とまぁそんなわけで。
お客様としてルーちゃんを案内してたわけなんですけど……。
「……なるほど。ここでエネルギーを加速させて放射させてるのね。同時に圧縮もこなしてるから、飛距離と威力を安定させている。しかもコレ、貴方たちの動力源からチャージできるのでしょう? 実質無限ってわけね。」
『ところがそう簡単ではありませんで。こういった“動力源”になりうるものは一般的なドロイドに搭載されてません。特注はまだしも、我々のようなものには無いのです。ただその代わりとして補給パックのような存在や、船から自動的に充電される機能が付いています。』
「へぇ……。魔石による“使い捨て”の実用化は私が初めてかと思ってたけど貴方たちが先だったのね。凄いわ。」
『いえいえ、“魔力”では貴女が最初でしょうに。確かに方式は似通っているでしょうが、根本が違うのです。もっと胸を張ってもいいかと。……して、素人質問で大変恐縮なのですが、こちらの魔法陣。解読した限り、この辺りがもっと簡略化できるのでは、と。』
「あぁ、それね。でもそこを外すと全体のバランスが悪くなっちゃうの。魔法陣の基本って“円”だから、そこから外れると効率が悪くなるのよ。……でもそこに気がつくってことは、かなり出来る口なのね。ならちょっと相談があるんだけど、このホーミング機能をもっと上手く嵌め籠めないか……。」
う~ん、めっちゃ技術の話してる。
いや解るんですよ? 私も知識はインストールされてるので、付いて行くことはできると思うんですよ。ただまぁ専門じゃないので解らないというか、理解しようとする気力がわかないというか、ちょっとそういうの考えるのがしんどいというか、元文系なせいか拒否反応があるというか……。
彼女を戦艦に招き入れた後。本人の希望もあり、内部の案内はそこそこに、この“メカニックドロイド”たちが集まる区画へと連れてきていた。
(ルーちゃんが異様に理解し過ぎちゃったせいで色々とあやふやに成っちゃったけど、“主目的”の私達の力を見せるっていう目的は出来た。後は更なる友好関係の構築、ってのもあったんだけど……。)
これ以上仲良くなりすぎると、彼女がよりヤバくなりそうで正直怖い。
とまぁそんなわけで、副目的であった『ウチのメカニックとの技術交流』をするために、彼女をここに連れて来たわけだ。んでまぁその結果が……、この感じ。ルーちゃんも若干職人気質があるから、ウチのドロイドたちとは仲良くなれそうだなぁ、って思ってたんだけど。
『この文様だが、圧縮はできんのか? こんな感じに』
『いやそれだとおそらく違う意味になるだろう。』
『もとの意味合いから逸脱しすぎている。そも構造が崩れ魔力が流れないのでは?』
「……そう、ね。これは“縮小”の意味になっちゃう。威力が下がるだけよ。あと、魔力の流れだけど、第2区画の配置を変えれば、こうやって別方向から流すことも……。」
『なるほど、確かに!』
『高難度パズル、自分でピースを決められるタイプの奴みたいだな。』
『これはこれで奥深い……!』
「タ、タノシソウデ、ナニヨリ……」
パズルとか言ってる奴いるけど、高難度のレベルが高すぎて常人じゃ溶けない奴だからね、それ?
報告書の類として情報こっちに流れてきてるからこっちも概要は何となくわかってるけど、三ツ星シェフが高級レストランの料理食べて『あぁこれね、作れる作れる』って言ってるようなもんだからね? 一般人にはマジで無理な奴だからね!? レシピ教わっても欠片も作れない奴だからね!
……というか全員夢中になり過ぎて、全員私がここにいること忘れてない?
