異世界バトルドロイド軍団   作:サイリウム(夕宙リウム)

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29:ルーちゃんはお客様

 

「……なるほど。その小芝居を挟むことで、ギルドにあった鉱石類と、魔石。そのほとんどを手中に納めたってわけね。流石私の大親友。いえ、“超親友”ねッ!」

 

「なんかまたランクアップしてない?」

 

 

というわけでモヒおじから魔石及び鉱石を強奪。

 

もとい金貨200枚を支払えないことに対するお詫びとして、半ば無償に等しい値段で買い取ったわけだが……。勿論、全てこちらの作戦通りだ。

 

彼方の資金力は既に護衛ドロイドたちの調査によって把握済み。かなり経営が厳しく、大物を持ち込んでも全額換金が難しいことは最初から理解していた。

 

というわけで此方が代わりに引き出したのが、物々交換と契約書ってワケ。

 

 

「先に金貨5枚を払わせて、残りはあちらが竜の素材を売却した後に渡す。その間の担保と詫び代わりに、こっちが必要としている素材を買いたたく。ま、そんな感じだね!」

 

「……ちなみにミーちゃん。あのモヒカンの人を引きずったって本当? あの人確か、かなり大柄よね?」

 

「うん? マジだよ。ほら。」

 

 

そう言いながら、近くにいたD2ドロイド。

 

表向きの護衛であり、さっきの冒険者ギルドでは魔石や鉱石をウチの魔改造馬車に積み込むという仕事をしていた彼。名誉魔法破壊鎧ドロイドでもあるソレを片手で持ちあげ、グルグルと振り回してやる。本人から死ぬほど文句のメッセージが送られてくるが、即座に着拒しシャットアウト。大人しくミクニちゃんの人型ヌンチャクになるといい! ほわちゃー!

 

あ、ちなみにコイツ。鎧着てるタイプだから重さは200㎏ぐらいあります。

 

それを軽々と振り回せる剛力。実はミクニちゃんってパワータイプでもあるんですよ。高位戦術ドロイドっていう後衛職なので使い道あんまないけど、自衛だったり、こういう宴会芸だったりでは大活躍。どうどうルーちゃん、すごいっしょ!

 

 

「えぇ、流石ね……! あ、そうそうミーちゃん。わざわざ来てくれたってことは、何かあったのよね? また“例”の相談事?」

 

「っと。そうだった。いや、実はね? せっかくちゃんとしたお友達になったわけだし……、私の家に、招待しようかな、って。」

 

「ほんと!?!?!?」

 

 

勢いよく立ち上がり、こちらに抱き着いてくるルーちゃん。

 

普段は無表情に近いその表情が爛々と光り輝いている当たり、相当嬉しいのだろう。

 

まぁ彼女の性格というか、距離感の掴み方を見る限り、これまで真面な友人が出来たのは片手で数えられるレベル。もしかすると私が初めての友達かもしれない。この喜びようを見る限り、お友達の家にお呼ばれするなどという経験は今日が初めてなのは確定だ。

 

……あ~、うん。嬉しいのは解るけど、抱き着くのやめよう? うん。あ、勿論嫌ではないよ? ただ親しき中にも礼儀ありって言うでしょう? ……この星での近しい言い換えってなんだ?

 

 

「そ、そうね。聞いたことない言葉だけど、その通りだったわ。ごめんなさい。……それで、本当に行っていいの?」

 

「もっちろん! というか私の“悪だくみ”に付き合ってもらうワケだし、色々見せておいた方が良いでしょう? 私からの信頼の証って奴よ!」

 

「ミーちゃんッ!!!!!」

 

 

再度感極まり抱き着いてくる彼女を何とか両手で押しとどめながら、話を続ける。

 

