能力が〈生体改造〉だから能力作って売ることにした   作:弐哉

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タイトル変えました。いまいちだったので
前より良くなったと思う(自賛)


第23話 〈神力耐性〉:そのへんの木と変わんねぇにゃ!

「ふぅ……いいものあるじゃないか。どうしたんだ? 魔導具か?」

 

「そう。土の魔導具で作った。逃げながらだったから時間がかかった」

 

 これはスピネルの土の魔導具――「ドーム状の土の壁を作る」能力を持つ魔導具によるものだった。

 

 魔導具や魔具、そしてギフトは何の苦労もなく楽々と使用しているように思えるが、実際には発動のために集中する必要がある。

 集中の程度は能力により異なるが、どんな能力でも必ず集中を要することに違いはない。

 

 特に集中が必要なのは魔法系能力である。

 逆に特異部位系能力は、魔法系に比べれば軽い集中でいい。

 

 そのため魔法系能力を主戦力とするギフト持ちや魔具持ち、魔導師などはそのほとんどが後衛に位置して距離を取りながら戦っている。

 一方、特異部位系は前衛で近接戦をすることが多い。

 能力の特徴により棲み分けが出来ているのだ。

 

 そしてこのパーティの魔導師であるスピネルも魔法系魔導具で戦うため、後衛として戦う者だった。

 

「この壁はどの程度持つんだ?」

 

「一発か、運が良ければ二発?」

 

「一発!? そのへんの木と変わんねぇにゃ! ダメじゃねぇかにゃ!」

 

「ダメじゃない当たり前。都合の良い手段はない」

 

 スピネルは呆れたように首を振った。

 魔導具は魔具ほど性能が良くないし、夢のような便利道具でもない。

 勝手に持ち上げられて、勝手に失望されても困るのだ。

 

「んで、どうするにゃ? アレをいつまでも避け続けるのはたぶん無理にゃ」

 

「同意する。このままだと、じわじわなぶり殺し」

 

「だが逃げるのもな……後ろからあれを撃たれて、躱せるか?」

 

「無理にゃ! 後ろに目はないにゃ!」

 

「だよな……」

 

 クロムにはっきりと却下されて、イルメナは思う。

 

(どうする? 逃走すらできない敵を倒すなんて無理だ。だがスピネルの言うように、このままではなぶり殺し……)

 

 イルメナの頭に浮かぶのは、あの魔猿と最初に遭遇した時のこと。

 あの時惨殺されていた探索者パーティは自分たちの未来の姿に思えてならない。

 

(くそ……こんな時、何か魔具でも持っていれば違うんだろうな……)

 

 魔具の能力は様々だ。

 強力な武器、便利な道具。

 汎用性が高いものも、限られた状況でしか使えないようなものもある。

 

 どんなタイプの魔具であれ何も持っていないよりは確実に良いはずだ。

 手段が有ると無いとでは、まるで別なのだから。

 

(いや、そんなことを考えても仕方がないな。無いものは無いんだ。今できることで戦わなければ)

 

 イルメナは頭を振って甘えを消し去ると、仲間に声をかける。

 

「少しずつ逃げよう。一気に逃げるのではなく、少しずつだ。回避できる状態を維持したまま撤退する」

 

「本気にゃ? そんなん牛歩にゃ。亀にゃ。逃げる前に体力尽きるにゃ」

 

「そうかもしれない。だから根気の勝負だ。二人とも頑張ろう」

 

「ガチのマジだったにゃ……これだから軍上がりはぁ! あたしらお前と違って、従軍経験なんてないんにゃけど? 根性に自信とか別にないにゃ!」

 

 クロムは項垂れたが、しかしはっきりと拒否はしなかった。

 続いて口を開いたのはスピネルだった。

 

「逃げるのはいい。賛成する。でもイルメナ、どこに逃げる?」

 

「ボス前の安全地帯だ。あそこなら徘徊ボスでも入れないはず。それにギルドへ連絡が行っていれば高ランクが救援に来るだろう。その場合、来るのは五十一階層の転移部屋からだ。つまり二重の意味で、ボス部屋方面へ逃げるのが合理的なはずだ」

 

「なるほど、たしかに。合理的」

 

「ギルドへ連絡……されてるといいにゃあ? あたしら以外の生き残りがいて、逃げ切ってギルド直行したとして……結構時間かかるはずにゃ?」

 

「そこは願うしかないだろ」

 

 最も怖いのは、他の生き残りがいないパターンだ。

 その場合【フェティオム】を助けに来る者もいないことになる。

 

 仮に安全地帯まで逃げられたとしても、五十階層のボスを突破できない【フェティオム】にとってそこは行き止まりだ。

 動けなくなってしまうため脱出できるのは相当先になるだろう。

 終わりの見えない我慢比べは、さしものイルメナとて避けたかった。

 

