異世界バトルドロイド軍団   作:サイリウム(夕宙リウム)

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13:ヤバい奴ら

 

「んまんま」

 

『……さっきから何食べてるんですか、艦長。』

 

「兎肉の煮込み。……お前も食う?」

 

『食べられませんって。あと口にモノ入れながら歩かないでください。』

 

「やだ!」

 

 

というわけで帰って来ました我らが拠点。5km級の巨大戦艦だ。

 

本音を言えば仕事なんか欠片もしたくないんだけど……。ちょうど今横で文句言ってる戦術ドロイドのように、部下たちが『船の中でしか出来ない仕事』を大量に投げてくるのだ。まぁそれも、仕方ないと言えばそうなのだが……。

 

見て貰えれば解ると思うが、この船は下手な大都市よりも大きい。

 

二等辺三角形のようなフォルムで、長さが5km。高さもかなりあり、言ってしまえば高層ビルが密集して固まったようなものがこの船だ。そして搭乗員たち全てが、人間と違い居住スペースを必要としないドロイド。

 

D1ドロイド換算には成るが、最大積載数は百万を軽く超える。そう聞けば、私達軍団の抱える“人数”をご理解いただけるだろう。

 

 

(まぁ全部起動しているわけじゃないけど……。それでも数は滅茶苦茶いる。そのすべてにある程度の意思が宿ってるから、まぁ問題は起きるわけで……。)

 

 

業務もそうだが、揉め事も結構起きてる。

 

無論細かなものは戦術ドロイドや、より下の部隊指揮官レベルのドロイドが対処してくれるのだが、それでも上に上がってくるのが幾つか。それを確認して指示を出しながら、この大量のドロイドをどう動かすかも考えなきゃならない。

 

それに、ここにはドロイドという『生まれながらに役目が定められた存在』しかいない。つまり私という“頭”が大まかな方針を打ち出し、指示を出していかないと動きが止まってしまうのだ。だからまぁ、戻らなくちゃいけないことは解ってるんだけど……。

 

仕事なんかしたいワケ無いし、納得なんて出来るワケないよね、っていう。

 

 

「だからこそ暴食! 暴食が全てを解決する……ッ!!!」

 

『機能が無いためよく解らないのですが、食事とはそこまで良いものなのですか?』

 

「いいよぉ? まぁコレは“人”の感覚が無いと解んないだろうけどねぇ。」

 

 

食べ物を口にし、咀嚼し、飲み込む。

 

既に私の体は飲食を必要としないドロイドだが、心が食事を求めているのだ。言ってしまえば必要のない行為、半ば娯楽として消費してしまうことに食べ物たちへの申し訳なさがあるのは事実だが……。すり減った人間性を取り戻し維持するには、これが一番。

 

私が人であり続けるために、手放してはいけないものなのだ。

 

 

「まぁ単に美味しいの沢山食べたいだけなんだけど。食道楽です、はい。」

 

『えぇ……』

 

 

そう言いながら、思い出すのは先ほどの宿屋。

 

『兎のしっぽ亭』にて手に入れた煮込み料理を口にする。

 

うんうん、しっかりと処理された兎肉が良い味を出していて、ハーブと一緒に煮込んでいるおかげかとても香りがいい。根菜っぽいのと、何か解らないクズ野菜も入ってるから栄養素もばっちし。ちゃんと火入れ時間の管理もしている様で、変なえぐみとか匂いとか全くない!

 

 

『へぇ。話を聞くと、とても美味しそうですね。』

 

「でも味が無いのでどっちかと言うと微妙な部類ですね、はい。」

 

『……さっき美味いとか言ってませんでしたか?』

 

 

いや、美味いんよ?

