異世界バトルドロイド軍団   作:サイリウム

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3:ゴブリンやんけ!

 

「うん、そうそう。3体1組のスリーマンセルで各方向にばら撒く感じでお願い。D1とD2の複合編成ね? あとちゃんと通信装備を持たせること!」

 

『らじゃらじゃ』

『無線機どこだっけ?』

『第三倉庫だ馬鹿ドロイド』

『……第三倉庫ってどこだろ?』

『…………どこだっけ?』

 

「それはお近くの戦術ドロイドに聞いてくださ~い。……あ! そこの! T2-2273君! 出来るだけ地面は平坦に! この一帯拠点にするから木とか全部引っぺがしちゃって!」

 

『了解しました司令官。任務実行のため、イエロー工作中隊の起動を進言いたします。』

 

「いいよ~。ポンなミスしないように、ちゃんと見ておいてあげてね?」

 

 

そんなわけで現在私たちは、墜落地点の拠点化を押し進めている。

 

何せここは私達の全く知らない惑星なのだ。手持ちのデータベースに情報はなく、連合国や帝国の影響下にない惑星。もしかしたら私達の所属を理解し、何か便宜を図ってくれる存在も居るかもしれないが……。まぁほぼ確実に、この星の現地勢力は“何も知らない”だろう。

 

しかしながら、私達がやることは変わらない。

 

 

(さっきの墜落、かなり騒がしかったからねぇ。)

 

 

ちょっと上を見上げてみれば、所々罅が入り見ているだけで不安になって来る巨大建造物が1つ。さっきまで私達が乗っていた巨大戦艦だ。

 

なんとか形は保っているが、5km級のコレが墜落したのだ。その振動は周囲に広く伝わっているだろうし、音もかなりのものが響き渡ったことだろう。この星の原住勢力、もしくは原住生物。もしくはこのどちらにも含まれない“何か”が飛んできてもおかしくはない。

 

幸いなことに戦艦のレーダーはまだ生きており、主砲も艦載機もある。こちらに向かって何か飛んできたとしても即座に対応し迎撃することは出来るだろうが……。地上は別だ。

 

 

(対地レーダーはあるけど、そもそもこの戦艦は宇宙で戦うためのものだ。感知範囲も精度もそこまで良いものじゃない。2m級の一般的な人型ドロイドですら見逃してしまうお粗末なもの、って聞けば頼りにはならないって感じ。)

 

 

つまり地上への対応は、“生身”で何とかしないといけないってワケ。

 

未だ帰還の目途が立たないうちは、この墜落した周囲。そして戦艦が私達唯一の拠点になる。中ではエンジニアのドロイドたちが必死に作業してくれてるわけだし、それが万全に進むようこちらは周囲の安全を確保しないといけない。

 

ま、そのために船に積んであったドロイドたち叩き起こして、この船の周囲を拠点化し始めている、ってわけだね。

 

 

「……でも、全長5kmだから作業量ががが。マジでヤバいわよ!」

 

 

幸いなことにと言うべきか、私達の墜落地点はかなり大きな森の中となっている。

 

木々を切り倒せば多少の防壁には成るだろうし、輸送していたドロイドの中には工作兵の役割が与えられたドロイドたちもいる。ポンコツではあるがその他にも多数のドロイドがいる。労働力や重機などの心配はしなくてもいいのだが……。

 

何せこっちの船は超巨大戦艦。十分な安全を取るためにはかなりの余裕を持って陣地を作らねばならない。それを全部開墾して整地してって考えると、ドロイドじゃなきゃ気が遠くなっちゃうレベルのお仕事だ。私が手を動かすわけじゃないけど、正直全く気が進まない。

 

でも、ここで手を抜いちゃうと、ねぇ?

 

 

「エンジンが直るかどうかはまだ未知数。となるとかなり長期の目線で考えた方がいい。となるとやっぱり“陣地作成”は急務。木を切り倒して見通しを良くするだけじゃなくて、防壁や見張り台。後は幾つかキルゾーンも作れるようにしないと。……うん?」

 

『……木ってどうやって切るんだろう?』

『やっぱりブラスターじゃないか?』

『撃ってみるかぁ。』

 

 

声のする方に視線を向けてみると、一般的なドロイド。おそらく周囲警戒の為に叩き起こされたのであろうD1ドロイドたちが木に向かってブラスター。赤い光を放つビーム銃を撃ち込んでいる様子が見て取れる。

 

