(にしても、コレが魔力をねぇ?)
そんなことを考えながら、ルーちゃんがくれたネックレスを触る。
魔石嵌め込み型の魔道具で、微弱な魔力を出すことで『その人物の魔力』と誤認させるものだ。何でもこの星の存在たちは総じて魔力を持っており、種族間だけでなく、個々人でもある程度の差が存在するようだ。早い話、指紋みたいなもの。
この魔道具は内部に刻まれた文様が“指紋”の役割を放ち、嵌め込んだ魔石を糧に一定の微弱な魔力を放出し続けるという。一般人よりも若干弱めの魔力になってしまうようだが、少なくともこれで魔法使いに目を付けられる可能性は減ったみたい。
私に魔力を感知する術はないため、よく解らないのだが……。なんかこう、オーラ的なのが出ているのだろう。
(その道の極まった人なら見抜いちゃうらしいけど、そん時はそん時だ。)
今は可能性が減っただけでありがたい、そう思いながら服の下にネックレスをしまう。
さぁって、整理のお時間と行きましょうか。
現在私と護衛のドロイドたちは、ルーちゃんの店から離れ再度町の散策を行っている。24時間どころか、30日間働けるようになりたい彼女が異様にドラゴンの素材を欲しがったわけだが……。それを無視して飛び出した感じだ。い、いやだってそんな危なそうなの服用したら一発で彼女死にそうじゃん。
とまぁそんなわけで。ドラゴンの素材は現状あげないし、徹夜したら友人の縁を切ると言ってお暇させていただいた。
(……まぁ、こっちの調査が終われば渡すことになるだろうけど。)
現在いる町から遠く離れた私達の戦艦。
そこで起きている出来事は、全てログとしてリアルタイムで私の元に流れて来るようになっている。それを確認する限り、メディック及びメカニックたちのドラゴン調査がひと段落し、マッドの解体作業。もとい“治療”という次の過程に移ったことが示されている。
事実私への提出フォームの方を覗いてみれば、真面な医者と技士からの山のような報告書がズラリ。これは後で眼を通すとして……。
(マッドが“分割”を終えれば、彼が変な治療をする前に強権を発動し、そのすべてを回収する。……ルーちゃんも言ってたけど、確実に役に立ち、なおかつ金になる素材だ。今後を考えると、活用し売りさばいた方が“利”になる。)
まず、活用方法。
先のドラゴン討伐の際。我々は敵の接近に気が付くことが出来なかった。今は警戒網を広げ、砲兵ドロイドたちによる目視警戒を続けているため、前よりはマシになったと言えるが……。それでもやはり、もっと正確な情報が欲しい所。
幾ら彼女が才能のある人間とは言え、頼るのは少々気が引けるのだが……。
(ルーちゃんに相談して、『魔力センサー』が作れないか考えてみる予定。)
前回の徹夜が響いているのか、未だ万全でないため頼めないが、魔法銃の改良を頼む前に、こちらの制作をお願いしようと思っている。
此方の電波によるレーダー探査を無効化する存在がいるのであれば、この星の生命体全てが持つという“魔力”に由来するレーダーを作ってしまえばいい。流石に敵対生物全てを認識する様なモノは申し訳なさが勝ってお願いできないが、攻めてドラゴンの侵入だけは此方で把握しておきたい所。正しいドロイドを配備すれば撃破できる相手とは言え、D1ドロイドたちでは手も足も出ないのだ。実際に破壊されていることを考えると、手を打っておく必要がある。
(さっき雑談の流れで聞いたけど、種族ごとにも魔力の傾向みたいなのがあるみたい。ドラゴンの魔石とか内臓とか。そういうのを彼女の家に持ち込んで、『ドラゴンの魔力に反応する』センサーを試作してもらう。)
無論、ウチのメカニックたちにも同様の要求を投げかけ頑張ってもらう予定ではあるが……。
