既にあのローブ男が派手にやらかしている現状だ。あまりやりすぎない(・・・・・・)ようにしてもらいたいものだが…………?」

 

中村の軽口をばっさりと斬って捨てながら杜崎は辻達へと釘を刺す。既に両選手が入場している段階で何を言っても無駄だと半ば理解はしていても、確認をしておかなければ最悪の事態が起こった時に素早い行動が出来ない為である。

 

「安心して下さい杜崎先生。魔法の存在秘匿の重要性は、あれから私達も勉強して意義は充分理解しているつもりです」

「勝たせる気で技術(わざ)や心意気は仕込みましたが、ネギ先生は聡明で常識を弁えた少年です。杜崎教諭が案じているような事態にはならないでしょう」

「うんうんその通りだぜゴリポン、安心しなぁ?」

 

「…もういい、それ以上喋るな。逆に不安が増して来た……」

 

「……いや、尋ねといてその物言いは流石に理不尽じゃありませんか杜崎先生………?」

 

にこやかな笑みを浮かべて(大豪院ですら若干表情が柔らかい)とりなして来る辻達の様子に、何かしら一波乱あるであろう事を半ば確信した杜崎は額を片手で押さえて呻く様に返し、そんな杜崎に篠村がおっかなびっくりながら抗議の声を上げた。

 

「……ああ、すまんな。しかし篠村、今回に限ってはお前も仕込んだ側だろうから聞かせて貰うが、戦力差(・・・)の割に其処の馬鹿共は落ち着きを残している様に見える。…一体全体何を教えた?勝てるのか、ネギ先生は?」

「………あ〜…………。……上手くハマればワンチャン、ってとこですかねぇ…………」

「篠村。言葉遣いに気をつけなさい、杜崎先生に失礼よ」

「…うっせえよお前は……え〜と、杜崎先生……」

 

「……いや、解った。もういい篠村、重ねて悪かった………」

 

何時ものように高音から小言を貰いながらも言葉を続けようとした篠村を静かに制して、杜崎は一つ息を吐いてから闘技場へと向き直る。

 

「外野が今更何をほじくり返した所で何が変わる訳でも無い話だったな。…こうなった以上は見届けるしかあるまい」

 

……結局は根っこの部分で、俺も高畑先生もこいつらと大して変わりは無いのかもしれんな…………

 

半ば自分達から騒ぎの()を生み出している現状に、苦笑と呼ぶには苦味の強い笑みを浮かべる杜崎であった。

 

 

『さあ、間も無く試合開始となります!!様々な意味で注目を集めるこの一戦!果たしてどのような試合運びと成り得るのでしょうか!?』

『高畑先生、もといデス眼鏡は麻帆良の武道家達の間では周知のハンドポケット姿。対する子供先生はやや腰を落として開いた掌を前方に向けた半身の姿勢です。どれと問われれば空手に近い構えですが、予選の情報によれば子供先生は投げ技や寝技、関節技も使えるとの事です。どのような立ち上がりを見せるのか注目しない所ですね』

 

「…さあ、闘ろうか。ネギ君」

「……うん!!」

 

静かに闘志を立ち上がらせながらの高畑の言葉に、ネギは臆せずやや固い様子ながらもしかと言葉を返した。

 

 

「…ね、ねえ先輩、大丈夫あいつ!?なんかガチガチなんだけど……!」

「アスニャン、心配すんなーってのは無理な話だろが、まあしっかり見ててやんな。初め(・・)が肝心なんだから若干固えのは無理ねえよ」

 

試合直前の高まってきた緊迫感に耐えかねてか、明日菜が小声ながら焦りを滲ませる調子で辻達に尋ねるが、中村は落ち着いた(少なくとも表面上は)様子でそう宥める。

 

「……?…えっ、と……あの〜?」

「…それは、通り一遍の物事は最初が肝心、という意味合いでは無いのですね?」

 

就是(ジォシー)。まあ見ているといい。上手くいくにせよいかんにせよ、恐らく勝負は長くは掛からん」

「上手くいかなければ、ネギ君はそれなりに健闘した後に敗けるだろうね、十中八九。…だから、見守ってあげてくれ、皆。あの子はこれから、一度の機会(チャンス)に全てを賭けるから」

 

大豪院と辻の言葉に促され、明日菜達は目線を闘技場の中央にて佇む高畑とネギに戻す。

様々な意味で対照的な二人の、されど等しく発する闘気が周りに波及し、騒めいていた観客も徐々に静まり返り始めた。

張り詰めた空気が境内に漂う中、長い様で短い沈黙の後にーー

 

『試合、開始ィッ!!!!』

 

ーー朝倉の一声によって、闘いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

結論から述べるのならば。

この第五試合は一瞬と形容していい時間で決着(おわり)を迎えた。

 

 

