天狐玉藻の異世界攻略録   作:Revak

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第9話

 

 翌日。

 城で旅の疲れを癒した玉藻はディロールの空を走っていた。

 

 今、レイダンとリラはブラックウォークに行き対反乱軍の準備をしている。

 玉藻は最後の戦力の当てであるハドリムを勧誘しに空を走り、向かう先は竜の山脈。

 デッドロルから南に進んだところに麓の村、ドラゴはある。

 

 雪が降る地域だが雪はせいぜい五センチ程度しか積もらない。

 

 そうして雪が降る中十二時ごろにになってようやく玉藻はドラゴを見つけた。

 山の麓の村に降りて行く。

 

 原作でも寂れた寒村であり旅人は稀にしか来ないという村であり一応宿が一件ある程度の村だ。

 

 玉藻は地上を歩き宿に向かう。

 宿は二階建ての酒場と併設されている宿だ。

 宿の中に入ると少し暖かく感じる。

 

 玉藻は高ステータス故に寒さや暑さに対して耐性を持つ。

 といってもそれは高い耐性という訳ではなく極寒の中、例えば南極大陸の中を裸で歩けるような耐性の高さではない。

 そのため極寒の中動くには耐性を得る魔法を使う必要がある。

 

 玉藻は適当な席に座りメニューを見る。

 

 メニューを見て竜の尻尾のシチューと竜のパンを頼み料金を払う。

 ゲームでも登場した食べ物で設定上は竜の形をしているだけのパンと特に竜とはゆかりなく蜥蜴の尻尾が入ったシチューだ。

 

 玉藻は無言で食べ始める。

 

 味は普通だが、シチューの方は少し肉が美味かったが、それぐらいであった。

 

 十分ほどでスープを食べ終えると山に向かうかと宿を出る。

 

 竜の山脈中空は空が荒れている。そのため<飛行>(フライ)の魔法などで向かう事は出来ない。

 まぁやろうと思えば竜の山脈から離れたところで超上昇してから向かう事で突破出来なくもないだろうが、それだと迷子になりかねないので正攻法で向かうことにした。

 

 玉藻が竜の山脈入り口に近づく。

 入口は洞窟だ。というか竜の山脈の殆どは山内部の洞窟を進んでいく事になる。

 

 入口前には小屋があり、受付がある。

 ここで受付をしないと入れない。

 受付の理由は内部で遭難した際の救助などだ。使い捨ての魔法道具(マジックアイテム)をくれてそれを使う事で救助される。

 ゲーム上では使う事でこの小屋前に強制転移されるアイテムだ。よく帰りに使っていた。

 

 玉藻が小屋の受付に進むとそこには受付嬢が居た。

 

「山を登りたいんじゃが」

「登山ですね! わかりました。お名前をお伺いしても?」

「玉藻じゃ」

「玉藻さんですね。まずはこちらのベルをお受け取りください。万が一遭難や道中のモンスターによって危険な際は慣らしてください。救助隊が向かいます」

「わかった」

「あと、今クエストあるんですが受けますか?」

「受けよう。内容は?」

「この供物を祭壇にささげて欲しいんです。報酬は一万セラです」

「受けよう」

「ありがとうございます! 今供物持ってきますね!」

 

 そう言うと受付嬢は走って奥へ行った。

 

 このクエストがハドリムに会うための条件だ。

 クエストを受けずとも山を登れるがその場合はハドリムには会えない。

 

 少し待つことで受付嬢が大きな袋を持ってきた。人が入りそうなほど大きな袋だ。

 受付嬢は重そうによっこいしょと机に置く。

 

「どうぞ、これ持って行ってください」

「うむ。わかった」

 

 一般人だとこれ持って登山するのほぼ無理ゲーだろ、と思いつつ玉藻は受け取りアイテムボックスにしまった。

 

「では行ってくる」

「お気をつけて~」

 

 

 そうして玉藻は山の洞窟に入っていった。

 

 

 

 洞窟内は暗い。灯りの類が無いのだ。

 暗視の種族的能力が無ければ困るところだろう。

 洞窟は広く六人横並びになっても余裕はあるだろう。

 苔むして居たり小動物がいる洞窟だ。

 

 十分ほど進むと敵が出現する。

 