バトルドロイド用の安価な光線銃といえど、人ひとりを一撃で撃ち殺せる威力のものだ。結構な勢いでその表皮や繊維を抉っていくが……。

 

 

『切れないなぁ。』

『もっとデッカイのが良いんじゃないか?』

『ガトリング借りてくるかぁ』

 

「……あ~、そこの! 木材切り出すんだったらチェーンソーとか使ったら? もしくはブレードとか! ほら接近戦用に配備されたのあったでしょう?」

 

『あ、艦長~』

『なるほど、チェーンソー。』

『ブレードなら持ってるぞ、やってみよう。』

 

「危ないから工作兵の子に聞きながらやりなさいよ?」

 

『『『大丈夫でーす』』』

 

 

そう言いながら、支給品のブレード。対人近接戦闘の為に用意された1m強の刃を樹木に叩きつけ、ぎこぎこと動かし始めるドロイドたち。

 

私も専門じゃないからあまり良く知らないんだけど、樹木ってものは此方の想像以上に重いものだ。前世の地球でも林業では事故が絶えないというか、知識なしでの作業は死ぬほど危険だってよく聞いたモノなんだけど……。まぁ本人たちが大丈夫だというなら大丈夫なんだろう。うん。

 

 

『艦長、お時間よろしいでしょうか。』

 

「あ、えっと……。T2-9962君だったか。どうしたの?」

 

『偵察計画とその部隊割が完了致しましたので、ご報告を。ご許可頂ければすぐにでも出発させられます。』

 

 

そんなことを考えていると、背後から声。私の部下の一人でもある戦術ドロイド君が、タブレットを手渡しながら話しかけて来てくれる。

 

さっきも言ったが、まだ私達は自分たちの安全すら確保できていない。故にまだ見ぬ未知の勢力がこっちに向かって来るよりも早く、その存在を把握しておくことが望ましい。そいつらが急に攻めて来る可能性もあるわけだから、索敵は大事なんだよね。

 

んで、大まかな索敵計画はこっちで決めたんだけど、その詳細は私の下の子達。ダウングレード版である普通の戦術ドロイドたちに任せていた。出来上がったから確認して~って奴だろう。

 

というわけで拝見拝見! えっと、ふむふむ……。

 

 

「墜落地点から放射線状にドロイドたちを派遣して、何かあったら報告させる。敵対的な生命体と接触したとしても、こちらからの攻撃はNG。……うん、良いんじゃない? あとはちょっと手直ししまして……、ほい完成! これで通達しちゃって!」

 

『はッ! ありがとうございます。……艦長、この“反撃許可”というのは?』

 

「あ~、それね?」

 

 

一応の話にはなるが、私達は“正義の連合軍ドロイド”だ。

 

連合に所属する市民の皆様は勿論、帝国の圧政に苦しむ無辜の民を守るために製造されている。まぁこの辺りは完全に建前ではあるのだが、そのスタンスを崩すのはあまりよろしくない。故に現地勢力といらぬ諍いを起こす可能性も考えて、“先制攻撃”は基本的にNGだ。

 

ただ、これは“攻撃しない”ってコトじゃない。

 

彼が言った反撃許可についてなんだけど……。

 

 

「ほら、今の私達って“補給線”が無いでしょう? 輸送してたおかげでドロイドの数はかなりあるんだけど、更なる人員補強の伝手が無い。船の中に簡易の工場はあるけど、作れる台数にも限りがある。資材の問題もあるしね?」

 

『……となると、我らの十八番である波状攻撃は難しい、と?』

 

「使うときは使うよ? ただ無駄使いはしないようにねって話。私達ドロイドが言うのもなんだけど“いのちだいじに”をモットーにしていこう。」

 

 

そう言うと、少し考え込んだ後、了承の声を返してくれる彼。

 

普段の私達なら国のバックアップを受け、数万数億のドロイドたちをどんどんと戦場に叩き込んでいくのが常なんだけど、その補給線がない以上、これまでの贅沢な使い方は難しいだろう。戦術ドロイド君たちの基本方針が“物量で押す波状攻撃”なので、ちょいと難しい要求かもしれないが……。ま、やってもらうしかないよね。

 

 

『では今回の偵察任務における“ドロイドの保全”優先度を2段階ほど引き上げ、再計画いたします。これ以上の偵察が危険と判断した場合は早急に引き揚げさせる、この形でよろしいですか?』

 

「うん! そんな感じで! ま、全体の数が減り過ぎないように注意してくれたらいいだけだから……」

 

 

 

『ぎごぎこ、ぎこぎこ』

『飽きて来たな~』

『……なんか木から音しないか?』

 

ミシ

 

『気のせいじゃないか?』

『お前のオイル不足だろう』

『馬鹿な! 朝差したばっかりだ!』

 

ミシミシ

 

『本当か? お前は忘れっぽい』

『この前もブラスターを忘れていた』

『今は持ってる! それを言うならお前もだ!』

 

 

ミシミシミシッ!!!

