異世界バトルドロイド軍団   作:サイリウム(夕宙リウム)

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16:凄いよルーちゃん!

 

【※ルーちゃん(魔道具屋の店主)視点】

 

 

 

 

「……ふぅ、一息つこうかしら。」

 

 

そう口にしながら立ち上がり、紅茶用のカップが置いてある棚へ向かう。けれど数が足りないことに気が付き、何処にやったのだろうかと思いながら、周囲を見渡す。

 

すると視界の端に見えるのが、つい先ほどまでいた“客”に出していたモノ。

 

魔女が出した飲み物など警戒して口にしない者すらいるというのに、何も気にせず飲み干した彼女。そんなカップは綺麗に飲み干されていて、私のカップにはほんの少しだけお茶が残っている。

 

窓から差し込む夕日のせいか、普段より色鮮やかに見えるソレを口に運びながら。思い出すのは、新しい出会いのこと。

 

 

「……熱中しすぎたわね、もう日が落ち始めてる。それにしても……、ふふ、こんな幸運が転がり込んでくるなんて。」

 

 

なんでもない日々に突如として現れたのは、白髪の彼女。

 

魔力を持たない存在であり、自分たち魔法使いの常識の外にいる存在。『ミクニ』と名乗ったあの少女は、同様に魔力以外を動力とする不思議なゴーレムを持ち込んでくれた。それだけで正直、一生分の運を使い切ったかのような心持だったのだが……。それに乗せる専用の装備開発まで、頼んでくれた。

 

 

「確実にまだ世に出ていないもので、巨万の富を築けるかもしれない存在。それを言わば商売敵ともいえる私に見せて、巻き込んでくれるなんて……。本当に、ミーちゃんは優しいのね。ふふっ。」

 

 

彼女の“体質”。魔力を持たないという性質が知られれば、確実に狂気に呑まれた魔法使いたちが押し寄せてくるだろう。

 

私には活用法は思いつかないが、周囲と比べ希少と言うだけで価値があり、自分のモノにしてしまおうとするのが、私達魔法使いの世界だ。つまり、狂気の巣窟とも呼べる国の研究機関や、魔法科が存在する各地の大学では『協力』ではなく『奪取』される可能性が高い、ということだ。

 

故に私のような在野で暇を持て余している存在に協力を仰ぐというのは、そう間違った話ではないのだが……。

 

彼女の“手札”を考えれば、もっと秘匿性の高い選択肢が取れただろう。

 

 

(ミーちゃんと話してる時に何度か感じた、体をバラバラにされるイメージ。……あの時あの場所には私たち以外の“ゴーレム”がいて、私をいつでも消せるようにしていた。……たぶんまだ、この部屋の中にいる。)

 

 

魔法にも自身の姿を隠したり、自身が発する音を無くしたり、匂いをかき消したりするようなものがある。

 

元々、戦場で偵察に赴く兵士たちの為に開発されたものだが……。おそらくそれと同等の能力、いやそれ以上の能力を持つゴーレムが、今もなおこの場に潜んでいる気がする。何の根拠も無いが、自身の勘がそう囁いている。

 

 

「ふふ、ほんと素敵ね。ミーちゃん。」

 

 

そんな人知れず対象をこの世から消す力を持っているのであれば、『殺してから奪い取る』のが最も効率的で、人目に付かない方法だということは、誰もが理解できることだ。

 

そのすべてを紙に記すわけではないが、私達のような魔法使いの工房は情報の宝庫。鍋の焦げ付きひとつで得意とする薬剤が解る様に。備忘録代わりに残したメモから、いくつもの情報を引き出せる可能性がある。

 

大学を出たがうだつが上がらず、地方に逃げて来た私の工房にそんな良いものは眠っていないだろうが……。少なくとも彼女が求める情報、スクロールの関連技術や、その作り方ぐらいは読み解けたはずだ。

 

家主をゴーレムに首を絞め折らせることで処理し、家屋の柱のどこかに縄を巻きつけ吊るしておく。後は家探しした形跡を隠しておけば、何処からどう見ても自殺扱い。

 

完全犯罪の出来上がりだ。

 

 

(そう見せかけておけば、衛兵が犯人捜しをすることはない。そして複数の町同士が、中で起きた自殺事件の情報を共有することは滅多にない。複数の魔法店を“回収”していけば、すぐに望み通りのモノが自力で作れるようになったはず。)

