異世界バトルドロイド軍団   作:サイリウム(夕宙リウム)

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15:おもしれー女

 

「ほ、ほんとにごめん。悪かった……。」

 

「う、うん。いいですよ、“私”は無傷でしたから……。」

 

 

というわけで。何故か魔法を喰らいそうになったが、無事に切り抜けることに成功。

 

なんとか魔女ちゃんと和解することに成功した。

 

しかしながら、そのために払った代償は大きく……!

 

 

(そりゃね? いいんですよ、盾にされるのは。俺たちD2ドロイドの運用目的が盾なんですから。どんどん肉盾にしてもらっても構いませんとも。えぇえぇ! お好きなだけ使えばよろしいんです! でもね? 昨日もなんですよ。製造された時から使い続けていた大事な鎧がね、壊されちゃったんですよ。大事な大事な一張羅が。毎日毎日、隙間時間に磨いていた俺の相棒をね、失ったんですよ。確かに、誉ある事です。なにせ守るために生み出されたものが、守り切って壊れたんですから。悲しみこそあれど、役目を果たしきったんです。えぇえぇ、事前に何も言われず急に肉盾にされたことなんて、大事な鎧を壊されたことなんて! 怒ってないです! 本当に!!! でもね? 今日新しく貰った鎧をね? ピカピカ新品でこれから頑張ろうとしたところにね? 前の鎧の無念を果たすためにも、こんどこそ死ぬまで新しいコイツと仕事頑張るぞって思った所にね? また肉盾にされたんですよ。しかも、また事前の相談なく! そしてまた鎧だけ! 同じところに! 同じような攻撃で! まるで昨日の再現をするようにッ! 俺が今どんな気持ちか! どんな気持ちか! 解りますかッ!!!!!)

 

(ま、マジごめん。)

 

 

表面上は“ゴーレム”に徹してくれてはいるが、通信では途轍もない長文を私に投げかけてくるD2ドロイド。

 

そう、彼は昨日ファイアボールの肉盾になった子。そして今回はウォーターボールの肉盾になった子だ。なんか急に目の前の魔女さんに攻撃を仕掛けられたから、仕方なく彼を肉盾にしたんだけど……。案の定というか、昨日ぽっかりと開いていた鎧の穴が、今の新しい鎧にも、再現されるように開いている。

 

なんかこう、とても哀れ。

 

 

(も、もっかい新しい鎧用意するから……)

 

(そういう! 話では! ありませんッ!)

 

(ゆ、ゆるちて……!)

 

 

未だ長々と続くD2ドロイドの文句を受け流しながら、思考を高速化。更に並列して物事を整理していく。

 

なにせと言うべきか。眼前の魔女さんが私に敵意を持って攻撃しようとしたことは確かだ、その後の反応からどうやら誤解だったことが解っているのだが……。ウチの護衛ドロイドたちには、そんな言い訳通用しない。

 

この場に隠れていた全員、光学迷彩と無音モードを起動している彼らすべてが、武器を引き抜き彼女の喉元に向けている。直前で私は停止命令を打ち出していなければ、今頃彼女は粉微塵になるまで切り刻まれていたことだろう。

 

 

(う、うん。護衛としては正しいだろうし、頼りになるし、ありがたいんだけど……。い、今は刃を収めよっか、うん。ほんとに、お願い。)

 

(((……御意。)))

 

 

ひどく渋々と言った感じで、それぞれの武器を収めていく護衛ドロイドたち。

 

前回の『ファイアボール』、荒くれ者との戦闘の時は距離があり、同時に包囲済みであった。つまり既にこちらが“生殺与奪の権”を持っていたため、ここまでする必要はなかったのだろうが……。今回の『ウォーターボール』はカウンター越し、かなり近距離での攻撃となった。前のように包囲はしてないし、距離も近い。防御できたとはいえ、次に何をしてくるか解らない以上、ちょっと過剰になるのは仕方ないことだろう。

 

……うん、だから体内の隠し武器の銃口、向け続けるの辞めてね? 私が気にするから。

 

 

(…………畏まりました。)

 

 

まぁそんな感じでドロイド側の処理を高速で終わらせながら、並列思考の一つ。肉体を動かし魔女さんと会話していた方の思考でも、彼女の応対を済ませていく。うん、とっても忙しいね!

