『ぶっころッ!』
『だから撃つんじゃなくて逃げろってバカ!』
『ひぃ~ッ!』
「GYaaaAAAAAA!!!!!」
周囲に響く悲鳴のような電子音と、巨大生物の咆哮。
わちゃわちゃと騒ぎながら逃げ出すドロイドたちに、片目を潰された怒りを晴らすため突撃するドラゴン。傍から見ればコメディ風味の怪獣映画そのものであるが……。実際に逃げているドロイドたちからすれば、たまったものでは無かった。
『ブラスターが効かないなんて聞いてないぞ!』
『オレモ! オレモ!』
『も、もっと大口径の奴だれか持ってないの!?』
『ある訳ねぇだろ俺ら最安値のD1ドロイドだぞ!』
何せ彼らの主武装である、ブラスターが通用しないのだ。
一応目玉に当たった際はドラゴンにダメージを与えることが出来たが、それ以外の場所は不可能。敵の持つ特異な鱗によって、すべてが跳ね返されてしまっている。
そして運が悪いことに、彼らが持つブラスターは最安値のドロイドに相応しい安価な量産品のみ。『一撃で人間やドロイドを死に至らしめる』威力は保証されていたのだが、流石にドラゴンまでは適応外。より大口径なものや、特殊弾頭を使えるブラスターであれば貫けたかもしれないが、現状彼らに出来る有効な攻撃手段は0だった。
『くッ! こうなるんだったら爆弾もってこれば良かったッ!』
『え~、アレ申請すごく面倒じゃん。』
『ワカル~』
『まぁ俺ら間違えて起動して、自爆するもんな。』
『呑気かお前ら……、ってまずッ!?』
全力で走りながらも、普段通りの能天気さで雑談に興じるD1ドロイドたち。
しかしながら相手がそれに応じてくれるわけがなく……。
背後に気を配っていたドロイドが叫んだ瞬間、全員の視界センサーが後方へ。そこに映し出されるのは、胸部に限界まで空気を取り込み、今にも“何か”を吐き出そうとしているドラゴン。
「GGGRRRRaaaaaAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!」
『よ、避けろーッ!』
『わぁ、火。』
『あつぅッ!?』
一気に吐き出される、真っ赤な炎。
彼らに搭載されている熱源センサーが一瞬にして白飛びし、一番後ろにいたドロイドが炎に呑まれていく。その大半が何とか前へと飛び、逃げ延びることが出来たのだが……。背後から聞こえる、重い金属の音。
『お、おわーッ! あ、頭! 頭だけにッ!』
『うっわ体全部溶かされてて草』
『草じゃないだろ馬鹿ッ!』
振り返ってみてみれば、頭部パーツのみになりわちゃわちゃと騒ぎ始めるドロイドが。
どうやら人格コアなどの重要部分は溶かされることが無かったようで、会話だけなら特に問題なし。あまりにも滑稽な様子に仲間から鼻で笑われているが……、首から下のすべてが一気に溶かされたことは事実。当たり所が悪ければ即死だっただろう。
『今助けるから待ってろッ! 支援頼むッ!』
『りょー!』
『おい、お前。やっていいってさ。』
『何!? ならば……! ころせぇぇぇー!!!』
『ハイ! 仕事シマス!』
殺意の高いドロイドを筆頭に、再度ブラスターを撃ち込み始める彼ら。
仲間の頭部だけでも回収しようと飛び出した同胞を支援するための攻撃である。戦術ドロイドなどからの支援も受けていないため、狙いが集中せず様々な方向に飛んで行く光弾だったが……。敵ドラゴンからすれば、その怒りを更に掻き立てるモノだったのだろう。
何せ先ほど自身の目玉を抉った攻撃と、同じ。体に当たれば跳ね返し無効化できるものの、偶々顔付近に着弾。残ったもう一つの目玉に当たりそうになれば……。
「GYU、GYURUWaaaAAAAAAAA!!!!!」
『うわめっちゃ怒ってるッ!』
『撃て撃てー!』
『支援だー!』
『……これ撃たない方が良かったんじゃ?』
『よしッ! 今助けるぞ!』
『あ~、後ろ。大丈夫?』
『え? ……あぁ、なるほど。』
「GGGRRRRaaaaaAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!」
振り返ってみてみれば、大きく腕を振り上げているドラゴンが。
そして彼が納得の言葉を吐いた瞬間、一気に振り下ろされるソレ。
破砕音と共に様々なパーツが弾け飛び、救助対象者だったドロイド諸共、完全に圧殺されてしまう。