(まぁいいけどさぁ……。この分だと、案外早く開発が終わるかもね。)
現在ルーちゃんは、私からの依頼という体で“魔法銃”の開発を行っている。
鉄の筒の内側に魔法陣を描き、魔石を投入することで魔法を放出できるソレ。一応理論上は全ての魔法を発射することが出来るらしいが……。内部に書き込む魔法陣を魔法ごとに開発する必要があるらしく、若干難航し始めていたらしい。
本人によればまた地獄の7連続徹夜をすれば作れるみたいなことを言っていたが、普通に死ぬ可能性があるから却下。というか以前のダメージがまだ残ってるっぽいので、休養させていたのだが、今の彼女たちを見る限り。ウチのドロイドたちが良い影響を与えているっぽい。
これなら……、ちょっと“こっちの計画”を進めても十二分に間に合うだろう。
そんなことを考えながら、繋げるのは通信。
相手は勿論、ウチの戦術ドロイドだ。
『こちら艦橋、T2-6622であります。艦長、如何されましたか? 確か現在はお客人の応対だったはずですが。』
「今はメカニックたちが相手してる。そのせいでほら、ちょっと暇になってね? 例の計画の進行状況を聞きたいの。ちょうど君が確認の担当だったでしょ?」
『あぁ、なるほど。その件でしたら、先ほど試案が上がってきております。未だこちらでのダブルチェックが終了していないものになりますが、御覧に?』
「いいね! 頼んだ!」
そう言えば、即座にデータ群を送ってくれる彼。
んで、コレが何かというと……。
先日確保した魔族。そいつが持っていた情報を使った“誘導”計画だ。
(せっかく『死の商人』としてデビューするんだ。初戦は大きく、そして印象に残るものが良い。だったら敵の迫力がなきゃ、締まらないってもんでしょう?)
敵魔族の“脳ミソ”まで閲覧したおかげで、彼らの暗号やそのやりとりの方法。文字通りすべてを手に入れることが出来た。お陰様で現場レベルの情報に限られるが、ルーちゃんたちが居る町への『襲撃計画』のすべてが筒抜けである。
ここままでも十二分に戦果を叩き出すことが可能。敵がやってくる前に、近くへ仮拠点を設置。敵が現れた瞬間に、空から颯爽とドロイドたちを配備していけば簡単に勝つことが出来る。
でもせっかくならば……。今相手が出せる全兵力を“喰らい尽くし”たい。
相手が大きければ大きい程、記憶に残る。そしてそれを打ち倒せば、よりこちらの強さをアピールできる。ドロイドを兵力として大々的に売り出し、資金や影響力を手に入れ鉱山を手に入れるには、やはり最初でしくじるわけにはいかない。
(ま、早い話。魔族のスパイに成り代わって“ちょうどいい”情報を流しに流す。後は敵さんが全兵力を此方に向けて進めるように仕向けちゃお、って計画だ。)
自身で考えても良かったのだが、普通に面倒……、ではなく。配下の戦術ドロイドたちにも経験を積ませる必要があると感じ、色々とお願いした感じだ。今はその試案を確認してる感じだね!
本来は複数のドロイドで立案し、無関係のドロイドがチェックしながら添削。それを繰り返しながら制度を高め、最終的に私に持ってくるんだけど……。
「うん、見た感じ悪くないね! 一応赤字いれといたから、その分だけ再確認して、修正したら提出するように言ってくれる?」
『了解しました、ではそのように。』
「お願いね~!」
軽く見た感じ、非常に面白いこと。
あちらにとっては最悪なことになりそうで、大変結構な作戦だった。
うんうん、やっぱ戦術ドロイドは悪辣じゃないと務まらないよねぇ。敵がこちらを嘗め腐って、数の優位にうぬぼれてる時に、それを圧倒する力で全て吹き飛ばす。驚愕に染まりながら光に包まれ消えていく姿を想像すると、とっても楽しくなっちゃう。ウチの銀河じゃ基本だけど、情報戦でやらかした軍に勝利なんて存在しないんですよ……!
(っと! まぁこんなもんかな! んで、そろそろルーちゃんたちの話は落ち着いて……)
そんな考えながら再度ルーちゃんたちの方に視線を向けていると……。
何故かもう、完成している魔法陣が。
あの、えっと。
ソレ、魔法銃用のファイアボールじゃ……?
「え!? あ、あぁごめんなさいミーちゃん。つい熱中しちゃって!」
「う、うん。別にそれは良いんだけど……。」
「あ、これ? さっきミーちゃんが言ったように、魔法銃用のファイアボール、その魔法陣よ! スペース的にホーミング機能は付けられなかったけど、自動照準機能を付けられたおかげで、かなり命中率は上がったと思うわ! ダメージ量も、メカニックドロイドたちが言うには、多分D2ドロイドって子の? 装甲を溶かせるくらいかしら!」
「Oh……。」
あ、あの。ちょっと目を離しただけなんですケド。
その隙に最初に見たスクロールレベルの奴が出来てるんですけど。……え、マジで魔法銃完成しちゃった? もう!? ほんの数十秒目を離しただけだよ!? その隙に!?!?!?