 

でも色々ありまして……。

 

私がこのボディになったのは、結構最近のこと。つまり飲食機能も最近手に入れた者なのだ。まぁつまり、それまで何も食べられなかったからさ、改造終わった後に死ぬほど元の銀河の食品食べたのよ。横領資金に糸目をつけず盛大にね? いくら食べても太らないボディになったわけだし。

 

けどさぁ、大体がSF世界らしい食べ物というか。SFしすぎているというか。ケミカルなモノか、グロテスクな見た目のモノしかなかったんよ。虫タイプのエイリアンのお食事とか面白いのは合ったけどさ……。だからこう、人の手で作った優しいものっての本当に久方ぶりに食べたのよ。すっごく心がポカポカするんよ。

 

でもまぁ、食で溢れてた元現代日本人からすると、物足りないと言いますか……。

 

 

「はい、ということでここからはアレンジタイムでーす!」

 

 

懐から取り出すのは、横領を重ね手に入れたこちら!

 

塩と胡椒、あとSF版トマト缶みたいなのと、コンソメキューブみたいなの! ケミカルを出来るだけ排除し、オーガニックに寄せた超高級品! 名前とか細かな味とかが私の知るモノとはちょっと違うんだけど、これを全部いい感じに叩き込んでもう一度煮込み上げれば……!

 

 

「かんぺき~! ん~~~! 無理言って鍋ごと貰って来たかいあったね! 今日はこれキメて寝ます! 就寝ッ!!!」

 

『いや、仕事してください。あと今、横領って言った?』

 

「言ってないで~すっ!」

 

 

いやはや、出航前に船の倉庫へありったけ食材詰め込んで正解だったね!

 

それに……。

 

まだこの星の物価などは解らないが、この料理。おかみさんに銀貨投げつけて鍋ごと買ったモノを見る限り、塩などの調味料や、胡椒などの香辛料が比較的高値になっていることが見て取れる。

 

鉄道や船舶などの大量輸送方法が確立されていない時代ならば仕方ないとは思うが、少なくとも私達にとって未知の部分。『魔法や魔物』が輸送に関してそこまで大きな影響を与えていないというのが、この鍋から解るのだ。

 

単に沢山食べたいから鍋ごと持ち帰ったわけではないのだ。無いったら無い。

 

 

(おかみさんには悪いけど……、私はこっちの方がいいかなぁ。)

 

 

まだ宿にいた時、夕食だからって呼び出されて、目の前に出された皿。

 

そこにあったのが、この煮込み料理だ。パンと一緒に出された暖かい食べ物。あの町では十二分に贅沢な食事だったのだろうが……。現代日本人からすれば、物足りない食事。確かに手間暇かけられており、料理人のスキルが光る皿ではあったが、本当に惜しいと思うものだったのだ。

 

 

「ん~、色々渡してみて、研究してもらうってのもアリかなぁ?」

 

 

かなり短絡的な考えではあるが、そういったスキルのある料理人。おそらくあの宿のご主人であろう彼に、私が持ち込んだ色々を渡してみるのもアリだろう。

 

もっとこう、私の目玉に埋まってるカメラが飛び出るくらいの。料理系漫画でよくある衣服が弾け飛ぶくらいの美味しいものが出てくるかもと考えれば、とても素晴らしい考えに思える。勿論時間はかかるだろうが、私達ドロイドは実質不老のようなもの。彼が生きている間に生み出し、レシピを残してさえくれれば万々歳だ。

 

まぁ私が持ち込んだ食材などは、現状再調達が不可能なモノしかないので、そう安易に手渡していけないだろうが……。

 

 

「……村っていう生産施設との交流も取れてるし。上手い事再現できないかやってみるってのもアリか? 何かと“外貨”は要るし、稼ぐ手段を模索するって感じで。……っし、おわり~!」

 

『食いながら仕事終わらせたよこの人。』

 

 

ふふ~ん! 何せミクニちゃんって超優秀ですから! 船のコンピューターに通信さえ繋げれば、食事と雑談しながらお仕事終わらせるなんて楽勝なのです! すごいでしょ~!