『Oh……。』
『火だけじゃなくて、パワーもあるねぇ。』
『……これ救援部隊、間に合うか?』
『全員死にそう』
『もう助からないぞ⭐︎』
『うぉー! 仲間の敵! コロスコロスコロス!!!!!』
『ハイ! 仕事シマス!』
『うん、無理! 全員てったーい!!!』
『『『らじゃらじゃ』』』
ドロイドの設計から、全身を圧殺されたとしても、人格コアという最重要パーツさえ回収できれば、復帰できる可能性がある。
しかしながら先ほど救援に走ったドロイドはプレスされており、敵ドラゴンは明らかに怒り狂っている。アレと同じような結末は迎えたくないドロイドたちの意見が一致し、再度の撤退を開始される。
『拒否する! トカゲなんぞ滅殺処分だー!!!』
『ハイ! 攻撃シマス!』
『え~っと、電源offのボタンは……、コレか。』
『何ッ! はなせぇe……』
『これでヨシ。じゃあ仕事ドロイド。そっち足もって、俺頭。』
『ハイ! 仕事シマス!』
煩いドロイドの電源を切り、二人係りで担いで逃げ出すドロイドたち。
その他多くが一斉に後方へと退却し始めるが……。それを黙って見過ごせるほど、敵は優しくは無い。
木々をその重量で押し倒しながらドロイドたちを追いかけるドラゴン。そして同時に行う、大きな呼吸。先程よりもより多くの息を吸い込んでいることから、予測されるのはより広範囲のブレス。
『……アレ、ヤバくね?』
『えっと、俺らよりあっちの方が足速いから……。』
『0距離で撃とうとしてますねぇ』
『わぁ、全滅しそう。』
『ひぃぃ~!!!』
「GGGRRRRaaaaaAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!」
ドロイドたちが足の回転を限界まで上げ何とか逃げようとするが……。ドラゴンが行うのは、軽い跳躍。
羽を広げ飛距離を伸ばすことで、ほぼ0距離まで接近。
そして着地とともに放つのは、最大出力のブレス。
全員の視界が真っ白に飛び、全てを焼き尽くす火炎が放たれるが……。
『ふぃ~! 何とか間に合ったかッ!』
彼らの眼前に出現する、青白く光った膜。
バトルドロイドシリーズが誇る一つの終着点であり、D1ドロイド、D2ドロイドたちと隔絶した実力を持つ存在。
『D3ドロイド様のご到着、ってなァッ!』
◇◆◇◆◇
『おぉー!』
『D3だ! D3ドロイドだ! これで勝つる!』
『よくやった! よくやったぞお前!』
『ヨシヨシしてやるー!』
『あ~、一応お前らよりも階級上なんだけどな、オレ。もっと敬えよ。……コイツらと一緒にキャッキャ遊べる艦長サマの気が知らねぇなぁ、オイ。』
頼もしい味方の救援に大喜びするD1ドロイドたち。
けれどその態度は救援に駆けつけた味方に対するものではなく……、かなり尊大なもの。これがミクニなどの高位者であればまだ良かったが、彼らD1ドロイドたちは最下層の存在。決して上司に対する態度では無かった。
カッコつけて登場したは良いが、助けた味方が少々アレ。
そんな状況に漏れ出そうになる溜め息を抑え込みながら、D3ドロイドが戦闘へと意識を整えていく。
(いつも通り弾丸ぶっ放して終わり、だったら良かったんだが。……どうするか。)
巨大なエネルギーシールド。
今もなお吐き出される相手の火炎。その全てを遮断し、背後にいるドロイド達を全て包み込むような青い膜。自身を起点として生じた安全地帯の中で、彼が思い出すのは今回の指令。
(出来るだけ無傷で殺してくれとは、難しいことをおっしゃる。ま、あの人の場合『出来る』ことしか言わねぇのが救いだろうが。)
脳裏で彼が再生するのは、適宜全体へと共有されているD1ドロイドたちの映像記録。
先程まで逃げ回っていたドロイドや、破壊されて停止したドロイドたちが直前まで見ていたモノ。それを超高速で閲覧、取るべき行動を選んでいく。普段の彼であればこのようなことはせず、ただひたすらに弾丸を打ち込むという『D3ドロイド最強の矛』を前面に押し出した戦い方をするのだが……。
(通常ブラスターの攻撃を無効化。事前にそう聞いてちゃ馬鹿な真似は出来ねぇ。折角オレに上物な仕事が回って来たんだ。120%達成して“次”を持って来てもらわねぇとなぁ?)
