異世界バトルドロイド軍団   作:サイリウム(夕宙リウム)

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35:戦の足音

 

 

「はろはろ~、女将さん! やってる?」

 

「あぁミクニさんかい! やってるよ! 今日もいつもので良いのかい? ちょっと待ってな!」

 

 

まぁそんな感じであれから数日後。

 

私は例の町、 『グレズナ』にやってきていた。ほら、始めてやって来た時に止まった宿屋あったでしょう? そこにお邪魔させてもらってる感じ。まぁ最近は泊まりに来てるんじゃなくて、普通にご飯食べに来てるんだけど……。まぁ女将さんが気にしてないっぽいからヨシ!

 

 

(今後この町に寄る機会は減るだろうけど……。ここの店に来るためだけに足を運んでもいいかもね~。)

 

 

この町はルーちゃん、ルケトこと魔道具屋の店主。現在唯一の現地協力者である彼女の家がある場所だ。性格に多少難は有れど、その能力は稀有なモノ。彼女の好感度を稼ぐためにも、一定の戦力を配置し保護する価値がある町だったのだが……。

 

最近の彼女。というかウチの船に連れて来た後のルーちゃん。

 

あれから一度も家に帰ってないんですよね。うん。

 

一応何度か説得しようと試みたのだが、毎回激しい抵抗を受け失敗している、最初のころはその場に寝転んでジタバタする程度だったのだが、最近は話題を出しただけで号泣し泣き喚く始末。近くの柱に抱き着いて『一生帰らない』の構えをする程度など可愛いモノで、スイッチ一つで爆発する魔法薬をまた全身に巻き付けて脅迫して来るレベルだ。

 

……別に一生お泊りでもいいけどさ、アイツ大人としてそれでいいのか?

 

 

(ウチに来る時異様に荷物が多いって思ってたけど、最初から居座るつもりだったんだろうな……。)

 

 

まぁそんなわけで、既にこの町には“利用価値”しか存在していない。

 

宿屋の女将さんや、ギルドのモヒおじ。そのほかこまごまとした付き合いがある人間しかおらず、戦略的に保護すべき人材。私が高位戦術ドロイドとして確保すべき場所ではなくなってしまった。そりゃ情もあるので多少のコストで助けられるならするけど、無理に守る必要な無いって感じ。

 

街が残ってて、対象となる人が生きてれば会いに行って、店が残ってたら食べに行く程度のこと。ま、そんな感じだね~。

 

 

「はい、お待ち! 昨日の兎煮込みの残りを、ちょっとパンにはさんでみたらしいよ! んで、お得意様のミクニさんにはサービスでチーズトッピングだ! あおがりよ!」

 

「わ~い! 女将さん大好き~! ……最初みたいに嬢ちゃん呼びでいいのよ?」

 

「かーッ! ウチ一番のお得意様にそんな口きけるかい! いやだったらたらふく銭落していきな、お嬢ちゃん!」

 

「女将さん……ッ!」

 

 

そんな女将さんの声に満面の笑みを返しながら、出された料理にかぶりつく。

 

ちょっと堅めのパンを焼いて柔らかくして、開けた切り身の中にほぐした兎肉と煮込んだ野菜が挟まったもの。そこにおそらくヤギのチーズをふんだんにかけた“お得意様”特別メニュー。うんうん、マジで美味い。

 

そして周囲、私同様に朝だけ食べに来た人や、宿泊客で朝食を食べに来た人。そんな奴らからの羨望の視線が飛んできている。あは~! このチーズはミクニちゃんのものだ! 食べたかったら金貨レベルを課金するんだな! 毎日鍋丸ごと買ってたらすぐだぞ! クソ美味い!

 

……さっきはあんなこと言ったけど、女将さんと裏で作業してるコックの親父さん。あとそのご家族くらいは保護してもいいかもな。この料理造れる人を確保しないのは人類史レベルの損失かもだし。

 

とまぁそんなことを考えていると、入り口の方から足音が聞こえてくる。

 

 

「お、いらっしゃ……。どうしたんだいアンタ、そんな顔して。」

 

「ど、ども。女将さん。今日の朝ってまだ残って……、ッ!?!?!?!?」

 

「うん? ……あ! 門番さんジャーン! あはー! すっごいボコボコ顔!」

 

 

振り返って其方の方を見てみれば、何と始めてこの町にやってきた時、私を担当した門番の姿が。そう、ミクニちゃんの連れていたドロイドを『高値で売れるゴーレム』だと勘違いして、荒くれ者たちに情報を売ったクソ野郎だね! あはー! “イケメン”さんになってんじゃん!

