【完結】能力が〈生体改造〉だから能力作って売ることにした   作:弐哉

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第36話 〈水砲大蛇〉:破産している。まず間違いなく

 ■

 

 イルメナの商談から数日後。

 四十階層の階層ボス部屋にて、【フェティオム】はボス魔物の〈水砲大蛇〉と激しい戦闘を繰り広げていた。

 

「ギャアアアオアァッ!」

 

 青色の大蛇が吠えると同時、その口の正面に直径一メートルほどの水の玉が形成される。

 これがこの蛇の魔技――水弾だった。

 狙われたのはパーティの最前で戦うクロム。

 

「にゃっ! ヤバげにゃ!」

 

「任せろ!」

 

 イルメナが弓を構え、後方から矢を放つ

 それが水弾に命中した瞬間、矢は神力の槍となって水弾を貫き破壊した。

 しかし水弾を破壊しても槍は消えない。

 そのまま大蛇の頭部を直撃。大蛇は痛みに叫んだ。

 

「ギィエアアアァ!」

 

「ナイス妨害にゃイルメナぁ! これで決めるにゃ!」

 

 クロムが剣を手に突撃する。

 剣の能力を発動すると、その刃が神力の刃に覆われた。

 そのまま凄まじい勢いで大蛇の首に連撃を叩き込んだ。

 

「ギィ……ガアアァッ!」

 

 大蛇が力なく吠える。

 首の傷は致命傷に見えた。

 

 魔物には神力耐性があり神力を低減させるが、それはあくまでも神力による直接的な影響や神力で作られたものに対して作用するだけだ。

 今回のように「物理的な刃」を「神力の刃」で覆った場合、低減されるのは「神力の刃」の分だけである。

 

 加えてあくまでも低減であり、無効ではない。

 つまり少しばかり弱まってしまうが、総合的には「物理的な刃」だけで攻撃するよりも強いという結果になるのだ。

 

 さらにクロムの攻撃が連撃であったことも重要だった。

 これは神力耐性への回答の一つ「手数で補う」なのである。

 これらの組み合わせの結果、クロムは致命傷を負わせることに成功していた。

 

「この一撃で最後……にゃっ!? ぶっ壊れたにゃ!」

 

 最後の一撃を振りかぶったクロムだが、攻撃の前に剣が砕け散る。

 その代わりと言わんばかりに、後ろから飛んできた球がトドメの一撃を見舞った。

 

「最後の一撃、私が貰った」

 

 球はスピネルの投げ込んだもので、金属球だった。

 それは大蛇の頭上に到達するとそこで破裂――いや、炸裂した。

 神力が内側から吹き出すように放出され、それによって炸裂したのである。

 

 吹き出した神力そのものと、圧力の加えられた球の破片が大蛇の頭部を撃ち貫く。

 この金属球は神力を使った榴弾だったのだ。

 

 攻撃を受けた大蛇は――もう呻きもしない。

 これが本当に最後の一撃であり、倒れると同時にその身は消滅した。

 この戦闘は【フェティオム】の勝利で幕を閉じたのである。

 

「にゃ~! ドロップドロップ~! ドロップはなーにかにゃ~! にゃっ、これはハズレ! ひっでぇハズレにゃ! もちろん魔具もなしにゃ……」

 

 大蛇の遺したドロップを見に行って、クロムはがくりと崩れ落ちた。

 

「ドロップはダメだったようだが、それ以外は良い成果だったな」

 

「うん。ボス戦でも通じると判った。良い戦闘内容だった」

 

 イルメナとスピネルは、クロムを遠くから眺めつつ話す。

 今回の戦闘は単に〈水砲大蛇〉を倒すために行ったものではなく、ドロップ狙いの周回というわけでもなかった。

 

 これはイルメナの〈魔化変換器〉で作った消費型魔具がボス相手であっても通用するかを試すテストだったのである。

 

 結果は良好。

 普段なら勝てはするものの戦闘後に疲弊し、傷を負うこともある大蛇戦でかなりの余裕を残して勝つことができた。

 申し分のない充分な戦力といえるだろう。

 

 店での商談の後、イルメナはメンバーの二人にすべてをそのまま話した。

 これはもちろんバンカにも許可されている。

 それから三人で疑似魔具の能力を試し、検証し、どう活かすかを考えた。

 

 運用が決まってからはダンジョンで普通の魔物を相手に試していたが、今回はその締めくくりとして、四十階層の階層ボスにも通用するかを確認したのである。

 

 イルメナの手に入れた――実際は椎骨に入れているが――〈魔化変換器〉は、「触れたものを消費型の魔具にする能力」を持つ疑似魔具である。

 では作製される魔具の能力は何かというと、共通して「内部から神力を放出する」というものだった。

 