 

「…っ!?」

 

試合開始の合図が届くか届かないかの、そんな際どい拍子(タイミング)

そんな開始早々に高畑の顔面に襲い掛かったのは、光り輝く光球が弾けた事により発生した衝撃波。

それ単発では高畑を倒す所か、碌なダメージすら与えるに至らない軽い一撃ではあったものの、その先制攻撃(・・・・)は不意打ち気味に放たれたとはいえ、百戦錬磨の高畑をして碌に視認の儘ならない超速度であった。

当然、それを放ったのは高畑の対戦相手であるネギである。意表を突かれた高畑が思わず半歩後退り、刹那の間を置いてネギへ視線を戻した時には、既にネギは一瞬たりとも停滞無く、次撃の用意へと移っていた。

 

魔法の射手・戒めの風矢(サギタ マギカ アエール カプトゥーラエ)!!」

 

鋭い一声と共にネギの周りに浮かび上がり、即座に撃ち出されるのは三発の風の弾丸。それぞれ高畑の頭部、右胸と左腰目掛けて疾駆する弾丸に併せる様にネギは足裏で大地を掴み(・・)、思い切り踏み切った。

 

 

『格上に勝つにゃあどうすりゃいいと思うよ、ネギ?』

バカレンジャーの言葉がネギの脳裏を駆け巡る。

『真正面からの馬鹿正直な戦闘じゃお前は高畑の野郎には勝てねえ。つまりお前がやらなきゃいけねえのは意表を突く、不意を突く、弱点を突く。つまり騙し討つ、って事だ。漢らしいとはいえねえ方法だが、敗けると理解(わか)ってて何の対策も無しに挑むのはそれ以上に情けねえ怠慢だぜ』

『とはいえ高畑先生にそれと解る弱点なんて無いし、そうそう突ける様な油断も隙も生じさせる訳が無いだろうからね。唯一つけ込める点があるなら、多分高畑先生は始めからネギ君を全力で潰しには来ないだろうって所かな?』

『故にこそネギ。初撃から一気に畳み掛け、高畑教諭が力を発揮する前に、何もさせず(・・・・・)に押し切る。これが最も勝率が高いであろう作戦だ』

『解っていると思うけれど、ネギ君。これはネギ君の現状の戦力で一番勝てる見込みがあるっていうだけで実際にそれで勝つ確率が高い事とイコールじゃない。…残念ながら今のネギ君じゃあまだ隙を突いて尚敗ける可能性の方が高いんだ、其れ程に高畑先生は強い。それでも、相手が誰であろうと闘う前から諦めたりはしたく無いんだろう?目的(お父さん)の為に自分も出来ることをしたい、俺達に任せっきりにしたくないって言うんなら。のっけから壁が高過ぎようとも、やれる事を全力でやるしかないよね?』

 

『…ネギ先生の呑み込みが良いというか良過ぎるんで、単発とはいえ俺の魔法の射手(サギタ マギカ)変型(ヴァリアーレ)は何とか実用段階だ。とはいえまだまだ息する様に使えちゃいない現状、試合が始まってからじゃあ一々集中させてくれる隙なんて高畑先生はまず与えてくれないだろう。だからネギ先生、使うなら最初だ、意表を突こう。高速(ケレリタース)ならおそらく初撃を当てられる。まあ当ててその後どうすんだってのが正直な俺の感想だけど、まぁ頑張れ。先生は俺なんかとはモノが違うんだ、もしかしたら本当にやれるかもな』

 

 

「…!…くぅっ!!」

 

矢継ぎ早に襲い来るネギの攻撃に対して、高畑は先だっての奇襲に小さくない動揺を受けていたものの、即座に立ち直り迎撃を行った。飛来する戒めの風矢(アエールカプトゥーラエ)を全力で抵抗(レジスト)してあらぬ方向へと弾き散らし、腰を切っての抜剣ならぬ抜()による抜き打ちの拳撃が大気を叩く。魔力強化によって極限まで加速された拳が撃ち出す大気の弾丸は半呼吸に満たない間に片手の指を超える数が撃ち出され、瞬動により一気に間合いを詰めんとするネギへと襲い掛かる。

 

「……っ!!」

 

ネギが障壁として展開している風盾(デクレシフォー)に次々と拳圧が弾け、重なる衝撃にネギの体勢が崩れかける。しかしネギは歯を喰いしばりながら流れそうになる上体を前に倒して半ば落ちる様に着地、勢いで滑りかける足を踏み付ける様に闘技場の床へ叩き付けて留めたその位置は、高畑の懐近くであった。

 

 

「荒いな」

「高畑先生に妨害喰らった割には上出来だと思うぞ?」

「だな、よく堪えたぜネギ」

 