 

っと、後は直接私が見に行かないといけない奴か。

 

そう言いながら、熱せられた鍋。そしてスプーン代わりの匙を掴み、立ち上がる。

 

 

「確か『マッド』ちゃんだっけ? 私に予定いれたの。あ~んむ!」

 

『はッ、その通りです。ですが食べながら歩かないでください。危ないし行儀が悪いです。』

 

「やだ!」

 

 

そんなことを言い合いながら、鍋片手に向かうのはこの船の“医務室”。

 

ドロイド用のものではなく、人間用。それも捕虜を捕まえた時にしか使わない場所だ。

 

まぁ元居た銀河。連合国と帝国の間には前世地球のような“国際条約”がほぼ存在しないので、捕虜がいたとしても生かしておく必要が無かったりする。つまり捕虜専用の医務室というのは名前だけで、ほぼ“マッド”が独占してる実験室なんだけど……。

 

 

「ま! ミクニちゃんも色々私物化してるし! とやかく言う必要はないよね!」

 

『いや言ってくださいよ。あなた艦長でしょう? あとトップ自ら規則破るの辞めてください、ほんとに。D1ドロイドたちが真似します。』

 

「え~~~!」

 

『え~、じゃない。』

 

「いじわるだねぇ。……というか、これからゴブリン捌きに行くけどついてくるの? マッドが呼び出したってことは、魔石の摘出とか、ゴブリンの“物理的”な調査だと思うんだけど。……お前、グロ駄目だったよね?」

 

『……帰ってもいいですか?』

 

 

もちろん! 

 

ん~! にしてもコレ美味いなぁ!

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「よっす~! マッド、いる~?」

 

『えぇ、えぇ! こちらに! 本日はこのような不衛生な場所にお越しいただき……、何故食事を?』

 

「え? 駄目?」

 

『だ、ダメではないですが……。』

 

 

若干困惑しながら私の前に現れるのが、マッド。

 

メディカルドロイドのDCD-119D-9129にして、この船にいるドロイドの中でも各段に頭のおかしな子だ。

 

実は製造されて以来、様々な問題行動を引き起こしており……、以前の上司。私とは別の高位戦術ドロイドと全くソリが合わず、ちょっと面倒なことになっていた子でもある。普通に廃棄直前だったのを、私が助けてこの船に編入した感じだ。

 

まぁ性格と実績を見れば普通に廃棄した方がいい気もしたんだけど、こういうヤバい奴が何かしら面白いことをやらかしてくれるのは、深く考えなくても解ってもらえるだろう。基本ドロイドってまじめちゃんだからね~! こういうの入れないと集団としてダメなのよ!

 

 

(んで、この子のヤバい所が……)

 

 

彼は、メディカルドロイド。

 

型番の中央にある“119D”のDが示す通り、ドロイドの修理を担当するメディカルドロイドだ。

 

しかしながら……。彼の“自認”は、人類担当のメディカルドロイド。

 

まぁ早い話。この『マッド』というドロイド専用メディカルドロイドは、人体の知識を欠片も持っていないのにも関わらず、人体の治療を行おうとする問題児となのだ。しかもタチが悪いことに、全て“善意”でやっている。

 

 

(あと若干人格コアがエラー吐いてるみたいで、彼なりの独自の基準で動こうとするきらいがあるんだよねぇ。十分管理可能なんだけど、取り扱いは要注意。)

 

 

私達の銀河において、敵兵に人権が無いのは当たり前のことだが、それでも倫理というモノは存在している。

 

しかし彼の場合、その機構が若干ぶっ壊れているみたいで、本来ドロイドでも躊躇する様な行為を、淡々と“治療行為”としてやってしまうのだ。例えば頭部が吹き飛んだ人間を見ると、『故障している』と判断し、その辺から新しい人間の頭を持って来てくっつけてしまう。彼が持つ“ドロイド修理の法則”に則れば確かにそれで修理出来るのだろうが……。まぁ結果はお察しだ。

 

 

(んで治らないことに嘆き苦しんで、謎の独自研究を開始。ドロイド修理の方法で人体の“修理”を目論むマッドサイエンティストになっちゃったわけだ。……まぁ本人は未だ善良な医者のつもりみたいなんだけどね?)

