異世界バトルドロイド軍団   作:サイリウム(夕宙リウム)

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12:宿取るぞ!

 

そんなわけで町の中を馬車で進み、見えてくるのは“兎の尻尾”が描かれた看板。例の門番が教えてくれた『兎のしっぽ亭』という宿屋だろう。

 

一応、今回泊まろうと思っている場所になる。

 

 

(ドロイドだから宿取る必要ないだろ、って言われればそれまでなんだけどねぇ。)

 

 

若干現実逃避しながら、思考を回す。

 

元の銀河では誰でも知る様に、ドロイドと言うのはロボット。24時間働き続ける金属のお人形さんだ。早い話、私も。そして連れてきているドロイドたちも、宿を取ってどこかで休息をとる必要性というのは、1㎜も存在しない。

 

さっき荒くれ者たちから巻き上げた金にも限りがある、資源を無駄にしないのであれば、そこらへんで野宿するのが一番なのだろうが……。

 

 

(周りからどう見られるか、それが結構重要なんですよ。)

 

 

この町というか、この惑星から見れば、私達は完全な異物だ。ドロイドをゴーレムと称し、私を人間と称することでギリギリ紛れ込むことは出来ただろうが、完璧ではない。この星に住む人間たちが無意識化で行っている行動や、それに起因する文化を此方は何も解っていないのだ。

 

私の前世である日本で言うと、皆が列を作って並んでいるというのに、それを無視して進んでしまう観光客みたいなもの。白い目で見られるのは確実だ。出来る限り目立たないように、寄せていく必要があるだろう。

 

 

(あと普通に私の精神が人間だからベットで寝たい。)

 

 

というわけで宿を取るのは決定事項。

 

それに、彼ら。

 

ウチの護衛ドロイドという名前ながら、光学迷彩だけでなく足音や駆動音まで完全に消音化し、私達から常に発生するドロイド特有の電磁波さえも極限まで減らし、なんなら“暗殺の方が得意かもしれないドロイド”。

 

そんな彼らが気を利かしてくれて、しっかりと調べてくれたのだ。安心して休むことが出来るだろう。

 

けれど……

 

 

(お、お仕事やだ……!!!)

 

 

部屋の中に入った瞬間、待っているのは強制連行。

 

確実に戦艦まで護送。もとい誘拐されてお仕事漬けコース一直線だろう。日が昇る頃には返してくれるだろうが、休眠を必要としない私達ドロイドは、充電が続く限り何時間でも働ける。さっきイヤイヤ開いた部下たちのメールを見る限り、一睡もさせてくれないのは確定だ。後ご丁寧に“戦艦の中でしか出来ない”仕事が満載である。

 

超逃げたい。

 

い、いや、解ってるんですよ? 私が帰って仕事しなきゃ色々滞るってことは。だから抵抗せずに連行されるわけですし。でも役目を受け入れるのと、仕事投げられる私の心情に関してはまた別の問題というか……。

 

 

「憂鬱……!!!!!」

 

「あ、いらっしゃ……、すごい顔してるねアンタ。」

 

 

そんなことを口走りながら、宿の中に入ってみると。迎え入れてくれるのは恰幅の良い女性。護衛ドロイドたちが事前調査で手に入れた情報によると、この宿の女将さんのようだ。

 

顔の輪郭が整っているため、もう少し若くて恰幅が良すぎなければ現代でも十二分に通用したであろう彼女。いかにも気が強そうだし、こんなこと考えてるのバレたら最悪ひっぱたかれるだろうなぁなんて考えながら、女将さんに話しかけていく。

 

 

「ごめん、部屋開いてます? 人ひとりと、馬車1台。」

 

「開いてるよ! ただちっと飼葉の数が足りなくてね、追加料金もらうけどいいかい?」

 

「あ~、それは大丈夫です。ウチ馬じゃなくて“ゴーレム”に牽かせてますから。」

 

 

聞き返してくる女将さんに、外に止めているドロイドたちと改造馬車の方を指差す。

 

扉を開ければ、私達ドロイド誰もが未だ見たことのない“ゴーレム”の真似っこをするD2ドロイドたちと、一見普通の馬車。

 

