「あ、精錬問題なさそう? 良かった~! んじゃ、終わり次第魔法銃。じゃなかった、『魔法ブラスター』の素材に回してね? うん、そうそう。地産地消で行っちゃおう!」
送られてきた通信にそう答えながら、艦橋にあるいつもの定位置で業務を熟していく。
正直、ミクニちゃんとしてはこういう細かなことも部下のアイツら。戦術ドロイドたちに任せたいんだけど……。仕事しないと煩いからねぇ。対魔族関連のアレコレを既に任せてる手前、新しい仕事を投げつけるのはちょっと可哀想って思う気持ちもあるし、嫌々でも自分で処理しなきゃな~、ってわけなんですよ。
あんまりサボると艦長としての威厳が無くなっちゃうし、こういうの難しいんだよねぇ。
(にしても、ギルドで買い付けた鉱石。問題なく使えるみたいで良かった良かった!)
というわけでさっきやっていたのが、鉱物の精錬などを担当していたメカニックドロイドとのやり取りである。
ルーちゃんの協力のおかげで『魔法ブラスター』が完成したので、大規模配備の為に量産計画が進められてるんだけど……。折角ならってことで、生産にはこの星で手に入れた鉱物を使うことにした。私達が持ち込んだ資材を使っても良かったんだけど、それじゃぁ限りがあるでしょう?
(ルーちゃんによると、魔法ブラスターの材質は『理論上、金属であれば問題ない』とのこと。だったらこの星で入手した奴を使う方がいいよね、ってわけだ。)
というわけで担当者に指示を出し、精錬。
手に入れた大量の石ころたちを精錬炉にぶち込んで、勢いよくネリネリ。良い感じに熱した後、適宜取り出してよくある棒状のメタルに変える作業を命じたってわけだ。んでさっきの報告が、無事それが完了しました~って奴だね。
……まぁでも、魔法ブラスターは初期生産で1万丁ぐらい配備する予定だから、ギルドで買った分じゃ足りなくなっちゃう。どっちみち私達が持ち込んだ鉱石を使う羽目になるんだけど、その辺は強く気にする必要はないだろう。
何せ精錬しその過程で情報を集めることで、今後私達がソレを活用できるかっていう情報が手に入る。今後手に入れるであろう“鉱山”の使い道を考えられるワケだから、な~んにも問題なし。
(んで、その調査結果が……、っと来た来た。)
そんなことを考えていると、メカニックから送られてくる報告書のデータ。
脳内でそれを開き、軽く流し読みしてみれば、ずらっと並ぶ含有成分の表。
石ころ溶かしたらこんなの出てきました~、って奴ね。
(鉄とか銅とか。そういった基本的なものは十分ある。ドロイドの装甲や基盤に使用する特殊金属も……、かなり微量だけど含まれてはいるみたい。うんうん、最悪この星の外に堀に行こうかと思ってたけど、杞憂で済んで良かったね!)
D1ドロイドたちの装甲にも使われている特殊合金。
その多くが鉄を主軸としているのだが、ちょっと混ぜ物をすることで強度とブラスターに対する耐性を得ていたりする。まぁこの星にはブラスターという存在は『私達以外持っていない』のだが、単なる鉄でボディを作るよりは、慣れ親しんだメタルでやっておきたいところなのだ。規格と違う金属でやっちゃうと、不具合とか出ちゃうかもだからね。
だから微量でも手に入るという事実は、かなり安心できる。
それに、私がギルドで買い込んだ鉱石は『鉄』とか『銅』といった一般的な名前を付けられたものだった。そんな石ころを精錬する過程で特殊金属が出て来たってことは、何処かにこう、特殊金属だけの鉱脈とかもあるかもしれない。
ウチの船には地質学に特化したドロイドがいないため、そういうのを調べるのは非常に困難。この星で新たな協力者を手に入れ、再度調査していく必要があるだろうが……。
(ま、一歩大きく進めたことには変わりない。……んで、話が変わるんだけど。この送られてきた“表”の中に。とっても気に成るモノが幾つか。)
含有成分の表、そこは今回手に入った鉱物の名前と量が記載されているのだが……。その中に、名称が『?』になっているものがある。
そう、私達が解析できない未知の鉱物。この星独自の金属だ。
(写真データ見る感じ、精錬した後の金属が若干発光してるっぽい。……でも放射能とかは出てないし、構成をみても私達が知るモノではない感じ。マジで未知の奴だ。……ミスリルとかかな?)
