みおんちゃんが私達の思いを受け止めてくれたところで、プレゼントタイムだ。
皆が彼女のために用意した、それぞれのプレゼント。
どんな物を用意したのか私も気になるところだった。
「わたしはね~、これ!」
一番手はみくちゃん。
ごそごそとカバンから取り出したのは、小さな人形だった。
「みおんちゃんのおんぎょうさんだよ~!」
「えっ、これ凄い丁寧に作ってあるね……」
「うん! おかあさんといっしょにつくったの~!」
目はボタン、口は綺麗に糸で縫られていて、とても可愛らしい人形だった。
お母さんと一緒に作ったと言っているけど、もしそうだとしたらクオリティがとても高い。
お店で売られていてもおかしくないレベルだ。
みくちゃん、色々と器用で天才肌だから、本当だとしてもおかしくないんだよな。
「はい、これ!」
「ありがとう。……かわいい」
みおんちゃんは人形で遊んだりするんだろうか。
両手で色々な所を握って、柔らかさを確かめている。
その様子はとても微笑ましい物で、後ろで泉希さんが写真を撮っている音が聞こえてきた。
「ゆうとくんのもあるよ~!」
「え、そうなの?」
「うん! しおりちゃんも~!」
さらに小さな男の子の人形と、本を片手に持った女の子の人形が出てくる。
女の子の人形をしおりちゃんにあげると、嬉しそうにそれを受け取った。
……あれ、私のは?
「みくちゃん、僕のは?」
「これはわたしの~! ゆうとくんはゆうとくんだから!」
「……あ、ソウデスカ」
よく分からなかったが、私の分はないという事だけ分かった。
……ん? 目を凝らしてカバンを中を見ると、みくちゃんの姿をした人形があるのを見つけた。
片手には小さなリングが付いている。
それと同じ物が私の人形にもついていた。
何だろう、あのリング。
「わ、わたしは……これ!」
気になって意識を人形に移していると、しおりちゃんがプレゼントを渡した。
それに気づいて見てみる。
彼女のプレゼントは、本のしおりのようだった。
「これがあるとね、ほんをよんだところからよめるの! みおんちゃんもほん、よむとおもって!」
「ふふふっ、うん。ありがとう、しおり」
「うん!」
しおりちゃんから小さなプレゼントを貰うと、大事そうに人形と両手で持った。
模様はしおりちゃんが描いたのだろう、動物の絵がしおりに書かれていた。
今までよりも仲良さそうに笑い合う三人。
皆嬉しそうで良かった。
「……そ、それでっ? ゆ、ゆうとのは……?」
「あっ、そうだね。僕のプレゼントがまだだった」
みおんちゃんも楽しみにしてくれているみたいで嬉しいやら恥ずかしいやら。
こんなプレゼント、喜んでくれるのだろうか。
対して上手く無い絵だ。もっと他のとか……
「どうしたの? はやくはやく!」
「あっ、ごめんごめん」
私が出し渋っていたそれを、早く早くと急かしながら近づいてくる。
ゆっくりとカバンから絵を取り出すと、みおんちゃんに渡した。
「……これ……」
「あ、あはは……ごめんねこんな変な物で。もっと色々と考えたんだけどさ、ネックレスとか髪留めとか上げるのは早いかなーとか、ちょっとキモイかなーとか考えてさ、そ、それに自分が作った物をあげたいって思って。そうとなったら今の僕にできるのは絵くらいかなって思って……」
二人のプレゼントがとても凄くてきちんとした物だったから、余計に恥ずかしく感じる。
もっといいプレゼントを考えて渡すべきだった。
みおんちゃんの反応が無い事に違和感を感じて、恐る恐る顔を見る。
あまりにもガッカリして言葉も出ないんじゃないか、とか考えて。
「……わたし?」
「あ、そ、そうなんだ。みおんちゃんの絵……」
あの時見た、ベンチに座るみおんちゃんの横顔。
風に吹かれ、太陽に照らされていたみおんちゃんの姿。
その時の光景が強く私の中に残っていた。
だから、絵に残しておきたいって思って、思わずこの場面を描いてしまったのだ。
私の絵だから、そんなにうまくない。
まだ子供の体だというのもあって、輪郭とかもズレているし。
他の四歳児の絵と比べたらうまいってくらいだ。
「……どう、かな」
心配になって、声が少し小さくなる。
喜んでくれなかったらどうしよう、と。
あまりにも静かになったみおんちゃんの事が気になった。
「みおんちゃん……?」
顔を見る。
綺麗な眼から、涙が零れていた。
「あっ、みおんちゃん!? ご、ごめん! 変な絵だったよね……気持ち悪いよね」
「ありがとう」
私の絵と、二人から貰ったプレゼント。
それを大事そうに、胸の中へと両手でしまい込んだ。
