天狐玉藻の異世界攻略録   作:Revak

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第2話

 

 ゲルヘアに戻ると閉ざされていた門が開いて行く。

 暗い足取りで玉藻が中に入ると歓声を受けた。

 

「ありがとう!」

「あの数の軍隊を倒すなんてあんたすげぇな!」

「あんたは俺たちの英雄だ!」

 

 などと言った声が兵士たちと村人たちから上がり、女性が玉藻の背を叩いて笑う。

 それにつられ玉藻も笑みを漏らす。

 

 笑っていると人込みが二つに別れ、初老の男が歩いてくる。

 

「あんたはこの砦を救ってくれた! 恩人だ、感謝するよ! あんたの名は?」

「……わらわは玉藻じゃ。旅する妖狐じゃ」

「玉藻さんか。ワシは村長のツキオだ。そして……恩人である玉藻さんには申し訳ないが、アンファングに向かってほしい。敵軍が来たことを知らせてほしいんだ。敵がここを狙うようになったというのなら今の軍備では不安が残る」

 

 原作とは違うなと思いつつ玉藻は了承した。

 

「それじゃあ、地図を見せてくれないかのぉ。アンファングまでの道を知りたい」

「あぁ、渡す事は出来ないが、家にある。ついてきてくれ」

 

 そうして玉藻は村長の家に向かう。

 

 これからどうなるんだろうか、と玉藻は考える。

 最優先は元の世界への帰還だが、どうすれば帰れるのだろうかと考える。一応当てはある。

 どんな願いでも叶えられる魔法道具(マジックアイテム)がこのゲームにはある。

 といってもあくまでそれは設定上で実際には決められた願いを選択して叶えるというものだがこの世界が現実ならばそれはどんな願いでも叶えてくれるだろう。

 だが入手方法がめんどくさい。

 まず入手にはメインクエストをクリアし帝都を安全にした状態で犯罪などを犯していない状態にする必要がある。

 その状態でこのゲーム最大のダンジョンである全百層のダンジョンの第九十層以下のモンスターからレアドロップするアイテム、名を流れ星の杖(シューティングスター・ロッド)と言い、一度だけ願いを叶えてくれるそれを手にする必要がある。

 ランクは伝説級だ。

 このゲームにはアイテムにもランクがある。

 

 下から順に下級、中級、上級、秘宝級、聖遺物級、伝説級、そしてランク外の神器だ。

 神器は特殊なアイテムでゲーム中十一個しか登場しないアイテムで超が付くほど強力なアイテムだ。

 

 玉藻の装備は一つを覗き伝説級で統一されている為装備品で劣ることはないだろう。

 

 その流れ星の杖(シューティングスター・ロッド)は設定上はどんな願いも叶えてくれる杖だ。

 それさえあれば元の世界への帰還も叶うだろう。

 

 玉藻は装備している指輪の一つが神器で名をファウンダーという。

 己の行使するMPを消費する特殊能力(スキル)や魔法の消費MPを全て一にし継続的に消費する魔法でも一にする上特殊能力(スキル)による強化の回数制限の撤廃と消費MP無しにするという破格のアイテムだ。

 

(──まずはメインクエストのクリアか)

 

 それをしないとエンドコンテンツであるダンジョンに挑めない。そのためにはメインクエストをクリア状態にしなければならないと玉藻は気合を入れた。

 

 村長の家に入る。

 他の家より大きく二階建てだ。一階には書斎がある。

 書斎に入り壁の棚に置いてある地図を村長が取り出す。

 

「これがこのディロールの地図です」

 

 ディロールとはゲームの名前だけでなくこの地方の名前でもある。

 

「うむ……記憶とあまり違わないの」

 

 ゲーム通りの地図で玉藻は少し安堵した。

 ゲームと違っていたらダンジョンに挑めないかもしれないからだ。

 

「この道を真っすぐ進めばアンファングに辿り着きます」

「わかった。では今すぐ向かうとしようかの」

「今すぐ、ですか? ……いや、そうですね。敵の援軍が来るかもしれない以上早急に動いた方がいいですね」

「そうじゃろう? じゃあわらわはもう行くとする」

「大したもてなしも出来ずすみません、次来た時には盛大に歓迎の宴を開こうと思います」

「はは、期待するとしようかの」

「と、そうだ。今紹介状を書きますからお待ちください」

「うむ」

 

 少し待つと村長が紹介状を書き終える。

 玉藻はそれを受け取り、最後の挨拶をして村長の家を出た。

 

 向かう先はアンファング。かつての古代都市だ。

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 徒歩で玉藻はアンファングに向かう事十分。

 

「暇じゃ!!」

 

 ゲームなら五分も歩けばついた場所は倍の時間をかけてもつかなかった。

 まだ街の影すら見えていないので現実という事で馬鹿みたいな距離があるとわかる。

 

「むぅ、走るか……?」

 

