天狐玉藻の異世界攻略録   作:Revak

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第8話

 

 城を一行は歩いて行く。

 

「しかしこれから誰に会うんじゃ?」

 

 玉藻が疑問を問いかけた。

 それにエレナが軽く答える。

 

「帝国の若き皇帝、ラインハルト・フォン・ラウターバッハ・ブラスク様に会ってもらう」

 

 その言葉に玉藻はぴしりと止まった。

 玉藻の予想では帝国の大将軍であるエレナ、そして帝国魔法省のトップであるレベル四十四の呪文詠唱者(スペル・キャスター)、名をキャロライン・フォン・ケスラーに会うと思っていたのだ。

 余談だがこの帝国では貴族は名字が三つ、皇族が四つ、豪商などの特殊な平民が名字持ちで一般人は名字を持たない。

 

「? どうした?」

 

 エレナが止まった玉藻を見て何かあったかとのんきなことを考えながら問いかけた。

 

「い、いきなり皇帝? 無礼じゃないかの」

「いやレベル百の相手だから普通だよ」

 

 

 既に帝国内には玉藻たちがレベル百の超越者だという話は知れ渡っている。

 先遣隊の<念話>(テレパシー)の魔法で知らされており、身辺調査も軽く行われている。

 

 帝国はレベル百という超越者を軽く見ない。

 

 この大陸の外にはレベル九十の勇者という物が居り、その者はまさしく一騎当千の覇者のごとき力を持つという。

 帝国はこの大陸でも有数の大国家だが、この大陸外から見れば大した国ではないのだ。

 だからこそ帝国は強者を欲しているのだ。

 

 それを予想していたレイダンとリラは何ともない顔をし、ついてきているだけのクレスは何もわかってない顔をした。

 

 玉藻も気合を入れなおしエレナに着いて行った。

 

 暫く歩く事で客間に辿り着く。

 エレナが開けることで部屋に入ると其処には皇帝が居た。

 

 ゲーム上でも登場する若き二十代にしてこの帝国を収める皇帝、ラインハルト・フォン・ラウターバッハ・ブラスクだ。

 金髪の短髪にアメジスト色の眼。程良い筋肉のついた体に豪華な服を着ている。

 

「ようこそ、お客人。知っての通り余がこの帝国皇帝のラインハルト・フォン・ラウターバッハ・ブラスクだ。気軽にラインハルトと呼んでくれ」

 

 そう皇帝は笑顔で言ったが、玉藻は引きつった笑みを見せるしかなかった。

 

「は、初めまして皇帝陛下。私は玉藻。旅の呪文詠唱者(スペル・キャスター)です」

 

 玉藻は普段の廓言葉を使えずに緊張しながら言った。

 フレーバーテキストより玉藻の中の人の緊張が上回った瞬間であった。

 

「魔女のリラ」

呪文詠唱者(スペル・キャスター)のレイダンだ」

「えっと、クレスです。呪文詠唱者(スペル・キャスター)見習いです」

 

 他の三人が自己紹介をした。

 

「あぁ。詳しい話は座って聞こうじゃないか。どうぞかけると良い」

 

 そう言われて玉藻一人だけぎくしゃくした動きでソファに座り、他の三人は気にせず座った。

 エレナは皇帝の背後に移動し立った。

 

「さて、まずは喉を潤すと良い。好きな飲み物は?」

「こ、コーヒーで」

 玉藻。

「紅茶」

 リラ。

「梅昆布茶」

 レイダン。

「オレンジジュースでお願いします」

 クレス。

 

「わかった。すぐ用意させよう」

 

 ラインハルトがそう指を鳴らすとどこからともなくメイドが現れた。

 

 メイドがさっき言った飲み物を確認の前に配置する。

 

「では本題と行こう。悪魔が反乱軍に関わっているらしいが、その証拠は?」

 

 ラインハルトがそう鋭い目で尋ねた。

 

「レイダン」

「わかった。<探知阻害>(ディテクション・インヒビション)<探知反撃>(ディテクション・カウンター)<探知隠蔽>(ディテクション・コンスィールメント)<遠視>(クレアボヤンス)<画面表示>(モニター)

 

 幾つかの魔法を行使する事でレイダンが魔法の画面を空に映した。

 

「これは、千里眼の魔法か。事前に使ったのは?」

「探知阻害に対する対策です。それをしないと攻撃してくる可能性があったので」

「なるほど。敵はそう言う高位の魔法を使うのか」

 

 そうして画面が映る。

 画面には結晶で出来た城、クリスタルパレスが映る。

 

 城の中に画面が映っていく。

 

「これは……!」

 

 城の中には低レベルから中くらい、レベル四十までの悪魔がぎっしりと詰まっていた。

 

「……これは幻術ではないだろうな」

 

 ラインハルトは冷や汗を流しながら問いかけた。

 

「残念だが現実です。陛下」

「そうか……くく、アグミルめ、こんなことをしていたのか……!」

 

 ゲーム内の裏設定を知っている玉藻はもやっとしたが言ってもしょうがないので黙って置いた。

 