 通路からぬるりと出て来たのはジャイアントスパイダーという二メートルほどの蜘蛛だ。毒液を吐いてくるレベル七の敵だ。

 玉藻は即座に精神操作で支配下に置き、前衛として進ませた。

 この洞窟に出てくるのは殆ど雑魚でいいところレベル十五のトロールぐらいの物だ。

 

 特に問題なく進んでいった。

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 六時間後。

 

「やっとついた……!」

 

 玉藻はようやくついたと洞窟を出て山の頂上に出た。

 支配下に置いたモンスターは洞窟に戻らせ、人を襲わないよう命令しておいた。

 

 山頂はふぶいておらず静かな物で、祭壇が一つあるだけの寂れた場所だ。看板も何もない。

 

 玉藻が祭壇に近づきアイテムボックスから供物の入った袋を置く。

 

 瞬間轟音が響いた。

 下から巨大な怪物が顔を表す。

 

(でっか)

 

 現れたのは全長四百メートルを超える白い竜だ。

 首は細長く、どちらかというと蛇を思わせる体に手足が付いている。勿論背には竜の翼がついており、頭部のは白く細長く鹿の角に見える物が一対生えている。

 口からは白いひげが生えている。

 

「供物か。感謝しよう」

 

 そう竜、ハドリムは言った。

 

「初めまして、竜よ。わらわは玉藻。良ければわらわの話を聞いてはくれんかえ?」

 

 玉藻はここが説得ロールのしどころだ。と気合を入れた。

 正直レベル七十五なら精神操作で壊して作り直すことで強制的に支配下に置くことも可能だが、毎回相手をそんなことしてたら味方が全員消えて世界の敵になるのでしないしできない。

 

「その内容によるね」

 

 どうやら話を聞いてくれる気はあるらしい、と玉藻はほっとした。

 ゲームだと急に現れ会話すると選択肢に「たたかう」が出てきて戦ってくれる相手だから割と会話してくれる存在らしいとは思っていたが。

 

「今、世界は悪魔に覆われそうになっている。悪魔の王が世界に現れこの世は地獄に変わろうとしている。それを阻止するために少しでも戦力が必要じゃ。そのために力を貸してほしい」

「……世界の為、か。ならば君はボクに何を差し出す?」

 

 予想で来ていた問いかけに玉藻はこう答えた。

 

「今はまだ何も払う事は出来ない。だが事が終わった暁にはわらわは領主になり、土地と資金を得る。そこからある程度差し出す事は可能じゃ」

 

 なんならダンジョン潜って高レベルのアイテム手に入れてもいいし、と玉藻は考える。

 竜は財宝を好むというので問題ないだろう。

 ハドリムは小声でつぶやいた。「……番にしたい」と。

 

 玉藻は聴力は優れているがこの山頂の下は吹雪いてる為小声だと聞こえなかった。

 

「うむ。対価は……後でまた話そう。だが──力を示せ。竜をそばに置いてもいいのだという力を示して見せろ」

 

 そうハドリムは戦闘態勢になりながら言った。

 その言葉に玉藻もニッと笑みを見せ扇子を出しながら構えた。

 

「良いじゃろう。異界より来た者の力、見せてやろうぞ!」

 

 竜と天狐の戦いが始まる。

 

 

 先手はハドリムだ。

 大きな口を開けドラゴンブレスの構えだ。

 

 玉藻は受けてはならぬと跳躍する。

 

 だが避けきることは出来ずドラゴンブレスの範囲に入る。

 

 ハドリムの竜種はフロストドラゴン。冷気系に特化した竜だ。

 更にハドリムはモンク……素手攻撃に特化したクラス構成をしている。竜というステータスの高さを誇る種族を考えればレベル以上の戦闘力を有しているだろう。

 

 玉藻にフロストブレスが命中し体が凍っていく。

 

「な、なんのその!」

 

 玉藻は妖狐の特殊能力(スキル)である狐火を使い体に着いた霜を溶かした。

 

<幻影の巨腕>(ファントム・グランドアーム)!」

 

 玉藻は幻影の腕を生み出した。

 巨人の腕だ。ゲームではサイズは出なかったが玉藻クラスが使うと百メートルの右腕が産み出される。

 