「……使えるのね、瞬動術(クイック ムーブ)………」

「言ったろ、あの子は天才だ。俺の技術(テク)を練度はさて置き大半習得はしてみせちまったからな、この短期間に。……はぁ…………」

「お、お兄様落ち込まないで下さい!お兄様の教え方が良かったからネギ先生はあんなに覚えがいいんですよ、きっと!!」

 

 

「っ、ああぁっ!!」

 

ネギは右拳を脇へと引き絞り、大きく踏み込んだ右足を軸に骨盤を回旋。身体毎飛び出す様に突き出した右拳へと体重を乗せ、右の順突きを繰り出す。

 

 

『ネギ、お前さんは格下だ、挑戦者だ。少しでも有効な手法と思うなら汚かろうがコスかろうがどんどん使ってけ。本気ってのはそういう事だ、デス眼鏡に対する礼儀でもあるぜ』

 

……はい!!…………

 

脳内によぎる中村の言葉に内心で勢い良く応え、ネギが突き出す拳の先は高畑の胴体中央、ではなくその下にある下腹部。すなわち股間であった。

身長差から中段突きをネギが繰り出した際に最も狙い易く、且つ入れば一番効く(・・)急所である。

 

「……っっ!?」

 

高畑は先程から何やら色んな意味で容赦の無い、ある種ガチ(・・)な攻撃を見舞ってくるネギの豹変振りに顔を引き攣らせながらも、動きそのものには遅滞無くポケットから引き抜いた右腕により防御(ガード)を行った。

 

『とりあえず接近すんのに成功したとして、まあまずあのデス眼鏡に攻撃当てんのは無理だろ、普通に打ち込んだならな。とはいえネギきゅんのキャワいい面に死ぬ程似合わねえダーティープレイにデス眼鏡の野郎盛大に面食らう筈だ、その隙を突け』

 

 

「……はい!」

 

ネギは短く口の中だけで返事をして受け止められた右拳をそのままに重心を後肢に移し、右足による横蹴りを高畑の左膝へと叩き込んだ。

正面からの真っ当過ぎる正拳突きは初めから囮。ネギは拳が止められる事を前提に高畑の機動力を奪いに行っていた。

 

「ぐっ!?…」

 

ミシリ、と、関節と靭帯が軋む音を己の膝から聴き、高畑は小さく顔を歪めて後退り、体勢を崩す。

 

 

「……え、えぇぇっ!?」

「ち、ちょっとぉ!?」

 

「お、入った入った」

「とはいえネギの筋力と体重では関節の破壊まではいかんだろうな」

「ああ、だからこれは体勢を崩すのがメインなんだろ?」

 

流れる様にエグい連撃を行うネギのあまりと言えばあんまりな姿に困惑を通り越して混乱する明日菜達を余所に、今の所は作戦通り、とほくそ笑む辻達。

そんな騒がしさを増す外野を余所に、闘技場の上では後方へとよろける高畑目掛けてネギが勢い良く至近の距離へと踏み込んだ。

 

『ネギ。この二ヶ月でお前は相当の功夫(クンフー)を積み上げたが、残念ながら未だお前の勁では致命の打撃を高畑教諭へ与える事は叶うまい。…しかし言わば半端な勁力が功を奏する場合もある。今のお前が一撃(・・)に拘る必要はまだ無い。全力で、何度でも。打てる限りを打ち尽くせ』

 

 

「はい」

 

蘇る忠告(アドバイス)にネギは短く返事を返し。

高畑の正面、超近接の間合いへと足を踏み入れた。その小さな身体からは想像もつかない鋭く、重い踏み込みが闘技場のみならず観客席までを一瞬揺るがし、直後突き出された槍の如き冲捶が高畑の鳩尾へと突き刺さった。

 

「……ぐ、ぅっ!?」

 

鉄槌を叩き込まれなかのような重い一撃に高畑は呻くが、ネギの攻撃は単発で終わらない。突き出した腕を折り畳みながら更に前進、振り上げるた肘による裡門頂肘が胴体にめり込み、高畑の身体が浮き上がる。

そして更に一歩。

三度の地響きと共に高畑の右側面へ大きく一歩踏み込んだネギは逆の足を高畑の正面手前に叩き付け身体を旋回。己が肩から背面で靠撃を打ち込む大豪院の絶招。

鉄山靠が高畑の身体を後方へと大きく吹き飛ばした。

 

 

(ハオ)、中々の練りだ」

「半端な発勁も三発決まれば立派な重撃だわな」

「ああ、悪くない……しかし……」

貰って(・・・)しまいましたね、遂に一撃……」

 

言葉を濁す辻の後に続く様に、刹那が顔を顰めて呟いた。

辻達の視線の先で、グラリとネギの身体が傾ぐ。

 

 

