異世界バトルドロイド軍団   作:サイリウム(夕宙リウム)

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22:偽装用魔道具

 

 

「それで逃げて来た、と。」

 

「わ、悪くない子なのは解ってるんだけどね……?」

 

 

あのシスターっていう狂信者ちゃん。別に悪い子ではないんだけど……、ちょっとこう、付き合いにくさがあるというか。

 

ウチで一番狂っているマッドと比べると、各段に扱いやすい子であることは確かだ。話は通じるし、理性は残ってるし、命令はちゃんと聞く。ほんの少し独自判断で動き過ぎちゃうところや、パイロット系ドロイドたちのソリが合わない欠点こそあれど、私の軍団の中では上から数えた方が早い有能タイプ。

 

少なくとも、マジで何やらかすか解らないD1ドロイドたちと比べると、各段に良い子なのだ。

 

 

(けどまぁ、矢印がちょっと……。)

 

 

カタログを見る限り、指揮官に対する念が強いタイプのドロイドであることは私も知っていた。だからこそと言うべきか、自身の懐に入れるためにも、初対面であだ名付けて可愛がってあげようとしたのだ。

 

何せ後期型なだけあって砲兵系ドロイドの中では各段に性能が良いし、見た目も女性型で可愛げがある。使える手札は多いことに越したことがないし、陸上戦力の枠組みの中では“砲兵”の重要性は段違いだ。

 

だからこう、スキンシップ多めで挨拶したんだけど……。それがまぁ、駄目だったんだろうね。

 

 

「なんというかこう、“種族”的に『ラブ』が強い子でね? 初対面でやり過ぎたのが、脳みそが色々ぶっ壊れてる可能性があるのよ。なんか若干バグ吐いてるっぽいし……。」

 

「ばぐ……?」

 

「あ~、病気みたいなもん。私にとっては好ましい変化だし、“私兵”にはちょうどいいから放置してるけど……。」

 

 

シスターを始めとした砲兵ドロイドたちは、こうやって“逃げても”特に変な行動を起こすタイプではない。

 

連合国や人間に対する忠誠心みたいなのが若干私に向いていることを除けば、普通のドロイドちゃんだ。マッドのように意味不明な行動をしたり、勝手な独自解釈で魔物を死体を繋ぎ合わせて無残な死体を作ったりもしない。あの場で逃げて放置したとしても、勝手な行動をしないのが彼女達だ。

 

まぁそのせいで逃げて、問題を後回ししているようなもんだけど……。

 

 

「ふふ、ミーちゃんも大変なのね。」

 

「あんま笑い事じゃないけどね~。……んでルーちゃん。急に来たようなもんだけど。体調とか大丈夫? ほら、徹夜のダメージとか。」

 

「ある程度回復したわ。未だ万全とは言えないけれど……。」

 

 

とまぁそんな感じに、ルーちゃん。魔道具屋の店主であるルケトと言葉を交わす。

 

元々彼女と会談を行う予定はあったのだが、その体調を気遣い少々後に回す予定だった。ただまぁウチのシスターが暴走してしまい、あの場から逃げて頭を冷やさせるためにも、ここにやって来たわけだ。……あの子が多少距離を置いたぐらいで頭が冷えるとは思わないけど。

 

……うん! 現実逃避だね!!!

 

 

「あ! そうそう、ちょうどさっきね? ウチの近くにドラゴンがやって来てたのよ。」

 

「……ドラゴン?」

 

「そそ。“ゴーレム”たちのおかげでぶっ殺せたケド。普段近くじゃ見ない奴でね? ルーちゃん知ってる?」

 

「そ、そんな軽く倒せたなんて言える様な存在じゃないと思うのだけど……。ふふふ、流石ミーちゃん。私に退屈なんか感じさせてくれないのね。」

 

 

かる~く話題を振ってみると、静かに笑いながら朗らかな笑みを浮かべる彼女。

 

……反応からしてやはり、この世界でもドラゴンと言うのは一定の強者であり、人間にとって厄介な存在であることが見て取れる。ついでに言えば、『ドラゴンが出た』という内容にも驚いていたため、この近くにはあまり生息していないのだろうということも。

 

 

「……アレかしらね。ほら、この前凄く大きな“地震”が起きたでしょう? アレのせいで幾つか魔法薬が駄目になったのだけれど……。アレでドラゴンたちの住処に移異常が起きたか。もしくはその原因を探すために外に出たのか。考えられるのはこの辺りかしら。」

 

「ァ、ソナノネ。」

 

「…………なんでそんなに申し訳なさそうな顔してるの?」

 

 

い、いやだってその地震。確実に私達のですし……。

 

そ、そうだよね、うん。あれだけの巨大物体が落下したわけだから、それ相応に揺れてますよね、うん。る、ルーちゃんの魔法薬みたいな破損のことも考えたら頭痛く成って来るな……。う、うん。もう全部知らんぷりしよ!

 

 

「あ、それと。無いとは思うけれど……、『魔王軍』なんてのも考えられるわね。」

 

「魔王軍?」

 

「彼らの勢力圏からは遠いけれど、ドラゴンは強くて空を飛べるでしょう? 絶対に帰って来れる斥候として放ったとか。」

 

 

ルーちゃんの口から出た言葉に、過剰に反応し過ぎないよう表情と声を作って聞き返せば、そのような言葉が返って来る。

 

……マ? この世界、魔王軍とか楽しげな集団いるの!? 何それ! 何それ!!!