そう考えながら、右手に埋め込まれたガトリング砲をゆっくりと回転させていく。
そもそも彼らD3ドロイドと言うのは、『拠点防衛』が主な任務となるドロイドである。高い密度と防御力を誇る“エネルギーシールド”と、高い連射力と破壊力を誇る“ガトリング砲”。
その両者を十全に扱えるのが彼らではあるが、欠点として消費電力量の多さがあった。
つまり、常にエネルギーを補給できる拠点以外での戦闘。特に野外での戦闘では『稼働時間の短さ』という欠点が浮き出てしまい、あまり外には出してもらえないという特徴があるのだ。
(物静かな奴とか、家が好きな奴なら別にいいだろうけどよぉ……。オレは自由に動き回りてぇ。ほんとはあの『改造馬車』ってやつに立候補したところだったが……。クジに外れちまったせいで他の奴に奪われちまった。)
だからこそ、彼は“上”が求める以上の仕事を為さなければならない。
カンペキに熟し、評価され、新たな仕事にアサインされる。彼らのトップであるミクニの性格から、キャラが立っていたり、優秀な奴にほどより新たな仕事を投げつける傾向があることはこのD3ドロイドも知るところ。
現状彼らドロイド軍団は未だ大規模な作戦行動は取っておらず、その予定もない。今後どうなるかはわからないが、少なくともD3ドロイドからすれば、拠点防衛以外の任務は皆無。評価を稼ぐ場がなかった。
そんな時、ようやく手に入った絶好の機会。
『気合入れねぇワケ、ねぇよなぁッ!!!』
シールドを一時的に解除し、ガトリング砲をその外に出すドロイド。
行われるのは、火炎に向かっての精密射撃。
『鱗が固くても、口の中は無防備ってのは相場が決まってんだよォッ!』
「GYaaaAAAAAA!?!?!?」
火炎を突っ切り、その喉の奥へと着弾したのだろう。何が起きたのか理解できないといった叫び声をあげながら、ブレスを中断するドラゴン。
そしてその隙を逃さずに、更にガトリング砲の回転数を上げる彼。
撒き散らされた火炎のせいで、熱源センサーは使用不可。同様の理由で通常のカメラも不明瞭。故に使用するのは……
『音だよなぁッ!』
振動によって生じる波形を分析し、即座に相手の場所を知覚。
その輪郭を沿うように、弾丸を“外して”いく。
『喚け! 慄け! 命乞いをしろ! 恐怖ってものを教えてやるぜェ!!!』
毎秒300発の改造ガトリングが、線となってドラゴンを追い詰めていく。
威力は“D1ドロイドのブラスター”程度に抑えてあるが、その弾速。その弾幕はそのまま。まさに恐怖でしかない光景が広がっていく。真っ赤な線が帯のように広がり、相手の防御である鱗ギリギリを沿うように撃ち込まれていく。いくら効果が無いモノであっても、防げるモノであっても。『一度目を抉られた』経験が、その精神を削り取っていく。
そう、“敢えて”当てない。
彼に乗せられたプログラム。D3ドロイドの能力をもってすれば、全く同じ個所に全ての弾丸を当てるなど容易。そして相手の堅い鱗を貫き、穿つことも出来るだろう。
威力を引き上げれば、同じ個所に途切れることなく叩き込めば、壊れないものなどない。事実、“元の銀河に存在する特殊合金”も数を打ち込めば溶けて弾け飛ぶことがわかっている。
彼らの放つ赤い弾丸は、光であると同時に、熱エネルギーの集合体なのだ。喰らい続けて崩壊しない存在など、物理法則に反する存在など、いるわけがない。
(だがそれじゃぁ、内臓に必要以上のダメージを与えちまう。艦長サマのオーダーは達成できねぇ。だからこそアイツに任せるしかねぇわけだが……。)
「GYU、GYU!!!」
『とぉ! たっぷり怖がってくれた見てぇだなァ、オイ!』
自身の目を抉った攻撃が、絶え間なく降り注ぐ状況。
ガトリング砲という弾丸の雨に恐怖を覚えたのだろう。何処か怯える様な声を出しながら、両翼を展開。空に逃げようとするドラゴン。
そんな相手を追うように、D3ドロイドも弾丸を放って行くが……。撃ち落とす様な野暮なことはしない。敢えてガトリングに回すエネルギーを減らし電力を節約することで、この後の工程への余力を残していく。
そんなとき、一瞬だけ彼らの上を通り過ぎる影。
『あッ! 飛行機! 飛行機だ!』
『戦闘機かッ!』
『なるほど! アレで撃ち落とすんだな! ドッグファイトだ!』