 

 

「ほ、本当にごめんなさい。全く魔力がないのに動いていたから、てっきりアンデッドかと。そんなわけないのに、ね。」

 

「そ、そうでしたか。」

 

 

あ~、まぁ確かに私もドロイド。人間に見える素敵ボディはしているけど、機械仕掛けの人形であることは間違いない。この星独自のエネルギーらしき“魔力”が宿っていないのも仕方のないことだろう。

 

そう考えると、彼女がびっくりして攻撃するのも仕方のない話。反応から推察するに、『生きている人間は全て魔力を持っている』って感じだろうし、悲しいすれ違いとして処理するしかあるまい。

 

……うん? いや、ちょっと待って?

 

 

「動く死体は、アンデッド。でもアンデッドは魔物に分類されて、魔力を持つ。魔力をエネルギーにして動いてるから、魔力を持たないアンデッドは、ただの死体。つまり『魔力を持たないアンデッド』は存在しえない。 そう、オバケなんていないの。いるわけが無いの。存在してはいけないの。……いい?」

 

「あ、うん。そうですね。」

 

「でも貴女には欠片も魔力が見えない。生きているのに、持ってない。何かの希少事例、生物としてのイレギュラー、私達の理の外にいるモノ。……でも目の前にこうして生きている以上、現実。つまり、貴女は特別なナニカ。」

 

「……ディスられてます、私?」

 

「で、でぃす? ……ともかく、貴女は特別。そしてこのゴーレムも、同じ。『魔力が無ければ魔法は使えない』、広義で言えばゴーレムも魔法。魔力を持たないなんてありえない。でも、目の前にあるなら理解は出来る。世界に否定された貴女だからこそ、たどり着けた境地なのでしょうね。……こんな素晴らしい作品。魔力無しで動くゴーレムを生み出したなんて、本当に尊敬するわ。」

 

「…………。」

 

 

あ~、はい。うん。

 

途中から気が付いてましたけど……、うん。

 

この星には、人間である以上、多少の魔力を持つという方式が存在する。そして同時に、魔法と言う力は魔力をエネルギーとして成立させるため、魔力を持たない者には扱えない技術。

 

え~、つまり。

 

ミクニちゃん! 魔法! 使えませんッ!!!

 

くそったれッ!!!!!

 

 

「それで、話しを戻すのだけれど……。確かに、これならスクロールを持たせることは可能だと思うわ。色々と調整する必要はあるけれど、反発するはずのゴーレムの魔力がないのなら、暴発の危険性は0。何故国の研究機関や大学に持ち込まないのかという疑問もあるけれど、その“体質”を考えれば納得も出来る。こんな田舎の片隅にいる何でもない魔女なんて、このゴーレムで寝込みでも襲えばすぐ消せるでしょうし。……でも、私だって魔女の一人。相談されたからには、後悔はさせないわ。この子が扱える、もっと何か素敵なものを……。貴女? どうしたの?」

 

「い、いやちょっと。現実を受け止め切れなくて……ッ!」

 

 

私も魔法。

 

つ、使いたかったなぁ……ッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「……落ち着いたかしら。」

 

「あ、はい。すいません。」

 

 

そう言いながら、出してくれたお茶を啜る。

 

何となく察してはいたが、考えないようにしていたこと。けれどまぁこの世界の正規の魔法使用者に言われてしまえば……、もう諦めるしかない。魔女である彼女が先ほどしたように、言葉を紡ぎ水球を生成するなどの魔法は、私に扱えないのだ。

 

うん、未練はめっちゃあるけど。

 

すっごく大きなため息つきたい気分だけどッ!

 

 

「……無いものねだりをしたくなる気持ちは、解る。私も大学で学んでいた頃は、自分の才の無さを恨んだものだった。でも、そこでいじけちゃだめ。今ある手札で戦うべき。」

 

「あ、はい。ですよね……。」

 

「うん、解ってるならいい。……それで、話は変わるけど。」

 

 

今日初対面なはずなのに、何故か励ましてくれる彼女。

 

というかさっきの“アンデッド騒ぎ”の後から、各段に私への扱いが柔らかくなっている気がする。優しいというか、面倒見がいいというか。その前の会話から要素は見え隠れしていたが、よりそれが強くなった感じ。……思いのほか“ゴーレム”が刺さったのだろうか?

 

ま、仲良くしてくれるのならそれでいいや。

 

んで、なんの話です?