「クロムの使った被覆型、私の刺突型、スピネルの炸裂型。もっと癖があるかと思ったが、どれも使い所があって良かったな」

 

「うん。でも使い所を気にしなくちゃいけないのは、ランダムで出てくるせい。そこさえなければ、もっと使いやすかった」

 

「はは、それは無理だ。魔具作製系の魔具というのはそういうものらしいからな」

 

 魔具作製系能力で作られる魔具の能力にはランダムな要素が存在する。

 たとえばイルメナの〈魔化変換器〉の場合は「内部から神力を放出する」能力だが、「どういう放出の仕方なのか」はランダムだ。

 

 同じように王家所有の〈彩鏃工廠〉は「様々な効果を持つ鏃を作り出す」能力で、「鏃の効果」がランダムである。

 

 これらのランダム要素は既定のセット内容から無作為に選出される仕様となっている。

 わかりやすく言えば抽選――つまりガチャだ。

 

 抽選内容のラインナップにはいくつかの種類があり、その中で今回使われたのは三種類。

 

 クロムの使った剣は「覆うように放出する」という被覆型。

 イルメナの放った矢は「貫くように放出する」という刺突型。

 スピネルの榴弾は「全方位に放出する」という炸裂型。

 

 どれも魔具の形状と能力が違和感のない組み合わせとなっているように思えるが、それは比較的「当たり」なものを選抜しているからである。

 残念ながら「はずれ」とされてしまったものの中には、まるで使えない組み合わせとなってしまったものもあった。

 

 だがそれでさえ、実のところ「まだマシ」だと言えた。

 

「放出点を設定できるだけマシだと思うべきだ。それがなければ、もっと使いにくかったはずだからな」

 

 ランダム要素が存在する一方、任意で決められる部分もある。

 神力が放出されるポイント――放出点については、事前にイルメナが設定できるのだ。

 

 これは疑似魔具の特性によるものだった。

 通常の魔具は能力が制限されており必ず決められた効果しか発揮できないが、疑似ギフトから作られる疑似魔具は違う。

 

 疑似ギフトの自由度をある程度引き継いでいるため、魔具と違ってほんの少しだが自由に決められる部分もあるのだ。

 イルメナの〈魔化変換器〉の場合、それが放出点の位置なのである。

 

「被覆型だからと柄も神力で覆われたら手に持って使えないだろう? そういう論外な『はずれ』を除外できるのだから、まだやりやすいほうなんだ」

 

 放出点まで含めてランダムだった場合、構造上使いようがないケースも発生していたはずなのだ。

 それがないだけマシ――そう思うべきだとイルメナは言う。

 

「たしかに。というかそもそも、こんなにたくさんの魔具を使えるだけでも恵まれている。私が間違っていた。贅沢になっていたみたい」

 

「贅沢か……ここ数日、毎日魔具を使っているからな」

 

 しかも消費型なのでそのたびに使い捨てている。

 これはそういう仕様なのだが、だとしても一回きりの魔具を湯水のように使っている事実は変わらない。

 

「材料費がかからなくて良かった」

 

「そうだな。もしドロップがなかったら……破産だろうな」

 

「うん。破産している。まず間違いなく」

 

 イルメナの〈魔化変換器〉は魔具の元となる物品がなければならない。

 作製するたびに何かしらの物が必要で、魔具として使えば一定時間後にその物自体も崩壊して失われるのだ。

 

 クロムやスピネルの魔具が壊れたのは壊れるように使ったからではなく、そういう仕様なのである。

 

 つまり魔具の消費以前に物の消費もあるのだが、幸いなことにそれは問題なかった。

 魔物のドロップという解決手段があるからだ。

 

 魔具ではない武器や鉱物などもドロップするため、そういった「魔物を倒せばただで手に入るもの」を魔具化すれば材料費を気にする必要はないのである。

 だがもしドロップで賄えていなければ――破産は免れなかっただろう。

 

「おめーらこれ見ろにゃ! この牙! これ魔具にしたら良いんじゃねーにゃ?」

 

 大蛇のドロップを見ていたクロムが叫んだ。

 ドロップから魔具化できるものがないかを探し、その使い方を考えることは既にパーティ全員に染み付いていた。

 

「破産はしない。でも収入減ではあるよね?」

 

「売るはずの物を使っているわけだからな……まぁ、それは仕方ないさ」

 

 ドロップ品は、以前までなら売却して利益を得ていたものだ。

 それを魔具化してしまえばもちろん収入は減る。

 

 材料費を気にする必要はなく、賄えてもいるが――しかし収支のうえではちゃんとマイナスになっているのだ。

 少々マシだというだけで、財布に響く能力であることは間違いなかった。

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