天狐玉藻の異世界攻略録   作:Revak

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第7話

 

「それじゃあアンファングに戻ろうかの」

 

 玉藻がそう言うとリラは「準備するから待っててくれ」と屋敷に戻っていった。

 それに慌ててクレスも着いて行った。

 

「これで残る戦力の当てはハドリムだけか……この戦力で悪魔王に勝てるかの」

「……勝率は六割と言ったところか。相手側に何かしらの隠し玉があるとしても、勝ち目は高い」

「そうだと良いが……敵の戦力も覚えている限りメモ帳にでも書きだすかの」

 

 そうして話していると準備を終えたリラとクレスがやってくる。二人ともアイテムは無限収納の袋(インフィニティ・バッグ)にしまっているので手ぶらに近い。

 

「ではアンファングに行こうかの。<転移門>(ゲート)

 

 玉藻は魔杖(スタッフ)<転移門>(ゲート)を開き、アンファングの城前に戻るのだった。

 

「ただいまー」

 

 玉藻はアンファングの城に堂々と帰還した。レイダンとリラ、クレスを連れて。

 

「玉藻さん? なんですそちらの人たち」

 

 見張りの騎士が見知らぬ美女と美人と少年を見て感激しながら問いかけた。

 

「うむ……わらわの……なぁこれ断言していいのか?」

 

 玉藻は気になったのでレイダンに問いかけた。

 

「別にいいだろう」

 

 そうレイダンは気にすることなく答えた。

 

「そうか、わらわの仲間じゃ!」

「仲間、ですか……わかりました。けどちゃんと領主様には伝えてくださいね」

「わかっておるわい」

 

 そうして一行は城に入っていった。

 

 玉藻は城を我が物顔で歩く。騎士たちも気にはするがまぁ領主の恩人だし、とあまり何も言わないで置く。

 

 そうしてそこらの騎士を捕まえて領主の執務室まで案内させる。

 騎士はレイダンとリラの威圧感に怯える。二人は特段隠密系の装備をしていないし魔法も使ってないので強者のオーラがバリバリ出ているのだ。例えるならプロレスラーの風格が出ているような物だ。

 何なら二人とも何百何千と人を殺したことがあるので殺人鬼の風格も出ている。

 

 兜の下で涙目になりながら領主の執務室まで案内した騎士は逃げるように去った。

 

 玉藻がノックすると「入れ」と返事が来たので四人入る。

 

 玉藻は想定通りだったが知らぬ三人を前にこめかみを痛そうにしながら口を開いた。

 

「……そちらの三人は何者かね?」

「うむ。悪魔王退治のための仲間じゃ。ほれ、自己紹介を」

 

「レイダン。魔力系呪文詠唱者(スペル・キャスター)だ」

「私はリラ、森司祭(ドルイド)呪文詠唱者(スペル・キャスター)

「僕はクレスって言います、よろしくお願いします!」

 

「……そうか。三人とも帝国軍に所属する事でいいのか?」

 

 それにレイダンが待ったをかけた。

 

「いや。国に所属してはやりづらくなる。帝国とは協力関係を結ぶつもりだ」

「……そうか。そこら辺の交渉は各自でやってくれ。あぁ、帝国軍が来るまではこの城に泊って良いから」

「感謝するぞ、領主様」

 

 玉藻のいい笑顔にサイモンは引きつった笑みを見せた。

 

 

 

 

 

 ■

 

 帝国軍が来る日。

 そこそこ広めの相談室で。玉藻とレイダン、リラの三人は三人横に並んで紅茶を飲んでいた。

 今は昼の一時頃である。

 

「いつ来るかの」

 

 玉藻はそう言いながら紅茶を飲むも緊張は隠せてなかった。

 これから一国の重鎮と話すのだ。

 領主と話した時より緊張する。まぁ領主と話していたときも緊張していない訳ではなかったが、市長から自衛隊の将兵が相手になると変われば緊張もしようものだ。

 

 今からくるのはリウスという将軍だ。

 ゲームにも登場した将軍で女将軍でありレベルは二十。

 ただクラス構成は指揮官系なので直接戦闘力は低い。

 ディロール(ゲーム)には指揮官系のクラスがあり指揮下にある対象を強化する特殊能力(スキル)を持つ。

 強化率が高い分本人のステータスの伸びは低い方だ。

 

 部屋にノックが入る。

 集団の頭として玉藻が「どうぞ」というと「失礼します!」という女の声と共に部屋に入ってきた。

 

 入ってきたのは茶髪に碧眼の美少女だ。帝国軍の将軍の軍服を着ている。

 帝国軍の将軍の服は魔法の鎧であり、軍服だ。

 形としてはナチスドイツの軍服を茶色くした物だが魔法道具(マジックアイテム)であるため防御力はそこそこ高い。

 

 もう一人は普通の帝国軍の鎧を着た男兵士が二人。

 

「さぁ、どうぞかけて」

 

