能力が〈生体改造〉だから能力作って売ることにした   作:弐哉

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第32話 〈烈風剣〉:万能型と言えば聞こえはいいだろう

「では話を戻しましょう。今ご説明しましたように、能力とはいえ不可能なことはあります。そのためそういった不可能を目標にされている場合、ご希望に沿うことはできないのです。『不死になる能力が欲しい』と言われてもご提供できないということですね」

 

 これは能力全体の限界だけでなく、〈生体改造〉の限界も含まれる話だ。

 僕の〈生体改造〉で付与できる能力は――僕が実在すると知っている能力か、それを調整した能力だけ。

 何でも付与できるわけじゃない。

 

 故に『不死になる能力が欲しい』と言われても二重の意味でできない。

 能力の限界からできないうえに〈生体改造〉で付与もできないから不可能。

 僕は『不死になる能力』なんて知らないし、無いと思っているからね。

 だから付与できない。

 

「『能力の限界』に該当しないものでも単に当店にはないためご用意できない場合もあります。お客様から提案して頂く場合、そういった可不可も当然考慮して頂かなくてはならないのですが――」

 

「いや無理では? そんな知識ないぞ」

 

 食い気味に反応したイルメナに対し、僕は同意を示した。

 

「ええ、その通り。無理なのです。あるいは非常に難しくて面倒。そのため最初から詳しい僕に任せて頂いたほうが、早くて確実なのです」

 

 あれもダメ、これもダメ、じゃあ何ならできるんだよ。

 そんな流れになるくらいなら最初から僕が選ぶほうが早い。

 これはそういう話だ。

 

 説明を終えて、次はようやく意思の確認である。

 僕は尋ねた。

 

「では改めてお訊きしましょう。当店のサービスはご入用ですか?」

 

「ああ。疑似魔具を一つ購入したい」

 

 即答だった。

 良かった、僕としてもまず話を受けてもらわないと困るからね。

 

 前回のフェリシアのようにどう考えてもまず間違いなく受けるといった事情が、イルメナにはない。

 だから最終的にどう転ぶかは僕にも確信がなかった。

 

 損得を考えれば受けるのが得だと思うはずだけどそれだって確実じゃない。

 最低三千万ディナという莫大な出費が痛いから受けない、と判断される可能性だってあったのだ。

 

「承知いたしました。疑似魔具はご自身で選ばれますか? それとも、僕が?」

 

「それなのだが、選んで頂きたい。先程も言ったが私は能力に詳しくない。これが良いと思ったものでも、実は合っていないということが充分にあり得ると思うんだ」

 

「なるほど、良いご決断だと思います。ではお客様に相応しい疑似魔具をお選びいたしましょう」

 

 そう言って、僕はとある疑似魔具を取り出した。

 選ぶと言ったが実のところ選出は既に終わっているのだ。

 

 僕はイルメナに関する情報を調べて把握している。

 

 イルメナの求めるものは強力な攻撃用魔具。

 その目的は探索者としての強さ、そしてパーティとして上に行くこと。

 その要望を考慮したうえでこれがベストだというものを選んだ。

 

 僕が取り出したのは直剣の魔具。

 ごく一般的な片手剣の大きさであり、派手というほどではないが少しの装飾が施されている。

 

「僕はこちらをおすすめします」

 

「剣型か」

 

「はい。〈烈風剣〉という疑似魔具です」

 

 その能力はシンプルで「刃から風を発生させる」というもの。

 風系の魔具としては非常によくある能力である。

 違いがあるとすれば出力調整が可能なことだ。

 

 一般的な魔具の効果はギフトと違って限定的である。

 ギフトのように高い自由度がなく、能力の用途は限定的なうえに出力まで決められているものが多い。

 

 たとえば「拳と同じ大きさの炎を飛ばす」とか「コップ一杯分の飲み水を出す」とかがそれに当たる。

 予め決められた内容を変えることはできず、いつも同じ使い方、同じ出力になるのが魔具というものだ。

 

 特に出力に関しては超えることができないのはもちろん、下回ることもできない。

 弱めることすらできないというのは、地味だがかなり不便な点である。

 