 玉藻は疲労無効の指輪を装備している為スタミナ消費はない。

 このゲームにはいくつかの要素がある。

 ゲームの基本的なHPとMPに加えスタミナもあるのだ。更に言えば空腹度システムもある。

 空腹はゼロになるとダメージを受け続けるという物で食事をすると一定時間バフを得られる。

 玉藻の種族はアンデッドと違い飲食が必要な種族なので食べることが必須だが魔法道具(マジックアイテム)で飲食不要化の物がある為それを装備し無効化しているので飲食の必要はない。

 

 このままちんたら歩いても仕方がないと玉藻は走ることにした。

 幻術で己のステータスを書き換える。

 

 幻術とはすなわちだますことだ、とこのゲームの開発者はそう定義した。

 故に玉藻は幻術を使い自分自身を騙すことでステータスの割り振りのし直しが可能になる。

 ゲーム時代ではプリセット登録した物を入れ替えるぐらいしかできなかったがこの世界に着たことで瞬時に変えることが可能となった。

 といってもHPとMPは変えれないのでそれら以外の数値の振り直しだが。

 

 速度特化にすることで玉藻は驚異的な──マッハ四でダッシュをした。

 音速の壁を突破したことで体がボロボロになった。

 

「あびゃー?!」

 

 即座に止まる、というか地面を滑っていく。ダメージを負いまくった。

 当然だ。速度だけ上げて防御力上げなかったら体はそれはもう大変なことになるのは自明の理だ。

 

 頭は裂け、足はぐにゃりとねじ曲がり、左手はちぎれてどっか行った。

 体を激痛が襲う。アドレナリンがドバドバでても対応できない痛みだ。

 

(あかんこれはしぬぅ?!)

 

 そう思いアイテムボックスから最上位のポーションを取り出す。

 ポーションは飲まずともかけても効果を発揮する。

 喉もずたずたに裂かれていたので飲めずポーションを頭から浴びる。

 即座にHPが全快し損傷も治癒された。ちぎれた腕も新しく生えてくる。

 

「死ぬかと思った……」

 

 そうむくりと立ち上がる。

 音の壁を突破して生きている分HPが高かったのが幸いした。

 

(しかしこの痛み……現実なんだなぁ)

 

 夢ならば確実に起きているだけの傷を負ったが目が覚める気配は已然無い。

 流石にもう一回速度特化にするのは怖いので、玉藻は普段のステータスのままダッシュでアンファングに向かった。

 

 

 

 

 

 ■

 

 

「あれがアンファングか。でかいのぉ」

 

 二十分後。時速百二十キロで走った玉藻は目的地であるアンファングに辿り着いた。

 石のレンガで出来た壁に囲まれた城塞都市だ。奥には領主の城が見える。

 壁は分厚く幅は五メートルはあるだろう。玉藻では基本殴っても壊せない。

 

 城門へと進む。

 門は開いているが、衛兵たちによる手荷物チェックが行われている。

 ただこの世界には異空間に物をしまい持ち運びできる魔法道具(マジックアイテム)が割と多いので形だけだ。いちいち内容全部捜査してたら日が暮れてしまう。

 門へと行き列へ並ぶ、

 玉藻は美女なので注目を集める。

 

 後ろの男が話しかけてきた。

 

「なぁ、あんた。この街に何の用だ?」

「わらわはゲルヘアからきての。そこが反乱軍に襲撃されたからそのことを領主様に知らせに来たのじゃ」

「反乱軍に? 敵軍はどうしたんだ?」

「わらわが撃退した」

 

 その言葉に男は愛想笑いをした。

 

「あんたが倒したとは到底思えないが……」

 

 この世界の住人は見ただけで相手が格上か格下かある程度わかる。ゲームならば自身よりレベルが上の相手は名前が赤く表示され同レベルだと白、格下だと緑だ。

 そしてそう言った情報系に対策を積んでいる相手は白色で統一される。玉藻は情報系魔法や特殊能力(スキル)に対策をしているので格下相手になめられやすい。

 

「おぬしが信じようと信じなくともどうでもいいじゃろ」

「……そうか。なぁ、それが終わったら俺と一緒に食事でもしないか? うまい飯屋を知ってるんだ」

「……ナンパは悪いがお断りじゃ」

 

(童貞の前に処女を失う訳にはいかねぇ!)