 

 

ちなみにこいつが敵兵用の治療室。この部屋を半ば占拠していることを私が“放置”しているのは、ほとんど『隔離』の為だ。

 

確かにほとんど使わない部屋なので好きに使ってもらっても構わないのだが……。コイツと一緒にいると他の真面なメディカルドロイドが酷く気疲れしてしまうそうだ。一度だけ同じ場所に放り込んでみたんだけど、その場にいたメディカルドロイド全員から『たちけて!』という情けないメッセージが送られてくるあたり、そうとう狂っちゃってるのだろう。

 

まぁ私も若干の恐怖があるが、これでも可愛らしい部下ドロイドの1人。彼がその“知見”を十分に発揮できる場も生まれたことだし、これから存分に働いてもらうとしよう。

 

 

「んぐんぐ。……っと! んでマッド? “真面目”な君のことだし、私呼び出したってことは、進捗あったんだよね?」

 

『医師の一人として、あまりこの場で飲食は控えてほしいのですが……。艦長であれば、何処かに破片を飛ばすということも無いでしょう。して、その件ですが……。』

 

 

そう言いながら先導してくれる彼の後ろを付いて行くと、見えてくる一つの手術台。

 

ここに来る前から色々と覚悟していたので嗅覚センサーを切りこの場にやって来たのだが……、過去の自分を最大限に褒めてやりたくなる。半ば現実逃避の為に煮込み料理を口に投げ込みながら、視界に入るのは“丁寧に分割された”ゴブリンの死体。

 

 

『自身が出来る総力をもって治療に臨んだのですが、力、及ばず……! 己の無力さに恥じ入るばかりですッ!』

 

「アァ、ウン。ソダネ。」

 

 

ドロイドなのに若干涙ぐみながらそう懺悔するマッドを無視しながら、一応責任者としてその惨状を確認する。

 

やはり彼はこのゴブリンもドロイドの一種と錯覚している様であり、骨や筋肉と言った各パーツを気持ち悪いほど丁寧に分割しているのが解る。パソコンを丸ごと修理する際に全てのパーツを一度外して中を見てみる様に。彼はゴブリンの皮や骨、肉や内臓などを本当に丁寧に仕分けしている。

 

それを再度組み上げて治らなかったことを悔いているようだが……。う~ん、マッドだねぇ! コワイ!!!

 

 

「あ~、後一応言っておくけど。このゴブリンっての“人類”じゃないからね? 魔物って分類の害獣。」

 

『……艦長、一介の医療ドロイドが口を出すのは誤りでしょうが、そのような差別的発言は控えた方がよろしいかと。』

 

「…………ごめんね? コレ本部の決定でさ。でもこの船の中だったら、“握りつぶせる”から。安心してよ。」

 

 

そう口にすると、表情を作る機能など無い筈なのに、満面の笑みで此方に感謝を伝えてくるマッド。……うん、今のやり取りで彼の中じゃゴブリンも人類。ちょっと特殊なヒューマノイド扱いなんだね。おけおけ、キレたら変に暴走しそうだし、今後注意しないとな……。

 

あ、勿論本部と通信なんか繋がってないよ? 彼を納得させるための嘘です。

 

 

「んで。この哀れな犠牲者ゴブリン君だけど……。」

 

『はい。艦長からお聞きした“魔石”なる存在。それに関するご報告です。』

 

 

彼の言葉を目で促しながら、その続きを聞いて行く。

 

どうやらエネルギー循環ポンプ。彼の言うゴブリンの心臓あたりに何かしらの堅い物体を発見したため分解したところ、紫色のとがった石のようなものを発見したという。

 

最初は初期不良や、外部から入り込んだ異物かと思ったららしいが、他のゴブリンやオークなる別ドロイドを分解した際も、同じような石が入っていることが解り……?