「三度目の打撃の交錯際だな。吹き飛ばされる直前にカウンターで顎部に拳が入っていた」

「流石ですねー高畑先生は。あれだけ畳み掛けられて翻弄されながらきっちり立ち直って反撃してみせるとか」

「……解って言っているだろう、篠村?」

 

フン、と鼻を鳴らして杜崎は言葉を紡ぐ。

 

「自慢では無いが俺があの場で闘っていたならば、お前が仕込んだらしい最初の一撃は兎も角それ以降の打撃は一発たりとも有効打は貰っていない。それはお前でも、高音でも。あの馬鹿共でも同様だろう」

「…いや高音やあの武道馬鹿共は兎も角俺は………」

 

「つまる所油断か慢心かは知らんが気を抜き過ぎだなあの老け顔眼鏡は」

 

此れはこれで詰まらん、と篠村の言葉を遮ってフツノミタマが本当に退屈そうな顔で吐き捨てる。

 

「いくらあの童が半人前以下だろうがあの一発だけで沈むまいしな」

 

 

……反撃されて、顎を揺らされた………………!

 

「……だか、ら、なんだ、ぁぁ!!」

 

ネギは捻れて溶け始める視界の中、中心の高畑から目を離さずに、込み上げる衝動のまま叫びながら力の入らない足を床に叩き付け、無理矢理に踏み止まる。

 

「………っ!?」

 

……堪え、られるのか、ネギ君……………!?

 

その姿を見て、確かに打ち抜いた感触を拳に覚えていた高畑は試合が始まって何度目になるか解らない驚愕に目を見開く。

 

 

……辻さんも、山下さんも、中村さんも豪徳寺さんも!この何倍も、何十倍も物凄い攻撃に耐えて、闘い続けたんだぁっ…………!!

 

 

『お前が無傷のまま高畑の野郎を圧倒するなんてことはまずあり得ねえ、奇襲からの畳み掛けが上手く行ったとして何処かで反撃を喰らうだろ。そん時はな、ネギ。兎に角動け、キツかろうが何だろうが気合いで無視しろ。無茶苦茶だと思うか?でもなネギ、()は本当にそれだけ(・・・・)で何時も立ってるんだぜ?そう………』

 

 

「…根性って奴です、よね……!!」

 

「そうだネギ。根性だよ、倒れんな」

 

 

奇しくも同じタイミングで、闘技場の上にいるネギと医務室で那波に世話を焼かれながら食い入る様にモニターを見ていた豪徳寺は同じ言葉を口にした。

 

 

『……な、何とも目まぐるしい、というか息もつかせぬ連続した子供先生の速攻!!試合開始から数秒もしない内に猛然と距離を詰め、高畑選手を豪快な打撃で吹き飛ばしたぁぁぁぁっ!?』

『高畑選手は意表を突かれ動きに精彩を欠いている様ですね、最後の攻防でどうやら子供先生も一撃貰った様ですが、グラつきはしたものの決定的なダメージにはなっていないようです』

 

「あ、あのデス眼鏡がああも容易く……!?」

「馬鹿がよく見てたのか?油断し過ぎだぜ高畑の野郎!!」

「少年の動きは悪くないが正直少年が強いというよりは今の高畑が弱い、腑抜け過ぎだ。余程浅からぬ因縁があの少年とはあるのだろう」

 

 

「……杖よ(メア ウェルガ)!!」

 

驚愕する解説と実況、観客席を余所にネギはしかと背筋を伸ばし、二本の足で闘技場の床を踏み締めると、両腕を掲げて力ある言葉を唱える。

選手席の椅子に立て掛けられていたネギの長杖(スタッフ)が弾かれた様に宙を舞い、高速で飛来してネギの手に収まった。

 

 

「……此処で、魔法勝負を………?」

「え、でも詠唱は………?」

 

「違う」

 

順調に近接戦闘で攻撃を重ねていたネギの唐突な行動に疑問の声を洩らす高音と愛衣の言葉を辻が短く否定する。

 

「魔力を通す触媒として。ネギ君が一番振るい慣れてる(・・・・・・・)獲物として。単にあの杖が一番適していたってだけの話だよ」

 

『……?えと、あのどういう……あ、あれ!?』

 

謎めいた辻の言葉に中村の傍で宙に浮かんでいたさよが問いを放とうとして、闘技場のネギの様子に思わずといった調子で声を洩らした。

ネギは手にした長杖(スタッフ)を魔法の発動媒体として構えるで無く、杖の下端を両手で握り締めてからそれを天高く高々と振り上げたのだ。

右膝が地に着きそうになるまでに曲げ、左足を大きく前へ出して右構えに獲物を頭より高く振り上げたそれは紛れも無く武器術の構え。

 

 

「ネギ君に教えたあれ(・・)は剣術で無くて薙刀術に近いけどね。…元々薬丸自顕流の開祖は野太刀術の使い手なんだよ。扱い方は、親しいさ」

 