 だが僕の作る疑似魔具は違う。

 疑似魔具は疑似ギフトという「ギフト擬き」から作られるものだ。

 その結果ギフトの自由度を少しばかり引き継いでいるため、普通の魔具とは違いある程度の調整ができるようになっている。

 

 自由度で比較すれば魔具以上ギフト未満というところだ。

 そのためこの〈烈風剣〉も、そのへんの風系魔具とは違い発生させる風を調整できるようになっている。

 

 ぶっちゃけ魔具的にはこの調整能力だけで一つの能力扱いしてもいいくらいの破格の特権だ。

 

 さて僕がなぜこの魔具を選んだのかというその理由だが、それにはイルメナのパーティ【フェティオム】が関わっている。

 

 彼女のパーティは非常にバランスがいい。

 獣人の優れた前衛、エルフの魔導師という優れた後衛。

 そして戦闘のみならず、あらゆる側面で支える万能型のリーダーであるイルメナ。

 

 一見すればイルメナの活躍と負担が著しいと思える。

 しかし実のところ、最もわかりやすい問題がそのイルメナだ。

 

 万能型と言えば聞こえはいいだろう。

 実際に八面六臂の働きをしているようだしね。

 

 だが戦闘面に限るなら彼女は尖った得意分野のない平凡な駒だ。

 近距離も遠距離もやれるが、その両方ともより優れた専門の仲間がいる。

 状況に合わせて仲間の働きを補うだけの実質的なサポーターでしかない。

 

 故に探索者として強くなりたいなら――パーティとして上に行きたいなら、まずイルメナの強化を考えるべきだ。

 イルメナの強化こそが最も強化効率の良い選択である。

 

 ではイルメナを強化するとしてどういう戦力を得るのがいいか。

 そこでお薦めするのが、この〈烈風剣〉という風系の疑似魔具である。

 

 風系の特徴は射程が長いため、遠近両方に使えることだ。

 万能型のイルメナに合った能力だといえる。

 

 近距離では砂や石を巻き込んだ風で削る攻撃が強い。

 剣型だから武器として使いやすいしね。

 遠距離でも同じように削りができるし、他にも突風で妨害したり、投擲などの飛来物を風で防ぐといった味方へのサポートも可能だ。

 

 もっとも、これだけなら風でなくともいい気はする。

 今まで上げたポイントは火や水でも代用できるからね。

 しかし風でなければできないこともある。

 

 ここまでの一通りの説明をした僕は、イルメナに問いかけた。

 

「イルメナ様は、魔物の持つ神力耐性というものをご存知ですか?」

 

「知っている。最近も仲間とその話をしたばかりだ」

 

「なるほど、ご存知ということでしたら話が早い。風系の能力は神力耐性を突破しやすいのです」

 

 もちろん出力にもよるけどね。

 

 すべての魔物には神力耐性という特性が備わっている。

 これにより、ギフトや魔具などの能力により生じた「神力による直接攻撃」は低減されてしまう。

 

 故に能力で生み出した「神力による火」や「神力による水」は有効打とならない。

 もちろん同じく「神力による風」もそうなのだが、しかし風は工夫の余地がある。

 

 神力耐性が軽減できるのは、あくまでも「神力による直接攻撃」のみだ。

 ならば間接攻撃にすればいいということで、風で物を飛ばせばいいのである。

 

 石、矢、針、短剣。

 殺意を込めるなら爆弾とかも有りだしなんなら砂でもいい。

 風は物を介することで、神力耐性があっても低減されずに攻撃する手段を持てる。

 

 これは火や水ではできないことだ。

 正確に言えば水でも可能だが、水の場合はずぶ濡れになってしまうという制限がかかるため、濡らすとマズいもの――それこそ爆弾や砂などは飛ばせない。

 無制限で何の支障もなく実行できるのは風だけといえるだろう。

 

「いかがでしょうか?」

 

 神力に関わる説明をしたうえで僕は自信を持って薦める。

 だが――なんだ?

 彼女の反応はあまり良くない。

 

「うん、そうだな……納得できる話だった。たしかにその疑似魔具ならば、私の……私たちの求めるものに沿う。だが、それでは駄目だ」

 

 ……なんだと?

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