 

 

「ちょ、ちょっと待って? 他のゴブリンにオーク? 許可出してないよ???」

 

『申し訳ございません、理解していたのですが、どうしても負傷したままのあの方々を放置することが出来ず……ッ! 治療を施してしまいました! 自身の技量不足のせいか、誰一人再起動させることはできませんでしたが……ッ! この処分は、如何様にでも!!!』

 

「あ、うん。そっか、うん。許すよ、うん。…………ぇえ。」

 

 

魔物たちの死骸は、調査用。そして何かに使えるかもと船の冷凍倉庫に纏めて放り込んであったのだが……。

 

彼の指さす方を見てみると、ずらっと並ぶ魔物たちのパーツ。中にはゴブリンにオークのパーツを埋め込めば再起動するのかと試したような痕跡もあり……。あぁうん。ちょっと直視し続けたくないな。キメラみたい。

 

 

「あ~。やっぱ全員に魔石があった感じか。」

 

『はい、この星独自の風土病の可能性も考えたのですが……。この魔石なる存在を彼らの体の中に配置してみると、一瞬だけ動く事例が何度か発見されました。考えるにこちらはこの星の生命体たちの、バッテリーに値するものかと。』

 

「はえ~。」

 

 

彼がデータ化して渡してくる猟奇的な資料を見てみれば、確かに何かしらの動力源になっていることが見て取れる。

 

これはもしかすると、前世の娯楽作品にもよくあった『魔石を魔道具のエネルギー源とする』みたいなことを示しているのかもしれない。明日以降、私が止まってる町で魔法関連の店を見つけたら、この辺りを聞いてみようかと思ってたんだけど……。その検証が先んじて出来たのかもしれないね。

 

 

「うんうんうん、大手柄じゃない、マッド。」

 

『本当ですか!?』

 

「まだ見つけてないんだけど、私もこの魔石には興味あってさ。現地の魔法使い……、じゃなかった。現地の医師に話を聞こうと思ってたのよ。色々聞き出してレポート化しとくから。それを元に再研究できる?」

 

『勿論です! 可能であれば自身が行きたいところですが、このドロイドの身体ではいらぬ恐怖を与えてしまうかもしれません! 医療ドロイドとして、患者の心を守ることもまた使命! どうか、どうかよろしくお願いいたしますぞ……!!!』

 

 

あ~、はいはい。頑張るね、うん。

 

 

「あ、そうだ。このゴブリンとか、オーク。今後は彼らみたいな“魔物”たちの死体は全部こっちに運ばせるようにしておくよ。そっちの方が、治療も捗るでしょ?」

 

『よ、良いのですか!?』

 

 

うん、良いからそんな急接近しないでくれる? びっくりするし、いつも通り隠れながら付いて来てる護衛ドロイドたちが君のこと消し飛ばしちゃうから。

 

離れよ、うん。

 

 

「それで、見返りと言っちゃなんだけど……。治療行為と並行して各パーツのデータとか、作っておいてくれるかな? ほら体についての知見が深まればさ、殺さずに追い返すことも出来るわけかもじゃん?」

 

『なるほどッ! 正にそうかとッ! このDCD-119D-9129! 身命を賭してこれ以上の犠牲が出ぬよう、粉骨砕身! 努力させて頂きます……!!!!!』

 

 

深く礼をする彼を手で制しながら、もう一度現実逃避の為に料理を口に運ぶ。

 

うん、美味しい。私はまだ大丈夫。

 

……確認の為に言っておくが、既に私の中で魔物に対する扱いは決まっている。この星の人類と敵対している以上、“害獣”と見做し排除する。現状、コレが変わることはないだろう。こちらから積極的に殺しに行くことは無いが、必要ならば手加減せず確実に消し飛ばす。それが基本方針だ。

 

それに、村の人間たち。エリンちゃんを始めとした人間たちから『魔石は換金できる』という話もあったのだ。

 

まだまだ研究の余地があるため一部手元に残す必要はあるだろうが、金策に困ったのならば積極的に狩るのも選択肢の一つだ。周辺の環境が変化する可能性もあるので、そう安易に行うことは出来ないだろうが……。

 

ともかく魔物に対し、私は容赦するつもりはない。

 

 

(けど、それを彼に伝える必要もない。ま、いい感じにバランスとっていきましょ?)