おそらく一般的なモノでは無かったため、ほんの少しだけ目を丸くする彼女であったが……。すぐに快活な笑みを浮かべ、こちらに話かけてくれる。

 

 

「は~! コレが動くのかい! すごいねぇ! ……一応聞いとくが、他の馬とか襲ったりしないよね?」

 

「指示しない限りはじっとしてますし、大丈夫かと。あぁでも、勝手に持ち出そうとする奴はボコボコにするよう命じてるから、そこまでの責任は持てないですよ?」

 

「そん時はアタシもぶん殴りに行くから問題ないね! うっし、じゃあ開いてる所に止めておいてくれ! チェックインの準備して来るよ!」

 

 

“殴る”の所だけイヤに生き生きとしながら口にした彼女が、奥へと引っ込んでいく。言われた通りにこの馬車を厩舎まで連れて行く必要があるみたいだが……。お前ら自分で動けるよね? “ゴーレム”じゃないわけだし。

 

 

(あ、了解です。移動させときます。)

(馬がいるのか……。初めてだな、楽しみ。)

(わかる。だが特有の匂いがあるかもしれない、嗅覚センサーはoffだな。)

(そうか? 私はむしろ嗅いでみたい。……あ、そうだ艦長。私の新しい“鎧”。申請忘れないでくださいね?)

 

(もち~。)

 

 

ほんの十数分前に、私の肉盾。もとい迫りくるファイアボールからその身を課して守ってくれたD2ドロイドにそう答えながら、彼らを見送る。一応馬車の中にD3ドロイドが1体隠れているのだが……、まぁ彼はかなり無口なタイプだし、わざわざ回線を開いてお話しする必要はないのだろう。

 

荷物番とかよろしくね、というメッセージだけ送り、裏から戻って来た女将さんを出迎える。

 

 

「あれ? もう戻って来たのかい?」

 

「指示したらある程度は自分で動けるからさ、任せちゃいました。」

 

「は~! 最近のゴーレムってのは凄いんだねぇ! しかも金属製だったし、お客さんアレかい、結構良い所の出かい?」

 

「あはー! ただの商人ですよ! ちょいと伝手がありましてね? 広告塔代わりに使ってんの。まだ準備中だけど、もうちょっとしたら大商いする感じ。」

 

「そりゃぁいい! 気張りなよ!」

 

 

何でもない世間話。こちらとしてはカバーストーリーから逸脱し過ぎないように気をつけながら、言葉を交わす。

 

そんなことをしていると、彼女から手渡されるのは一本の羽。同時に近くの台に大きな羊皮紙とインク壺が広げられ、名前を書くよう求められる。ざっと見る感じ、宿帳のようなものらしい。

 

……あ、やべ。この惑星の“文字”わからん。

 

 

「あ、そ、そのぅ。」

 

「うん? あぁそこに名前書いてくれれば後はこっちで……?」

 

「こ、この国の文字じゃなくても大丈夫、ですかね?」

 

「ありゃ? お客さん外国の人なのかい?」

 

 

あ、そう! そうなんですよ! じ、実は違う国から来ましてね~!

 

話すのと聞くのは何とかなってるんですけど、ちょっと書く方はまだお勉強中でして。ちょっと出来ないというか……。あ、も、勿論文字解んないお馬鹿さんとかいうわけじゃないですからね!? これでも結構頭良い方ですから、連合国の言葉なら大半解るというか、全部出来るというか……!

 

……ご、誤魔化せてる? 誤魔化せてるよね? あ、信じてる? 信じてそう! な、なら大丈夫! とにかくヨシ! ……あ、あとでおばさんドロイドに画像データ渡して“書く”ことにも対応した新しい言語プリセット作って貰わないと……!