顔を上げたみおんちゃんの顔は、涙で濡れていた。
けれど、その顔は悲しそうな物ではなくって。
出会ってから初めて見る事ができた、彼女の年相応の元気な笑顔だった。
「ほんとうに、ありがとう」
どうしてだろう、涙が出そうになった。
みおんちゃんが、今まで隠していた気持ちを伝えてくれたような、そんな気がした。
こちらこそだよ、みおんちゃん。
私だって助けられてる。
みおんちゃんがいなかったら、幼稚園だって誰とも仲良くなれなくてつまらなかったと 思う。
こんな私に、勇気を出して話しかけてくれて。
仲良くなってくれて。
離れるのが苦しいくらい、一緒にいてくれて。
みくちゃんがみおんちゃんに抱き着く。
嬉しそうに顔を見ると、いつもの不安を吹き飛ばしてくれる笑顔で、みおんちゃんに笑いかけた。
いつも私にしているように、顔と顔をくっ付けて。
それを真似して、しおりちゃんも片方から顔を合わせる。
恥ずかしそうだけど、楽しそうだ。
お互いに顔を合わせて、幸せそうに笑っている。
三人の顔が私を見た。
みくちゃんが「はやく~」って、しおりちゃんが「こっち!」って、みおんちゃんが「こないの?」って。
そう言っているのが、話していなくても分かった。
女の子に自分から抱き着きに行くのはちょっと……とか、言っている場合じゃないな、これは。
みおんちゃんとみくちゃんの頭の上に頭を乗せ、両手でしっかりと抱きしめた。
皆の「好き」を、お互いに強く伝え合うように。
たんじょうび。わたしがうまれたひ。
とくべつなひ? ちがう。
ただの、ふつうのひ。
おかあさんはわたしのこと、きらいだもん。
はなしたくても、あいたくても、あってくれない。
おかあさんによろこんでほしくて、ほめてほしくて、いろいろやった。
けど、こない。
さびしい。
くるしい。
たんじょうびだって、のあだけがいっしょにいる。
わたしと、のあだけ。
おかあさんは?
あいたいよ。
どうしてきてくれないの?
もう、いい。
だれにもあいされないなら、ひとりがいい。
あのほしみたいに、なにもがんがえないで、ひとりがいい。
そうすれば、かなしくないから。
「……ぁ、あの」
すわってたら、きこえた。
よこをみる。
おとこのこ。
「……ここ、座ってもいい?」
またいじめてくる?
からかってくる?
おこるのかな。いやだな。
でも、ふしぎ。
このこ、こわくない。
となりにすわった。
……はなし、しない。
わたしとおなじ。そら、みてる。
このこも、いっしょなのかな。
いやじゃ、ないな。
なんでだろう。
なんか、すこし……
なんだろ。わからない。
でもやっぱり、きらいじゃないや。
こない。
こない。
いつくるの?
さびしい。
……だいじょうぶかな。
あいにいった。
なまえきいた。
ゆうと。
ゆうと、ゆうと、ゆうと――――
ともだち、なのかな。
わかんない。
でも、きらわれるのは、やだな。
しおり、みく。
ともだち?
わかんない。
でも、たのしかった。
はじめてぷーるであそんだ。
ゆうとが、かわいいって。もでるさんって。
うー、もやもやする。
なに、このきもち?
でもいやじゃない。
ゆうとといっしょにいたい。
しおりと、みくといっしょにいるときと、ちがう。
ふたりは、たのしい。
ゆうとは、くるしい。
でも、くるしいとはちがう。
うれしい、たのしい、きもちいい……?
はなれたくない。
ずっといっしょに、いたいな。
たんじょうび。
わたしのたんじょうび。
うまれてくれて、ありがとうって。
そう、いわれた。
おかあさんは、ことしもこなかった。
なにも、いわなかった。
さびしかった。
でも、さびしくなかった。
みんながいたから。
ひとりだった。
でも、ゆうとのおかげでみんなとあえた。
たのしいこと、いっぱいあった。
ぷれぜんとだってもらった。
はじめてもらった。
おにんぎょうさん。
わたし?
かわいい。
ほんの、あいだにはさむやつ。
しおりつかってたの、みてた。
べんりそうだなって、もらった。
うれしかった。
わたしの、えをもらった。
すわってる、わたしのすがた。
ゆうとは、わたしのこと、こうみてたんだ。
じぶんは、ひとりじゃなかった。
みんながいた、ゆうとがいた。
ひとりはいやだ。
ほんとうはいやだった。
いっしょにいて、ほしかった。
だから、ゆうと。
ありがとう。
わたしをみつけてくれて。
ひとりにしないでくれて。
もやもやするけど、それがいい。
くるしいけど、あんしんする。
ゆうと、だいすき。
ずっといっしょにいてね。
わたしを、はなさないでね。
ひとりにしないでね。