 

 

けれど、彼女はそれをしなかった。

 

これだけで彼女の精神性を、大方推し量ることが出来る。

 

無暗な殺生を好まず、対話を重んじ、必要であれば友誼を結ぶ。こちらが“敢えて”距離を急激に詰めたとしても、若干引きながらではあるが同様に詰めてきてくれた、そこからノリの良さも見て取れる。

 

正に、私の一番親しい友人。“親友”に相応しい存在だ。

 

……ま、私が見えないゴーレムの存在に命の危険を感じ、生き残るために距離を詰めて『彼女に酷く協力的』になったのも見抜いてそうだけれど。

 

 

「確実に、私よりも頭が良いみたいだし、ね。」

 

 

初手でアンデッドと勘違いしてしまい、攻撃してしまったのが原因だが……。

 

あの場の空気は、完全に冷えていた。

 

見えないゴーレムに、私のウォーターボールを防ぎきるゴーレム。私を確実に殺す剣と、こちらの攻撃を完全に防御する盾があの場にいたのだ。確かにこちらもより強力な魔法は使えるが、仕様までに少々の溜めが必要となる。やろうとしてもその前に殺されて終わりだ。

 

まぁそれゆえに。私の勘違いのせいとは言え、生き残るために雰囲気を変える必要があった。なにせ“彼女本人”にその意志が無かったとしても、『ゴーレムたちが無視する』可能性もあったのだから。

 

 

(意思のあるゴーレムだなんて、どうやって作ってるのかしら。)

 

 

魔力の無いゴーレム、それを大きく超えた意思のあるゴーレム。

 

この家屋の中に入って来た鎧を着たゴーレムが、若干私に怒りの感情を向けていたこと。そして彼女の意思に反して、見えないゴーレムたちが私を狙っていたこと。そして今、“意志ある視線を感じる”ことからも、彼らが知性を持つ存在であることは間違いないだろう。

 

そんな素晴らしいものを作れるのだ。私の数倍、いやもっと頭の出来は上なはずだ。

 

 

「……私がこう考えているのも、予測済みでしょうし。」

 

 

思い返してみれば、会話の殆どに誘導箇所。ミーちゃんにとって好ましい言葉を私が話すように、会話が構築されていた。私が生き残る術を探すために親しげな接近、彼女にとって予想外であろう動きをしたとしても、その動きは途切れなかった。

 

最悪、私の“足掻き”すらも計算に入れていた可能性がある。

 

いや、むしろそう考えた方がいいだろう。

 

 

(ちょっとチグハグな印象も受けたけれど……、演技かしら? まぁとにかく、ミーちゃんの掌で踊ってることは、覚えておかないとね。)

 

 

そんな掌の上にいる存在。いつでも処理できる私の首がいまだ繋がっているということは……、許されているということ。

 

他者に安易に話したり、またこの考えを口にしない限りは、処して来る可能性は低い。少なくとも私に利用価値がある間は、彼女の下に付くゴーレムたちも私を消そうとはしないだろう。

 

まぁ常人であれば、この状況から抜け出す方法を探すのだろうが……。

 

 

「ふふふっ! そんな勿体ない時間の使い方。出来るわけないよね、ミーちゃん?」

 

 

私は魔力以外の何かで動く意志あるゴーレムという、これ以上ない傑作を見せられたのだ。そしてその作者である彼女から、共同開発を持ち込まれたのだ。

 

一人の魔女として、魔道具を生み出す作り手として。

 

こんな状況で。

 

興奮しないわけがない。

 

滾らないわけがない。

 

私はただの人間、長命種などと比べれればすぐ死ぬ。どんなに頑張っても100年以上は生きられない。だからこそ、今を全力で。たとえ次の瞬間首を落されるとしても、彼女が欲したものを生み出して見せる。

 

確かに、つい昨日まではそんな意欲なんて消えていた。

 

スクロールさえ作れれば、魔道具さえ作れれば生活に困ることは無かった。私にとっては簡単なそれを作るだけで、生き長らえることが出来る。壁にぶつかり、自分より上にいる才能に嫉妬し、足掻いた結果挫折して逃げた。だからこそここで無様に生き残り、短い筈の人生を浪費してしまっていた。

 

けど、彼女が。ミーちゃんが私に手を差し伸べてくれたのであれば……。

 

 

「……気合、入れましょうか。」

 

 

