醜い私が逆転世界で暮らす   作:バルバリッチ

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この世界に産まれて

 この世界に来てから色々な事があった。

 過去の記憶を思い出させてくれた最高の両親。

 純粋な好意を寄せてくれる、幼い友達。

 

 私のトラウマは、この世界に来てから段々と減っていっている。

 今でもたまに夢に見る時はあるけど、この世界の優しさに触れ、それも少しずつ落ち着いていた。

 

 幼稚園は楽しかった。

 友達と出会い、遊び、そして卒業。

 あっという間の三年だった。

 

 

 みおんちゃんとしおりちゃんは、この三年を通してとっても仲良くなれた。

 私の知らない所で、みおんちゃんはとても人気があった。

 色々な所で他のクラスの男の子に話しかけられている所を見た。

 それでも必ず、私としおりちゃんの元へと戻ってきてくれた。

 

 私だけの人じゃないのに、私はそれが嬉しかった。

 

 幼稚園のイベントも色々あった。

 男の子は強制参加ではないけれど、参加できる物はできるだけ参加した。

 私もこの幼稚園の一員として、皆に悪い印象を持たれていない今であれば、迷惑をかけずに楽しめるかもしれないと思ったから。

 

 特に思い出に残っているのは、やっぱりお遊戯会。

 私も思わず男の子に怒っちゃったし、申し訳なかったなって思ってる。

 

 お遊戯会自体は大成功だった。

 お母さんも見に来てくれたし、みくちゃんもその日は幼稚園を休んでまで来てくれた。

 私の演技を見せてあげたかったなぁ、立派な木役。

 

 あれからけんごくんと顔を合わす度に私の方も気まずくになってしまって、主役を譲っておいて良かったなって思ってしまった。

 

 他の親御さんは困惑してたけどね。

 

 みおんちゃんの電子ピアノはとても上手だった。

 その事を伝えると、嬉しいのを隠しつつ隠しきれていない声色で「ありがと」と言っていた。

 

 可愛いなぁ。

 

 それはそうと、幼稚園でいつも女の子に遠巻きに見られていた理由の一つが分かった。なんでも前にしおりちゃんに詰め寄っていた男の子を泣かした後、幼稚園中にその噂が広まってしまったとか。

 

 そしてお遊戯会での一幕。

 あれのせいで完全に卒園する時私の周りにはみおんちゃんとしおりちゃんしかいなかった。

 

 幼稚園以外の日常では、みくちゃんも変わらず私にくっ付いて離れたがらない。

 あっちの幼稚園の事はよく分からないけど、お母さんとみくちゃんのお母さんが「幼稚園でとっても人気者」っていう話を聞いたから、悪い事にはなっていないようで安心した。

 例のお人形事件以降、特にそういった悩みは無いみたいだし。

 

 ゆうのも大きくなった。

 二歳になり、少しずつ話せるようになった。

 もう軽く歩けるようになり、部屋の中をよく歩き回っている。

 

 可愛い笑顔で、私の名前を呼んでくれる。

 私の姿を見つけたら一目散に近づいてくれるし、とっても可愛い、自慢の妹だ。

 

 

 もうすぐ私達も小学生だ。

 この世界の小学生がどういう風なのかは知らない。

 だけど、幼稚園と環境も大きく変わってくる。

 

 男の子との関わりも今まで以上に増えてくるだろう。

 そして、私も成長している。

 

 今までのような幼い顔は、大人へとゆっくり変わっていく。

 今はまだ何も感じない子供も、次第に分かるようになっていくだろう。

 

 この世界の人達は、私の事をどう思うのだろうか。

 成長した私の、この顔を見て。

 

 

 今までの人達のような反応をするのだろうか。

 みくちゃんは、みおんちゃんは、しおりちゃんは……私の事を、友達と言ってくれるのだろうか。

 付き合うのが恥ずかしいといって、私から離れていかないだろうか。

 

 不安ばかりが押し寄せる。

 幼い頃に仲良くなった事を、自分は後悔しないだろうか。

 

 また一人に、ならないだろうか。

 だんだんと私の気持ちが抑えられなくなっているように感じるんだ。

 

 一人になるのは怖い。

 

 

 

 

 

 でも私は、この世界を、家族を、あの子達を、愛している。

 だから、私が原因で苦しくなるのならば―――

 

 

 

 

 

 

 春が来る。

 ランドセルを背負い、玄関の扉を開ける。

 

 桜の花びらが舞い散り、穏やかな風が吹き込んだ。

 思えば、こうして子供だけで歩くのは始めてだ。

 もちろん防犯ブザーやGPS搭載の携帯などは持たされている。

 

 隣には初めて会った時よりも背丈が大きくなったみくちゃん。

 当たり前だけど、ここまで大きくなってくれた事に感動すら覚えた。

 私が横を見ると、すぐに視線が合う。

 

 元気な笑顔を見せて、私の手を握った。

 

 

 空を見れば、明るいのに月が出ていた。

 どこか私達を見守っているように見える。

 

 何故あんなこの世界に転生したのかは分からない。

 こうして前世の記憶を持っている事も、私の顔が前世と変わらないブサイクである事も。

 

 それがもし、神様の仕業だというなら……感謝しないといけないな。

 

 

 

 繋がれている手を握り返す。

 みくちゃんと再び視線が合う。

 

 

 

 ―――一人でいい、そう思っていた。

 大きくなったら、皆離れていく。

 

 それでいいと。今だけ、この幸せを、と。

 

 

 

 だけど、やっぱり私は。

 

 

 

 心の奥では、どうしても離れたくないと……そう、思っている。

 その事に気づいていながら、気づいていない振りをしている。

 

 

 

 皆大きくなる。

 この世界の私は、どうなっていくのだろうか。

 

 

 その結末を知るのは、私をこの世界に転生させた神様だけなのだろう。




幼稚園編はここで終了になります。
ここまで長く続けて書いたのは初めてで、変な風になっている所も多いと思います。
それでも続けられたのは読者様のお陰です。
反応があるとやはり嬉しい物ですね。


小学生編はある程度書き溜めてから投稿したいと考えていますので、少し投稿間隔が空くと思います。


ここまでお気に入り登録や評価、コメントを下さった皆様。本当にありがとうございました。
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