彼女にも少し話していたが、例の魔族。その頭の中を覗いたことにより、私達は様々な情報を手に入れることが出来た。彼が計画に参与していた『襲撃計画』もその一つ。まぁこの星の住人ではない私たちドロイドからすると、正直『勝手に戦え』案件ではあるのだが……。

 

 

(未だに私の戦艦のエンジン。治る気配がないっぽいんだよね。修理自体は進んでるらしいんだけど……。)

 

 

とまぁそんなわけで、帰還できる時期は不明。さらに母国である連合国の統治範囲より大きく離れているため、補給を受けることも出来ない。

 

つまり現地で何とかしなければいけない以上、この星での影響力。そして鉱石などのドロイドには必須の素材を確保しておきたいわけだ。

 

これを達成するのにはドロイドらしく武力を提供するのが手っ取り早いわけで……、ちょうど悪い魔族に襲われそうな人間さんもいる。敵を打ち倒す強さを見せつけ、どんどんと影響力と資金を拡充。この星にあるでっかい鉱山でも貰っちゃおうかな~って考えてたわけだ。

 

んで。その現地協力者が、自称私の超親友『ルケト』ことルーちゃん。

 

 

「多分、というか確実にルーちゃんの常識から逸脱してるのばっかりでさ。先に見せておいた方がいいかなぁ~って。あと規模が規模だから、威圧しちゃいそうでね? ことを起こす前に見せることで、怖がらせる気はないことを示しておきたいわけよ。」

 

「いいのよッ! いいのよミーちゃん! 私はその気持ちだけでもうッ! ……どうしよう、親友のお家なんて初めて。ど、どうしたら? お、お菓子とか持って行った方が? 遊ぶ道具も必要よね! いやそれよりもお泊りセット……!?」

 

「あ~、うん。とりあえず落ち着こう?」

 

「そんな場合じゃないわッ!」

 

 

無理矢理私に抱き着いた後、ぱっと離れ店の裏。彼女の居住スペースへと突っ込んでいくルーちゃん。

 

そして直後に響いてくる、どったんばったん大騒ぎ。合間に聞こえる声的に、お泊りの準備を整えているらしいが……。うん。構わないけど、誰も“お泊り”とは言ってないよね?

 

 

(いやまぁ考えてはいたけどさ……。)

 

 

今回の主目的は『こちらの戦力を見せる』だ。けれど他にも目的が幾つかあって……。

 

実は魔法銃などの情報を船に共有した時、ウチの技術者連中が『製作者と技術交流したい』って声を上げていた。我々にとって未知の技術である魔法を、銃の形にまとめ上げた奇才。そんな相手とお話できるってなれば、飛びついてくるのがメカニックドロイドたちだ。職人みたいな気質が多いからね~。

 

とまぁそんなわけで、ルーちゃんが大丈夫そうであればやるつもりだった。基本こういったメカニックどもは話が長いので、日をまたぐことも考えお泊りの準備をするよう準備自体はしていたんだけど……。

 

 

「えっとえっと、枕はこれで、パジャマは……。ミーちゃん! お布団も持って行った方がいいかしら!」

 

「大丈夫なのでやめようね、うん。」

 

 

裏から色々取り出してきているルーちゃんを見る限り、私とパジャマパーティーするつもりですねコイツ。え、憧れだった? 凄く嬉しい? お呼ばれ自体初めて? 昔からずっとしたかった?

 

か、可哀想に。いいよ、全部一緒にやろうね……!

 

そんなことを考えていると、自分の背丈の数倍はある巨大なリュックと共に現れる彼女。合間から多分使わないであろうボードゲームの板や、過剰すぎる着替えの服が飛び出ているが……。うん。気にしないでおくとしよう。……何泊する気だコイツ?

 

 

「準備できたわっ!」

 

「あ、うん。じゃあソレ馬車に詰め込もうか。D2ドロイドたち。おねがい。んで、あっちまでの“足”の話なんだけど……。」

 

 

街の外れに面白いものを隠してるから、まずはそこまで行ってみようか!