 

『難しい事は言わないよ、ネギ君。技術(わざ)はこれまでに仕込んだ通りだ、今の時点で指摘は何も無い。当然免許皆伝なんてまだまだだけど、それだけできれば振る(・・)事は出来るよ。……ただ真っ直ぐに、全力で振り下ろすんだ。大地を割るようにとか、地球の中心に届かせるつもりで振るうのがコツだって、俺は教わったよ』

 

「解ってます、辻さん。…手加減なんてしません、出来ません……!」

 

小さく呟いてからネギは思い切り深く息を吸い込み、腹の底から吼えた(・・・)

 

「…っ、ええぇぇぇぇぇぇぇいぃぃぃぃぃぃっっ!!」

 

龍宮神社の隅々まで響き渡る猿叫を張り上げながら宙を舞う高畑へとネギは飛び出す。手にする莫大な魔力が充填され、目映く光り輝く長杖(スタッフ)が空気を裂く異音と共に、腕を交差させて防御(ガード)姿勢を取る高畑へと全力で振り下ろされて。

肉を硬い物が打つ異音と、それに数倍する物の砕ける轟音が会場にいる全員の耳を叩いた。

 

「どうよ妖怪真っ二つ?」

「雲耀には遠い。……けれど思い切りの良い、いい振りだ」

「案外貴様は師となれば厳しいな」

 

「……倒したのですか?」

「絶対無いアル」

「今のネギ坊主の全力程度(・・)で斃れ伏すならば、高畑先生は予選で惨殺されているでござるよリーダー。とはいえ……」

「……なんちゅうか俺も理解(わか)ってきたわ…詰将棋やなコレ」

「だとするならば些か荒い寄せ(・・)だがな。……ネギ先生が自力で思いつく筈も無し、こいつらの目の付け所と浸け込みようがエゲツないだけの話か………」

 

「…え、ねぇ!?ちょっと本気でどういうこと!?次は何が………!」

「…あ〜〜何となくウチ解ったわぁ…………」

 

気に掛けている弟分と想い人のなんかもうゴリッゴリな衝突に半ば目を回しかけていた明日菜は訳知り顏になった周りの一部の様子にハッと我に返って猛然と尋ねるが、その傍らで同じくアワアワと状況を見守っていた木乃香がポツリと呟きを洩らした。

 

「…あ〜〜解った?木乃香ちゃん?」

「多分やけど……ネギ君、練習しとったアレ(・・)高畑先生にぶつける気なんやろ?……高畑先生()にならへん………?」

「……は!?ちょっ、木乃香どういう……っ!?………先輩達まさか…………!?」

 

「うん、恐らく想像通り」

 

何事か(・・・)に思い当たり、顔から血の気を引かせて青褪める明日菜に対して、若干申し訳なさそうに笑いながら辻は頷きを返した。

 

「詠唱禁止とルールにあるだけで大呪文(・・・)禁止たぁ言われて無んだなコレが。使える様にもってくのが難しいってだけで」

「エヴァンジェリン女史の別荘にて行ったあの訓練(・・)は魔力の制御(コントロール)の為だ。しかしただ制御(コントロール)したいだけならば彼処までの無茶はさせん。無理に無茶を重ねる唯でさえ難儀な性分を持つネギにそれでもあれをやらせたのは………」

 

 

「……勝たせる為に、決め手を作らなきゃいけなかったからなんだよねぇ………」

 

モニターに映るネギの様子に周りの魔法教師達が目を剥いて絶句し、傍らのエヴァンジェリンがほう?と若干愉し気な笑みを浮かべるのを苦笑と共に横目で見やりながら、山下は独りごちる。

画面に映るネギは、闘技場の床へ半身を起こしかける様にして半ば横たわる態勢の高畑へと、長杖(スタッフ)の上に出現させた巨大な雷球(・・・・・)を振りかぶっていた。

 

 

『こ、これは、ぁぁぁっ!?』

『雷、球?……第一試合の桜咲選手が放ったのと似たような………』

 

解説実況の声を遠くに、ネギの脳裏に辻達の言葉が三たび蘇る。

 

 

『ぶっちゃけお前がデス眼鏡を格闘戦でブチのめすのは無理だネギ。いくらデス眼鏡がお前相手に力ぁ出せないなんつっても、お前が想像以上に腕前見せてりゃ、ネギ君強くなったなぁ、よーし僕も其れなりに本気出しちゃうぞ!…ってな事になる。そうなったらもう敗けだ、十中八九どころか百中九十九は敗けだ』

『だから高畑の野郎がまだ立ち直りきらねえ内に、具体的に言うと気と魔力の合一(咸卦法)だったか?あの超パワー発揮するようになるまでに魔法(・・)で致命打を与えろ。お前が本来あのローブ男と当たった時の為に用意してたアレでだ』