 

 

「さっきから、こう。囲まれている気がするの。全く見えないのだけど、武器も向けられている気がするというか……。」

 

「……。」

 

「……貴女?」

 

「き、気のせいじゃないっすかねぇ?」

 

 

急いで周囲を注意深く見渡してみれば、案の定ウチの子達。護衛ドロイドたちがまた彼女に武器を向けているのが見て取れる。

 

しかもさっきよりもレベルの高い光学迷彩。私でもけっこう目を凝らさないと解らない程度の高い迷彩を使用してでの蛮行だ。え、何? 主人悲しませたから殺す? ……お前いつの間にそんな暴走マンになったの? 拾い上げた時もうちょっとマシというか、人間らしさの欠片も無いドロイドしてたじゃない。言っとくけど、言うこと聞かない奴はマジで護衛から外すよ? 好き勝手に動く“切り札”なんか使い物にならないし。

 

……あ、辞める。ならヨシ!

 

 

「……ん? 無くなった。気のせい……? ま、いいわ。それでなのだけど、そもそも名前すら聞いていなかったわね。私の名前は『ルケト』、貴女は?」

 

「ミクニです。」

 

「ミクニ……、じゃぁ『ミーちゃん』ね。私は『ルーちゃん』でいいわ。」

 

 

そう言うと、先ほどまでの無表情を一瞬だけ崩し、小さな笑みを浮かべる彼女。

 

あ~、うん。おかのした。

 

ルーちゃん。お前、結構愉快な性格してるなッ!?

 

 

「それで、さっきの話だけど。そのゴーレムの改造をしてほしいのかしら?」

 

「え、あ、はい。え~っと。」

 

「砕けた話し方でも大丈夫。」

 

「なら、お言葉に甘えて。……現状はそこまで考えてはいないかな? とりあえずゴーレムでもスクロールを用いた行動が出来る様にしたくて。後々“埋め込む”ことも考えたいけど……。」

 

 

そう言うと、少し考えた後、カウンターの下にもぐり何かを探し始める彼女。

 

かなり急な距離の詰め方をしてきたため、少しだけ言いよどみ、“砕けた話し方の譲歩”を引き出してみたが……。ほんの少しだけ、表情筋が緩んでいたように思える。つまりアレだな、双方向で爆速の距離詰めをした方がいいタイプの人間だな。

 

ま、あってまだ1時間も経ってない相手。しかもさっき魔法をぶっ放した相手を『ミーちゃん』呼びし始める感性は、本当によく解らないんだけど。

 

そんなことを考えていると、羽とインク。そして小さな羊皮紙を取り出す彼女。こちらが何か口にするよりも早く、インクを付け紙に何かを描き始めていく。

 

 

「スクロール、原理自体はそんな難しいものじゃない。書くだけならミーちゃんでもすぐできる。こんなふうに、ね? ……でも、問題はそれを動かす力がないこと。」

 

「というと?」

 

「私が売っているのもそうだけど、スクロールには作成者の魔力を込めて作る。そしてそのスクロールを開いた際に、作成者が刻んだ魔法が出てくる。威力は普通に唱えた時と大体同じ。だから魔力に余裕がある時はストック用としてスクロールを作ったりする。」

 

「はぇ~。」

 

 

どうやらスクロールという存在は、こちらの想定以上に便利なモノのようだ。

 

先程彼女が唱えたウォーターボールと同様の威力が、スクロールでも出せるのならば……。平時は基本的に、ずっとスクロールに魔法を込めておいた方がお得だろう。どのように魔力が回復するかまでは解らないが、こういうのは基本的に時間経過で元に戻るものだ。寝る前とかにスクロールを作っておけば、何かあった際。普段自分が使える数よりも沢山の魔法を使用できる。

 

けれどそれは……。

 

 

「……あんまり良い反応じゃない。ということは、“そういうこと”じゃない。」

 

「あ、解る?」

 

「……そのゴーレム、頑丈そうだけど、鎧のせいであまり手先は器用に見えない。でも、スクロールぐらいなら起動できる。巻物の紐をほどくだけだし。それが“目標”なら、私に話を持ちかけずに、スクロールだけ買って帰るはず。でも違うってことは……。」

 

 

思考を口に出して整える様に、どんどんと『ルーちゃん』の言葉が回っていく。

 

こういう思考が早いタイプの人間は、色々とやり易くていい。

 

予測がしやすいおかけで、今後の会話パターンを多く作る必要が無い。話自体も早いから待つ時間も少ない。そして何より、前提条件だけ共有すれば勝手に話を前へと進めてくれる。