 

見る限り、顔だけじゃなく全身にヤバいレベルのダメージを受けてるっぽいけど……。

 

お、どうした護衛ドロイド君。あ、この門番さんちょうど監視してたから映像データ残ってるの? んじゃちょっと拝見させてもらいまして。

 

 

(……お。この顔。スクロールくんじゃん。なるなる、報復ね!)

 

 

思考を高速化させ護衛ドロイドが送って来た映像を見てみれば、集団リンチを受けている門番さんの姿が。どうやら私を襲った荒くれ者たちにやられたようで、殺さない程度に限界までいたぶられているのが分かる。

 

どうやら、私のドロイドたちにボコボコにされた上に、身包み全部はがれたことをこの門番のせいにしたのだろう。ミクニちゃんに報復として襲撃しようにも、相手が強すぎて今度は殺されるかもしれない。だったらそんな情報を渡して来た門番自体をとっちめてやろう、という考え。どうやらわざわざ門番さんを路地裏に誘い込んでの行動な様で、結構計画的な犯行だったようだ。

 

 

(にしてもまぁ、みんな“可哀想”に。)

 

 

よく見ずとも理解できるが、若干荒くれ者たちの身なりが質素というか、単なる浮浪者レベルまで堕ちている。私達にすっぽんぽんにされた上、持ち物全て持ってかれたせいでそうなったのだろう。全財産すられたような状況から、何とか今のレベルにまで持って行けたことが理解できる。

 

そして、そんな奴らによってかかって殴られている門番さんも……。まぁ見ものだ。彼は確かに町に所属する兵士の一人、門番なわけだが、犯罪者に情報を売っていた反逆者だ。安易にお上を頼れば、自身の企みが露見してしまうかもしれない身。彼からすれば、相手の気が済むまで耐える以外の選択肢は無い。

 

うんうん、ミクニちゃんにちょっかいをかけるからそうなるんですよ。悪だくみするにも、手を出しちゃいけない相手には視線すら送らない。コレ、鉄則。今日からはもっと“真面目”に生きようねぇ?

 

 

「あ、あぁ、ど、どうも。こ。このまえの……。」

 

「ん~、どしたん門番さん♡ そんな“ヤバいもの”を見たような顔して~♡ もしかしてこのミクニちゃんに、何か“やましい”ことでもあるのかなァ~♡」

 

「い、いえッ! そ、そんなことは……!」

 

「うん? アンタら知り合いかい? まぁいい。どうせ浮気でもして彼女さんにボコられたんだろ? んな顔じゃ門番なんて出来ないだろうから、魔道具屋で薬でも買って来な。飯は包んでやるから。……ったくもう、朝から何て顔だい。」

 

 

生来の面倒見の良さと、人の良さからそんなことを口にする女将さん。

 

一気に顔色を悪くし死体よりも真っ白な顔になる門番さんに、彼を煽るミクニちゃん。この二人から何かしらの関係を察したようだが、今は呑み込むことにしたのだろう。そこの門番の顛末を知れば、即座に店から叩き出すだろうが……、今日の朝食を包んであげてる当たり、マジでいい人だよねぇ。

 

あ、そうそう。

 

 

「女将さん、ルーちゃんの店だけど閉まってるよ? ウチの“実家”の方に行ってるから当分帰ってこない感じ。」

 

「そうなのかい? じゃぁ薬師の所しか……。ちょっと待ちな!? アンタあの店主と知り合いなのかい!?」

 

「え、うん。親友。」

 

「親友!?!?!?!?!?!?」

 

 

途轍もないレベルで驚愕する女将さん。

 

というかこの店にいる他のお客さんからも、驚愕と形容しがたい何かを見る様な視線が送られてくる。

 

……マジでルーちゃんさぁ。

 

 

「あ~、うん。その反応で大体わかった。ウチのルーちゃんがマジでごめんね?」

 

「い、いや。それは別にいいんだけど……。あ、アンタも苦労してるんだねぇ。本当によく食べると思ってたけど、そのストレス発散ってなれば理解できちまうよ。」

 

「解る? 本当にそうなのよ……。」

 

 

何か憐れむような視線を此方に送りながら、スススと私の前に追加で新しいパンを置いてくれる女将さん。その顔色からして、確実に憐憫のサービスなのだろう。ちょっとここまでされる当たり、過去のルーちゃんがこの町で何をやらかしたのか聞きたいところだが……。普通に恐怖の方が勝る。というかウチの船で保護してるような形だけど、当分というか、一生そっちの方がお互いにとって良いかもしれない。

 

な、なんかごめんね……?