 玉藻は空に立ちながらその腕を使いハドリムの頭を上から殴った。

 殴られたことでハドリムの巨体が地面に落ちる。

 

<幻影の武器軍>(ファントム・ウェポンレギオン)

 

 次に使用するのは多数の幻影の武器を生み出す魔法だ。

 大剣、槍、剣、短剣、ハンマーにメイスなどの多数の武器が百以上生み出される。

 どれもすべて幻で実態を持たないが、喰らえばその属性のダメージを負う。

 

 その武器の雨をハドリムは突っ切った。

 勿論ダメージを幾つも負う。レベル百の玉藻の魔法だ。例え竜でも少なくない傷を負う。

 

 そう来ることは予想で来ていたので玉藻は幻を出しつつ回避する。

 

 ハドリムが幻の玉藻を攻撃するも露となって消えた。

 本体はどこに、とハドリムが竜の優れた知覚範囲を広げる前に玉藻は頭上に移動し魔法を使う。

 

 幻で出来た全長百メートルほどの大剣が召喚される。

 両刃の剣で白い。そのまま玉藻はハドリムの体を両断する勢いで攻撃する。

 

 ハドリムは回避するも全て回避しきれず横腹を斬られる。

 竜の強靭な鱗だが精神的に苦痛を受け実際に斬られるのだ。

 

 玉藻は更に天狐の特殊能力(スキル)の分身を使う。

 玉藻が十一人に増えた。

 

 竜の優れた感知能力で全て本物と同等と見破ったハドリムは相手のトンチキさに口調しつつ攻撃に移る。

 

 ハドリムはモンク系のクラスを収めている。

 そのために肉体強度はただの戦士職より高い。その拳はこの世界最高位の金属であるアポイタカラすらへこませる。

 

 分身は更に魔法を行使する。

 第二環魔法の<多重幻影>(マルチビジョン)の上位魔法<多重分身>(マルチクローン)を使う。

 実体を持つ分身と持たない分身を出し、それらの分身は各自勝手に行動する。

 攻撃を受けても数発は耐えれる耐久性を持つ分身だ。更に本体と同期し外見や傷は同じままになるという特性を持つ。

 

 その数の暴力を持ってして玉藻はハドリムに挑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 玉藻がハドリムを一方的に攻撃しているころ。

 レイダンとリラはブラックウォークに来ていた。

 

 ブラックウォークには観光名所にして要塞のドラゴンパレスがある。

 ドラゴンの名を示すように高位のドラゴンの骨の頭が城の外に飾ってある木造の城だ。

 

 今、ブラックウォークは攻められる寸前だ。

 

 ドラゴンパレスの会議室にレイダンとリラは帝国四騎士を連れて入る。

 

 四騎士とは帝国に所属する精鋭兵の事でレベル二十以上の者たちで構成された組織の事だ。

 将軍と同等の地位を持つが軍を指揮することはない。

 

 レイダンとリラを連れているのは四騎士の証である黒い全身鎧を纏った男で顔は晒している。

 金髪碧眼の優れた顔をしていて優男といった雰囲気の男だ。背には己の体躯以上の槍を背負っている。

 名をレナード・ジュリアス・ディーヴァルトという。

 

 会議室に入ると注目を集める。

 中にはブラックウォーク領主のドミニク・ディル・ブラントが居る。

 金髪碧眼の壮年の男で髪には少し白髪も交じっているが長年この街を支配してきた貫禄は健在だ。

 他にはこの街の衛兵長に将軍であるテオドル・アトシュもいる。

 

 会議室は広いが座っていられる場所はない。全員立っている。

 中央にはテーブルがありブラックウォーク周辺の地図が置いてある。

 

 最初にドミニクが口を開いた。

 

「そちらが皇帝陛下から連絡があった援軍か。まずは自己紹介をしようか。俺はこのブラックウォークの領主のドミニク・ディル・ブラントだ。そちらの名は」

「レイダンだ」

「リラだよ。魔女だ」

 

 簡潔な自己紹介にドミニクは眉を潜めながら「そうか」とだけ返した。

 

「それで、だ。反乱軍は二日後にはこのブラックウォーク前に陣を敷くだろう。それにあたって何か策はあるか?」

 

