『診断させて頂きましたが、特に異常は見受けられませんでした。単に興奮しているだけかと。あ、それと少々食生活が乱れていますね。穀物だけで済ますのではなく、肉野菜をバランスよく召し上がってください。』
「凄い凄いわ凄いわ! この子! 医療の知識を持っているの!? どうやって! どうやってその知識を!? 尋常じゃない情報量でしょう!? ……え、まって。ミーちゃんが魔力を持たないって、そもそも別の星の人間だから!?!? つ、つまり根本的には別の種族って事よね! そうよね! なのにこの子は私を診断できたの!? 別の種族なのに!? 凄いわ凄いわ! ね、ねぇ! 私に解るか解らないけれど! その体内見せてもらえないかしら! すっごく興味があるわ!!!!!」
「ワァ」
必要でしたらビタミン剤などを処方しますね、と続ける医療ドロイド。
放っておけば装甲版を引っぺがして中を見ようとするルーちゃん。
そして現実逃避しかしたくないワタクシ、ミクニちゃん。
う~ん、カオスな状況ですねぇ。
(……というかルーちゃん? 貴女、勘のいいガキ過ぎませんかね???)
この星における協力者であるルケト。魔道具屋のルーちゃんに対し、私は最大限の歓迎を行おうとした。何せ彼女は時代を幾つもすっ飛ばせる激ヤバな魔法開発者であり、私の友人。そしてこの星で計画中の“共犯者”でもあるのだ。仲よくしておくのに越したことはないし、囲い込むなら早急にことを起こすのが望ましい。そして何より、真に信頼を示すためには隠し事は少ない方がいい。
とまぁそんなわけで。ウチのドロイド総動員して、彼女を迎えたわけだが……。
「コワレチャッタ……。」
「ルーちゃんルーちゃんルーちゃん! コレ! コレ!!!」
「アー、ウン、スゴイネー。」
『ア、艦長。コノ横断幕ドウスル?』
「廃棄デ……。」
突貫で用意させた横断幕、『ようこそデスドミニオンへ!』と書かれたソレを持つD1ドロイド。パーティ帽子をかぶったそいつにそんな指示を出しながら、再度現実逃避に移る。
いや、ね? 彼女の勘と言いますか、分析力がヤバいのは解っていたんですよ。
魔法銃を開発していた際に、実はウチの護衛ドロイドを1体ずっとそばに付けてましてね? その際いろんな情報を引き上げて、何かどえらいこと考えてたみたいってのは把握してたんですよ。彼女に見せたD2ドロイドの運用法とか、私達ドロイドの主武装と呼べる銃。ブラスターの“大まかな概要”程度は解ってたみたいですし。ある程度こっちも把握はしてたんですよ。
でもね?
「船見せただけで、“別惑星”まで推察できるの、何?」
「解るわ! 解るわよミーちゃん! 何せ私は貴女の親友! 超親友よ! 言葉にせずとも理解できることなんて、たっくさんあるわ!!!!!」
「純粋に怖い。」
もっとこうさ、わいわいキャッキャな反応を期待してたんですよ。
艦載機出して曲芸飛行させて、その煙が晴れた瞬間にウチの戦艦がドーンと出てくる。もう心の男の子が大歓声な演目用意してたんです。んで着陸後には横断幕持ってパーティーで使う三角帽をかぶったD1ドロイドが一斉にクラッカー鳴らすって演目用意してたんですよ。
マッドは危険性が高いので強制シャットダウンして倉庫に詰め込んでますけど、砲兵ドロイドのシスターとかに頼んで飾りつけとかさせてたんですよ。なんかちょっと宗教側により過ぎてますけど、ちゃんと歓待の準備整えてたんですよ。ほらあそこ見てよ、D2ドロイドたちが自分で作った紙の輪っか飾りで全身飾り付けてるでしょ? 準備は万全だったのよ。
でもなんかこの人。違う意味でキャッキャしてるし……。
「あ~、とりあえずウチの船員ばらそうとするのはやめてくれる?」
「え~!!!」
「え~、じゃない。無表情キャラどこ行った。」
「……私、そんなに顔動いてないかしら? ……あぁ、そう言えば真面に顔動かしたのって、ミーちゃんと出会ってからかも。初めてできた真面なお友達だったしね……!」
「闇で殴り返してくるのやめよ?」
多分10割くらいルーちゃんの距離の詰め方とかが問題だと思うけど。こっちはそういうの弱いんですよ。全くもう……!