 

 

(それに“話が分かる”のも好印象、最悪他の町で違う魔法使いを探す可能性も考えていたけど……。1発で決まっちゃったね。)

 

 

話を元に戻すが、そんな彼女の言う通り。単にスクロールを起動するだけならドロイドでも出来るだろう。

 

しかしその行動は“両手”で行うものだ。巻物を取り出し、ソレを支えながら、結ばれた紐をほどく。そして起動した後も、自爆を防ぐために両方の手でしっかりと握っておく必要があるだろう。

 

基本的に“ブラスターで片方が埋まる”彼らの手を、だ。

 

引き金一本で相手を殺せる武器であるブラスターを手放すのは、戦術上あまりよろしくない。更にスクロールと言う“取り出して開く”という複数の工程を挟む攻撃というのは、相手が銃のような武器を持ちだした時、速度差で撃ち負けることを意味している。

 

ブラスターで制圧射撃、相手の行動を予測しながら、魔法も同時に放つ。これが最上であることを考えると、現在の巻物形態は不適当。それこそブラスターのような銃タイプのスクロールが好ましいと言えるだろう。

 

言ってしまえば、『魔法銃』みたいな存在が欲しいわけだ。

 

 

「そんな感じなんだけど……、出来る?」

 

「……ミーちゃんのいう『じゅう』が何か解らないけれど、私達が唱えるだけで魔法を使えるように、ゴーレムが特定の動きをすることでスクロールを使用するというのは、不可能ではないと思うわ。」

 

「ほんと!?」

 

「えぇ。……でも、それだけじゃないのでしょう?」

 

 

彼女の問いかけに、笑みをもって返す。

ちょっと考えただけでも、根本的な問題が、いくつか。

 

そもそもの話。魔法に対応するためには、こちらも魔法を扱えるようになるのが手っ取り早い。

 

未だ草案段階レベルのものだが……。今後、全てのD1ドロイドが魔法を使えるようになれば、私達軍団の強さは大幅に跳ね上がることになるだろう。その分誤射や事故の危険性が跳ね上がるが、ドロイドたちがブラスター以外の武器を扱えるようになるのは、戦略性に大きな幅が生まれる。

 

我々の数という解り易い強さに、魔法という新たな“質”が追加されるのだ。運用はより難しくなるだろうが、その破壊力は計り知れない。

 

 

(あと単純に凄く面白そうってのはあるよね?)

 

 

けれど、それを実現するには超えなければいかない壁が多すぎる。

 

なにせ全てのドロイドにスクロールを配備するとなれば、百万単位での補給が必要になって来るのだ。一部隊だけに限定するとしても、流石に1体に1発だけでは効果が薄い。連射することも考えると、最低でも1万ほどは用意したいところ。そう聞けば、スクロールの在庫はかなり数が必要ということはご理解いただけるだろう。

 

けれどスクロールと言う品は、工業製品ではない。

 

人の手で生み出し、個々人の魔力が原料。

 

そしてその威力も、彼女の話を聞く限り、人によってまちまち。

 

均一で、数が揃っていて、一杯撃てる。これがウチの軍の基本であり強さでもあることを考えると……。ちょっと“そのまま”使うのは、難しい口だ。

 

 

(全員同じドロイドとして動かしてるのに、1体が豆鉄砲みたいな魔法しか使えなくて、もう片方が大魔法。こんなの扱いに困るのよ。)

 

 

だからこそ、“個人生産”というのは、私達にとって都合が悪い。

 

そしてもしこれが“均一化”出来たとしても、私達の為にスクロールを生産してくれる魔法使いを、大量に確保する必要が出てくる。魔力という“作成数限界”があることを考えると、かなり難しい条件だ。

 

流石にそこら辺から魔法使い捕まえてきて、強制労働させるわけにはいかんし……。

 

 

「…………なるほど、朧気だけど、見えて来た気がする。」

 

「そう? なら良かった!」

 

「一週間ほど、時間を貰えるかしら。」

 

 

うん? 別にそれぐらいは大丈夫だけど……。なんで?