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

鎧を着た2体のゴーレム。彼女が言う『D2ドロイド』に牽かれた馬車に乗り込んだ私は、町の外にある小さな雑木林にやってきていた。

 

自身の超親友。いや既に友という枠組みを超えて家族かもしれない『ミクニ』ことミーちゃん。

 

彼女のお家にお呼ばれした私は、天にも昇る様な気持ちだった。何せ初めて出来た友人で、親友からのお誘いだ。これほど嬉しいことはない。つい年甲斐もなくはしゃいでしまうのも仕方のないことだろう。

 

けれど、こんな何もない場所。

 

明らかに人目が無い場所に連れてこられると……、ほんの少しの不安が浮き出てしまう。

 

 

(彼女は、ミーちゃんは。“消せる”側の人間。)

 

 

世の中には様々なタイプの人間がいるが、彼女はそちら側。

 

どれだけ仲良くなったとしても、必要があれば割り切れるタイプ。自分の中に大きな芯と譲れないものがあり、それを守るためならば簡単にその他を消飛ばせるタイプの人間なのだ。

 

それが良いのか悪いのかは状況によって変わるだろうが、もし軍などにいて、彼女の芯とその軍の方針が完全に合致していれば、かなりの功績を上げただろうということは理解できた。……まぁ彼女なら所属組織を裏切りながらも成果を出して出世するでしょうけど。

 

まぁそんな彼女に、町の外へ。

 

誰の目もない所に連れていかれる。

 

 

(……ふふ、消されるかもって思っちゃった。)

 

 

まだ私は彼女が見せてくれた極致に辿り着いておらず、友として何かを示し始めた途中。

 

こんなところで死にたくないという気持ちはあるが……。彼女なら、ミーちゃんになら消されてもいいかもしれない、そんな気持ちもある。

 

多分だが、彼女は私のことを永遠に覚えていてくれるだろう。割り切れる人間ではあるが、情が無い人間ではない。必要だったゆえに悔やむことはないだろうが、ずっと覚えていてくれる。忘れないでいてくれる。私としてはもうそれだけで、満たされている。

 

まぁ、そんな可能性に思い至ってしまった時点で、私の“友情”が未熟な証拠なのでしょうけど。

 

 

(ふふ、ごめんなさいは言わないわ、ミーちゃん。……だって貴女は私が考えてることなんか、全部お見通しなのでしょう?)

 

 

彼女にとって私は、利用価値があること。

 

価値があっても不利益が上回るのならば、躊躇いなく消すこと。

 

そしてそんな可能性に、私が気が付いたこと。

 

他にも色々、私が思いつく以上の全て。彼女はそれを理解し、受け入れ、私を友としてくれている。もうそれだけで、私は恵まれている。返せるものなんかほとんどない。何とか生み出せた『魔法銃』も、おそらく彼女にとっては手段の一つ。“必須”じゃない。

 

だからこそ、私は出来る限りの友情を。求められるならそれ以上を返す。

 

ふふ、ミーちゃん。私は……

 

 

「あ、あの。ルーちゃん? そんなガンギマリな眼で見られると色々怖いんですけど。あと絶対変な勘違いしてるよね!?」

 

「…………ふふ、あぁごめんなさい。つい、ね?」

 

「何その沈黙! こわッ!?」

 

 

何でもない言葉を交わしながら、雑木林の中を進む彼女に付いて行く。

 

おそらく。いや確実に、彼女の拠点はここに無いだろう。町から距離が近すぎるし、あったとしても仮拠点。ミーちゃんが垣間見せる卓越した知能からも、こんな場所に家を置くとは思えない。たぶんあるのは……、何らかの移動手段。“面白いモノ”って言ってたから、移動用のゴーレム。ミーちゃん風に言えばドロイドがいるのかしら? 爆速に早い馬車とか?

 

というわけでミーちゃん、私の推測は合っている?