そんなことを考えながら、無理矢理精神を整えていく。別にこのまま延々と脱線し続けても問題は無いのだが、これ以上放置するとマジでウチの船員。メディカルドロイドの装甲が引っぺがされそうな気がする。とりあえず後で彼と同タイプのドロイド、その設計図を見せてあげることを確約して……。本題に戻るとしましょうか。
「とまぁそんなわけで。コンカラー級超弩級航宙戦艦、5番艦の『デスドミニオン』へようこそ。どう? クソデカくてカッコいいでしょう。」
「……ふぅ。えぇ、そうね。本当に凄いわ。こんなの明らかに私たちの星では作れない、って思うぐらいには。」
「でしょう? ……個人的には何でその結論に辿り着けたのか、ってのが気に成るけど。」
今はとりあえず置いておこう、と続けながら。ルーちゃんと一緒に私の船を見上げる。
5km級の巨大戦艦であり、私達の所属国である連合国が有する最強の船。それがこのコンカラー級だ。その設計指針は戦艦に間違いないのだが、この巨体を生かした大規模輸送能力も強み。D1ドロイド換算であれば、数百万体の輸送が可能なのだ。やろうと思えば単艦で惑星制圧も出来ちゃう優れもの。
今はエンジンがいかれてるから飛べなかったり、この前の帝国との戦闘で落とされたせいで艦載機の数が足りなかったりするのだが……。
「……今でも十二分に制圧は可能、ってわけね。流石ね、ミーちゃん。」
「セリフ盗らないでくれる? あと“制圧”と“流石”は釣り合わなくない? この星侵略しようとしてるようなもんだよ? いいの?」
「あら。そっちの歴史は違うのかしら? 最終的に強い者が総取りするのが基本でしょう? 弱者の戯言なんて何の価値もないもの。それに……、超親友の覇道を隣で見られるのよ? これ以上ない“誉”でしょう?」
「あ~~~~、うん。ソダネ。……まだテンションがおかしいなコイツ。」
顔というか、目に異様なほどの熱が見える彼女。
正直一回ぶっ叩いて再起動させたいのだが……、彼女は人間。ドロイドのように乱雑な扱いが出来る相手ではない。くッ! 昭和鋭角45度ぶっ叩き修繕法が使えないなんてッ! え? ドロイド相手にしても破損原因? 煩いD1ドロイドなんて幾らぶっ壊れてもいいだろ。D1だし。
「ま、もし出来るにしても、制圧した後には統治しなきゃならない。私の能力だったらまぁ出来ないこともないだろうけど、めっちゃ面倒でイヤ。だったら現状維持をさせながら、欲しい所だけ貰って責任はポイ、出来る『死の商人』を選んだってワケ。」
「……確かに、面倒そうね。貴族が煩いのは常だし。」
「でしょう? んで、そんな計画に加わってくれる“共犯者”には、信頼の証としてこれを見せた。」
「えぇ、勿論解ってるわ。外部に漏らしたら“消す”のでしょう? そんなつもりはないけれど、ミーちゃんの邪魔になるのならばこんな命いらないわ。手間をかけさせてしまうのは本当に申し訳ないけれど、気にせず処理して頂戴。」
「…………私どう思われてんの!?!?!?」
い、いやまぁ必要になればしますけど! しますけども!!!
そ、そんな冷たく見られてるの私! これでも結構友誼結んだ相手と敵対するの、嫌な感じのドロイドですよ私! 元人間なせいかそういった感情バリバリありますからね!?!?!?
「ふふ、そんなの百も承知よ?」
「知ってて言ってるの!? ……ほ、ホントにヤバいね、ルーちゃん。」
「あら、誉め言葉かしら。」
「……ウン、ソウダネ。」
無敵か?