そもそも彼らは船の修理も並行して行っている。専門外である“魔力”に付いて解らないことが未だ多いというのに、そのセンサーを作れというのは無理難題。彼女には悪いが、当分ルーちゃん頼りになりそうだ。……頼れば頼る程に喜びそうなのはまだ救いだけど。
(んで、そのあまり。残ったドラゴンの素材についてなんだけど……。サンプルを一部残して、売却で行こうと思っている。)
なにせ、この星における私達の“おさいふ”。
実はちょっと困ったことになってきているのだ。
エリンちゃんの村から謝礼として一定量を貰い、この町で遊んでくれた荒くれ者たちから奪ったもので一定の資金を手に入れることが出来たのだが……。私がこの町に滞在していることを示す、宿屋の代金。後は私の食事という趣味で浪費したせいか、底を突きかけているのだ。
本来私達は、この町に『鉱物資源』の情報を手にれるためにやって来た。運よく魔法のスクロールを見つけ、ルーちゃんと縁を結べたのは存外の幸福だったが、本題を忘れるわけにはいかないだろう。
(情報を集めるのにもお金が要る。護衛ドロイドたちが光学迷彩で隠れながら会話を拾っても、求める情報が出てくるとは限らない。対価を支払い入手する、そういうルートでの入手も必要だろう。何より、幾ら鉱石を見つけても“奪っていく”わけにはいかないからね~。)
本音を言えば、武力制圧して山丸ごと手に入れるのが一番簡単で楽なのだが……。
あまりこの星の原住勢力に喧嘩を売るのは、好ましくない。彼らの戦力は未だ正確につかみ切れておらず、更にルーちゃんの情報から『魔王軍』なるワクワクする存在まで出て来た。私個人であれば面白そうなので魔族さがそ! になるのだが、軍団の長として考えるならば、あまり早急な行動はとれないだろう。
歯向かって来るお馬鹿さんは超特急であの世に行ってもらうが、それ以外は基本なぁなぁ。鉱山の所有権や鉱物を入手することを考えれば、お金はあればあるほどいい。
(ま、話を元に戻すんだけど……。纏まったお金を手に入れるために、ドラゴンの素材を売っちゃおうって話。今後『魔法銃』の配備を進めるのなら、魔石を集める必要もあるしね?)
魔石に関しては魔物を倒すだけで手に入るので、自力で集めてもいいのだが……。
こういった面倒な作業は、下請けを雇って済ませてしまった方が安上がりな時がある。それにあの森だけで手に入る量も限られているだろう。外部からの購入も視野に入れる必要がある。
(そんなわけで! 行ってみましょう冒険者ギルド! あはー! あるのは前の調査で知ってたけど、機会無かったからね~! う~ん、楽しみ!)
どんな感じなのかな! どんな感じなのかな! やっぱりこう、荒くれ者の巣窟みたいな感じ!? それともうこう、仕事人みたいなのが集まる奴? 魔物も、魔法も、魔王軍だっているこの星なわけだし! こう、すっごくテンプレな奴が待ち構えてそうな気がする!
あはー! 超楽しみー!!!
……うん? どったの護衛ドロイド君。……あ~、はいはい。そっちの件ね? うん、洗い直しをお願いするよ。私は冒険者ギルドで観光、じゃない。遊び、でもない。あ~、うん。そう取引! うん、その取引して来るから。良い感じにお願いね? 最悪数人闇に葬るぐらいは許可するから。うんうん、じゃぁそんな感じで~。
◇◆◇◆◇
とまぁ、そんなわけで冒険者ギルドに来たわけですが……。
「……なんで泣きべそをかいてんだお前。」
「うぅ! 美人なお姉さんの受付嬢じゃなぃぃ! このムキムキおじさんヤダァ!!!」
「なんだコイツ。……いやほんとになんだ!?」
うわ~ん! 護衛ドロイド~! このよく解らんモヒカンのおじさんが、ミクニちゃんからピチピチ衣装の超美人受付嬢のお姉さんを奪った~ッ! ぶっ殺し……。あ、冗談ッ! 冗談だから! マジで殺そうとするなおバカッ! 単にちょっとがっかりしただけだから! ガチで殺してほしいわけじゃないから!