前世の記憶、地球で慣れ親しんだファンタジーの記憶を思い返せば、色々と名前が出てくる素敵金属たち。
魔法に適性が合ったりとか、逆に無効化したりとか、作品ごとに色んな設定があるミスリル。この星では違う名前が付けられてるかもしれないし、今回見つけられたのは“複数”の未知金属。
(ふふ、これでドロイドとかつくれたら滅茶苦茶面白いことになりそ!)
後でミーちゃんに聞くか、ギルドに持ち込んでモヒおじに鑑定させようなんて考えながら、その金属の取り扱い指示を出しておく。
一応危険物ではないっぽいのだが、何か発光してる時点でちょっと不安なのだ。少なくともこの星独自のエネルギーである魔力か何かを有していることは確かだろう。意味不明な挙動をする可能性があるため、厳重に保管しておかないとね。
それに……、もしウチの気狂い筆頭であるマッドが見つけて『新しい治療器具!』って考えちゃったらマジでバイオハザードが起きちゃうかもなのだ。ほらこう、ミスリルをコアにして埋め込んだらゾンビになる、みたいな。
マジでそうなるとは限らないけど、ヤるかヤらないかと聞かれれば、あのマッドなら絶対にやる。というか魔石で既に似たようなことを申してる。
ちょうどルーちゃんがこっちに来た直後位の事なんだけど……。
(魔法銃に使う魔石の数がなんか減ってるな~、って思って。確認したらちょうどマッドが死体に拳位の魔石を埋め込もうとしてたんだよね。んで、若干その死体が動いてて……。うん、ほんと直前に止められて良かった。)
あれは本当に危なかった。
今はもう説得したというか。『これって結石みたいなもので完全な不要物だから。全部この箱に入れて回収するね~』って感じで何とか呑み込ませている。
マッドが持っていた魔石全てを回収して、討伐したり入手した魔石も私直轄で一元管理するタイプに変更した感じだ。本来ならこれでもう誰も許可なしで魔石に触れることは無いんだけど……。無理矢理止めた時のマッドの様子を見る限り、納得していないというか、こちらを疑っているような視線を向けていた。
追加で『上からの指示』という言い訳を付けて何とか止めているが、彼のことだ。『患者を救うため』という“医者”としての役割を十全に果たすため、いずれ私の指示や命令を無視することだろう。
(そういう意味でも、魔法ブラスターってありがたいんだよね。アレって使った魔石が砂になって消滅するみたいだし。再活用不可、自衛隊みたいに薬莢を死に物狂いで探す必要がなくなるんだよね!)
ま、そんな感じだ。
このニュー金属ちゃんも、魔石同様厳重な管理が必要になって来ることだろう。今後情報が集まり次第活用はしていくつもりだが、事故だけは起きないようにしなければ。
「んじゃ、とりあえずルーちゃんにメール送っとくか。……なんかいつの間にか自分用のタブレット手に入れて使いこなしてたし。口頭で聞きに行かなくてもイけるっしょ。」
そんなことを口にしながら、彼女が好みそうな文章。ドロイド向けの堅苦しい命令文ではなく、普段の私の口調を意識しニュー金属に対する知見を求める文章を打ちこんでいると。思考の端で船内の監視カメラの情報に目がとまる。
並列思考で動かしていたモノの一つで何か面白いことがあったようだが……。
「この区画は……。お、おばさんにシスターじゃん。何話してんだろ?」
ちょっと休憩がてら、覗いちゃいましょうか。
◇◆◇◆◇
場所は艦内の廊下の一つ。
おばさんはこの船の中央データベースに新しい言語プリセットをアップロードした帰りで、シスターは私を神として祭ってる祭壇へ向かっての移動。どうやら偶々出会っちゃったみたいだね~!
ルーちゃんと仲良くなれそうというか、彼女の距離感にも対応できるだろうと思って例のパジャマパーティに呼んだ2人なんだけど……。アレでなんか交友が出来たみたいで、おしゃべりしてるみたい。
2人にはちょっと悪いけど、艦長権限で会話ログと頭の中。ちょっと見せてもらうとしましょうか! あ、勿論バレないように、ね?