 

 

私は魔物の詳細なデータや、魔石に関する研究データなどが手に入って幸せ。彼は魔物と言う“人類”を再起動、もとい生き返らせるために全力を尽くせて幸せ。

 

うんうん、これぞwin-winという奴だ。

 

 

「よっし、んじゃ他に用があるからこの辺で。一旦この魔石は私が持って行くから、治療とか色々頑張ってね?」

 

『は! 全力を尽くさせて頂きます! それと、この星の医師の件、どうかよろしくお願いいたしますぞ……!!!』

 

 

おけおけー。忘れないようにしておくね~。

 

…………はぁ、マジ疲れた。良い具合にヤバくて使いどころある子だし、ちょっとかわいい所もあるんだけど……。あんま長話はしたくないねぇ。

 

 

 






〇ミクニ達がいた銀河の情勢

銀河を二分するように連合国と帝国が存在し、鎬を削っている。
ドロイドを主力とするのが連合国で、人間を兵力としクローンを使用したのが帝国。

既に10年以上戦争が続いており、半ば泥沼化している。銀河規模の戦争なため、地球で起きた戦争と比べるとスケールが大きくその分時間がかかるモノではあるが、どちらも戦い過ぎてしまい、収集が付かなくなっている模様。

特に民主主義国である連合国は一般市民たちの『帝国憎し』という感情が大きくなりすぎており、またドロイドたちに戦争を任せているせいか『戦争を娯楽の一種』と捉えている者もいるため、政府が終戦しようなどと言えば一瞬にして政権が崩れる状況になっている。

故に、どちらかが完膚なきまでに消滅するしか終戦の道はない。

ちなみにミクニが言っていた『捕虜を保護する必要が無い』と言うのは事実。確かに戦争初期は地球でもあった降伏した兵士を保護する協定が存在していたが、連合軍側が『こっちドロイドだし、保護してもらう必要ないよな。ぶっちゃけ捕虜って情報聞き出した後いらないし、邪魔だから殺しちゃえ!』という愚策を取ったため、帝国側も破棄するに至った。

ミクニが自国である連合国を、『正義の連合国軍(笑)』と称するのにはこのようなことが度々起きているからである。なお敵国である帝国も、同様に色々やらかしているため、実質両方とも悪寄り。





〇医療?ドロイド DCD-119D-9129

ドロイド専用メディカルドロイド、DCD-119D型として開発された内の一機。その不良品。

愛称は“マッド”。

ミクニが語っていたようにドロイド整備の知識しか持たないのにも関わらず、人体の“修理”を使用とする異様なドロイド。精神性は敵でも味方でも治療しようとする医師の鑑のようなものだが、色々と狂ってはいる。

与える情報と仕事を制限することで特定の仕事を任せることが出来るが、『まるで人のような柔軟性』をもつドロイドぐらいでも無ければ管理は不可能。

普通にドロイドの治療は可能であり、頼めばしてくれるのだが、彼の自認は『人類専用のメディカルドロイド』。基本的に、ドロイド修理用の手法をもって人間を治療しようとしてしまう。これまでの研究、もとい犠牲となった帝国兵たちのおかげでその“技量”だけは優れており、人体をパーツごとに丁寧な分解処理が可能。

艦長であるミクニからは『表に出せない研究』や『“治療行為”による拷問』に使用できると判断されており、現在魔物と魔石の研究を行っている。しかしながら彼の中では単なる医療行為の延長であり、日々“患者”を救うために邁進している。

ちなみに、何故自身がマッドと呼ばれているかは欠片も理解しておらず、理由も全く見当が付いていない。マッド本人に聞けば『まぁ艦長殿は少々不思議なお方ですから……』と謎のフォローをされる。

他ドロイドから死ぬほど距離を取られているので、真面に会話したことがるのは艦長ぐらい。




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