 

それは己の力で勝ちにいきたい、と言ったネギの為に辻達が考案してくれた大会用の切り札。

 

『あのヘルマンって爺悪魔の時の闘いでネギ君がキレて撃ち出した雷の暴風(ヨウィス テンペスタース フルグリエンス)。あの時の威力とまでいかなくても、あれに近い規模を遅延魔法(ディレイ スペル)で備えておける様になるのがネギ君の課題だ』

『無論簡単な事では無い。あれは暴走状態だから出来た荒技であり、意識的な改革から行わねばそもそも再現すらできないだろうし、そんな暴発半歩手前の危険な代物を制御(コントロール)して何時でも撃てるように留めておかねばならんのだ。訓練から危険が伴う様なこんな無茶を、やらせるつもりなど毛頭無い、と本来ならば言う所だが……』

『勝ちたいんだろ、ネギ君?自分の力でさ。今のネギ君が持つ手札の中で実力者に決定打を与えるには、正直そんな無茶をする位しか方法が無い。最悪の事態が起こらないよう篠村達に協力を仰いで訓練は行うし、モノにならなそうならキッパリ止めさせる。でもそれも今の話を聞いてネギ君がヤル気になってくれるなら、だ。子供だから無茶をさせない、とはもう言わない。でもネギ君、キツい訓練になる。やり遂げる覚悟はあるかい?』

 

ネギは辻の問いにはっきり応と返し、そして必死の修行の果てに擬似的な暴走状態(オーバーロード)での魔法行使と、其れを維持しておく制御能力(コントロール)を身に付けるに至った。

 

 

……こうでもしなきゃ、辻さん達よりも強いタカミチは絶対に倒せない!だから僕がする事は、躊躇い無く、遠慮無しに!!…全力の魔法をタカミチにぶつける事………!!

 

 

『手加減や容赦なんてものが出来る程まだお前は強く無えんだよネギ。弱者は常に全力全開。それが勝つ為の最低限(・・・)の前提条件だ』

『どれだけ高畑の野郎が弱って見えてもお前は躊躇い無くトドメ刺しに行け。殺すつもりで行ってやっと如何にかなるかも(・・)しれない、って位に力差があんだ』

『大丈夫だからホントに。僕等が本当の本気で殺しに行って殺し切れないモッさんより高畑先生は強いんだからネギ君。真面目に遠慮は無しの方向で』

『比武に全力を尽くすのは武人としての礼儀だ。俺達に教えを請うた以上半端な真似は決して許さん』

『…高畑先生もネギ君がどれだけ強くなったかを見てみたいと思うよ。その期待に応えたいなら、変な気遣いはしない事。知らない仲じゃ無いんなら、変な話だけど高畑先生の強さを信頼して、胸を借りるつもりで撃ち込めばいい』

 

大会前日、辻や山下などは自分達の問題を明日に控え、ネギに構っている暇など本来ならば欠片も無かったというのに。その他の三人も打倒クウネルの為、一分一秒を惜しんで調整を行いたかっただろうに。

いきなり高畑という高い壁に挑む事になったネギを案じて、そうして少なくない時間を裂いてアドバイスをくれたのだった。

ネギはその想いに応える為に、生来の優しさを一時的に封印し、戦士としての覚悟を胸に抱いた。

高畑が長杖(スタッフ)の一撃を受けて闘技場の床に亀裂を作りながら半ば埋もれた次の瞬間には、雷の暴風(ヨウィス テンペスタース フルグリエンス)解放(エーミッタム)され、一瞬の遅滞も無く追撃の用意は整っていた。

 

「…タカミチ、僕は遠慮なく行くよ!タカミチに、勝つ為に!!」

 

「ね、ネギ君………!?」

 

 

雷の暴風(ヨウィス テンペスタース フルグリエンス)‼︎」

 

 

ネギは驚愕と焦りの色を表情に浮かべて何事かを言いかけた高畑の様子に一切頓着せず、力ある言葉と共に制御(コントロール)して球状になっている大呪文を思い切り撃ち出した。

 

直後、雷と爆風が闘技場全体を舐め尽くし、会場内は閃光に包まれた。

 

 

 

『……朝倉…………』

『皆まで言わなくていいよ無事だから部長!!………ネギ君が、ネギ君までこんなんな訳ぇ………?』

 

本日何度目かになる観客総員退避状態の後、些か力無い声での喧囂の呼び掛けに半ばヤケクソ気味に水堀を飛び越えた先の安全地帯(セーフティーゾーン)(度重なる広域被害状況につき急遽建築部の手により作成)から勢い良く身体を起こした朝倉は叫び返し、悲哀に満ちた小声で後半の台詞を呟く。

 

