異世界バトルドロイド軍団   作:サイリウム(夕宙リウム)

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26:治療だよ、ウン。

 

「マッド~!!! 調子はどう? 医者の不養生してない? してない! ならヨシ! あはー!!!」

 

『……まだ何も言っていないのですが。とにかく艦長、お待ちしておりました。』

 

「~~~!!!」

 

 

特殊合金で全身グルグル巻きにされた魔族を連れて、マッドの部屋に入る。

 

そうそう、さっきウチの護衛ドロイドたちに追われて、最終的に全身ボコスカに殴られた後、電気棒で死ぬ直前まで電気流された子ね! まぁ魔族って頑丈なのか、気絶程度で済んだんだんだけど……。もう目が覚めちゃって、さっきから煩いのなんの!

 

 

「と言うわけでコレ、さっき言ってたテロリストちゃんね? “丁寧”に扱って頂戴な。」

 

『勿論ですとも。ささ、すぐこちらに。自身も軍属ゆえに拘束は外せませんが、医師の一人として適切な処置をさせて頂きます。どうかご安心を。』

 

「ッ! ッ! ~~ッ!!!」

 

 

口も縛られているせいか、声にならない悲鳴を上げながら、マッドに連れていかれる彼。そんな姿を眺めながら、ちょっとだけ部屋の周囲を見渡す。

 

いつも通りの血生臭い部屋で、ゴブリンとかオークとかの“部品”が、まるでホームセンターかと思うほどに綺麗に分類されている。右親指の骨はここ、左の目はここに、って感じ。まぁ工業製品と言えるドロイドの部品管理、として見れば正しい保存方法なんだろうけど……。なんかこう、猟奇的だよね。普通に怖い。

 

即座に懐に入れてあったクソ甘い飴ちゃんを口の中に入れ、失った正気度を回復していると。

 

視界の端に移る、綺麗に梱包された複数の箱。一応『マッド』も私の配下なので、責任者として中を覗いてみれば……。

 

 

「ワァ……。ま、マッド。これさっき言ってた?」

 

『えぇえぇ! “ドラゴン”と呼ばれていた患者様のものです! 浅学ゆえに解らぬことも多く、少々手間取ってしまいましたが……。全て丁寧な処理を行い、梱包させて頂きました! 専門医の方でしたらすぐにご理解いただけるでしょうが、一応番号を振り分けております! よろしくお伝えください……!』

 

 

患者の完治を心から望むように、そう口にするドロイド。

 

けれど私の視線の先にあるのは、パックに詰められ薬品処理されているであろうドラゴンのパーツたち。鱗から心臓、脳ミソに至るまで綺麗に分解され、バックには振り分けられた番号を示すシールが。そして上にかぶせる様に置いてあった“設計図”を開いてみれば、詳細なドラゴンの図解と、どの部位がどの番号を示すかの表が。

 

わざわざコッチの文字を使って申し送りの挨拶まで描いている当たり、“医者”としては真面なんだろうけど……。

 

うん、やっぱ狂ってるなコイツ。

 

 

「あ~、うん。とりあえず資料として一部保管して、暴走するかもだけど内臓とかはルーちゃんにプレゼント。余った部位はギルドに売りつけるから……。あ、護衛ドロイド。別室で仕分けしといて。」

 

『畏まりました。すぐに。』

 

『……うん? 艦長、何か仰いましたか?』

 

「うにゃ! 何もないよ! “専門医”にはよろしく伝えとくねー!!!」

 

 

即座に『マッド』のログを確認し、こちらの声が聞こえていないことを確認しながら、そう返事をする。

 

便利ではあるから色々隠しながらやってるけど、コイツが真実知った時に何するか解んないからめっちゃ怖いんだよね。単に後悔して自己破壊、ぐらいならまだいいんだけど。より狂気度がアップして暴走し出したらマジで困るからさ……。

 

 

(破壊はすぐ出来るけど、後始末がねぇ? 絶対他の子の正気度が吹き飛んでヤバいことなるし。このままでいてくれる方が都合いいんですよ。)

 

 

そんなことを考えながら。

 

梱包されたドラゴンを運んでいく護衛ドロイドたちを見送り、今日の“患者”である『魔族』を手術台に縛り付けるマッドの方へと歩いて行く。さっきから大いに暴れ何かしらの叫び声をあげているのだが……。先程喰らった電撃のダメージのせいか。それとも『メディカルドロイド』として患者を押さえつけるだけの出力を持つマッドに敵わないのか。すぐに手術台へと縛り付けられてしまう。

 

ちょっと可哀想だし……、口だけは外してあげよっか。うん。

 

 

【菴輔r縲∽ス輔r縺吶k??】

 