 

『私は忘れっぽくない! それはお前だ!』

『何だと!』

『……なんか暗いな、もう夜になったのか?』

 

 

 

直後、周囲に響き渡る轟音。

 

すぐに視線を送ってみれば、勢いよく倒れ伏す巨木と、その下敷きとなった哀れなドロイドが3体。ちょうど私に『大丈夫』と言っていた子達だ。なんか『ワー!!!』とかいう甲高い悲鳴が聞こえた気がしたんだけど、気のせいでは無かったみたい。

 

衝撃で吹き飛びこちらに飛んできたドロイドの頭部を拾いながら、つい溜め息を零してしまう。

 

 

「うん。こういう労災も防止しよっか。あと直せるんだったら直してあげて?」

 

『畏まりました。至急メディカルドロイドを派遣します。』

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

『うーん、空気が綺麗で美味しい! 澄み渡っている!』

 

『わかる~』

 

『……お前ら空気センサー付いてないだろ。』

 

 

場面は変わり、墜落地点から数キロ離れた場所。急遽編成された“第334臨時偵察小隊”は木々を掻き分け森の中を進んでいた。

 

構成ドロイドは三体であり、連合国における標準的なバトルドロイドである“D1バトルドロイド”が2体、そのD1ドロイドをより戦闘向けに再設計し直した“D2バトルドロイド”1体でチームが組まれている。

 

なお空気を識別するセンサーが無いにも関わらず『自然美味しい!』と言っているのがD1であり、突っ込んでいるのがD2。判別がつきにくいのであれば、馬鹿な方がD1であり、比較的マシな方がD2と考えて頂ければ良い。

 

 

『たしかに~』

 

『付いていなくても雰囲気は解る! この自然は美しい! 任務など放棄してずっとここに住みたいくらい! だが出世もしたい! むぅ! 難題!』

 

『真面目に仕事しろよお前。』

 

『わかる~』

 

 

偵察任務の最中というのに大声で叫び続けているドロイドに、先ほどから相槌しか打っていないドロイド。

 

そんなD1という安価モデルたちに思わず頭を抱えたくなるD2であったが、彼は戦闘特化型のドロイド。そのような行為が許されているはずもなく、その感情を人格コアの奥深くへと押し込むことしかできなかった。

 

しかしまだ幸いなのは、同じような悩みを共有できそうな他のD2ドロイドや、より高い知能を持つ戦略ドロイドがあの戦艦にいることだろう。任務を無事に果たし帰還することが出来れば、幾らでも愚痴れる時間が待っているのだ。

 

その事実を再確認したD2ドロイドは、普段よりもほんの少しだけ動力炉の出力を高めながら、より前へと進んで行く。

 

 

『……それにしても何が出るか。』

 

『でるかなぁ』

 

『いきもの! やはり自然には生き物が欠かせない! ……でも虫は嫌い。もっとこう、小さくてモフモフしているのがいい! D2バトルドロイド、見つけたら教えろ! ペットにする!』

 

『いや上に報告しろよ。あと虫だが確実にいると思うぞ。』

 

『やだ~』

 

 

どこか抜けた声で反応するD1ドロイドに、内心同意するD2。

 

既にドロイドたちに共有されている情報の一つに、彼らが墜落した惑星が大陸型惑星という事実がある。比較的温暖であり、湿潤をもつ気候。彼らドロイドのトップである“艦長”からすれば『地球の気候に似てるっぽい』とコメントする様な惑星となっている。

 

まぁつまり、ドロイドが苦手とする湿気が多く発生していたり、関節部に入り込みそうな小さな虫が多くいてもおかしくない気候なのだ。自分たちのパフォーマンスに影響するがゆえにドロイドたちが不満を覚えるのも致し方ない、といった所だろう。

 

 