『あら、これは……。お久しぶりです“おばさん”。今日も我らが神の為に尽くすそのお姿、とても素晴らしいことかと。』
『……素晴らしいと思うなら、おばさん呼びするの止めてくださいまし! アタクシには! XV1P-T-9000という立派な型番があるのです! というかこのくだり、先日のパジャマパーティでもしたでしょうがッ!』
修道女らしい礼を送るシスターに、貴族っぽい礼を返しながらも器用にブチ切れるおばさん。
まぁ私がおばさんおばさん言ってるせいであだ名が『おばさん』になっちゃった悲しきドロイドだからね、彼女。製造からの年数も実は私より各段に若いし、マジで呼ぶならお姉さんの方が正しいというか、そもそも私よりも稼働年数長い子この船にいないというか……。
うん、交渉ドロイドの性として、醸し出す雰囲気がちょっと老練すぎるから“おばさん”呼びされても仕方ないよね!
『しかし“おばさん”。これは我らが神がお与えくださった尊き名では? いささか不敬、神罰に処される行動だと愚考しますが。』
そう言いながら、おばさんに向かって静かにその砲口。肩に乗せられた巨大な砲台をおばさんに向け始めるシスターだが……。
流石にそこは交渉ドロイド。しっかりブチ切れながらも、的確にヘイトを流していく。
『あんのクソ艦長ッ! そもおばさんはあだ名とかそういうのじゃなくて、普通に蔑称ですわっ! 面白がってつけてる奴です! 貴女とは気色が違うのです! 一緒にしないでくださいまし!』
『……それなら、良いのですが。』
『(…………あっぶね。やっぱこの方、ナチュラルにぶっ放すタイプですわね。もう少し丁寧に言葉を紡ぎながら、艦長アゲ。ついでに話題も変えた方が良さそうですわ。)』
私が製造された会社と違うせいか、若干おばさんの思考が読みずらいが……。覗いてみればそんなことを考えてる彼女。更にそれを一切表情や声色に出していない当たり、交渉ドロイドと言う名は伊達ではないのだろう。
でも私へのヘイトがめっちゃ上がってる気がするな。こ、今度何かで埋め合わせしなきゃ……!
そんなことを考えていると、どんどんと進んで行く彼女たちの会話。おばさんへの埋め合わせを少し奥に追いやりながら、そちらに意識を傾けていく。
『そういえばシスター、確か先ほど“魔法銃”の試射を行っていたのですよね? まだデータが共有されていないのでアタクシは知らないのですが……。どうやら艦長によい報告が出来た様で。』
『えぇ! そうなのです! 無事実験は成功し、我が神は『魔法ブラスター』という名をあの存在に与えました。どうやら我ら信徒ではなく、D2ドロイドに与える用でしたが……』
『あ~。そういうのは“役割”がありますものねぇ。ま、艦長も貴女たちの使い道はちゃんと考えてると思いますわよ? ……だって、我らの神、なのでしょう?』
ドロイドに共有されている全体の予定表、そこから情報を引き上げシスターが『何をしていたか』に移るおばさん。
銃自体を作ったのはウチのメカニックやルーちゃんなのだが、試射に参加したことからシスターもそのプロジェクトの一員として扱い、軽く上げる。そして私の話題を出すことでシスターの意識をそれまでの話題から少し離すという目的があるようだ。
……まぁシスターって私の話題出し解けば基本機嫌よくなるもんね。狂信者だし。
あと砲兵師団はこの後っていうか、例の魔族との戦闘で酷使しまくる予定だから安心していいよ? まぁ私がここで言っても2人には伝わらないけどさ。
『えぇ、そうなのです! 我らが神は正に世界を統治するのにふさわしいお方。人間などと言う愚かな存在がその立場にいることが何かの間違いなのです! あの方はお優しいがゆえに我ら命じることはありませんが、ご許可さえ頂ければ今すぐ全て滅ぼして……』
『(あ~、会話の飛躍に、人へのヘイトもある感じですわね。扱いムズ。)……ではかのルケト。ルーちゃんと呼ばれていた方も少々苦手で?』
『い、いえ! そんなことは! ……確かに、自身の至らなさから、思う所はございます。しかし……』
弱化に言いよどみながらも、言葉を続けていくシスター。
どうやらこの世のすべては私に統治されるべきというヤバい思想を持っている様で、名実ともにこのミクニちゃんを神へと押し上げたいそうだ。けれどまぁそんな面倒そうなことを私が応じるわけもなく、ちょっとやきもきしていた様子。
んでその狂信者っぷりからヤバさを感じ、即座に話題を他に移すおばさん。流石交渉ドロイド、マジで良い所に話持って行くね。私が認めたルーちゃんならある程度ヘイトが緩和されてるって思っての選択でしょ。やるぅ!