 

 

「ん~。ま、見た方が早いんじゃない? そろそろだし。」

 

「ふふ、そうね。」

 

 

そんな言葉を返すと、ちょうど開けた場所に辿り着く私達。

 

私の想定とは違っていたようだが……。そこにあったのは幾つかの鉄製の箱と、地面に大きく描かれた印。一瞬何かの魔法陣かと思ってしまったが、それにしては書き込みが薄い。……空から見た時の目印、のようなものだろうか? というかこの鉄製の箱。私の知らない鉱石で出来てる?

 

 

「あ、それ? 補給用のバッテリーとかが入ってる奴だね。あと私のおやつがちょっと。あ、食べるよね? ちょっと待って~。」

 

「え、えぇ。ありがとう。」

 

 

そう言いながらミーちゃんが箱に手をかざすと、何か小さな音が響き、冷気と共にゆっくりと開いて行く。……内部温度を下げることで長期保管を可能とした小型食糧庫、かしら。

 

慣れた手つきでそれを開き、取り出すのは小さな袋。私の知らない材質のソレを破ったと思えば、出てくるのは彼女がお菓子というもの。ついて渡されたので受け取ってしまったが……。この、何? 酷くカラフルで豆みたいなものは。

 

……赤とか青とか紫とか。正直に言って人の食べるモノには見えないのだけれど。

 

え? グミ? 聴いたことないお菓子ね。

 

あ、食べてみたら解るのね。

 

じゃ、じゃぁ失礼して……。あら、スライムみたいな触感で面白いわね。あと甘いわ。なんだかすごく“作り物”というか、自然のものじゃない気がするけれど。悪くはないわ。

 

 

「……え、ちょっと待って? “こっちの人”ってスライム食べるの!?」

 

「え、えぇ? 食べるわよ。ほら夏の大発生時によく取れるでしょう? ちょっと高いけど砂糖をまぶして食べると良いのよねぇ。……そう言えば氷結系の魔法使いは凍らして食べるみたいなことも聞いたわね。ミーちゃんもその口?」

 

「は、はぇぇ……。すっごい食文化。」

 

 

この国、いや“この星”で産まれた存在からすれば少しおかしな発言をするミーちゃんだったが、特に指摘せず貰ったお菓子を口にする。うん、やっぱり面白いわ。

 

そんなことを考えていると、一瞬だけ響く、遠くからの音。

 

もしや魔物かとミーちゃんの方を見てみれば……、スライムを食べると聴き驚愕していた顔はいざ知らず。まるで悪戯を企む悪童のような可愛らしい笑みを浮かべる彼女。

 

成程、この音が移動手段。でも、反射的に空から。

 

……“空”?

 

 

「んふー! 正解! 一瞬だけ音を漏らしてみたんだけど、それを察知するなんてさすがだねルーちゃん! あ、でも。ちょっと肉眼で見えないようにしてるから……、コレ掛けて?」

 

 

そう言いながら彼女が私に掛けさせる、一つの眼鏡。

 

特に視界に変化はなく、何の意味が? と思ってしまうが……。上を見上げた瞬間、全てを理解する。

 

 

「そ、空飛ぶ……、箱!?」

 

「あはー! 箱って!!!」

 

 

隣で大笑いするミーちゃんを余所に、半ば反射で魔法。対象の魔力を計るソレを起動してしまう。

 

しかし。やはりというべきか、ゆっくりと降下して来る箱には魔力は宿っていない。聞こえる轟音と、熱。私では理解できない何かを動力とし、空に浮かんでいる。原理も何も理解できない、けれど目の前に映る光景が現実だと訴えかけている。

 

……目に、映る?

 

 

(眼鏡ッ!?)