 

 

「は~、そうだったのかい! あ、じゃあお客さんの国の言葉で書いてみてくれるかい? ここにさ。あとでコッチで読み仮名振っとくよ!」

 

「ア、ハイ。えっとじゃあ“3・9・2”、と。これでミクニ、ですね。」

 

「……これ何語だい?」

 

「銀河共有語ですね。」

 

「ギンガキョウユウ……? は~! そんなのがあるなんてねぇ! 全然知らなかったよ! んで、そのギンガ? ってのはどこに?」

 

「かなり西の方っすねぇ。」

 

 

まぁ西と言うか、そのまま宇宙速度で直進し続けるというか、宇宙の先というか……。

 

おそらく、知的好奇心の強い人なのだろう。どこか楽しそうに目を光らせながら、私から知らない世界の情報を引き出そうとして来る彼女。それは別にいいんだけど、そろそろチェックインさせて頂いても? ほら宿代とかまだ支払ってませんし。あとボロ出そうで怖い。

 

 

「おっと! すまないねぇ! ウチは一泊銅貨7枚、厩舎の方は3枚だよ! 食事は毎食出せるけど、そのたびお代を貰うからアタシか奥の厨房にいる旦那に言ってくれ! ちと高いが味は保証するよ!」

 

「あ~、じゃあとりあえず10泊分で。あと今日の分の夕食ってもらえますか?」

 

「お! 太っ腹だねぇ! なら今日の分はアタシのおごりにしておいたげるよ! 銀貨1枚でどうだい!」

 

 

それに頷き先ほど荒くれ者たちから“お礼”として徴収したものを手渡せば、すぐに奥に向かって声を上げる彼女。内容からして、旦那さんに食事の追加を依頼したのだろう。

 

……かなり薄いけど、周囲にたんぱく質を煮込んだような匂いが流れている。今日のメニューは門番が言ってた煮込み料理かな? ちょっと楽しみ。

 

私は特別製だから普通に飲食できるし、限界もない。まだ門番の話が正しいかどうかは解らないが、美味しければちょっと豪遊してもいいかもしれない。なにせこの後に控えてる仕事が嫌すぎるのだ。やけ食いあるのみ。

 

 

「っし、じゃあこれがカギだよ。階段1つ上がってすぐの部屋だからね! 飯が出来たらウチの娘にノックさせに行くから、冷めないウチに食べに来な!」

 

「ご丁寧にどうも。……あ、そうだ。実はちょっと夜から仕事でして。その時カギとかこっちに返しておいた方がいい感じですかね?」

 

「うん? あぁいや、無くさないようにしてくれれば持っていても構わないんだが……。もういい時間だよ?」

 

 

いやそれがですね、ウチの部下がもう聴かん坊で、寝ずに働けって言うんですよ。せ~っかくこっちまで来れたって言うのに、やれ決算書類の確認や、やれ“労災”案件の処理や、もうたっくさんお仕事投げてくるんです。

 

そりゃ私トップですから? そういうの確認して指示出ししなきゃいけないのは解ってますよ? でももうちょっと手心というか……。

 

 

「は~。よくわかんないけど、大変なんだねぇ。というかお偉いさんだったのかい、かなり若そうなのに、凄いねぇ。」

 

「でしょ~? ミクニちゃん凄いんです! でも下がほんともうアレでね……。全く、上司を虐める部下がいるんですかいって話ですよ! もうこうなったら火山の中にでも叩き落してやろうか、ってやつです!」

 

「うん、普通に殺人だね。やめときな?」

 

「え、そうですか? 単に私がいなくても1年くらい寝ずに仕事して欲しいだけなんですけど。」

 

「……虐めてるのアンタの方じゃないのかい?」

 

 

え~、私がァ? あはー! ナイナイ!

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

『ッ!? さ、寒気が……』

『オレモダ』

『ワタシモダ』

『揃って不調、故障か?』

 

「ん? ゴーレムさんたち、どうかしましたか~!」

 

『『『いや、大丈夫。たぶん。』』』

 

 

場所は変わり、ミクニたちが初めて訪れた村へ。そこでは未だ戸惑いながらも、ドロイドたちと人間たちの新しい生活が営まれていた。

 

事の発端は、この村に住むエリンと言う少女が村の外に出たことから始まる。

 