 故に他の生き残りがいることを、逃げ切れていることを、ちゃんとギルドへ連絡していることを――願うしかない。

 

「よし、では始めるぞ。足元に注意して、なるべく木々の多い場所へ動け。ボス部屋の方向も常に意識しておけよ」

 

「いや、待つにゃ」

 

 動き出そうとしたイルメナを、クロムが止めた。

 

「なんかおかしくないかにゃ? いつの間にか攻撃止んでるにゃ」

 

「そういえば……そうだな」

 

「いなくなったのかにゃ?」

 

「待って。今〈魔物探知〉の魔導具で――」

 

 その瞬間、土の壁が爆ぜた。

 衝撃で大きく吹き飛ばされたイルメナはゴロゴロと地面を転がっていき、木の根元に叩きつけられてようやく止まる。

 

「ぐうっ……何が……?」

 

 土壁があった地点に視線をやると、そこには木が立って――否、刺さっていた。

 

「ゲギャギャギャ!」

 

 その突き刺さった木に魔猿が掴まり、嗤っている。

 イルメナはその様子で理解した。何が起きたのかを。

 確認のために目を上方へと向ける。

 

「幹を切断して落下させたのか……!」

 

 イルメナが見たのは上方で切断された高木の幹である。

 あれは木を切断し、その木とともに上空から落下してきたのだ。

 

 思い返せば――魔猿の光線は幹に穴を開けることができていた。

 つまり木を切断するくらいは、やろうと思えばできるということ。

 

 無論、切っただけでは狙った場所に落ちなどしない。

 そのため共に落ちることでコントロールしたのだと考えられる。

 あれは猿の魔物。木登りは得意だろう。

 それにあの強さなら、木と共に落下しても大したダメージにならないはずだ。

 

「ふ、二人は……?」

 

 痛みで起き上がれないイルメナは、伏せたままで二人を探す。

 やや離れたところに倒れているのを見つけた。

 クロムとスピネルも似たような状況だったのだ。

 

 たった一手。

 それだけで、誰一人として逃げられない状況となってしまっていた。

 

 魔猿は高笑いを止めて、品定めするように【フェティオム】の面々を見る。

 どれから殺そうか選んでいるかの如く。

 最終的に魔猿が目を留めたのは、イルメナだった。

 

「くそっ……こんな……終わりなのか……これで……?」

 

 魔猿が掌を向けると、そこに光が灯った。

 それはもう何度も見た攻撃手段。

 だが今度ばかりは避けられない。

 

(死ぬ)

 

 イルメナが最期を感じた、その時。

 唐突に気配が増えた。

 その場の誰からも遠い位置に、一人の女性が立っている。

 

「見つけた。動き回っていなくて良かったわ。追いかけるのは手間なのよね」

 

 音もなく、彼女はいきなり現れた。

 まるで――ずっとそこにいたかのように。

 

「ギィ……ギャガアッ!」

 

 セルネの出現に最も早く反応したのは、魔猿。

 イルメナに向けていた照準をセルネに向けると、淀みなく撃ち放つ。

 しかし光のビームが彼女を貫くことはなかった。

 

「ふぅん、〈光〉? 普通ね。徘徊ボスのやることじゃないでしょうに」

 

 セルネの正面――その宙に浮かぶ板状の物体が鏡のように光を反射し、ビームを弾き逸らしている。

 

「ガァ……グギャアッ!」

 

 防がれた魔猿は苛立ちを顕に、手を滑らせる。

 横薙ぎが来る。

 イルメナはそう感じたが――

 

「遅すぎるわね。〈ソードレサト〉、落下せよ」

 

 ドッ。

 

 薙ぎの追撃をするよりも早く、魔猿の腹に孔が空いた。

 

「ゲっ……ギャあぁ……?」

 

 何が起きたかわからない様子で、それでも痛みはあるのか魔猿は呻く。

 

 魔物は能力による効果――神力により生じる現象を低減してしまう、神力耐性という特性を有している。

 強い魔物の持つ神力耐性は厄介なものだが、しかしいくつかの対策があった。

 

 まずは手数で攻めること。

 低減でしかないのであれば、それを数で補うのは道理。

 

 あるいは、神力以外の力で攻撃すること。

 たとえば――落下に伴う運動エネルギーで。

 

 呻く魔猿の頭上、そこから二発目が降ってくる。

 

 ボンッと弾けるような音がしたかと思えば、魔猿の首が落ち――そのまま下草の上を転がっていった。

 

「『重さを十倍にする能力』……振り下ろしも良いけれど、投下も相性良いのよね」

 

 絶命し消えゆく魔猿を眺めながら、セルネは平然と呟いた。

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