 

 

ミーちゃんに掛けられたそれを外した瞬間、全てが掻き消える。

 

見えていたはずの物体どころか、さっきまで聞こえていたはずの轟音すらも消えてなくなる。そして恐る恐るかけ直してみれば……、同時に戻って来る両者。外せばすべてが消え、掛ければ音すら戻って来る。

 

既に大地に降りてきていたその“箱”に思わず駆け寄り、手で触ってみるが……。

 

掌で感じる、鉄の感触。眼鏡を外してみても、つけて見ても、それは変わらない。実際に存在するが、その認知は眼鏡をかけていないと理解できない存在。

 

そんなものが、空を駆けている。

 

 

「と、飛んでるだけでもすごいのに……!」

 

「あはー! 面白いでしょ? 光学迷彩の無効化と、骨伝導のイヤホン。ほんとは無音化してるんだけど、それじゃ迫力無いでしょう? だから解る様にしてみました! 偽装も完璧~、ってね!」

 

 

私の反応を楽しむように、そう伝えてくれる彼女。

 

もしミーちゃんのことを良く知らぬ者であれば。煽られていると感じ、殴りかかっても仕方のないような笑みを浮かべているが……。私達は親友、いや超親友。そんな必要欠片も無いし、全く効いたことのない言葉だとしても意味の推察位は可能だ。

 

おそらくこの眼鏡が空飛ぶ箱を検知した瞬間。姿を隠す魔法のようなものを除去して表示。そして本来発しているのであろう音を、この眼鏡を通じて再現する。

 

 

(本当に、技術の“根本”が違う。)

 

 

姿を消し、音を消し、そしておそらく振動も消している。これだけでも途轍もないことであり、魔法で再現するにもどれだけの工程が必要なのか考えたくもない。なのに彼女はそこへ“飛行能力”まで追加している。

 

そして更にミーちゃんは、その『除去装置』まで小型化に成功している。

 

……作るだけならありえない話ではないが、小型化、効率化は“必要性”が無ければ普通はしない。確かにその過程で技術がより発展するかもしれないが、時間と労力がかかり過ぎる。それをするぐらいなら他の研究をした方がいい。

 

つまり、何かと敵対しているからこれを作る必要があった? ……何故根本から違う? 彼女は真に技術者か? これは一人で為せるものなのか? 彼女以外の協力者? 組織? いやそもそも彼女は何? 性格は? 知識は? いったい“どこ”から?

 

 

 

 

………………あぁ、なるほど。

 

 

 

 

 

「この中の椅子。乗り物なの?」

 

「そ! “飛行ビークル”の魔改造タイプ! これで帰ろうと思ってね? さ、乗った乗った!」

 

 

思い浮かんだ考えを胸の奥底にしまい、そう彼女に聞いてみれば。すぐに背を押され“飛行ビークル”とやらに乗り込されてしまう。そして信じられないレベルで柔らかな座席に座った瞬間。

 

全身に生じる、風圧。

 

急上昇だ。

 

 

「み、ミーちゃん!?」

 

「さぁ遊覧飛行の始まり始まり! ぶっ飛ばされないよう捕まっててね! んじゃ~、フルスロットル!!!」

 

 

彼女がそう言った瞬間、上から叩きつけられていた風圧が、前へ。

 

全身を座席に縫い付ける様な風が、私達に襲い掛かって来る。

 

最初はその圧倒的な速度に為す術もなかったが……。時間が経過するごとに、景色を楽しむ余裕が出てくる。地上にいる時よりも澄み切った冷たい空気、見上げれば吸い込まれそうになるほど青く広がった空、そして下を流れていく変わりゆく景色。

 

こんな光景、私以外誰も見たことが無い。

 

 

「すごく、速い。……あは、あはは! あははは!!!」

 

「お? もしかしてルーちゃんってスピード狂って奴!? んじゃもうちょい上げるとしますかッ!!!」

 

 

ミーちゃんが何かを強く押し込んだ瞬間、より飛行ビークルの速度が上がる。

 

思わず体内で魔力を練り、身体強化の魔法を使うことで防御力を底上げするが……。それでもなお、全身に響くその衝撃。思わずそれに悲鳴を上げそうになるが、心の内から上がって来るのは全く別の感情。

 

そう、歓喜だ。

 

なにせこんな光景、こんな体験。この世界に生まれた人間で経験できたのは私だけ。

 

ミーちゃんと友達になれた、親友になれた私だけ。

 

2人だけの、特別な時間。

 

こんなの……、楽しくないわけがない!