……え? 私をがっかりさせるのは万死に値する? う~ん、過激!
とまぁそんなわけで冒険者ギルドにやって来たわけなのだが……。中に入っても人影が見えず、1がっかり。というか内装全般ぼろっちくて2がっかり。とりあえず受付の所にいって呼び鈴を鳴らしてみたら、モヒカンのガチムチおじさんが出てきて3がっかり。3アウト、チェンジな状況になってしまった訳だ。
というわけでおじさん。ここチェンジありますか?
「ねぇよッ! ここどこだか解ってんのか!?」
「え、冒険者ギルド。」
「解ってんのかよ……!」
え、なに、その理解できないバケモノを見たような視線は。
もしかして急に泣き出したと思ったら、おじさんに向かって真顔で『チェンジで』とか言い始めたミクニちゃんのことを言ってるんですか? それはもう不敬罪ですね。うんうん、そうに違いない。これはもう超重罪。軍法会議として、船に帰ってから一番最初に見たD1ドロイドを“再教育”処分することにしないと! おじさんの代わりに地獄をみてもらうぞD1ドロイド……!
とと、まぁこの辺りでおふざけはやめておきまして。真面目な話としましょうか。
「筋肉おじ、普通こういうのって美人のちゃんねーが出てくるもんじゃないの?」
「ほんとに何の話してるんだコイツ……。ここ冒険者ギルド、解ってるんだろ? なんでそういう店みたいな話になるんだよ。」
「あ~、なる。把握。」
冒険者=荒くれ者の等式が成り立つのであれば、そういった綺麗な女性を置いておくと問題に成り得る。
確かに綺麗な受付嬢を雇うことは冒険者たちの労働意欲を掻き立て、効率が上がるかもしれないが……。それ以上に問題が起きやすい。冒険者一人ずつに受付嬢を用意するわけにもいかないから、色恋の話が起きブッキングした時に、まぁ終わる。
女性側に力があり問題を上から叩き潰せるのであれば大丈夫だが、そうでない場合は採用しない方が利になる。となると、真っ向から冒険者たちを押さえつけることが出来る、このようなムキムキおじさんを置いておいた方がいい、って奴なのだろう。
(後は……、単純にお金がないとか?)
内装を見る限り、あきらかに資金不足なのが見て取れる。
ここは異世界なわけだし、ルーちゃんみたいな魔女もいる。強い女性というのも、探せばどこかにいるものだろう。それを雇って受付嬢にしてしまえば、問題が起きても独力で対処できてしまう。けれどそれをしないということは、そういう人材がいないか、単に雇える金が無いか。
まぁ、何にせよ。
「はぁぁぁ、ウキウキしてたのにモヒカンのおじさん見せられる私の気にもなってくれない? こういうのは夢が大切なんだよ。お約束があって、ロマンがあって、それを実現させる。実利を上回る『誉』があるのに……。はぁぁ、解ってないね、おじさん。」
「お、お前な……ッ! はぁッ、もういい! ここが冒険者ギルドって解ってて来たのなら、何か用があるんだろ? 単に煽りに来ただけなら、ぶん殴って叩き出すが!!!」
「え~! こわぁ~い!」
「…………。」
「あ、仕事の依頼と相談です、はい。」
もうちょっといけるかな~と思いメスガキしてみるが、顔に青筋が出て来たので即座に話題を変更する。
えっと、ミクニちゃん魔石が沢山欲しくてですね? そういうのを買い取りたいんですよ。ほら冒険者ギルドって、魔物素材とか沢山集まりそうでしょ? 冒険者を“飼ってる”わけだし。あ、それと。可能ならこっちで入手した素材の買取とかもお願いしたいんだけど……。
そういうサービスしてる?