『うぅ……兎に角実況を、って何これ!?』

『……これは、また速攻な………』

 

朦々と煙の立ち込める中、プロ意識から早い立ち直りを見せた朝倉が状況の確認に移ったが、ネギの行動はそれよりも遥かに迅速であった。

朝倉と喧囂、更には観客達や辻達一行の目に映る光景は、光の縛鎖により雁字搦めにされて横たわる高畑と、その首元に覆い被さるようにして裸締め(スリーパーホールド)を極めるネギの姿だった。

 

 

『大呪文を当てられたからって勝ったと思わないようにね、ネギ君。実際喰らわせれば大ダメージを与えられるとは思うし、高畑先生は素の状態で防御力が高い訳でも飛び抜けて頑丈(タフ)な訳でも無いと思うから倒せてるかもしれない。けれど確証が無いならダメ押し(トドメ)に移ろう。仮に意識があっても素早い行動は咄嗟に出来ないと思うから魔法を撃ったら首絞め(頚動脈圧迫)ね。教えた通りにやれば誰でも数秒で意識がトぶから落ち着いて極めれば大丈夫。重要なのは其処で変に遠慮や情けを見せて、手負いの獣状態になっているかもしれない高畑先生から反撃を喰らわない事。仮に致命傷を負っていても、高畑先生が本気になれば一瞬(・・)でネギ君は敗けるんだからね?彼我の実力差を、状況把握を間違えず、勘違いしない事。そうすれば勝てるよ、頑張れ、ネギ君!!』

 

「……はい、解ってます、山下さん…………!」

 

……最後まで、油断はしない……………!!

 

拘束の為に幾重にも戒めの風矢(アエール カプトゥーラエ)を撃ち込み、動きを封じた上で、ネギは追撃の手を緩めず高畑の背後に回り込み、首を獲ったのだった。

 

 

 

……なんだ、ろうな………この状況、は……………!!

 

全身が様々な種類の痛みを訴え、更には気道が圧迫されて段々と意識の薄れ行く中、高畑は霞む頭で思考していた。

高畑はネギとの試合に於いて、格別油断や慢心を以って臨んでいた訳では無い。態と敗けるつもりなど毛頭無かったし、ネギが相応しい実力を発揮するならば咸卦法(アルテマ アート)の使用も躊躇わずに用いるつもりだった。ネギがどれほど出来る様になったか先ずはお手並み拝見、という考えが無いではなかったが、それは圧倒的な実力差がある以上当然在るべき強者の余裕であり、先達者としての威厳である。ましてやネギは高畑にとって憧れの人物で今尚有り続け、尊敬するナギ・スプリングフィールド(世界を救った英雄)の忘れ形見だ。初めから潰す気で掛かるつもりなど毛頭起きようが無かったのである。

 

………つまり、そんな僕の心理を読まれて、完膚なきまでに嵌め殺されたの、か……ネギ君、じゃないな……彼、らに……………

 

いよいよ以って薄れ行く意識の中、高畑は最早半ば見えぬ眼を見開き、選手席に居る辻達を力無く睨み付ける。

 

……この、結果はどう言い訳しても、僕の油断と、読みの足らなさから来たものだ……それはいい……僕もまだまだ、未熟者って事だ………

 

だが、と高畑はその上でなお思う。

 

………不意を討ったとはいえ、相手がネギ君だったとはいえ………AA+(ダブルエープラス)(クラス)の評価を得ている魔法使いに、ほぼ何もさせずに勝利する戦闘技術と、心構えとか…………

 

……なんてものをネギ君に仕込んでるんだ……この問題児達は………!!

 

そんな恨みがましい思いと戦慄を胸に。

学園都市最高峰の実力者、高畑・T・タカミチは気道圧迫による脳の酸素不足により、意識を失った。

 

 

 

「……っ!!はぁっ、はぁっ、…はぁっっ!!」

 

高畑の身体より完全に力が抜けてから尚数秒。

充分に警戒しながらもネギは残心を怠らずに立ち上がると、荒い息を吐きながらも己の成し遂げた成果の実感をジワジワと感じ始めた。

 

……僕が、倒した…………!

 

……僕がタカミチに、勝ったんだ…………!!