 玉藻が座りながらそう言うと美少女、リウスは緊張した面のままガチガチに硬い動きで玉藻の向かいのソファに座った。

 残る兵士は座らずリウスの背後に立っている。ただ冷や汗を流しているが。

 これはリラとレイダンが隠密系の装備をしていないので強者のオーラをバリバリ出しているのが原因だ。

 

「さて、早速本題に入ろうと思う。わらわたちを帝国軍の協力者にしてほしい。目的は反乱軍の鎮圧じゃ」

 

 その言葉にリウスはきりっとした目をした。

 

「協力者、ですか。帝国軍に所属する訳ではないのですか?」

「わらわとしては入っても良いのじゃが……」

「私は国に所属する気はない。行動が制限されるからな」

「私も国に属するのは二度と御免だ」

「……という訳じゃ」

「……はぁ。わかりました。えっと、一応聞きますが三人のレベルは? あ、私は二十です」

「百じゃ」

「九十」

「八十七」

 

 その言葉にリウスは卒倒したくなった。気合で耐えたが。

 

 帝国の軍には階級がある。

 上から順に大将軍、将軍、百人隊長、十人隊長、その他だ。

 大将軍は帝国最強の女エレナ・ヴァハで将軍は目の前にリウスと後二人だ。ゲーム中にも登場する。百人隊長からはモブなのでネームドは殆どいない。

 

 その上から二番目のリウスだからこそレベルというのもは重視している。

 三十年勤務のベテランと入ったばかりのぺーぺー、それだけ聞くとどちらが強いかなど火を見るよりも明らかに思える。

 だがここにレベルが加わると話は別だ。

 

 ベテラン側がレベル十で新人側がレベル二十の場合戦闘経験の有無や勘の良さなどを入れたとしてもレベル二十側の勝率が九割九部になる。二十四とかだったらゼロだ。

 

 だからこそ帝国や各貴族はレベルを重視する。レベルさえ高ければどこの誰とも知らぬ奴だろうと重用するのだ。

 高レベルの者を国に抱えるという事はそれだけ国の戦力になるのだから。

 

 極端な話今の帝国最強のエレナの五十レベルを超える者が現れて暴れられたら帝国は滅ぶのである。

 レベル三十もあれば単騎で街一つ滅ぼすぐらいは別けないないのである。

 だからこそレベル百という馬鹿みたいな数字にリウスは卒倒しかけたのだ。

 そしてそれが事実であるならば何を使ってでも国に引き入れなければならない相手だ。

 

(というか他の九十と八十七とかわけわからないんだけど?!)

 

 リウスはそう思って顔をひきつらせたが言葉にはしない理性があった。

 

「わ、わかりました……帝都の城に連れて行きましょう。大将軍に話を通せば協力関係は結べるはずです」

 

 なんとしてもこの三人を帝国に引き入れなければ最悪他国にとられるだけで帝国は滅ぶ。

 そう思ったリウスは全力で接待することを決めた。

 

「わかった。ではいつ向かう?」

「今日中にでも。移動は馬車、野営は可搬の館で行いましょう」

 

 リウスがそう言うと玉藻は驚きつつ了承した。

 

「ではさっそく準備をして行きましょう。城の門前で待っていてください」

 

 その言葉に三人了承した。

 

 

 

 

 

 ■

 

 二時間後。

 四人は馬車に揺られ帝都に向かっていた。

 

 馬車は箱型の物で黒い塗装がされている貴族用の物だ。

 レベル百のパーティをただの馬車で動かすわけにはいかないとリウスがサイモンに進言したためこの馬車での移動となっている。

 

 馬車は六人乗りの広さだが乗っているのは五人だ。

 

 馬はただの軍馬で御者は帝国軍人。同乗しているのは百人隊長の女軍人でセノアという。

 銀髪碧眼の女で貴族の女だ。

 

「帝都に着いたら、まずは大将軍と謁見して貰います。そこであなた達の立場を決めることになると思います」

「わかった……しかしどうなると思う?」

 

 ゲームでは帝国軍に入ることになるがその時もエレナが暇つぶしという事でプレイヤーに会いに来て模擬戦になる。

 その時の勝負結果は今後に影響しないが、勝つと特殊台詞が聞ける。

 

 ディロール(ゲーム)はサブクエストやサブダンジョンを攻略して回ることがメインなのでメインクエストの難易度は雑な調整されている。

 そのために最初にメインクエストを進めると中盤ぐらいで詰む。

 

 今はレベル百なので問題ないだろうと玉藻は考えるがそれでもラスボス戦はどうなるかわからない。

 

 帝国と強力な関係が結ぶことが出来ればいいが、と考えていると馬車が揺れた。

 

 セノアが小窓を開け御者に問いかけた。

 

「何があった?!」

「悪魔が一体こちらを狙っています! 振り切れます!」

 

 御者の軍人がそう叫んだ。

 

