能力が〈生体改造〉だから能力作って売ることにした   作:弐哉

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第25話 『選定の終わり』:力は使ってこそ、でしょう?

「私は違うな。折れるより、敗けっぱなしで終わるのは嫌だと思うタイプでね」

 

「そう。意欲があるのね。不屈の精神といったところかしら?」

 

「そこまでではないが……まぁ気持ちくらいは強くないと、何の取り柄もなくなってしまうからな」

 

「意欲があるなら貴女は有望なほうよ。ある意味、一番重要なことだもの」

 

「一番? 強さや能力よりもか?」

 

「そうよ」

 

 現状、強さが課題であるイルメナにとっては信じ難い答えである。

 

「どれほどのギフトを持つ強者でも、強力な魔具を有していても、続ける意欲がなくなったらすべて無駄だもの。力は使ってこそ、でしょう?」

 

「なるほど……そういう意味だったか。道理だな」

 

 たしかにあらゆる行動は意欲があることを前提としている。

 セルネは力がある者の話をしたが、力がない者でも同じことだ。

 

 たとえば今のイルメナは力を――強い魔具を求めているが、意欲がなくなればそんなことはどうでもよくなり引退するだろう。

 先程の心が折れた探索者の話と似たようなものだ。

 

「ところでこのドロップだけれど、私が貰っても?」

 

「え? ああ……もちろん、それはすべて貴女のものだ。私たちは逃げ回っていただけで、討伐に貢献できていないからな。ドロップを得る権利はまったくない」

 

 イルメナは首を振りながらそう答えた。

 複数パーティが一体の魔物を倒した場合、その取り分は戦闘への貢献度によって決めるのが通例である。

 

 だがこのやり方は非常に揉めやすかった。

 貢献度というのは曖昧な尺度であり、人によって解釈や認識が異なるからだ。

 

 今回のようなケースでも、イルメナのように「逃げ回っていただけで貢献していない」と考える者もいれば、「逃げ回ることで陽動と撹乱をして敵を疲弊させ、貢献していた」と考えて取り分を要求する者もいる。

 

 それがこじつけであるとバレなければ問題なく決着がつくだろう。

 だがもしバレれば、その先は揉め事しかない。

 不当な要求、あるいは過剰請求――いずれにせよ、他者の利益を掠め取る行いに相違ないのだから。

 

「正直に答えるのね。『少しくらい寄越せ』とか言われるかと思ったのだけれど」

 

「まぁそういう輩もいるな、探索者の中には。だが私は……私たちはそこまで厚顔ではない。命の恩人に分け前を寄越せなどと、言えるわけがない。むしろこちらが支払わねばならないくらい――」

 

「だからそれは、別にいいと言っているでしょうに」

 

 セルネはドロップ品を〈空間拡張〉の疑似魔具へ放り込んで回収していく。

 そうしてすべての回収が終わった頃、ふと遠くからガヤガヤとした喧騒が近づいてきた。

 

「おいっ、いたぞ!」

 

「おぉーい! 大丈夫かぁー!」

 

「ボスは? いねぇぞ」

 

「倒したんじゃね?」

 

「おわっ! 【竜爪姫】!? Sランクいるぞ!」

 

「早すぎんだろ……!? あの人、どうやって知ったんだ?」

 

 それはギルドの要請で救援に来た探索者たちだった。

 勝手に来ただけのセルネとは違う、本来の救援である。

 

「ご到着のようね。説明とかそういうのはどうでもいいし、後は貴女に任せていいかしら?」

 

「ああ、構わない。それくらいは引き受けよう」

 

「じゃあよろしく。面白い話ができて良かったわ」

 

「こちらこそ実力者と話ができて良かった。それと改めて、助けてくれて感謝する」

 

 そのやり取りを最後に、セルネは救援組の探索者たちと入れ代わるように去っていった。

 

 その後セルネに任されたイルメナは探索者たちに事情を説明する。

 そうして【フェティオム】がダンジョンから出られたのは、しばらく経ってからだった。

 

 ■

 

 イルメナに後を任せ場を離れたセルネは帰還のために階層ボス部屋へと走る。

 

「ふふっ、ようやく私も終わりそうね」

 

 移動の最中、彼女は独り言をこぼした。

 ようやくの進展に自然とこぼれてしまったといえる。

 

「もともと、候補の中の誰でも良かった。だから決めきれなくてきっかけが欲しかったけれど……そのきっかけも、何でも良かったのよね」

 

 セルネは〈千変万化〉の客の選定が進んでいなかった。

 候補は数名いるものの、最終決定に至る理由が欠けていたのだ。

 故にセルネは何でもいいから選び出すきっかけを求めていた。

 

「徘徊ボスを探しに行っただけなのに、良いきっかけになったわ」

 

 決定する理由は本当に何でも良かった。

 何でも良いから「たまたま助けた」だけでも理由になり得る。

 イルメナが候補であることは当然覚えていた。

 だから助けた相手が彼女だと分かった時、話をしてみようと思ったのだ。

 

 彼女との会話は当初、客足り得るかの最終確認に過ぎない行動だったが――結果的には予想以上に有意義なものとなった。

 

「本当に面白い話ができたわ。どうせ売るなら……やる気のある人がいいのよ。辞められたのでは、売ったものがすべて無駄になってしまうものね。どうせなら死ぬまで辞めないくらいの人を選びたい。ふふふ、力は使ってこそだものね」

 

 イルメナにした話は嘘ではない。

 その真意は少々別のところにあっただけだ。

 セルネが想見していたのは〈千変万化〉であったというだけのこと。

 

「私は貴女に決めたわ、イルメナ。貴女は客に相応しい」

 

 セルネは今日、ようやく選定を終えた。




おしらせ

ここまでお読み頂きありがとうございます。
これまで1日2回更新でやってきましたが次回から1日1回更新に変更します。
山場も越えたしこの辺が切り替え時かなと思いました。
今後ともよろしくお願いします。

以上
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