『ばーか、ちげぇよD1ども。オレたちにはもっと、頼もしい奴がいるだろ?』
敵をより上空へと追いやりながら、笑みを浮かべる様な声を出すD3。
戦場を進むバトルドロイドたち、いやそれ以前から言い伝えられてきた歩兵たちの『戦場の女神』。兵を進む道を切り開き、戦場を支配する大火力投射。陸戦火力における要と言うべき存在。
それが、砲兵。
『さぁって、“女神”サマよォ? オレから主役を取り上げるってんなら、馬鹿な仕事はしねぇよなァ!』
◇◆◇◆◇
『だから自身は女神ではなく、神の僕だと何度も言っているのですが……。はぁ、まぁ良いでしょう。』
どこか修道服を思わせる様な装甲で身を飾った女性型ドロイドが、ゆっくりと息を吐き出す。
その右肩に備え付けられた巨大な砲台は彼女たちの役目を表すモノであり、その左肩に染められた赤い意匠は部隊の頂点であることを示すモノ。そんな彼女がゆっくりと耳元に指をあてながら、通信を開く。
『こちらスカーレット砲兵師団、師団長の“シスター”です。大隊長? 聞こえておりますか?』
『あぁ勿論レディ。飛ぶにはもってこいの天気だ。まぁ、ちょっとばかし大きなトカゲが飛んでるのは、気に食わないがね?』
『それは何より。……座標を。』
彼女が言葉を交わすのは、以前ミクニから『大隊長』と呼ばれていたドロイド。戦闘機のパイロットドロイドであり、今回のドラゴン討伐任務に急遽駆り出された存在だ。
まぁ彼からすれば久しぶりの空であることから一切不満は無かったのだが……。飛行機乗りらしいウィットに富んだ会話を挟みながら、彼女に座標を送っていく。
『……なるほど。これでしたらそう調整は要りませんわね。』
『そうかい? なら良かった。ならこのまま高度を維持して観測を続け……』
『いりません。』
大隊長の言葉を、強く拒否するシスター。
『貴方もご理解為さっているでしょうが……、神の意思をより世界に届けられるのは、我ら『砲兵』です。空を飛び陸に足を付けぬ軟弱モノとは“規格”が違うのです。此度も、我が神がおっしゃったが故に手を借りてることをお忘れなく。』
『……りょーかい。だがこっちも艦長から指示を受けてるんでね? 待機だけはさせてもらうよ?』
『…………いいでしょう。ではそこから見ていなさい。我らが神の御威光を。』
かなり不満げな声を出しながらも、相手の言葉を受け入れ通信を切る彼女。そして相手が声を聞いていないと理解した瞬間、“またやってしまった”と大きくため息をつく。
これは彼女、“シスター”と名付けられた砲兵ドロイドだけの話ではないのだが……。
ドロイドたちには、個々の性格というより、その“シリーズ”ごとに大まかな好き嫌いというモノが存在している。
ミクニ達の製造元であるンャチタナア・オートマタ社を敵視するあまり、ドロイドにもそのような性質が生まれてしまった交渉ドロイドの“おばさん”などがいい例だ。
(同じ『ミクニ様』という神に仕える身、ならば仲良くした方がいいのは理解しているのですが……。儘なりませんね。)
そして彼女たち砲兵ドロイドと合わない存在。正確には一方的に敵視してしまうのが、『大隊長』のようなパイロット系ドロイドである。
古来より砲兵は戦場を支配する大火力兵器だったが、それも過去の事。航空機の発明によりその意義は年々薄れてきており、現代日本でもその配備数は年々減少傾向にある。これはドローンなどのその他の要因も重なって来るのだが……。
砲兵ドロイドたちは、こう考えたわけだ。『パイロットたちが自分たちの仕事を奪っている』と。
(我らも観測機という情報を伝える“目”が無ければ神の意志を伝えることが出来ませんし、彼ら戦闘機乗りも出来る事には限りがあります。故に良い塩梅を見つけ、線引きをすべきなのでしょうが……。)
そんなことを考えていた彼女だったが、すぐに思考を整理。右肩に乗せた巨砲を操作しながら、観測データを打ち込んでいく。
『シスター、変更はございましたか?』
『いえ、何も。座標及び投射タイミングは私に合わせてください。そして事前に伝えたように、此度は実体弾を使用します。』
『畏まりました。』
側に控えていた同様の砲兵ドロイドに指示を出すシスター。