「お客人、すまない。暫くの間耐えてくれると──」

「私が対処しよう」

 

 そうレイダンが言った。

 二つの魔法を行使する。

 

<敵感知>(センスエネミー)……<内部爆発>(インブロージョン)

 

 <敵感知>(センスエネミー)は一定範囲の敵を感知する魔法だ。範囲は術者の技量に依存する。

 <内部爆発>(インブロージョン)は敵の体内から爆発させる魔法である。

 

 瞬間馬車を襲っていたレベル十の悪魔が爆発して死んだ。オーバーキルだった。

 

「あ、悪魔が爆発しました!」

「……も、問題ない。進んでくれ」

 

 セノアは引きつった笑みを見せながらそう言うしかなかった。

 

 

 

 ■

 

 一週間かけて馬車は帝都に着いた。

 道中何度か悪魔や野盗の襲撃があったが全てレイダンが馬車の中から魔法を行使して蹴散らす事で問題なく進めた。

 野営は可搬の館を使い、見張りは召喚モンスターに任せる事で気楽に行けた。

 道中の料理はセノアが率先して料理した。

 

 帝都に入るには検問があるが、帝国軍の馬車なのでそれを素通りした。

 街中に入ることで馬車は速度を落として進む。

 

「ここが帝都か……栄えておるのぉ」

 

 玉藻は馬車の窓から帝都を見ながら呟いた。白く四角い家々に酒場やパン屋が多数ある。

 ゲーム内の数倍以上の広さを持っていると言えるだろう。

 

 もう一人、クレスは窓の外をキラキラした目で見ていた。それをリラは微笑ましく見ている。

 

 帝都には大きな観光名所が二つある。

 一つは二階までが一般開放されている帝都の城、インペリアルパレス。

 もう一つは雲の上まで貫くようにある白金の塔、この大陸の中でも最大のダンジョンだ。

 ダンジョン名は特になく、最大百層のダンジョンで現在は五十層まで攻略が進んでいるのが公式記録だ。

 だが過去には百層まで攻略され、五十層のセーフエリアが街になっている。この街には転移の魔法道具(マジックアイテム)で観光に行ける。

 出現するモンスターはその階層のレベル分登場するが、ゲームだと八十層以降はレベル七十から七十五ぐらいのモンスターしか出なかった。

 ゲームだとボスモンスターはランダムに配置されていた。

 

 馬車がインペリアルパレスに向かって進んでいく。

 

 そうして帝都を三十分ほど進むことで帝都の城の庭に馬車が止まり、四人は馬車を降りた。

 

「ん-、久方ぶりの外じゃ」

 

 玉藻はそう背を伸ばした。

 

 ここ一週間馬車に乗りっぱなしだったので体が凝っている気がする。疲労無効の装備の力でそんなことはないが。

 

 庭は広く、一般開放されていない場所になる。

 

「では城の奥まで案内します」

「頼んだ」

 

 そうして城へ入ろうとしたところ、向こう側から女が歩いてきた。

 灰色の髪と瞳。身長は女にしては高く百八十二センチはある。

 へそ丸出しのファッションに背中には大剣を持っており、左目の下には傷がある。

 

「大将軍?!」

 

 セノアが叫んだ。

 女の名はエレナ・ヴァハ。帝国最強の大将軍である。

 

 玉藻もそれを見て原作と同じだ、と謎に感動していた。

 勿論ここは現実なのでキャラデザそのままではなく現実に居たらこうだろうなという感じに変わっているが。

 

<念話>(テレパシー)で重要な客が来ると聞いてな、私直々に見てみようと思ったんだ……うん。強いな」

 

 エレナはレイダンとリラを見てそう呟いた。

 

「私も同行しよう。何やら国を揺るがすような事態らしいじゃないか。私もその話の説得側に回ろう」

「……それはありがたいが、何故お主がそんなことを?」

 

 玉藻がそう尋ねた。

 それに対しエレナは苦笑しながら返す。

 

「何、長らく帝国最強として君臨していたが挑戦者側に戻るのも悪くない。私と手合わせしてほしい」

「そう言う事なら、わかった。いいじゃろう」

「感謝する……君が一党のリーダーなのか」

「あぁ、わらわは隠蔽してるからの……ちょっと待っておれ」

 

 玉藻はそう言うと探知阻害の指輪を外した。

 次の瞬間威圧感がバリバリに出る。

 ステータスに優れる異形種のプレッシャーだ。セノアは膝をつきエレナは冷や汗を流した。

 

「……なるほど。あなたがこの一党のリーダーというのは強く実感した。低く見たことを謝罪しよう」

 

 そう言うとエレナは頭を下げた。

 玉藻は指輪をハメなおしつつ言う。

 

「気にするな。隠蔽しておるわらわも悪いからの。では行こうか」

「ああ。私が案内しよう」

 

 そうして一行はインペリアルパレスに入っていった。

 

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