 

 

「ふふ、こんな田舎で魔道具展をやっているけれど。これでも昔は才女で通ってたのよ? 貴女のゴーレムを見てそんなの恥ずかしくて言えなくなったけど、代わりに更なる上を目指す挑戦の気持ちが思い出せた。“その子”に比べれば些細なモノでしょうけど……。貴女の思い浮かべる新しいスクロール。やらせてくれないかしら?」

 

 

そう口にしながら、気合を入れる彼女。……さっき否定し忘れたけど、私がゴーレム。もといドロイドを作ったわけじゃないんだけどなぁ。

 

いや確かに作り方とかは解りますよ? さすがに特別製な今の自分の身体を一から生み出せ! とかは出来ないけど、それ以外のドロイドたち。“量産品”な子達の作り方なら、一通りレシピが頭の中に入っている。

 

最悪独力で軍を立て直せるようにプログラムされてるのが、私みたいな高位戦術ドロイドだからねぇ。専用の機械がないと難しいけど、それさえあれば自分で作れるようには叩き込まれてるんです。

 

でもまぁ、一から設計開発したのは本社の人間といいますか……。

 

 

「うん、解ってる。情報を知る者は少ない方がいいものね。貴女の“体質”のこともある、可能な限り秘匿すべきよ。ゴーレムもそうだけど、国の研究機関や一部の大学。その辺りに見つかったら解剖だけでは済まないでしょうしね……。」

 

「違うんですけど……。いやちょっと待って!? 私“が”解剖されるの!?」

 

「それだけ魔力を持たない人間がイレギュラーということよ。その性質を維持するために、生きたまま開かれる。これで済んだら奇跡だわ。」

 

 

え、えぇ……。そんなウチの“マッド”みたいな奴らいるの? 思ったよりこの星の人間って怖い……、わけでもないな。うん。想定の範囲内。

 

いやだって、どう考えてもウチのマッドの方がヤバいじゃん。生きたままの解剖はまだ人の性として理解できるし、そもそもこっちはドロイドだから解剖されたとしてもその程度じゃ死なない。実際にされたら護衛ドロイドたちがブチ切れそうだが、可愛いものだ。

 

それに比べて、ウチのマッドは分解して再修理を人の身体でしようとしている。未だに医療行為だと信じ切ってるあたり、ヤバさのランクが違うのよね……。

 

 

「……うん。貴女の注文と合わせて、少し魔道具を考えてみる。偽装出来た方がミーちゃんも楽でしょうし。」

 

「あ、すいません。どもです。あとほんとに私が作ったわけじゃなくて……」

 

「ふふ、いいのよ。私達の仲じゃない。」

 

 

出会ってからまだ1時間も経ってないんだよなぁ。

 

にしても、私への好感度がマジで高いですね、うん。嫌われるより大歓迎だし、色々と協力的だからありがたい限りだけど……。なんかすごいのと出会っちゃったな。もうすでに古くから付き合った友人みたいな扱いしてきてる当たり、相当だぞこのルーちゃん。

 

いやまぁ、こういうの面白いから、大歓迎ではあるんですけどね?

 

と、とりあえず色々お仕事お願いします~!!!

 

 





〇この惑星におけるスクロール

巻物を意味する単語ではあるが、この場における『スクロール』は魔法が封じ込められた巻物とする。

薬剤による特殊な処理を施した羊皮紙に文様を刻み、同時にそこに魔力を流し込むことで作成することが可能。そこから丸めて封をすることで、保管。これにより書き込まれた魔法が“待機状態”へと移行する。また開封されることで一気に稼働、込められた魔法が実行される仕組みになっている。

その魔法に対応した文様を刻み込まねば作動せず、作成するには大学の魔法科を始めとした、専門機関での習熟が不可欠と言われている。しかし、いまだ文明が発展途上なこの惑星ではそんな専門機関での教育を受けることがかなり高いハードルとなっている。そのため大半の魔法使いは刻む文様が解らないどころか、作成時に必要な薬剤の調合すら難しい。

しかしながらその利便性。長期保存が可能で、威力の低減が起きず、好きな時に使用できることから、スクロールを作成できるほぼすべての魔法使いが、自分の魔法を日々溜め込んでいる。

またこの惑星自体、多発する魔物という害獣被害に悩まされている環境なため、その“需要”は酷く高い。しかし作れる魔法使いに限りがあるため“供給”に限界があり、その値段はどうしても高くなってしまう。まぁつまり、換金性が酷く高いのだ。

ルーちゃんこと初対面の『ルケト』があまり客商売に乗り気ではなかったのも、売れてしまえば大金が手に入るから。やろうと思えば町を守る兵士たちに売りつけてもいいので、接客態度は悪く、客が気に入らなければ追い返しても良いという状況になっていた。



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