病を患った母を持つ彼女は、少しでもその病状が良く成るよう森に薬草探しに出た。しかし“謎の衝撃波”が発生し、魔物たちの生活圏が変化。彼女はゴブリンの集団に襲われることとなってしまう。

 

しかしそんなところ、突如として現れたのが3体のドロイド。エリンを始めとした村人たちにはより理解しやすいよう“ゴーレム”と説明されたソレが、颯爽と現れ彼女を救ってくれたのだ。

 

故に少女エリンは……

 

 

(ミクニさんたちのおかげで私は生きてるし、ゴーレムさんたちが来てくれたおかげで魔物を怖がる必要もなくなった。お母さんの病気まで直してもらったんだ。ほんと、感謝しなきゃ……!)

 

 

と思っていたりする。

 

事実ドロイドたちが居なければ村は魔物の襲撃で崩壊していただろうし、彼女が生き残れたかも怪しい。そしてドロイドが常駐するようになり、もし魔物がやって来てもブラスターの波状攻撃で撃滅。もしくは追い返せるようになっている。

 

エリンも含め、村人たちがドロイドに向ける感謝。そしてその主であるミクニに向ける感謝は、日に日に大きくなっていると言えるだろう。

 

 

だが……。助けた本人。

 

特にドロイドたちの長である、ミクニは全く違うことを考えていた。

 

 

そもそもの話。“謎の衝撃波”というのは、ミクニ達が乗っていた巨大な戦艦がこの星に墜落したことによって生じている。

 

いくらエンジンを逆噴射し速度を落していたとしても、5km級の戦艦が森の中に落ちたのだ。その衝撃は凄まじく、魔物たちが住む森。エリンたちが住む村の近くにある森への影響も、また甚大だったのだ。

 

早い話。

 

エリンが襲われたゴブリンが“あの場にいた”のもミクニ達ドロイドたちのせいだし、エリンが住む村を襲撃した魔物たちも、ほとんどミクニのせいである。つまり彼女達がこの星に墜落しなければ、何も起きずにエリンは薬草を手に入れ、母の元に帰っていたのだ。

 

しかもミクニは、この状況を利用している。

 

衝撃波によって移動を始めた魔物たちは、人間たちの村を襲撃しようとした。そんな時、ミクニは村人たちが抱いていた自分たちへの警戒を解き、そして好感度を得るために、これを撃滅している。

 

その直前になるまでミクニも気が付かなかったが、半ばマッチポンプのようなもの。内心彼女が罪悪感で叫びまくっていたとしても、不思議ではないだろう。

 

 

(でも、なんでミクニさんはこんな沢山ゴーレムを貸してくださったんだろう。ほとんどタダで、って話だし。私達に差し出せるものなんか何もないのに……。)

 

 

罪悪感である。

 

村人エリンがそんなことを考えていたとしても、罪悪感である。

 

配下のドロイドたちには『せっかくできた交流だし、今ここで捨てるのはもったいないでしょ! 人間大好きドロイドも居ることだし、交流が士気の向上につながるのならやっちゃおう!』という建物で説明していたとしても、ミクニの根本にあるのは罪悪感である。

 

高位戦術ドロイドとして状況を分析し、正しい動きを取っているかのように見えて、ほぼ8割くらい罪悪感で動いている。

 

もし何かミクニに要求がある時。この件を指摘すれば“口止め料”として即座に受け入れるぐらいには、気にしていたのだ。

 

まぁそんな白髪赤眼戦艦船長こと、ポンコツ高位戦術ドロイドのことは置いておいて、村の事である。

 

少女エリンと4体のD1ドロイドたちは、農作業に従事していた。

 

 

『エリン、こんな感じか?』

 

「あ、はい! そうです! 今から柵で囲って目印を作るんで、その中をこれと同じくらいに耕してもらえればと!」

 

『らじゃらじゃ』

『ヤルゾー!』

『思ったより土いじり楽しい』

 

 

彼女達が行っているのは、放棄された畑の再興。

 

長年人の手が入っていなかった土を掘り返し、生き返らせるのが目的だ。

 