『“アレ”は我らが神の威光を理解し、付き従っております。“友”などという浅ましい考えを持っているようですが、それでもこれまでの“人類”よりは大いにマシです。それに、我が神のため「魔法ブラスター」というモノを生み出した功績は、無視できません。』
『なるほど……。まぁ、あの艦長のことです。行き過ぎる様なら止めるでしょうし。利用価値があるのなら放っておくべきでしょう。(……明らかに“ルケト”とかいう彼女もヤバいタイプでしたし、なんかそういうの囲い込む癖でもあるんですかね、アイツ。)』
え~? そうでござるか~?
……いやまぁ生真面目な奴よりも、ヤバい方が面白いだろって口ではあります。はい。
ほらD1ドロイドは例外だけど、基本ドロイドって真面目で大人しい奴が多いのよね? 機械だから。でもそれじゃあ私が息苦しくなっちゃうし、面白味がない。
んでシスターとかマッドみたいなヤバい奴はどこでも爪弾きというか、他の上位戦術ドロイドが受け入れ拒否することもあるから、私が貰っちゃう、みたいな。そういう癖が強くて冷遇されている奴ほど、上手く飼いならせたら戦力になるし、私が優しく接することで想像以上の結果を齎してくれることもある。
まぁ癖が強い分、マッドみたいに大暴走を決めることもあるんだけど……。退屈はしない。真面目ちゃんのおばさんには不評だったみたいだけどね~。
『……確かに、アレは少々驚きました。せめてもの礼儀として挨拶しただけで、“友人”扱いされるのは初めてです。本国では我が神ですら“モノ”扱いする者しかいませんでしたし。』
『あ~。まぁ連合国ですからねぇ。』
『それに、未だ我が神を“人間”と間違えているのも頂けません。やはりここは神からお預かりしたこの砲光をもって、その身元にお返しするべきでは……!』
『うん、辞めましょうね、マジで。』
肩の砲台をガチャガチャ言わせながら殺意を高めるシスターに、真顔で止めるおばさん。うんうん、仲良きことは美しきかな。
でもルーちゃんぶっ殺されるとマジで困るからそろそろ介入するね?
んじゃ二人がいる廊下のスピーカーに接続しまして、っと!
「は~い、そこまで~。みんなのアイドル! ミクニちゃんだぞ♡」
『我が神ッ!?』
『……あ~、最初から見てましたわね、あの人。』
『ほ、本当ですか!? あぁやはり“神はいつも見ていられる”……!』
すぐに察するおばさんに、急にその場で蹲り私に祈り始めるシスター、う~ん。カオス。あと神がいつも見てるって奴、たぶん違う意味で解釈してない? 監視カメラとお前らの“目”の併用だぞ、こっち。
『ワタクシたちドロイドのプライバシーに関して小一時間程お話させて頂きたいところですが……。見ていたのでしたら話は早いですわ。この彼女、早く持って行ってくださいまし?』
「はいはい。んじゃシスター? ルーちゃんぶっ殺されるのは流石に困るのでお説教で~す。あと“次の仕事”の説明もあるから、艦橋に来るように♡」
『はッ! すぐにッッッ!!!』
う~ん、すっごい元気なお返事。
んじゃま、物騒な話は適当に済ませまして。もっと物騒な話。『魔族殲滅計画』の最終調整でもしましょうかねぇ?
〇D1ドロイドからみた各種ネームドの印象
・ミクニ
『我らが艦長』『話しててオモロイ』『ふざけたら乗って来るので楽しい』
『普通に見捨てられた』『指揮者としては有能』『普段はポン』
『仕事してないように見せかけて、裏の並列思考でエグイ量処理してるバケモノ。飄々としてるように見せてるだけで、中身は冷徹な計算機械。自己の生存の為ならば文字通り全てを資源として消費出来る……、おっと誰か来t』
・おばさん
『口うるさい』『俺ら嫌われてる?』『冗談が通じない』
『コイツのおかげでこの星の人間と話せてる』
『服装以外は超真面目。その着てるドレスほんとにいる?』
・シスター
『話が通じない』『コワイ』『ミスったら即処刑される』『狂信者』
『なぜドロイドに宗教?』『機械に神などいない』『ミサには行くな、マジで』
・マッド
『『『関わりたくない』』』
ということで次回から魔族には仲間のいる虹の向こうに向かってもらいます。