本来彼女たちはその軍団規模、師団に相応しいだけの数をもって行動するのだが……。今回ミクニから求められたのは2名だけ。それゆえにより指揮機ゆえに高性能であるシスターと、練度の高いお付きの1名を連れてきた形になる。
『では、始めましょう。』
シスターがそう言うと、修道服を思わせるその装甲が、開いて行く。
6つに展開したソレは深く地面に突き刺さり……、固定。完全な足場が出来上がり、彼女達の肉体がほんの少しだけ、宙に浮く。
『観測データ確認。修正完了。対象、敵飛翔物体。』
『同期完了。』
『よろしい。』
手順を踏みながら、彼女たちの脳内で数式が汲み上げられていくと共に、右肩に備え付けられた巨砲もうねりを上げていく。
今回装填されるのは、一本の杭。
本来ならばビーム砲対象者を焼き尽くすために存在する彼女が選んだ、電磁の罪槍。レールガンだ。これならば対象を焼き殺すことはなく、その翼。“被膜”だけを撃ち抜くことが出来る。
『翼をもって飛ぶのであれば、それを捥いでしまえばよい。我らが神はそうおっしゃっています。我が物顔でミクニ様の領空を飛ぶその大罪、身をもって償いなさい。』
『弾丸装填完了。いつでもどうぞ。』
『えぇ。では……。これが、神の怒りです。』
彼女がそう呟いた瞬間、大空を穿つ2本の鉄杭。
寸分たがわず放たれたソレは確実に龍の被膜を貫き……、一瞬だけ生じる、小さな穴。そしてそこを起点に、爆裂。大きな穴を生み出す。
大空に飛び立とうとしたドラゴンはバランスを崩し、そのまま地面へ。後は現地にいるD3ドロイドがクッション役となり、シールドを展開することで“頭部以外”を適切に保護する。
脳だけを地面にたたきつけることで、確殺。
それがミクニの策だった。
『……お疲れ様です、シスター。着弾と、死亡。そして検体確保の報が現地のD3ドロイドから届いております。』
『それは良かった。では、私は我が神にご報告をしてまいります。貴女あこの場で待機を。必要あらば再度砲撃をなさってください。』
『畏まりました。』
〇スカーレット砲兵師団
砲兵ドロイド。ンャチタナア・オートマタ社製、『DCA-AT』シリーズによって構成された砲兵師団。
そのすべてが砲兵ドロイドで編成されており、そのトップにハイエンドモデルである『DCA-H.AT』が指揮を取る形となっている。ビームタイプの砲弾と、レールガンタイプの実体砲弾を使い分けることが出来、戦場に神たる指揮官の攻撃命令をいち早く届けることを担っている。
スカーレットは識別カラー。元々はレッドだったが、ミクニが『女の子しかいないし、スカーレットにしたら? 可愛いし』と発言したため、現在の名称になった。
〇高位砲兵ドロイド DCA-H.AT-9172 シスター
ンャチタナア・オートマタ社製の砲兵ドロイド、そのハイエンドモデル。
元になった『DCA-AT』シリーズはいわゆる砲兵ドロイドの後期型であり、最新鋭のモデルとなっている。元々はD2ドロイドに2門の砲台をくっつけたようなドロイドだったが、エネルギー不足や発射時にバランスを崩しひっくり返るなどの事故が多発。より洗練されたモデルとして開発されたのが本機だ。
砲台を減らすことで安定性を取りながらも、D2ドロイドよりも高度な人格コアとプログラムを入れることで、命中率を大幅に向上。また修道女を思わせる様なボディは装甲版の役目を熟しながら、不安定な足場でも杭として突き刺すことで固定が可能という特性を持っている。
ただ、製作者が設計時にふざけて『昔は砲兵のこと戦場の女神って言ったらしいよ』、『指揮官を神様と思うくらいには言うこと聞いてね』などの命令文を打ち込んだ結果、全員が服装の通り修道女のような精神性を持つに至っている。……え? 装甲の設計もそいつが原因? 確信犯?
そのハイエンドモデルである『シスター』。
彼女の名前はミクニ命名であり、その服装から安直に名付けられている。『え~! その装甲可愛いじゃん! 見るからにシスターって感じ! 師団長ちゃんって呼ぶのも味気ないし、今度からそう呼んでいい? いいよね! あはー!!!』な感じ。
ただ彼女からすればドロイドが名前を貰う、“モノ”であるはずの存在が名前を貰うという途轍もない事態であり、それも『神である指揮官』から頂いたモノ。そのため忠誠心が上限突破しヤバいことになっていたりする。
ちなみに彼女もその配下も大体狂信者。