……あ、そうだ。一応聞いとくか。
ルーちゃんルーちゃん。一応なんだけどさ、この星の天文関係の発展レベルって、どんなもんなのかな? 一応対外的には『なんかドロイドっていう兵力を沢山持ってる謎の激ヤバ死の商人』って感じで行くつもりなんだけど、ルーちゃんみたいに辿り着いちゃう子もいるでしょう? 最悪消せば丸く収まるけど、基準は知っておかなきゃなーって。
「そうね……。一応聞くけれど、天動説と地動説、これに似た概念はあるかしら?」
「あ~、そういう?」
「大体わかってもらえるみたいね。想像の通り、宗教的な教えに則ってこの星が中心だと考えている学派。対して星の動きと連動する魔法を使うがゆえに太陽を中心に引力が引かれているとする学派。この二つがいる感じよ。」
はぇ~。……というか星の動きの魔法とかあるんだ。
「えぇ、規模が大きいものは大体そうらしいわ。でも、ルーちゃんの惑星に“魔力”って概念が無いのなら……。この天体。その周囲にのみある法則なのかもね。私は薬学とか魔道具を専門としてるからよく解らないのだけれど、周囲を動く他の惑星とか、太陽自体も魔力を持っているみたいよ?」
成程なぁ~。
ルーちゃんは知らないことだが、実は私がいた銀河にも似たような存在はあった。以前ウチのドロイドが魔法のことを“超能力”と称したように、まぁそういうのがあるのだ。手をかざすだけで物を動かせたり、相手の精神に影響を与える技なので、私も知った当時は『フォ〇スやんけッ!?』と慌ててものだが……。アレは単一の種族のみが使用できる特殊能力だった。
「……この星系独自のルール、なのかな? ここの恒星から何か放射されてる、的な。まぁアタシたちにとって魔力ってまだ“見えない”存在だから、何も言えないけど。」
「なら今度、視認できる魔道具も作らないとね。……かなり制限されると思うけど、今度母校から色々と取り寄せてみるわ。情報が必要なのでしょう? ミーちゃんが竜の素材をくれたおかげで、お金だけは手に入りそうだし。」
すごく不本意なお金だけど、と続けながらそう言ってくれるルーちゃん。
本人によるとそこまで良い大学ではないそうだが、専門的な蔵書を取り寄せたり、購入するにはちょうどいい伝手なのだという。色々と申し訳ない気持ちはあるが、私達の事情をある程度伝えた。いや正確に言うならば彼女が勝手に“察した”。
だからこそ、初歩的な内容のものから取り寄せてくれるのだろう。“魔力”に対しては未だ未知なことが多いし、書物が手に入ったら、専門の研究チームでも発足させるべきかもね。
「っと、話し過ぎちゃったね。このまま立ち話ってのもなんだし、船の中も見てく? 別の星の料理とか気に成るだろうし、色々用意させてるよ?」
「ふふ、ならお言葉に甘えましょうか。」
〇コンカラー級超弩級航宙戦艦 5番艦 デスドミニオン
民主主義を守る鉄の巨城にして、皇帝屠る死の天使。
圧政を強いる帝国を征服することで、民主主義の祝福を神に代わって届けるという使命が与えられた本艦には、『勝利』以外の2文字は無い。(大本営発表)
A&H Shipbuilder社(ンャチタナア&ハイツレギスタ)によって製造させたコンカラー級。その5番艦。全長5050m、全幅2700m、全高1120m。総質量17.9億tの超巨大戦艦。長く伸びた二等辺三角形タイプの船舶であり、連合国軍が採用している船と同系統となっている。
艦隊戦で勝利するための超弩級戦艦として開発されたが、その本質は“多目的戦艦”。
100門を超える超出力ビーム主砲を用いて敵艦隊を撃滅する“戦艦”としての役割は勿論。
2000機近い艦載機を用いて敵軍を先んじて処理する“空母”。
20,000を超える機関銃と各種ミサイルをもって敵艦載機を撃滅する“護衛艦”。
特殊重イオン火砲をもって惑星を爆撃する“制圧艦”。
数百万近いドロイドを一度で輸送し降下させることが出来る“輸送艦”。
その他複数の役目を一度に熟すことが可能だ。
またこの多目的に由来する複雑さから、必要乗員数が50万人ほどになるという欠点があったが、連合国の十八番であるドロイド運用にすることで、通常ドロイドで5万体。とある特殊なドロイドを用いることで、1体での運用が可能となっている。
この5番艦『デスドミニオン』は本来『ドミニオン』として命名される予定だったが、高位戦術ドロイドHT2-392が艦長を務めることになったことから、急遽変更。同時に大規模改装が施されることが決定された。この時“複数の”身元不明者から多額の献金があったことは、公にされていない。
なお5番艦ながら、実は1番艦にして連合国軍旗艦『セラフィム』よりも性能が各段に高いのはA&H社内では公然の秘密であり、とあるドロイドを艦長として置いたとき、同型艦との模擬データ戦闘の勝率が9割を超えているのも秘密である。
ちなみに『デスドミニオン』と命名したのはミクニではなく、ンャチタナア・オートマタ社を含めた超巨大企業連合、『ンャチタナア・グループ』会長の『ンャチタナア氏』によるもの。なんかデスが良かったらしい。最近の趣味は“観察”らしいが、本人以外何を見ているのか不明。