期限は一週間。

 

あの鎧を着ていたゴーレムは、少々動きに独特なもの。重心の偏りのようなものが見て取れた。

 

単に歩行している姿しか見ていないが、独特の癖。本来右手に何か重いものを持つがゆえの、ほんの少しだけ傾いた姿勢が見えた。一瞬近接武器でも持っているのかと思ったが、歩き方の癖からリーチの長いものではない。見るからに重そうだし、鎧と言う防御力もある。接近戦は殴るだけでも十分な破壊力を得られるはず。

 

……つまり、あのゴーレムが持つ本来の装備は、長距離用の射撃武器。

 

 

(弓ではない、何か。魔法のようなとても威力のあるもの。“数”に言及されたことから……、連射出来る?)

 

 

私が持ち込む新型のスクロールは、確実にゴーレムたちの“基本武器”と比較される。つまり、それが基準。

 

求められるのは、『取り出し、封を開け、発射する』というスクロール発動までの必要工程を出来る限り減らし、なおかつ連射出来るもの。おそらく単発でも“許される”だろうが、始めから妥協していては面白くない。

 

 

(後は、量産手段もかな。)

 

 

彼女が口にすることは無かったが、おそらくミーちゃんが抱えるゴーレムは私の想像以上。途轍もなく莫大な数がいると推察できる。私に“こう考えさせるため”の布石であることは間違いないが、とにかく数を欲しているような様子がみてとれた。

 

つまり、私一人生み出せる以上のスクロール。新しく生み出す機構を、人の手よりもより効率的に量産できる手段を求められている。

 

かなりの難題になるだろうが……。

 

 

(今はもう、止まれる気がしない。待っててね、ミーちゃん。)

 

 

自分の手がどこまで届くのか、どこまで伸びるのか。

 

魔法を学ぶために通っていたあの大学。数えきれないほどの才がいて、私なんかあぜ道の小石かと錯覚するかのような大天才がゴロゴロいた。あの時はそれで挫折してしまったけれど……、いまはその大天才すら可愛く見える彼女が、私に手を差し伸べてくれている。

 

お金が欲しいわけではない、名を残したいわけではない。

 

自分の手で面白いもの、素敵なもの、もっと世界が広がる様なものを、生み出せるかもしれない。少なくともソレを為した人間が側にいる。

 

たとえ到達できなかったとしても……。

 

それが挑戦しない理由には成らない。

 

 

「……楽しくなって来た。」

 

 

あぁ、そうだ。後もう一つ、ミーちゃんの魔力反応を偽装して、他の魔法使いに見つかっても問題が起こらないようにする魔道具も用意しないと。

 

彼女がいつあのゴーレムを公開するか解らないし、多分こっちもある程度数を用意しておいた方がいい。時が来たら公開するのでしょうけど、それまでは隠せるようにしておかなくちゃ。

 

魔力って個々人で量や質が変わるから、それぞれが微妙に差があるようにする。まぁこれは“魔石”を少し加工するだけで済むだろうから、魔力切れの際にすぐ交換できるような仕組みにしておけば……。

 

 

「…………魔石?」

 

 

……使えるかも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

はい、ということで。

 

 

「ミクニちゃんが視察に来てやったぞ、スクラップども~!」

 

『アタクシもいますわ~!!!』

 

 

現在もウチのD1ドロイド及びD2ドロイドがお世話になっている例の村。エリンちゃんがいる村に視察に来させてもらった。

 

いや、ルーちゃんに色々頼んだのは良いんだけどね? 1週間待ってって話だったから暇な時間が出来ちゃってさぁ。ウチの部下どもが仕事しろってすっごく煩いのよ。なんでちょうどいいサボり方。もとい“別の仕事”を探していたところ……。

 

 

『艦長? そろそろエリンちゃんのいるあの村に顔を出しておいた方が良いのでは? あの馬鹿なドロイドたちを置いているわけですし。絶対に問題起こしてますわよ?』

 

『なる~! それ採用!』

 

 

となったわけだ。

 

一応上がって来た報告は全て確認済みなので知ってはいるのだが、全てのD1ドロイドたちが大なり小なり何かしらの問題行動。そして一部のD2ドロイドまでもがちょっとやらかしちゃっている、と言うのは確認している。

 

交渉ドロイドことおばさんが言うように、折角できた村との関係性は途切りたくない。派遣している側のトップがそれを謝りに行かないのは不味いだろうってことで、おばさんと一緒に遊びに来たわけだ。