この村では農地を区画化し、それを各家庭に割り振ることで作物を育てているのだが……。エリンの家は何年かの間、その仕事を熟すことが出来なかった。一番の働き手であった父親が徴兵され、戦死。残された母親一人ではその管理をすることが難しかったからだ。

 

 

(男の人に比べて力の弱い私やお母さんじゃ、一から畑を作るのは難しい。水やりとか作物の世話ならまだできるけど、土を掘り返したりするのは無理。時間が掛かり過ぎちゃう。だけど今は……)

 

『……この農具、壊れそうだな。』

『木製ダモンネェ』

『ッ! ナラコレダ! 手ドリル!』

『何ッ! 腕のマニュピレーターを高速回転させただとッ!?』

 

「あ、あはは。遊ぶのは程々でお願いしますね?」

 

 

手首を謎に高速回転させ土に突っ込むドロイドたちに注意しながら、そんなことを考える彼女。

 

エリン含めた村人たちは知らぬところであるが、この場にいるドロイドたちは戦争用に作られた機械である。おつむが弱すぎるせいで少々忘れがちになるが、必要とあればその拳で敵兵を殴り殺すぐらい軽く出来てしまうのが、彼らだった。

 

流石にミクニがよく口にする『他の銀河にいる光線剣を振り回す正義の騎士』ほどの強さは無いが、銃器が無い時も戦えるよう、一般兵程度であれば殴り殺せるだけの馬力があるドロイドたち。

 

男手が足りないエリンたちにとっては、正に最適な助っ人だと言えるだろう。

 

事実。少々遊びながらではあるが、人の手で行うよりも早く土を耕すことが出来ている。エリン一人では何カ月かかるか解らない様な土地であっても、ドロイドたちの助けを借りれば今日のうちに……

 

 

『アッ!? カ、関節ニ小石ガ挟マッタッ!? ウ、動カン!?!?!?』

『な、何ー!!!』

『フ! キサマ ガ ツギノ スクラップ カ……!』

『働けないドロイドは処分しちゃおうねぇ!』

 

「あ、あの。私が取りましょうか?」

 

『マ? タスカル。ウチノ艦長モコレグライ優シケレバ、ナァ……!』

 

 

うん、今日のうちに終わるはずである。たぶん。

 

ちなみにだが、既に村人たちにはD1ドロイドのポンコツさ加減がバレてしまっており、『あの鎧着てない方のゴーレムさんには、かなり詳しくお願いしないと大変なことになる』という話が周知されてたりする。

 

何せ『この井戸から水汲んでおいて』と言われたD1ドロイドが、『家にある水瓶が一杯になるまで』という隠された条件を見抜けず、村の井戸を一時的に枯らすまで水を汲み続けた事件が起きたりしているのだ。

 

他にも耕す区画を指示していなかったがゆえに家の中まで畑を耕してしまったり。

 

村の子供の命令をそのまま受け取ってしまい川の中に飛び込んで溺れ沈んだり。

 

狩りのお供に付いて行ったはずが帰還命令を貰えずにそのまま迷子になったり。

 

まぁその他にも色々な問題を引き起こし、そのたびにお目付け役であるD2ドロイドたちが謝りに行き、事態を何とか解決させるというループが完成している。その頻度が、本来ダメージを受けにくいD2ドロイドがノイローゼとなり『後方に返してくれ!』と懇願書を提出するくらい、と聞けばご理解いただけるだろう。

 

 

「えっと、この小さなのが……。あ、取れましたよ!」

 

『オォ! ウゴク! ウゴクゾ!』

『直してもらって良いなぁ。』

『そうだ! 俺たちも手ドリルをすれば!』

『ナルホド! カチコイ!!!』

 

『ばッ! やめい! 何アホなコトして人間さん困らせてるんやこの“D1”どもがッ! 真面目にせんか!!!』

 

 

関節部分に小石が入り込み、手が動かなくなったドロイド。

 

自分たちの太く武骨な指でどうにもならないため半ば諦めていた彼らだったが……。エリンと言う少女の細くしなやかな指によって、窮地を脱する。

 