 

 

「あは! あはは! 凄いわ! 凄いわミーちゃん!!!」

 

「でしょ! ではではお客様? 左右両方をご覧くださ~い!」

 

 

彼女がそう言った瞬間。虚空から浮き出すのは、見たこともない飛翔物。

 

大きくて、平べったくて、鳥をモチーフにしただろう存在。私達が乗る飛行ビークルよりも上位の存在で、おそらく私達を密かに護衛していたのであろう存在たち。そんな物体たちの一部、透明で内部が見える“席”の方を見てみれば……。ドロイドらしき存在が、こちらに手を振っている。

 

 

「と言うわけで即席空中パレード! ウチのパイロットたちの曲芸飛行ををご覧くださ~い!」

 

 

瞬間始まる、彼らの挙動。

 

煙のようなものを吹かしながら一瞬にして私達を追い抜き、真っ青な空に色を描いて行く。並んで飛んだり、回転したり、急降下したり。私たちの目を楽しませるために、生物では不可能な挙動を簡単に魅せてくれる。

 

 

(あぁもう、本当に最高ね。ミーちゃん。)

 

 

そんなことを考えていると、そんな彼らがいつの間にか私達の前に移動し、より多くのスモークを吹かせてくる。風までも操作できる技術があるのか、私達のビークルには一切煙が掛からず、視界だけが遮られるソレ。

 

ミーちゃんの性格から、コレが晴れた瞬間何か凄いものが出てくると察し、ワクワクしながら待っていると……。

 

 

 

「…………ぇ。」

 

 

 

視界に出現する、ソレ。

 

街から遠く離れた場所にあるはずの、大森林。いつの間にかそんな場所に辿り着いていた。けれど自身の胸中を占める驚愕は、そんなちゃちなものではない。

 

その大森林の中に君臨する、巨大な鉄の塊。

 

私達が住んでいた町の5倍以上の大きさを誇る、巨大な“船”。まるで大空を飛ぶような、いやもっと高い事件に位置する様な、大きすぎて理解が及ばないもの。けれどより多くのドロイドたちがその周囲を守るように動き、その船には数えきれないほどの砲門が。

 

……私の考えが、間違っていなければ。

 

 

 

「あはー! すごいっしょ! これが私たちの家! コンカラー級超弩級航宙戦艦! 5番艦の『デスドミニオン』へようこそ!!!!!」

 

 

 

この星を一瞬にして消し飛ばせる、“軍艦”だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ? どったのルーちゃん。さっきから黙ってるけど。」

 

「……ッ!!! つまりつまりつまり! ミーちゃん!!!!!」

 

「お、おぅ?」

 

「私達は! 私達は! 星々を超えた友情だったのねッ! あぁ、すごいわ! 凄すぎるわ! 言葉なんかに出来ない! いや言葉にすることがおこがましい! なんて、なんて素敵なの! ミーちゃん万歳! この広い“世界”万歳! こんなに、こんなに素敵だったなんて! あは! あはは! あははははは!!!!!!!」

 

「あ~~~、うん。ソダネ。え~っと、メディカルドロイドへの通信は、と。……あ、ごめん急患一人。そうそう、彼女。すぐに来てくれる? ちょっと頭がおかしくなっちゃったみたいで……。」

 

 






〇精神状態

Q.彼女はおかしくなりましたか?

A.いいえ、興奮しているだけで正常です。残念ながら。

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