「それで、陛下。そのためには反乱軍を打倒す必要があり……正直にもうされますと、帝国の今の軍事力ではあの悪魔の軍勢を倒すことは出来ません」

「……悪魔にはさほど詳しくないが、あの悪魔たちはどれほど強いのだ?」

「平均レベル四十、ヴァハ殿でも侵入すれば危ういでしょう。そして敵の親玉の悪魔の王はレベル百。私たちでなければ対処できません」

「断言するか、良いぞ。自信のある人物は好きだ。ではこれは帝国からの正式な依頼として……報酬は何が良い? 望むものを与えよう」

 

「では領地を」

 

 レイダンがそう発言したことに玉藻は驚愕し驚異の速度でレイダンに向かって首を振った。

 

「何を言うておる?! 領地なんぞ貰っても使い道なかろう!」

「私にはある。魔法の研究が出来る静かな土地が欲しい。それに玉藻も家が欲しいだろう」

「それなら一生遊んで暮らせる金と家を貰えばよかろう!」

 

 玉藻がそう叫んだ。

 

「我々に寿命はない。一生の金は不可能だ。ならば土地でも得て継続的な収入を得る方が現実的だ。冒険者の場合はいちいち冒険に出るのが面倒だしな」

 

 レイダンは魔法を極めたことで魔法其の物に近づいたことで肉体的な枷から解放されている。

 そのために寿命もない。

 

「いや、だとしてもそれはおぬしの事情じゃろう。わらわは……」

「この世界で生きていく以上定住の地は必要だろう?」

 

 玉藻はそう言われてぐうの音も出なかった。

 確かに現実、地球に帰還しそこで暮らすことは異形種である玉藻にはほぼ不可能だ。

 だからこそこのディロールの世界で生きていく必要があり、将来を考えるならば定住の地は必要だ。

 そして寿命の無い種族である玉藻には継続的な収入が必要だ。人間(人間ではないが)生きているだけで金がかかるのである。

 

「ぐぬぬぬ……」

 

 玉藻は言い返せなかった。

 実際人生設計を考えると定期的な安定した収入は必須だ。

 商売という物より土地の運営の方がまだ安定した収入を得られるだろう。

 

「………………わかった」

 

 玉藻は長い沈黙ののち了承した。

 いずれ一度元の世界に帰るとしても結局はこの世界に戻ってくることになるのだから土地はあって困る物ではない。

 

「なるほど、土地か。では爵位も共に渡そう。君たちのリーダーは誰かね?」

「玉藻だ」

「玉藻です」

 

 レイダンとリラがそう断言した。

 

「……私です」

 

 玉藻は不服そうにそう言った。

 それに対しラインハルトは苦笑しながら言った。

 

「そうか。今余っている土地でいいのはなくてな……やせた土地か、叔父……アグミルの元領地のどちらかになってしまうんだが、良いかな? もう少し待ってくれればもっと良い土地を用意できるかもしれないが」

 

 ラインハルトとしては待ってもらいたい案件だ。

 国を救う大英雄に渡すような土地ではない、どちらも。

 痩せた土地は持っての他だし、悪魔が住み着いた元土地なんて曰くが着いて人も寄り付かなくなるだろう。

 

「では痩せた土地の方を。私たちならば肥沃な土地に出来ますので」

「……それは魔法を使って?」

「えぇ。無環魔法を使えば土地を再生することぐらい容易いです」

 

 ゲームにも登場した魔法に<天地改変>(ザ・クリエイション)がある。

 この魔法は自身が今居るフィールドを好きな土地に作り替えるという物だ。

 マグマ地帯から豪雪地帯、平原に雪原、岩肌など様々な土地に変えれる。

 効果時間は無限。

 ただ無環魔法は一日に四度までしか使えないので回数制限があるのが要注意だ。

 因みに範囲は結構広く今いるフィールド全体が効果範囲になる。

 

 魔法で土地を癒す、という言葉にラインハルトは引きつった笑みを見せた。

 一応畑を回復する魔法ぐらいはあるがやせた土地そのものを直すような大規模な魔法は知られていない。

 

「そ、そうか、本当にいいのか? 結構な範囲があるとはいえ……」

「構いません。まぁ、魔法で好き放題出来るのでその方が好都合かと」

「……そこまで言うのなら、わかった。戦争が終わった暁には玉藻殿、君に土地と……そうだな、辺境伯の地位を与えようじゃないか」

「辺境伯? そのような地位を私に? いいのですか?」

 

 この国の貴族位は上から順に皇族、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵だ。

 辺境伯は公爵と同等の地位を持つ大貴族だ。下手すれば元皇族が成ることもある。

 辺境の名で勘違いされやすいが僻地に飛ばされることはなく国にとって重要地点を任せられる強者がその地位に就く。

 

「実力に見合った者には相応の地位を与えるとも。出なければ国としての威信にかかわるからね」

 

 ラインハルトはそう決め顔で言った。

 玉藻は流石は皇帝、と謎の感動をしていた。

 現実だとカリスマすげぇな、と。

 

「では……早速だが反乱軍を鎮めるための話をしよう。エレナ。座ってくれ」

「畏まりました」

 

 

 そうして国を救う為の会議が始まった。

 

 

 

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