 

 

「……あっ、あの!朝倉さん!!」

「………うん、ネギ君。確認取れたよ……色々言いたい事あるけど、まずはおめでとう…………」

「…は、はい…………?」

 

何故か死んだ魚の様な目で力無い賞賛の言葉を投げ掛けて来た朝倉の様子を疑問に思いながらも、ネギは何よりも戦果を先ず一番に報告して、誇ってもらいたい己が師達の元へ首を巡らせる。

 

「……皆さん、僕は、僕、……は…………?」

 

歓喜に目を潤ませながらネギが紡ごうとした言葉が尻切れ蜻蛉に力を失って行った。

 

 

「貴様らは子供に何を教えているこの大馬鹿共がぁぁぁぁぁぁっ!!」

「うるへーーっ!!これ以外に勝つ方法なんざ有りゃしねかったろがぁぁぁぁぁぁ!!」

『大体こんな事になるとは思ったがブン殴られる筋合いは無えぞ糞ゴリラがぁっ!!』

魔法の射手(サギタ マギカ)関連の技術仕込んで魔力制御の訓練付き合っただけの俺にはもっと殴られる筋合い無えわ高音ぇぇぇっ!?」

「…………魔力制御の訓練には私も付き合った以上文句を述べる資格は無いけれど……その代わり貴方達を庇う道理もまた無いわ!!あんなダーティーな戦術を仕込んで………!!」

「……お兄様申し訳ありません!!流石に擁護が難しいです!!」

 

「あんた等ネギに何仕込んで高畑先生になんてことしてくれてんのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!?!?」

「言い訳はせんがその物騒な獲物の一撃を喰らってやるつもりも無い!!」

「逃げろ刹那!!言い訳の通じる状態じゃ無いしなんか大剣出現してる!?」

「解りました、しっかり掴まっていて下さい(はじめ)さん!!…申し訳ありません明日菜さん、私は無条件で一さん(愛しい人)の味方ですので!!」

 

「………………………」

「のどか、のどかーっ!?しっかりするです!!」

「ひゃあぁぁぁ白目剥いとるーーっ!?」

「本屋には刺激強過ぎたアルか……」

「無理もないでござるな……拙者達や観客席の百選練磨の御仁等ですら若干引いているでござるよ………」

 

『……ネギ先生って、お顔に似合わず、怖い所あるんですねー………』

「いや、違うで幽霊の姉ちゃん。ネギのあのガチっぷりは兄ちゃん等に半ば洗脳地味た意識改革されたもんやから………」

「……兄貴、麻帆良(此処)の色んな連中にこれであらゆる意味で目ェ付けられちまうんじゃねえかなぁ………」

「ギャハハハハハ凄ェー!!俺達でも名前知ってる様な世界のトップ相手にほぼ完勝しやがっタ!!」

「なんていうか全く以っテ見事な殺す為の戦闘法でしターー!!」

「凶悪ショタ……新しい………!」

 

 

 

「…………え………え〜と…………??」

 

「……ま、全部先輩方が悪いって事で。取り敢えず〆に入りますか………」

 

自分の仕出かした事の意味合いがイマイチよく理解出来ていないネギを虚ろな目で見やりながらも、この様々な意味でどうしようも無い空間を終了(おわ)らせる為に朝倉はマイクを握り、高らかに宣言する。

 

『高畑選手の戦闘不能により、まほら武道会第五試合、勝者ネギ・スプリングフィールド選手ぅぅぅぅっ!!』

 

『ウオォォォォォォォッ!?!?』

 

試合時間、00:38秒。

まさかの1分以下の秒殺劇という幕引きに、観客席から悲鳴の様な歓声が地鳴りの如く響き渡った。

 

 

 

「……ネギ君を預ける相手を、間違ったかもしれませんねぇ…………」

「貴様がどうこう言えた筋合いでもあるまいよ」

 

何時の間にか選手席に現れ、乾いた声でポツリと呟くクウネルに冷たく言葉を返したフツノミタマは、まぁ中々に楽しめた、と、薄い笑みと共にこの試合を締め括った。

 

 

 




閲覧ありがとうございます、星の海です。
最早何を言っても言い訳にしかなりませんので続きを上げさせて頂きます、本当に更新できず申し訳ありません。更新速度は今の状態では上げる事が困難ですが、GWで何とか巻き返しを図れる様頑張ります。まだ本作を見てやっても良いという寛大な方がいらっしゃいましたら、お付き合い頂きます。よろしくお願いします。
さて、本編の内容ですが、ネギがダーティーに高畑を嵌め殺しました笑)多分色んな意味で問題になると思いますが戦犯は主にバカレンジャーですので咎はそちらに向かうでしょう何)少々高畑が弱過ぎるように読み返していて感じましたが、高畑の実力は原作と変わりません。原作でネギに雷華包拳を喰らうまでは高畑も様子見な状態でしたので、そんな心理状態でガチに殺しにネギが掛かればこうなるのかと思われます…思います。本作のネギ君何処に向かっているのでしょうか汗)
ともあれ次回は高音VS杜崎と、何だか原作要素の欠片も無い試合ですが、盛り上げていければと考えていますのでどうか今暫くお付き合い頂ければ幸いです。もう一作も更新をしますので、最悪次話はGW中になりそうですが、それ以降には伸びないよう何とか頑張ります、本当に申し訳ありません。
それではまた次話にて、次もよろしくお願いします。

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