 

……あ、ごめん。遊びじゃない。視察ね、視察。建前だいじ。

 

 

「あ! ミクニさん! それにキュウセンさんも! お久しぶりです!」

 

「やほー! エリンちゃん! 元気? あとおひさ! ま! まだそんな時間経ってないけどねっ! ……ところでその“キュウセン”って誰?」

 

『アタクシの型番ですわこのアホ艦長ッ! それに比べてエリンちゃんは偉いですわねぇ! ほら、ご褒美に隣のコイツが隠していたお菓子を上げましょう。』

 

「え!? い、いいんですか……?」

 

 

そういいながら、エリンちゃんに餌付けし始めるおばさん。

 

彼女が懐から取り出したのは、私が暇なときにずっと食べてる糧食のチョコバーだ。一応軍の補給品扱いで仕入れたんだけど、ドロイドには必要ないものだから実質横領品みたいなもの。味が好みだから業者買いしちゃって、冷凍倉庫1つ丸ごとソレで埋まってる奴だね~。

 

変なモノ入ってないから大丈夫だと思うし、数は十万単位で在庫があるから1本ぐらいなら問題なし。でもソレ砂糖より甘くてバケモノカロリーだから、一本丸ごと食べるのは人間にオススメ出来ないというか……。

 

あ、うん。齧るくらいならいいよ、どうぞどうぞ。味気に成るだろうし。

 

 

「……ッ! す、すっごく甘くておいしいです! こ、こんなの食べたことないです!!!」

 

『それは何よりですわ~!!!』

 

「うわ全部食べちゃった。……大丈夫かな?」

 

 

おそらくこの村では真面な甘味にありつけることが無かったのだろう。一口だけ齧った後、目にもとまらぬ速さで平らげてしまったエリンちゃん。

 

しかもその後、申し訳なさそうに、そしてもの欲しそうにこっちに視線を向ける彼女。

 

あ~、うん。そこのおばさん交渉ドロイドだから知らないと思うんだけどさ、そのチョコバー1本で3000㎉ぐらいあるんだよね、うん。その、体が大きなエイリアンとかも食べる奴だからさ、うん。私みたいにカロリーを摂取しないドロイドみたいじゃないと、複数本食べるのはやめておいた方がいいというか、後で絶対胸焼けするから……。

 

そんなことを考えながら、エリンちゃんの熱視線から目を逸らす。その代わりに視界へと収めるのは、この村で共に生活しているドロイドたち。

 

 

(……思ったより受け入れてもらってて、ありがたいね。)

 

 

派遣したのはD1ドロイド12体と、その管理役としてD2ドロイド4体。合計16体を配置している。

 

この村の人たちからすれば、金属製のゴーレムと言う完全な異物だ。やろうと思えばこの数だけでも村人たちを蹂躙できる戦力。いくら私達が彼らの“恩人”だとは言え、受け入れてもらうのには時間がかかると思っていたのだが……。

 

 

(想像以上に、馴染んじゃってる。)

 

 

恰幅の良いお母さんから水汲みの指示を受けているドロイドや、農作業に従事しているドロイド。上がって来たデータは確認済みなので知っていたのだが、実際に目にしてみると『新たな住人』としてみなされているのが解る。

 

エリンちゃんの視線が凄く痛いことだし、視察の名目を果たす。もとい彼女から逃げるため、ドロイドたちの方に向かう事にしよう。

 

というわけでD1ドロイド、はろはろ~!

 

 

『ア、艦長ダ。』

『オヒサー!』

『やほやほ。……サボりに来た?』

 

「お、元気してるねぇスクラップども! あとサボりじゃないよ、ホントだよ。」

 

『嘘だァ!』

『艦長、ヨクサボル。コレ、世界ノ常識。』

『この前D1ドロイド格納庫の隅でポーカーしてたしな。』

 

 

あ~、アレね! ウチの戦艦が母港から出向する前にしてた奴!

 

……というかお前、それ知ってるってことは参加してたドロイドだな? あの場にいた奴全員ミクニちゃんが素寒貧にして、色々とツケが残ってると思うんだけど……。支払いはいつするのかにゃァ?