『まぁその分、生態系が多様である可能性が高いということだ。戦術ドロイド殿から聞いたが、この星系の恒星。その年齢から、この惑星は知的生命体が生まれていてもおかしくないそうだ。星が十分に年齢を重ね、原住生物が進化するだけの時間が経過している。知的生命体を見つけるまでそう時間がかかることはないだろう。案外簡単に目的が済むかもしれんな。』

 

『……むぅ???』

 

『むずかしい』

 

『…………生き物いっぱいいるかも、話通じるやついるかも、早く帰れるかも。以上!』

 

『『お~!!!』』

 

 

本来そんな機能は存在しないが、つい溜め息をついてしまいそうになるD2ドロイド。

 

御覧の通り、D1ドロイドのおつむを頼りにすることは難しい。安価であり数を揃えられ、様々な機器を操れる高い柔軟性を持つ優秀なドロイドではあるのだが、やはり指揮を取るモノがいなければ能力を発揮することは難しい。

 

自分以外を頼ることは出来ないと考え、より気合。もとい内蔵リアクターの出力を上げるD2ドロイドであったが……。後ろから聞こえる稼働音の減少、口数が少ない方のD1ドロイドが足を止めていることに気が付く。

 

 

『どうした?』

 

『何か……、動いた?』

 

『敵!? 敵に違いない! このブラスターでハチの巣にしてやる! そして出世してペットをゲットするぞ! モフモフだ!』

 

『お前は黙れ。こちらが先行する、後ろから続くように。それと発砲許可は下りてないから撃つなよ? マジで。』

 

 

そう指示を出しながら、D1ドロイドが何かを見た、という方向に向かって進み出すD2ドロイド。

 

彼はD1ドロイドを戦闘向けに再設計した機体であり、D1ドロイドが持つ高い柔軟性を失う代わりに幾つかの追加装甲版と向上した知能を持っている。流石に戦術ドロイドのような知性を示すことは出来ないが、後続の盾となりながら未知へと切り込んでいくような任務は大得意だった。

 

そんな彼は弱点である関節部を腕部に備え付けられた大型装甲などで隠しながら、ゆっくりと前へと進んで行く。

 

どうやら“相手側”もドロイドたちの接近に気が付いたようで、D2ドロイドのセンサーにも木々や草木が不自然に揺れる音、そして“熱源反応”の入手に成功する。どうやら距離的にはそこまで遠くないせいか、“相手”は逃走ではなく、此方の出方を伺っている様だ。

 

D2ドロイドは脳裏で民間人と交流プログラムの起動を用意しながら、ゆっくりと近づいて行く。

 

そして、彼らが見たものは……。

 

 

 

「ギャギャギャギャ!!!」

 

 

『……緑の小型ヒューマノイドか?』

 

『ちっちゃい』

 

『モフモフじゃない! 気持ち悪い!!!』

 

 

 

彼らの頂点である“艦長”が見れば『ゴブリンやんけ!』と叫ぶ存在が、そこにいた。

 





〇バトルドロイド D1シリーズ

ンャチタナア・オートマタ社製の戦闘用ドロイド。艦長が指揮する戦艦に所属しているドロイドだけでも、万単位で存在するため各機体の識別コードは割愛。

連合国におけるドロイド開発の最先端を突き進む“ンャチタナア・オートマタ社”の主力製品にしてベストセラー商品。開発段階では単なるペットロボットだったが、非常に高い精度を持つ腕部マニュピレーターを連合軍が見初め、戦闘用として再開発されたドロイドになる。

知性の低さ、関節部の貧弱さ、記憶容量の少なさなど様々な問題を抱えるドロイドではあるが、一般の兵士を育成するのに掛ける費用で3ダースのドロイドをものの数十分で作成できることを高く評価されている。まさに『数を揃え、銃を持ちながら前進する』ことに掛けては、これ以上ないドロイドと言えるだろう。

また良質な腕部マニュピレーターから生じる高い汎用性は戦闘機などの操縦も可能とし、多数の派生ドロイドを生み出すに至っている。無論、ただのD1ドロイドであっても“操作”は可能だ。

なお彼らの作製時には全く同じパーツを使用しているが、それぞれのドロイドに個性というものが生まれてしまっている。無口なモノからおしゃべりなモノ、忠義深いモノから不真面目なモノ。眺めるだけであれば面白いと一部の“白髪赤眼戦艦艦長”からは大好評ではあるのだが、指揮する側からすれば『人間を相手するより面倒』と不評。

これに対し、ンャチタナア・オートマタ社は『仕様です』以外の解答を行っていない。








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