「ありゃ? ……あぁ成る程。言語も違う感じね。なるなる~!」

 

『おぉ! やはりこの『魔族』と呼ばれる方々はより高度な知能をお持ちなのですね……!』

 

「だねぇ。あ、でもコイツテロリストで、更に連合国民でもないから色々と適応されないからね? 人権とかそういうの。マッドとしては“医者”の本分を発揮してくれればいいけれど、私は軍人として対処するから。その辺は理解してね?」

 

『勿論、理解しております。自身は医師として全力を尽くすのみです。……では、施術を開始いたします。』

 

【縺溘☆縺代?蜉ゥ縺代※??シ?シ?シ?シ?】

 

 

マッドがそう言うと、明らかに人間の治療では使わない工具たちが、全身から次々と伸び出していく。

 

ドロイド用のメディックとして生み出された彼が持つ、内部に埋め込まれた機器たち。それがゆっくりと魔族に向けられていくごとに、彼が発する悲鳴と恐怖がより大きくなっていくが……。即座に自身のカメラとセンサーを全てシャットダウンし、外界からの情報を受け取らないようにする。

 

あ~、あ~。何も聞こえない。何も見えない。

 

いや流石に人型が分解されていくの見たくないんですよ。勘弁してください……。

 

そんなことを考えながら待っていると、脳内に飛んでくるマッドからの通知。イヤイヤ目を開いてみればあら不思議。さっきまでそこにいたはずの人間がパーツごとに並べられているではありませんか! いや~、凄いマジック。なんか筋肉とかまだピクピク動いててヤバい。たちけて。

 

……ウチのエンジニアに、こういうのモザイク表示するプログラム作らせようかな。

 

 

『お待たせして大変申し訳ございません。して、記憶抽出機をご利用でしたよね?』

 

「あ、うんそうそう。準備して……。Oh……。」

 

 

そう言いながらマッドの声がする方に振り返ってみると、綺麗に摘出された脳ミソを丁寧に運ぶマッドの姿が。

 

あ~うん。そうだよね。記憶抽出機って脳ミソぶち込んで情報引き上げる奴だからね。うん。私が指示出したし、必要なら使うのが私だけど……。

 

こ、これだけは慣れたくないなぁ。

 

 

『何か? ……あぁ! 艦長はお忙しい身、機器に配置した後に話しかけるべきでした。何か他の作業をしておられたのでしょう? お邪魔してしまい、大変申し訳なく。』

 

「ア、ウン。ソウダネ、ウン。」

 

 

勝手に納得してくれたマッドに返事を返すと、すぐに準備を整えてくれる彼。

 

先程まで生きていたはずの魔族。その脳みそが機器にセットされ、すぐに怪しげな光が灯っていく。まぁ、コレが何かってのは大体理解してくれると思うんだけど……。

 

前も言ったように、私達の母国である連合国には捕虜を保護する法はない。故に尋問の方法もより過激に成り、その最たるものがこの記憶抽出機だ。単に痛めつけて情報を吐き出させるよりも、記憶全部を引き出して分析した方が手っ取り早いよね、っていう。まぁ被験者のダメージとかそういうの一切考えずに作ってるから、ぶち込んだ奴は総じて“復旧不可”になるんだけど……。

 

う~ん! これの使用を命じた奴ってすっごい外道! あはー!!!

 

……300か月くらいお休み貰ったらダメ?

 

 

「ま、必要の為なら何でも割り切るのが私達だからねぇ。そもそも数えきれないくらいぶっ殺してきてるし、ドロイドに地獄があるかは解らんけど……。。」

 

『っと、準備完了致しました。いつでもお使いいただけますよ? ……して、艦長。今日はどうやら独り言が多い様に感じられます。自身は人間専用のメディカルドロイドですのでお力になりませんが、検査を受けた方がよろしいかと。お疲れであるならば、十分な休息を取るべきです。』

 

「あ~~~~、うん。そうかもね、うん。ありがと。これ終わったらそうする。」

 

 

お前がその“ドロイド用のメディック”だよッ! と突っ込みそうになるし、元凶が何言ってるのという顔をしそうになるが、無理矢理押し込め適当に声を返す。

 

狂ってはいるけど一応“医者”なんだよなぁ、と考えながら、移動するのは機器の前。

 

そして軽くソレを動かせば……。淡々と引き出されていく対象の記憶たち。どうやら彼の母語は私達の知らない未知の言語のようだが、映像記録だけでも解るものがある。そして一部適応済みの言語も見て取れることから……。

 

 