 

 

『うぐッ!?』

『オマエ、借金シテルノカ……』

『幾らだ? 立て替えよう。』

 

「確か……、684万クレジットだったね。ちょっと高級な飛行ビークルが買えるお値段。君らの製造費よりも各段に高いねぇ?」

 

『『……』』

 

 

その値段を聞いた瞬間、表情を作る器官などないというのに、凄く冷たい視線を向ける2体のドロイド。借金D1は非常に肩身の狭い思いをしている事だろうが……。その辺で拾った100クレジット(100円)で大騒ぎして、調子乗りながら私に色々ひっかけようとするからそうなるんだよ?

 

自業自得ってやつです。

 

あ、返せなかったらほんとにスクラップにするからなお前。

 

 

『た、助けてくれ我が同胞たちよ……!』

 

『……さ~って! 今日は農作業の手伝い! 頑張るぞー!』

『……オレハ見張リ台デ監視ダ。気合イレル。』

 

『ちょ、待って! 行かないでッ! 頼むッ!! 頼むからッ!!!』

 

「あはー! 見捨てられてて草!」

 

 

仲間のドロイドに縋りついて泣き叫ぶ借金D1だったが、自分たちは関係ないという感じに各々の仕事に向かい出すドロイドたち。

 

額が額だし、働いて返そうにもドロイドに給金なんて支払われない。マジでどうしようもない奴だ。

 

まぁミクニちゃんは優しいので、これまでスルーしてきてあげたのだが……。その恩を忘れて私を『サボってるー!』ってバカにするドロイドは許しては置けない。

 

 

『そ、そんなッ! も、もう少し! もう少しだけ待ってくださいッ! なんでも! 何でもしますから! 謝りもします! だから! だからスクラップだけは! 廃棄処分だけはなにとぞッ!!!』

 

「あはー! 必死で可愛い♡」

 

 

んふ~! ほ~んと、人間らしくて可愛いよねぇ!

 

仲間が助けてくれないと悟った時の顔、私に慈悲を求める必死な顔。表情なんて作れるはずがないのに、声と仕草だけで表現しきってる。とってもキュートと言えるだろう。もう抱きしめたくなっちゃう!

 

まぁ、この借金野郎はスクラップにするが。

 

 

「護衛ドロイドちゃ~ん?」

 

『『『……御意』』』

 

『お、おたすけッ!?!?』

 

 

土下座して謝って来る鉄屑の後ろに突如として現れるのが、私の護衛ドロイドたち。

 

即座にその電源を切ることで借金D1を黙らせ、こちらに一礼した後、対象を船へと運び始める。まぁ流石にスクラップにすることは無いのだが……、“再教育”は実施予定。

 

彼の今後に南無南無と手を合わせながら。他のドロイドたちの様子を見るためにも、更に村の奥へと足を進めていく。

 

そうすると見えてくるのは、何故か村のマダムたちと一緒に会話しているドロイドたち。どうやらかなり仲良くなっている様で、少し離れた場所からでも楽しそうに世間話をする声が聞こえる。

 

まぁ、それだけながら問題ないのだが……

 

 

「あら、ミクニ様が?」

「やっぱり騎士様となると、お金持ちなのね!」

「たしかスクロールって、高いのだと金貨が何十枚も必要なんでしょ? 凄いわねぇ。」

 

『そうなんですよぉ、ウチのトップ。ほんと何処で稼いでるんだか……。“国”の都合上、薄給なはずなんですけどねぇ?』

 

 

知能が高いD2ドロイドが、マダムの皆様と楽しそうに会話する姿が。

 

うん。いやほんとにそれだけならいいんですよ。ウチの母国である連合国が薄給というか、ドロイドに給金払っていないというか、そのせいで私が横領とか色々やりまくってるのを“暗に示す”ぐらいは良いんですよ。

 

でもお前、“スクロール”の件は秘匿情報扱いにしてたはずだよな……?

