破典聖杯戦争 ~黒髭エドワード・ティーチがオタ落ちした日~ 作:若槻 風亜
「いんやーーー、おつよーーーい! あまりの残酷さに流石の拙者もガクブル必至案件! ここまで徹底した血筋マウント才能マウント令呪マウント取れる奴他にいようか、いやいない! いや~~、この瞬間を待ってたオタク、拙者以外におる? おらんやろ~~? アウロラ様マジ覇権ヒロイン! クイーン・アウロラ・イン・聖杯戦争! これは円盤買わざるを得ない! デュフフフ」
ニマニマと笑いながら、異様なまでに明るく、異様なまでに異質な物言い。直前までの黒髭のイメージをがらりと変えるようなその姿に、アウロラどころかセイバーもシャーロットも言葉を失う。
「えっ、ちょ、無視ですかな!? 既読スルーですかな!? いやいやいや、やめてくださいよぉ~。拙者の心はガラス製なんだからパリーンといっちゃうじゃありませんかぁ~。……でもやっぱり言わせて。そのツンとした美貌と残酷ムーブ、控えめに言って最&高! ありがたや~~。あ、ちなみに腋とか見せるご予定は?」
まだまだ続けるティーチに、ようやく思考が手元に戻ってきたアウロラがプルプルと震えだした。その背後でセイバーがちらりとメスメルを見るが、すぐに目を逸らしてあらぬ方向に視線を向ける。一瞬目が合ったメスメルは、「これはこれは」というように肩を竦めた。
「ちょっと、その喋り方やめなさい」
ついに怒りに震えながらアウロラがティーチを止めにかかる。しかし
「えっ、何ですかなー!? 海風が強くて聞こえなーい! マーメイドの囁きですかなー? デュフフ、拙者あの胸からくびれにかけてのライン一度じっくり眺めたかったんですよねー」
聞く耳もたずにふざけ倒すティーチに、ついにアウロラは怒りのままに叫んだ。
「黙りなさいエドワード・ティーチ! あなたには今後一切余計な会話をすることを禁ずるわ!」
その叫びは、令呪を介し命令へと変わる。フィードバックで魔術回路に走る激痛ですぐに正気に戻るアウロラだが、令呪が消費される方が早かった。最後の一画が使い切られ、ただの腕となったそれが球体の中で寂しく浮かんでいる。
激しく歯噛みし、アウロラは健人の腕へと強制接続していた魔力を全て切り捨てた。
「冗談じゃないわ! 折角令呪を取ったのに、たった一画しか残ってなかったですって!? これだから物を知らない一般人は! 何のためにこんな汚らわしいものをわたくしの洗礼された魔術回路に接続したと思っているの!」
美しい髪を掻きむしり絶叫するアウロラ。その様を見て、ティーチは笑う。
「ああ、捨てやがったな。健人の腕を。俺へのつながりを」
地獄の底を這うような声。人間たちは身を竦ませ、メスメルは咄嗟にマスターの前に立ち、セイバーは反射のような速度でライダーに斬りかかった。
だがその剣より早く、ティーチの船の砲口が最後の魔力を使って出現する。――ティーチの頭に向けて。
「舐めるな、この黒髭を。このエドワード・ティーチを。テメェらになんか従わねぇし、殺されねぇよ。俺ぁテメェの手で幕を引くのさ。あの悪逆王のようになぁ」
それはティーチが初めて見たアニメ。自由に生きて、自由に死んだあの男。羨んだその姿に、ティーチは今自分を重ねる。
聖杯の性質を思い出したらしいセイバーが斬る対象をティーチから砲口に変えたのが見えた。
シャーロットが制止を呼びかけているのが聞こえる。
キャスターが魔術を行使しようとしている気配を感じた。
だが、ティーチにとってはその何もかもが無駄である。
歪んだ聖杯のことなどもうどうでもいい。
世界などどうにでもなれ。
この時代に、最早ティーチが守るべきものはない。
脳裏に浮かんだ小さな工房での笑顔を最後に、躊躇なく放たれた砲弾が、ティーチの頭を吹き飛ばした。
飛び去った砲弾は赤い飛沫を振りまきながら海へと落ち激しい水しぶきを上げる。それに遅れて、残された体はよろりと数度歩き、地面にどしゃりと倒れこむ。
そして間もなく、それは光の砂となって消え去った。まるで惜しむものなどないというように、その退去はあっという間の出来事として過ぎ去る。
もっとティーチっぽい感じの煽りオタクムーヴしたかったんですが、私の頭ではこれが限界でした(´・ω・`)
「ここはこうした方がもっと黒髭っぽいんじゃない」のご意見お待ちしております((