 

 

「いや、いいんだよ本当。……にしても、あの子に親友なんていたんだねぇ。色々と困ったちゃんだったけど、大分前から店からめっきり出てこなくなったって聞いてたもんだから……。良かったねぇ、ほんと。」

 

 

聖母かこの人?

 

とまぁそんなことを考えていると、また外から足音。しかも今度は、かなり焦ったような音が。

 

内心笑みを浮かべながらそれを待っていると、入り込んでくるのは兵士姿の男性。

 

 

「おいッ! 誰か門番の奴……、ってお前! 何て顔してんだ!?」

 

「お、おう。い、いやちょっと色々……。」

 

「また女絡みか? ……じゃねぇ! 魔物が! 魔物がきてるんだよ! さっさと装備整えて戻ってこい! あとここにいる奴ら! 冒険者はギルド! 一般人は家の中から出るな! いいなッ!!!」

 

 

そう叫びながら、ボコボコの門番さんを連れて走っていく彼。それと同時に、店内が一気に騒ぎ始めるが……。全て想定通りだ。

 

女将さんが出してくれたものを全て口の中に放り込み、飲み込む。テーブルの上に少し多めの料金を置き、出入り口に向かう。

 

 

「んふー。じゃ、お仕事と行きますか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隊長、準備整いました。」

 

「……あぁ。」

 

 

場所は変わり、城塞都市『グレズナ』の外。そこには数多くの魔物たちが集まっていた。

 

 

「行軍中にも搔き集めて、ようやく3万。『ミクニ』だったか。強力な魔女がいるのであればもう少し欲しかったところだだが、無い物ねだりはできん。……奴からは何かあったか?」

 

「先ほど内部に潜伏中の彼から書状が届き、『問題ない』とのことでした。急いでいたのかそれ以外何もありませんでしたが、おそらくアンデッドの準備を進めているのかと。」

 

「だろうな。」

 

 

そんな言葉を交わす魔族たち。

 

彼らが搔き集めた兵力は、約3万。ゴブリンなどの弱者に分類される魔物から、オーガなどの強者に分類される魔物。そして魔法を運用できる悪魔系の存在から、数は少ないが圧倒的な兵力を持つドラゴンまで。彼らが動かせるすべての兵力を、この場所に集めていた。

 

何せ魔族たちからすれば、この作戦“から”始まるのだ。戦力を温存するという考えは無かった。

 

 

(この町を落すことで、この国は勿論。周辺諸国も“新たな戦線”の存在に気が付くだろう。故に、ここからは速度勝負。一気に町を飲み込み、防衛拠点化。そこからどんどんと周囲の町を飲み込んでいかねばならん。)

 

 

グレズナに潜んでいる魔族のスパイ、彼から送られてきた申請を元に立案した作戦だったが、隊長と呼ばれた魔族の彼は全力でことに及んでいた。

 

諜報員を紛れ込ませているとはいえ、彼も人間すべてが愚かであるとは思っていない。こちらが行動を起こせば、対策を練って来るであろうことは用意に想像できた。つまり一度軍事行動を起こし、存在を露見させてしまえば、もう隠れることはできない。一度叩けばそのまま戦線が開くのは避けられない事実だった。

 

だからこそ、初戦で行けるところまで行く。

 

何せ彼らの手札には、“アンデッド”という素晴らしいカードがあるのだ。敵も味方も関係なく、死した存在を兵力として扱う。数が増えれば増えるほどに術者に負担がかかるが、いくらでも増やせ減らない兵力と言うのは正に切り札足り得る。

 

故にそれを有効活用し、一気に攻めあげ人類に二方面作戦を強要させる。

 

 

「この戦い、絶対に落せん。各部隊の魔族たちに伝えよ……、進軍だ。」

 

「畏まりました。」

 

 

 




〇魔族軍

総兵力:約30,000

第一部隊 先鋒部隊
兵力:約14,000
役割:物量による消耗戦、敵魔女の疲弊

ゴブリン 6,000
コボルト 3,000
オーク 2,500
ジャイアントラット 1,500
スライム 500
オーガ 300
ハーピー 100

部隊指揮魔族 14


第二部隊 主力部隊
兵力:約10,000
役割:戦線維持、攻城戦

ホブゴブリン 2,000
オーク 1,500
リザードマン 1,500
オーガ 1,500
ハーピー 500
ミノタウロス 300
トロール 300
ワイバーン 300

部隊指揮魔族 10


第三部隊 決戦部隊
兵力:約6,000
役割:敵魔女の排除、敵部隊殲滅

ゴブリン 2,500
ジャイアントウルフ 2,500
コボルト 1,000
ワイバーン 100
マンティコア 100
キマイラ 100

ドラゴン 5
魔族 6(隊長、女魔族含む)
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