 既にドミニクたちで会議し対応策は決まっているが、それでも皇帝からの客人という事で聞かない訳にはいかないので問いかけた。

 

「そうだな。私が陣を攻撃にしに行こう。それだけで容易く終わる。リラには万が一の際にこの街の防衛に回ってもらう。それだけで終わりだ」

 

 レイダンがそう言ったことにこの場の者たちは怪訝な目をすると同時に威圧される。

 皇帝陛下推しの人物が何言ってんだという思考とレベル九十の者の威圧感を前に正気では居られなくなる。

 

「敵軍の数は凡そ三千。貴方一人で対処できるのか?」

 

 将軍テオドルがそう尋ねた。

 

「レベル三十にも満たぬ雑兵の群れだ。何とでもなる」

 

 レイダンはそう断言した。

 実際反乱軍は雑兵の集まりだ。

 村に居場所が無くて出た三男坊や四男坊、アグミルの派閥に居た結果兵力を出さざるおえなかった者。そこらの山賊や野盗が金欲しさに所属した者などしかいない。

 この帝国に置いて大きな反乱を起こすような政策の失敗などはなく、安定した治世を見せてきた。だから反乱軍に真面な人材はいない。だいたい犯罪者か半グレである。

 

「……そこまで言うのなら、貴方一人でどうにかして見せて貰いましょうか」

 

 テオドルが煽る様に言った。よく見ればこめかみに筋が浮かんでいる。

 

「いいだろう。一応前日に準備だけさせてもらおうぞ」

 

 そうしてレイダンは戦場予定地へ飛んで行った。

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 二日後の昼。

 

 ブラックウォーク前は平らな平原だ。その平原に三千の兵士が集まっていた。

 攻城兵器すら持ち込んだ戦争をしておりカタパルトなども多数ある。

 だが呪文詠唱者(スペル・キャスター)の数は少ない。殆どいないと言っていいだろう。

 

 レイダンはその空の上を飛んでいた。

 

 そうして反乱軍がブラックウォークまで一定の距離を進むと──瞬間爆発した。

 

 なんだ、なにごとだ?! と反乱軍の兵士たちは騒ぎ立てるが更に次の瞬間雷が落ちる。

 

 レイダンが事前に設置した罠魔法だ。

 罠魔法は本来設置すると術者以外の人物が触れると発動する魔法だ。設置上限数はない。

 だがレイダンは優れた魔法能力で罠魔法の起動をオフにしておいたのだ。ゲームではないからこそできる事だ。

 

 設置したトラップ数は百を超え、爆発や氷結、雷の連鎖などの魔法がさく裂していく。

 

「そろそろか──<魔法三重範囲強化・(トリプルレンジエンハンスメント)隕石召喚>(メテオ・コール)

 

 唱えるのは第十環魔法<隕石召喚>(メテオ・コール)

 空に魔法陣が三つ浮かぶ。巨大な、二十メートルを超える魔法陣だ。

 

 そして赤い魔法陣から赤く燃え盛る巨大な岩が出てくる。

 

「……じーざず。おぉ、かみよ」

 

 地面に居た反乱軍の一人はそれを見て神に祈りを捧げた。

 

 

 隕石が地面に着弾し、大爆発を起こす。

 特殊能力(スキル)で効果範囲を広げた隕石の爆発は半径百メートルを超えるほどに巨大だ。

 一応ブラックウォークの城壁には当たらないよう調整したがそれで熱は届き少し岩が熱された。

 

 これにより反乱軍は逃げ出した。

 こんな一方的に攻撃できる相手と戦ってやれるか馬鹿野郎、という具合だ。生き残った二割の兵士は我先にと逃げ出した。

 追うつもりのないレイダンは空を飛びブラックウォークの門の前に行く。

 

 そこには待機しているテオドルが居て絶句した表情を見せていた。

 他には念のために待機していたリラと四騎士のレナードが居る。

 

「これで充分か?」

 

 レイダンがそう尋ねてもテオドルは目を点にしたまま動かない。

 変わりにレナードが答えた。

 

「充分です……充分以上の働きをあなたはしてくれました」

 

 皇帝に報告するときに胃が痛くなりそうだ、とレナードは遠い目をした。




すみません続きがどうしても思いつけなくなったので暫く休載します。
一年後には再開できるはずです。
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