「あーなる。人間側の協力者もいる感じね。はいはい。……土地を巡った紛争に、魔族が付け込んだ感じかにゃ? ん~、調略としては微妙だな。25点。落第。再試だにゃ! ……まぁコイツ、死んでるんですけど。あはー。」

 

 

どうやらこの地域では長年土地を巡った紛争が起きているそうで。その片方に魔族が付け入ったようだ。

 

この脳ミソ君の考えとしては……。A側の指示を受けてBを魔物で襲撃。Bが弱体化したところで、Aが武力介入を行い、Aが求める土地を入手させる。んで油断させたところAを背後から強襲することでAとBの両方を撃破し、この国の一部を魔族の勢力圏とする。

 

まぁそんな計画だったようだ。

 

 

「ルーちゃんによると確か北の方だっけ? そっちに戦線があるけど、より南のここにも戦線を作ることで2方面での戦いを強要する戦略。結構細かく魔物を動かせるみたいだから、現地で徴用しながら押し進めていく。『内部から食い破っちゃうぞ♡』ってやつだと思うんだけど……。」

 

 

見た感じ多分末端の方の魔族なせいか、持ってる情報が少ないってのもあると思うんだけど……。

 

なんかこう、詳細を詰めきれてない作戦に見えてしまう。想定される人間側の抵抗とか全然考えてないし、彼の切り札であったドラゴン? の動かし方も雑。私達がいなければ多少は成功しただろうけど、2方面作戦を相手に強要できるだけの兵力を用意しきれてないというか……。

 

……うん? あぁなる。アンデッドで補う感じかコレ?

 

 

「ほー。本国じゃアンデッド関連で評価されてる感じなのね。倒した人間を味方にしちゃう感じ。ん~、それなら45点くらい? 赤点は勘弁してやろう。」

 

 

再度深く彼の記憶を見てみれば、アンデッドを使用し、おそらく上司的な魔族に褒められている姿が。

 

不足する兵力を相手から奪い取ることで補う。そう考えれば、まぁ成功率は上がる事だろう。それでも結構粗が見えるので高位戦術ドロイドとしては色々と文句が言いたくなるところではあるが、相手は現状最有力の仮想敵。こっちとしては弱い方が好ましい。これ以上の批評はやめておいてあげよう。

 

 

「ん~、なんとなく何したのかもわかったし、1例だけだから確証はないけど、魔族がどんな種族で、どんな考えを持ってるかは解ったね。うしうし。んじゃこの記憶データはちょっと改竄しておばさん、翻訳ドロイドに送って新しい言語プリセットを作って貰うとして……。マッド~!」

 

『はい、ここに。』

 

 

どうやら魔族の部品を整理し、工業用アルコールで消毒していたのであろう彼がこちらに寄って来る。

 

生物の“中身”をアルコール処理しちゃったら色々とダメじゃん、と突っ込みたくなるが、コレがドロイドのパーツであれば何の問題もない。自身が人間用のメディックだと思い込んでいる哀れなドロイド用メディックに、新しい指示を渡しておく。

 

 

「この子の記憶格納パーツ、もう見終わったから治療に回してくれる? あとなんか“アンデッド”っていう死体から生まれるこの星独自の“種族”? ってのもあるみたいだからさ、治療と並行して研究してくれる? あ、生み出すのは無しで。データだけ送っとくね~。」

 

『おぉ! それはそれは、正に生命の神秘……! この“このアンデッド”なるお方がここに運び込まれた際、より適切な治療が施せるよう、励ませて頂きます……!!!』

 

「あ、うん。よろ~。」

 

 

さぁって。ある程度相手さんが何したいか解ったところだけど……。

 

 

「この襲撃計画、どうやって割り込みますかねぇ?」

 

 





〇記憶抽出機

連合国が開発した人の心が無いマシーン、その1つ。

対象の脳ミソを完全に破壊する代わりに、その者が経験してきた記憶全てをデータ化するもの。対象があまり覚えていない深層記憶なども引き上げるため、ほぼ相手の一生をデータとして拾い上げる形。かなり細かな区分けもしてくれるので、必要な情報だけ分類して整理することも可能。

明らかに人道や倫理に反しているため、一般には公開されていない存在。有用故に上層部が各艦に配置しているが、一般に情報が流れた際にかなりの批判を受け現在の政権が倒れる懸念から、その存在は艦長などの限られた上位ドロイドにしか知らされていない。

ミクニとしては唾棄すべき装置ながら、有用性を理解しているので必要あらば使用する。ただ偽装して入手した記者としての身分。横領などを行う際に使用していた身分を使用し、いつでも世間に公表できる準備は整えていた。もし彼女がこの惑星に墜落してない無ければ、その他の準備と同時に公開し、ドロイドの人権入手の一手段として使われていた可能性がある。
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