 

 

「ここから一番近い町だと……、『グレズナ』かしら? そこで買ったの?」

 

『えぇえぇ、そうみたいです。何でも店主さんと仲よくなったみたいで、新しいスクロール? ってのを一緒に作るみたいなんですよ。』

 

「は~! 凄いわねぇ! 騎士様って最初会ったと時は、こう、キリっとしたお顔為されてたけど、話している所見たら……。なんかこう、抜けてる感じの方だったでしょう?」

「ちょっと悪いけど、そこまで賢そうな方には見えなかったわよね。」

「うん。イメージ違うなって……。」

 

『わかる~!!!』

 

 

私の部下だというのに、思いっきり同意しやがったD2ドロイド。

 

そんな彼……、いや彼女か。その真後ろに向かって、ゆっくりと忍び足で近づいて行く。どうやら私の愚痴というか悪口が溜まっていたようで、矢継ぎ早にどんどんと喋っていくが……。その周りで話を聞いているマダムたちの顔色が、徐々に悪くなっていくのには気が付いていない。

 

ヒートアップするD2ドロイドを哀れに思ったのか、マダムの一人が止めようとするが……、止まらない。疑問を抱かず、未だに喋り続ける彼女。

 

もう、真後ろにいるのに……。良いのかなぁ?

 

 

『それでね、それでね。本当に酷いんですよ! 今日だって急に視察の予定いれちゃって! もう朝から大慌てなんです!』

 

「へ~、そうなんだ。それは大変だねぇ?」

 

『解ります!? 急いで鎧磨いて、D1達に声かけてしっかりさせて、他のD2たちの情報の共有して! 数日前に言ってくれたらもっと猶予あったのに! なんで当日連絡にしちゃうんですか、って話です!』

 

「うんうん、それは“悪かった”ねぇ? ところで、そんなひど~い相手は、一体誰なのかなァ?」

 

『そりゃミクニ様……、ミクニ様ッ!?!?!?』

 

 

うんうん、テンプレのような驚き方をどうも。

 

いやね、私もトップですから愚痴や陰口くらいはスルーする度量があるんですよ。確かに今日急に視察の予定いれちゃったわけだから、君たち管理側に負担がいって悪いなぁって気持ちがあるんですよ。だからそういう愚痴に関してはスルーしてもいいんだけど……。

 

お前、口外しちゃダメな『スクロール案件』の話。マダムたちにしたな? アレ一応、新装備開発の枠組みだから極秘扱いって通達したよな?

 

 

『…………あッ!!!』

 

 

賢くなったD2とはいえ、お馬鹿なD1同様やらかす時はやらかす。

 

今日は運よく話の通じるマダムたちがいる場所での情報漏洩だったけど……。

 

 

『ご、ごめんなさぃぃぃ!!!』

 

「あはー! 謝れて偉い! とまぁそう言うことで。あんま言いふらさないようにしてくださいね、マダムの皆様?」

 

 

そう言うと、コクコクと高速で頷いてくれる彼女達。

 

うんうん、なら良かった! ここで頷いてくれないと防諜の為に“行方不明”になってもらう必要があったからねぇ? まだ形にすらなってない話だけど、私たちは『軍』なわけですから。締める時は締めないといけないんですよ。

 

……ま! ちょうどいい機会だったのかもね!

 

この村は行ってしまえば私達の影響下にある場所! 話せばわかってくれる人たちばっかだし、漏洩しちゃってもカバーが効く! 今後のことも考えて、より気をつけるようにしませんと!

 

 

 






〇ルーちゃん(ルケト・魔道具屋の店主・魔女)

今回は自分の意思で急激に距離を詰める形となったが、そもそも距離の詰め方が異様に速いタイプ。白髪赤眼戦艦艦長ことミクニの際の詰め方が100とすれば、普段は95くらい。互いの好物を公開した時点位で『親友』判定を与えてしまう。

その急激な詰め方のせいか人がよく離れて行ってしまい、友人と言える存在は現在ミクニのみ。取引先などの知り合いはいるが、既にあちらから奇人扱いされ必要以上の会話をしてもらえない。

なお、生命の危機から脱するために近づいたのにも関わらず、楽しく会話し自身に仕事を任せてくれた事などから、ミクニのことを親友だと思っている。

普段無口気味なのは、普段誰とも喋っていないから。喋り始めると一気に話し出すくらいには会話に飢えている。面倒見がいいというよりも、誰かと会話したいだけ。なので長々喋っても話を聞いてくれるミクニのことを親友(etc

勘の鋭さと分析力が売りの魔女だが、寂しさに起因する精神的デバフにより大いに弱体化するタイプ。これまで燻ってたのは『このまま一人で寂しく死ぬんだぁ!』という状態だったから。

つまりシスター(大親友)を手に入れれば最強と言うわけだな……ッ!

あと死ぬほどオバケが怖い、嫌い。あんな非現実的な存在がこの世にいて良い筈がないと思っている。アンデッドは殺せるからまた別、でも怖い。





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