 

る、ルーちゃん! も、もっと情報頂戴! その! その話もっと聞きたい! ほ、ほら! 私ゴーレムとか作るの忙しくて! 世界情勢とかそういうの! あんま調べてなかったから! ほら! Hurry! Hurry!

 

 

「え、あ、うん。まぁ確かにこの辺りじゃあまり聞かないものね……。知ってるとは思うけど、魔王軍は『魔族』と呼ばれる魔物を操れる者たちによって構成された軍団ね。国が情報を操作してるのか、あんまり詳しくは知らないのだけれど……。人類種の敵と言って相違ないわ。」

 

「うんうんうんうん! だよねだよねだよね!」

 

「く、首どうなってるの……?」

 

 

え!? 単なる高速ヘドバン肯定頷きだけど!?

 

 

「あ、そう……。まぁそれで、敵対してるのが彼らね。何でも魔王って呼ばれる親玉がいて、かなり昔に人間に対して宣戦布告したらしいわ。それで、今も戦っているってわけ。」

 

「はえー!!!」

 

「確か、戦線があったのは北の方。この国の反対側だったかしら? 長年膠着してるそうだし、情報もあまり入って来ないからあまり知らないのも無理はないわね。」

 

「だよねだよねだよね!」

 

「だからそれは何……? あぁ、でもそう言えば。大学にいたころ、校内に擬態した魔族がいたとかでかなり騒ぎになっていたわね。もしかするとこの町にも潜んでいてもおかしく無いかも。」

 

「あ、ふ~ん。」

 

「……急に落ち着いたわね?」

 

 

あはー! まぁそんなこともあるって!

 

んでお話を纏めると……。魔物を操る力と擬態能力を持った人類の敵ってことだね! なるなる把握した! とりあえず現状の仮想敵国に追加しておこっと! ……この町に潜んでたりするのなら、ウチの“護衛ドロイド”とかで拉致して、『マッド』に解剖させるとかアリかもな。魔物操る力とか滅茶苦茶興味深いし。

 

言語喋れるみたいだから、“連合国法”に則ると魔族も人間扱いでちょっとダメ寄りな選択だけど……。うんうん! あのマッドなら“カンペキ”な治療を行ってくれるからね! そこらへんは問題ナッシング!

 

 

「うんうん! 大体わかった! ありがとルーちゃん!」

 

「えぇ、どういたしまして。色々とよく解らないけれど、役に立てたのなら良かったわ。……あ、そうそう。これを渡しておかないと。」

 

 

そう言いながら彼女がカウンターから取り出すのは小さめのネックレス。

 

手渡してくるので、少し触ってみるが……。どうやら飾りの部分が開閉式になっており、中に何かを入れることが出来るようだ。というか、嵌め込む感じ? なんか内側に薄っすら基盤みたいな線が見えるし、もしかしてこれ魔道具?

 

 

「えぇ。ほら前に言っていたでしょう? 貴女の体質。魔力が無いのを誤魔化すための魔道具。……はい、これを入れてみて?」

 

 

手渡されるのは、小さな紫の破片。材質から見て、おそらく魔石の加工品。もしくは単に砕いたものだと思われるが……。

 

とりあえず言われた通りに嵌め込んでみると、一瞬だけ光る魔道具。再度開け閉めしてみるが、更に何か起こる様な事はない。……ルーちゃん、これもう起動してるの?

 

 

「そうよ。砕いた魔石を入れることで、装備者の魔力を偽装させるネックレス。出力は控えめで、毎日交換が必要だけど……。これでもし魔法使いに見つかっても違和感を覚えることは無くなるはずよ。」

 

「おぉ! ありがとルーちゃん!」

 

「ふふ、どういたしまして。」

 

 

いやほんと、ルーちゃんやばいよねぇ。

 

なんか魔法銃1週間で完成してきちゃうし、こういう偽装用のものまで作れちゃう。それに、このネックレス……、結構センスがいい奴だ。あまり派手過ぎないから、普段ずっとつけていても違和感がない奴。

 

本人はなんか大学で全然上手く行かなかった、って言ってるけど……。マジでこの星のトップとかそういうレベルじゃないのかね? 初手で出会えたので私の運全部使い切っちゃったかも! まぁもしそうならD1ドロイドたちの徴収するけど!

 

 

「いや、ホント感謝しかないや! ……マジでどうやってお返ししたらいい? 魔法銃とかマジでヤバい奴だし、何かしらお返ししたいんだけど。」

 

「ふふ、いいのよ。私達の仲じゃない。」

 

「ま、まだ3度しか会ってないんだけどなぁ……?」

 

「でも、そうね……。もし何か望むとすれば、ミーちゃんたちが倒したって言うどのドラゴンの素材。いくらか分けてくれるかしら? 魔石もそうなのだけど、内臓が良い薬になるのよ。確か最上級の“覚醒薬”になったはずよ。」

 

 

……何、その聞くからにヤバそうな代物。

 

だ、ダメだよヤクは! 連合国でもそういう怪しいお薬はご法度なんだからね! まぁウチの高官どもが普通に使ってて、そいつらが溜め込んでたのを奪って裏市場に流したことはあるけど……。そ、その時も買い取った悪人全員検挙して、私の手柄にしたんだからね! 勘違いしないでよね!

 

 

「大丈夫よ。単に一月ほど睡眠せずに仕事できるようになるだけだから。ほら、魔法銃に埋め込む新しい魔法陣を考えなきゃでしょう? 今は泡が出るだけだけど、より改善すればファイアボールぐらい……!」

 

「いやそこは普通に寝よ。ほんとに。」

 

 






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