 

 玉藻はそう思いまだまだ攻めてくる男をのらりくらりと交わしていると自分の番になる。

 

「そこの……亜人か? この街に何の用だ」

 

 衛兵は決まった装備を持たない。

 一応決まっているのは胸から衛兵の証であるドッグタグをつけているぐらいで軽装鎧を纏っている。

 

「わらわは領主様にゲルヘアが反乱軍に襲われたことを知らせに来たんじゃ」

「ゲルへアが反乱軍に? 証拠は?」

「ここにゲルヘア村長からの文がある」

 

 玉藻はアイテムボックスから手紙を取り出し見せる。

 それに対し衛兵は怪訝な顔をする。

 

「……そうか。この街は今物騒だ。気を付けると良い。通ってヨシ!」

 

 そうして玉藻は街中に入った。

 

「おぉ……」

 

 街中は普通の中世……というよりは近世ファンタジーの街並みであった。

 魔法の灯りの街灯が並び、通路は石で補正され車道と歩道で別けられている。

 家々は石のレンガで作られ赤いレンガもある。

 

 目的地は決まっている。

 

(ゲームと微妙に違うなぁ)

 

 ゲーム時代はここまで大きな街ではなかったはず、と思いながら玉藻は街を歩く。

 ゲーム時代は各施設、宿屋に鍛冶屋に魔法屋などが一件ずつしかない街だったがこの世界だと普通に数軒あるしゲーム時代には無いパン屋などが多数ある。

 迷子になりそうだ、と思いつつ玉藻はゲーム時代の知識を元に街を歩いて行く。

 道中人を見るが暗い顔をした者が多いし、途中でスリの現場にも遭遇する。

 自分とは反対方向に逃げていったため玉藻は追わず放置して城へ向かい、到着した。

 

 城とは言うが王城などと比べると見劣りする石の城だ。

 塔が四つ生えている屋敷と言った方が近いかもしれない。

 広い庭を持ち門前には帝国軍の兵士が二人立っている。

 帝国軍の兵士は茶色い鎧にスカートを付けている。

 

 片方の男に玉藻は近づき話しかける。

 

「そこの者、これを領主様に届けたいのじゃがいいかの」

 

 その言葉に兵士はぎろりと玉藻を睨んだ。

 

「なんだ、異形」

 

 玉藻は笑顔を浮かべアイテムボックスから手紙を取り出す。

 

「ゲルヘアの村長からの知らせじゃ。反乱軍が攻めてきたと──」

「ふん。嘘を言うな。そんなものは受け取れない!」

「そこをどうにか、のぉ」

「お前のような異形種の者など信じられん! 今ここでしょっぴいてやろうか!」

「むぅ、どうしてもだめか? これを領主に届けてほしいだけなんじゃが……」

「くどいぞ女! 斬られたいか!」

 

 そう兵士は抜刀した。

 

「む、ここは引くとしようか」

 

 そう言うと玉藻は門から離れていった。

 

 

(さて、ゲーム通りだな)

 

 原作ではここにコンパニオン……仲間を連れてくるのだがその時でも反応は同じで通してくれないし話を聞いてくれない。

 これには訳がある。

 なんとこの街の領主は吸血鬼に操られているのだ。

 そのために治安も悪化しているし街の機能の一部が死んでいる。

 吸血鬼に操られた領主はこの街を反乱軍に攻め落とさせようと企んでいるのだ。

 

「さて……」

 

 原作通りなら原作キャラの一人が接触してくるはず、と玉藻はその場を離れた。

 主人公に話しかけてくるのは原作だと赤い髪に赤い目の小柄な女キャラで名はマーサと言う。

 マーサはこの街の異変を嗅ぎつけた者の一人で領主が何者かに操られている事まで探り当てた人物だ。

 

 取りあえず話しかけられないかなと玉藻は未知を歩くこと五分。誰にも話しかけられない。

 

「あれ?」

 

 ゲームならば先ほどのイベントを終えた後離れるとマーサが話しかけてくるがその気配が全然ない。

 

(困ったな……勝手に領主助けるか?)

 

 やろうと思えば玉藻のビルドならば領主の城に潜入し領主を助けることぐらいは出来る。

 さてどうしたものか──と玉藻は考える。

 

(原作通りならば……あぁ、そうか。原作だと帝国軍人連れていたから関わって来たのか。連れてないなら干渉してくる理由がない)

 

 なるほど納得できた、と玉藻は手を叩いて納得した。

 ではどうしようか、と玉藻は考える。

 

 原作の場合は領主を助けようとしている義勇軍に主人公が話しかけられ、そのまま主人公は義勇軍と行動を共にする。

 そうして主人公は吸血鬼の魔の手からこの街を救う……と言うのが原作のストーリーだ。

 

 それが破綻してしまっている。

 

(仕方ない……こっちから関わるか)

 

 正直放置して勝手に領主を助けてもいいだろうが、それだと義勇軍の連中がいたたまれない。

 それに原作から外れた行動をし続けた結果原作崩壊して知識が役に立たなくなりましたも「怖い。

 故に玉藻はある魔法道具(マジックアイテム)を取り出す。

 アイテム名はアカシアの地図という聖遺物級、上から三番目のアイテムで効果は使用することで一定範囲の地図の作成だ。

 この地図は正確無比でトラップの有無から隠し扉などもわかる優れものだが、使用するとゲーム内時間で半日のクールタイムが発生する。

 

 地図を見ながら玉藻は義勇軍の本拠地へと向かうのだった。

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