「ったく、そういうのは初めから言えクソガキ。……あぁ、両方ともやってる。まず、『素材持ち込み』の方だが、裏口に持っていけ。手数料は取るが、ギルド基準の適切な値段で買い取ってやる。そっち行けば担当の奴がいるから、詳しくはそっちだ。」
「おけおけ。」
「んで、魔石の販売についてだが……。」
そう言いながら、ミクニちゃんの奥。正確にはガランとしたこのギルドへと視線を向ける彼。おそらく酒場的な役割も持っていたのだろう。飲食が出来そうなテーブルや、軽食を用意するカウンターらしきもの、後は酒瓶とかも見える。
けれど……、総じて少し埃が積もっている。明らかにここ数週間は使われてないね?
「元々そんなに人はいねぇんだが……。ほら、この前酷い地震があっただろ?」
「ア、ウン、ソッスネ」
「あ? ……まぁそのちょっと前に他の町から救援依頼があってな。そっちの応援に送り出しちまったんだ。なんでもドラゴンが出たとかで。」
「…………はぇ~、そりゃ大変。」
あまり経営がよろしくないのだろう。明らかに厄介客である私に対しても、『今後客になるならば』と、かなり丁寧な説明をしてくれる。
何でも竜が好き勝手に暴れ、滅茶苦茶になってしまった町があるようで。そこの応援としてこの町の冒険者たちは駆り出されたそうだ。
ここのギルドは経済状況があまり良くないがゆえに、人を送り出すことで色々と毟り取ってやろうという魂胆らしい。勿論送り出された人員たちも現地で給金は支払われるそうで、WINWINな奴とのこと。
ただそのせいで、最低限の人員を除き誰もいないのがこのギルド。新たな仕事を頼んだとしても、熟せるとは限らないという。
「一定数余ってるのがあるからそれを売るぐらいは出来るが、在庫に無いのを狩って集めてこい、ってのは無理な感じだ。だからまぁ、お前さんに用があるのは裏口の方だな。ギルドに依頼として出すならこっち、売り買いは裏口のほうだ。ぐるっと回ればすぐにわかるから、案内は要らねぇだろ。」
「なる~! わざわざ悪いね!」
「構わん。ただ迷惑料として金は落していけよ? マジで。じゃないと次からは問答無用で叩き出す。」
「もちもち。……んで話変わるんだけどさ?」
やっぱこう、都会の方のギルドだったらお金があるわけでしょう? 色々と依頼とか資金とか流れ込んできそうなわけだし。だったらこう、そっちに行けばさ? 私の思い描く美人のお姉さんがカウンターに座ってさ、受付嬢とかしててもおかしくは……
「おう、解った。いますぐ叩き出されてぇんだな。そういうの求めてるのなら店いけ店ッ! マジで殴るぞクソガキッ!!!!!」
「わー! モヒカンが怒った! にげろ~!」
……っと。まぁこんな感じかな?
んで隠れてた護衛ドロイド君。ちゃんとギルド内部の……。あぁ資料とか全部コピーし終わった。ならヨシヨシ。ミクニちゃんも道化を演じたかいがあったというモノです。結構出来る人なのか、若干ウチの子達の視線に気が付き始めてたみたいだからねぇ? ちょうどいいデコイが必要だったわけですよ。
(元々はギルドの経済状況とか、魔石の値段とか、何を溜め込んでるかぐらいしか調べるつもり無かったんだけど……。)
ここでまた『ドラゴン』が出て来たってなれば、情報ぐらい集めなきゃいけないでしょう?
さぁって、モヒカンおじと約束しちゃったし。色々とお金は今後落していくことにして……。ちょっとだけ考察、しちゃいましょうか。
感想とか評価とかいっぱい頂戴♡
誤字報告とっても感謝♡