「そうよ? 何かおかしなことでも……。あ! 今はちょうど、よりよい発射機構についてのお話をしていたの! 私としては安定性も考えて、単発式が良いと思うのだけど……。」
『いやここは連発できるように砲身自体を加工すべきだ!』
『しかしそれでは内部魔法陣がゆがむのでは?』
『だが連射機構は必須だぞ?』
『ならばガトリング方式はどうだ!』
「ガトリング? 知らない単語ね。」
『こう、複数の砲身を回転させることで、廃熱と弾薬補給、そして連射速度をいっぺんに上げる方式だ!』
「なるほど……。ねぇ、この魔石の補充。“給弾”っていうのかしら。これ、革の帯とかに押し込んでおいて、それを適宜打ち込んでいく、ってのは出来ないかしら?」
『なるほど、かなり原始的なガトリング砲にするのか。』
『貴殿の事ならば何かしらの理由があると思うが……。』
『もっと効率化できるわよ?』
「この魔法銃、耐久度のテストを一切やってないの。どれだけ持つか解らない以上、いきなり連射するのは色々と懸念があるでしょう? 使用後に一つ一つ確認調査出来るよう、仕組みはシンプルな方が良いと思うの。貴方たちの“給弾方式”って、少しハイテク過ぎるせいか、砲身と密着しすぎちゃうでしょう?」
『確かに……!』
『最初は改善点が分かりやすいようにすべきか。』
『ではまず単発式のものを試作として1万丁ほど、ガトリングタイプは10程度用意することにしようか。』
『使用感のレポートを出させるためにも、D2ドロイドのみの配備にすべきでしょうね。』
『D1だと確実に暴発、もしくは壊すからな……。』
あ~~~~~、うん。
とりあえず魔法銃と魔法ガトリング砲の生産を許可したらいいのね。
……ルーちゃんもだけど、ウチのメカニックってバケモノか?
「ま、まぁウチの戦力が増強されるならそれでいいか。うん。」
あ、そうだ。ちょいごめんそこの護衛ドロイド、あ、うん。君ね?
さっき私が通信してた戦術ドロイドいたでしょう? 今からちょっとひとっ走りしてさ、彼に『偵察ドロイド』をばら撒くように言ってくれる? たぶんそう言えば、良い感じに察して作戦に追加してくれると思うから。……え、どこにばら撒くかだって?
そりゃ今回のお相手。魔族さんがいるところでしょうに。
折角“善意の協力者”のおかげで相手の居場所割り出せてるのよ? 相手がこっちの思う通りに動いてるか確認するためにも、そして討伐後に新たな情報を手に入れるためにも、『視点』は多いことに越したことはないからね~!
〇ンャチタナア
ンャチタナア・オートマタ社を含めた超巨大企業連合、『ンャチタナア・グループ』会長。
飲むと体力が全回復する代わりに精神が抉られるという謎の健康食品を販売する会社からスタートし、驚異の急成長を決めながら、1代で銀河を股にかける巨大企業を生み出した傑物。本人の自己申告では300万歳らしいが、ミクニ達が住む銀河の絶対的なルールとして『どんなに頑張っても寿命は千年前後』というものがあるため、眉唾物。ただ長命種であることは間違いなく、300年以上生きた記録が残っており、口からビームも撃てる銀河の“バケモノ”に相応しい存在。
現在は経営の一線から退いており趣味に没頭しているようだが、時たま現場に降りてきて問題等を引き起こしていくのが特徴。
なお『D1ドロイド』の設計開発も彼女の仕業であり、当初は全宇宙の子供に無料配布するオモチャとして作られていた。ただあまりにも完成度が高かったせいか、軍用として連合国に独占されるように。そのせいか彼女自体連合国に対する思い入れは欠片も無く、あと百年くらいで自然崩壊しそうだな~、って思ってる。
ミクニ本人は彼女の正体を知らないが、ミクニ製造時や新ボディ作成時にンャチタナアが『掃除のおばちゃん』として謎の潜入を決めており、滅茶苦茶仲良くなっている。その過程でミクニの中身に関してある程度の確信を得たようだが、面白かったのでそのまま放置している模様。特に手を出すつもりはなく、ずっと見ているつもりらしい。
ミクニ
「え? あぁ掃除のおばちゃん? 覚えてるって、そりゃ~! ほら最初の戦場行く前にさ、輸送までの待機時間あるじゃん? あそこでめっちゃ話したし、お小遣いも貰っちゃったんだよね! んで今のボディになった時もまだ工場で清掃員しててね? 『綺麗な体になったねぇ!』とか言われながらケツ叩かれちゃった! 明らかに変人の類だけど、面白いしめっちゃ良い人だよ! ドロイドに偏見とか無かったしね~!」
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