ドロイドからすれば、夢にまで見た光景。自分たちをモノ扱いして浪費する“元の星系の人間たち”のようにではなく、エリンのように親しみを持って接してもらえるのだ。眺めていた残りのドロイドたちからすれば、酷く羨ましかったのだろう。

 

故に即座に“理由”を突き止め、突っ込んでしまうD1ドロイドたち。構ってほしいがあまり、自分から土の中に手を突っ込み小石を嵌め込もうとするが……。偶々近くを通りかかったD2ドロイドが怒号を上げ、その動きを制止する。

 

そして何度も繰り返された動き、頭を深く下げ謝罪し始める鎧を着たドロイド。

 

 

『ほっんとウチの馬鹿どもがすいません! けっして、けっして悪気があったわけでは! ただひたすらにおつむが悪かっただけで! 次の派遣ではもっとマシなの連れて来るので! 何卒、何卒!!!』

 

「あ、頭上げてください! だ、大丈夫、大丈夫ですから“でぃーつー”さん! 私も! 他の村の人たちも! ぜ~んぜん気にしてないですから!」

 

 

互いに頭を下げ、代わりに相手の頭を上げようとする2人。

 

村の中ではあまり珍しくなくなった、こんな光景。それは新しくやって来たドロイドという存在が村の中で受け入れられ、新たな日常となりつつある印。

 

彼女は頭を下げるドロイドの重い頭を何とかあげようとしながら、言葉を紡ぎ続ける。そんな優しさがついに決壊させてしまったのか。金属で出来た“ゴーレム”という存在なのに、半分以上泣き始めちゃってる鎧の彼。

 

それをおちょくりまた怒られるD1ドロイドたちと、自分が処分されようともスクラップにしてやると追い回し始めるD2ドロイド。そんな様子を見て、つい笑みを零してしまう彼女。

 

少女エリンは、そんな楽しい日常を、過ごしていた。

 

 

 

 

 

なお上がって来た報告に戦術ドロイドたちが大いに頭を抱え『村に派遣するドロイドを一定の知能を持つD2ドロイドに限定する』という方針を打ち出すのだが……。

 

より上位であるミクニちゃんこと高位戦術ドロイドが『D1ドロイドいるほうが面白いし、なんか受け入れられてるっぽいからそのままでよくね? こういうのはポンコツの方が可愛いのよ!』と言ったため棄却。

 

D2ドロイドが無い筈の胃を痛め、戦術ドロイドたちがまた頭を抱え始めるのだが……。

 

またそれは別のお話。

 

 

 






〇高位戦術ドロイド HT2-392の飲食

HT2-392こと自称ミクニちゃんは、他ドロイドと違い飲食することが可能である。これは彼女が自身の新たな肉体を作る際に組み込んだ機構であり、他高位戦術ドロイドは保有していない。

周知のとおりドロイドは電力で稼働しており、外部からエネルギーを供給されることで稼働するバッテリー方式。内部に発電炉を持ち充電の必要が無い内臓式が存在している。

個人での活動も考慮したミクニはこの両方の方式を取り込んでいるが、だからと言って彼女もドロイド。飲食物を口にしする必要性は皆無なのだが……。ミクニは娯楽の一つとして、そして“人として生きるため”、実装するに至った。

ンャチタナア・オートマタ社で販売されている“料理用ドロイド”をベースに味覚センサー。彼女専用とも呼べる“舌”が開発され、搭載。また摂取したものは体内で処分できるよう、小型の焼却炉が内臓されている。下世話な話にはなるが『ミクニちゃんはトイレに行かない!』というわけだ。

ちなみに、舌の元になった料理用ドロイドは高級料亭やホテルに配備されるモデルなため、ミクニちゃんの舌もかなりの高性能。人間であった時よりもより深く味を感じ吟味することが出来るため、本人お気に入りの機能である。

最近のお気に入りは、連合軍の人間用糧食。チョコレートレーションバー。


「これ一個、1000kcal以上するんだけど今の私って太るとかいう概念ないからね~! 甘みの暴力食べ放題ってわけですよ! ……でも偶に味噌汁とか飲みたくなる。この惑星に似たようなのないかな……。」




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