「おほぉ~! 素材の音ォ!」
『わ、我が神?』
『下品ですわね。アタクシたちのトップがコレとか、お先真っ暗ですわ。』
「み、ミーちゃん。それは流石に……。」
「……みんな辛辣過ぎない?」
というわけで例のパジャマパーティ、そのメンツを招集し戦後のお茶会を開催。
ちょっと戦果がヤバいというか、相手を殺し過ぎちゃったせいで血みどろというか、マッドの“後始末”が本気出してきたというか。まぁ色んな意味で大変だったので、少しふざけてみたのだが……。ウケがよろしくなかったようで。
私としてはまだジャブレベルなのだが、シスターはそんな機能無い筈なのに顔真っ赤だし、おばさんは今にも天を見上げそうな感じ、んでルーちゃんは困惑が勝ってる感じ? まぁ私『あはー!』はよく言ってるけど『おほー!』は初めてだもんねぇ。確かにちょっとガチ感出し過ぎちゃったかも。
(コレ規制音だらけのもっとヤバい発言ぶつけたらどうなるんだろ? ……まぁいいや。)
そんなことを考えながら、ほんの少しだけ思考を高速化。整理の為に過去ログを漁っていく。
先日起きた例の魔族軍殲滅大会だが、無事何の問題も起きず幕を閉じることが出来た。こちら側の被害は0だし、町への被害も0。私達の強さを見せつけるため、少々派手に攻撃しすぎたせいかドラゴンを始めとした一部の素材が使い物にならなくなっている、という明確なヤラカシこそあれど……。100点と言っていい出来栄えだっただろう。
あ、ちな敵軍文字通り殲滅してるので、あちら側の生存者は0です。勿論、捕虜も0。一応、ちょっと前まではいたんだけどね~、マッドがね~、減らしちゃったからね~。
(なんかまだ脳死判定喰らってないのもあるみたいだけど、流石にもう、ねぇ? 生存者ではないでしょ、アレは。)
とまぁそんなわけで、大成功だった素材取集パーティ。
私は力を見せつけられてHAPPY。町は危険が無くなってHAPPY。マッドは救急患者がいっぱい来てHAPPYと正に三方ヨシなお話だったのだが……。
大変だったのが、後始末だ。
(まぁ、3万の死骸の後始末ってクソだからね。)
私達が元々戦っていた戦場、銀河規模の国家である連合国と帝国との戦いでは、発生した死骸は総じて放置するか、火にくべるかの2択だった。もちろんいい感じの死骸を吊るして相手への威圧に使うってのもやってはいたんだけど、処理方法って観点から言えば、燃やす以外の選択肢は無かったわけ。
でもこの星には、独自の生物ともいえるアンデッドがいるわけで……。
ちゃんと処理しないと化けて出てくるんですよね、物理的に。
(モヒおじが若干泣きながら懇願してきたもんなぁ。)
私の隣で最後まで戦場を見続けていた彼。
未だに私のことをクソガキ扱いしてくれるかなり貴重な人物ではあるのだが、私の“危険性”をかなり正確に理解した人間でもある。町を守ってくれたことに対する深い感謝を述べてくれたが、同時に私達の矛先がモヒおじたち町の住民に向かない様に、細心の注意を払った立ち回りを行っていた。
一瞬だけ瞳の奥に恐怖らしき感情が見えたのは確かだが、すぐに隠しそれまで通りの対応を。ミクニちゃんがクソガキ扱いされた方が面白いし好きだという事を爆速で理解し、『こういうのやるなら先に言えよクソガキ!』と突っ込んでくれたナイスガイだった。
(ルーちゃんが距離感バグだとすれば、モヒおじはマジで適切な距離を保ってくれるよねぇ。)
ギルド側の人間として契約に殉じながら、私があえて見せている"超えてはいけないライン"には触れようともしない。モヒカンで筋骨隆々なマッスルおじさんの見た目からは考えられない程の、細かな気配りだった。……超有能な外交官みたいな立ち回りって言えば解り易いかな? なんでそんなタイプの人間がモヒカンしてるのかって疑問は出て来るけど。
んで、そのモヒおじが外聞を気にせず泣きついてきたのが……、死体処理だ。
さっきも言ったが、この世界の死体はアンデッドになる。
正直その程度ならウチのドロイドで破壊できるんだけど……。ウチの魔法顧問的な立ち位置にいるルーちゃんによると『アンデッドって霊体タイプのもいるから、単に死体を破壊するだけじゃ再発するわよ? 埋葬した後に聖別するか、ちゃんと処理して素材化しないと面倒なことになるわ。』ってな感じらしい。
(一応魔法ブラスターを使えばそういう霊体タイプでも倒せるみたいだけど、元凶を放置してると幾らでもリポップして来るみたい。ゲームなら経験値稼ぎに仕えそうだけど、現実だからなぁ。)
とまぁそういうわけで。
町の人員では3万を超える魔物素材を何とかする手段はなく、私達に頼るしかない。こちらとしても魔物素材の収集や、研究。後は売却して外貨獲得っていう利用価値があったので、特に大きな問題はなかった。D1ドロイドどもが『死体触りたくない』みたいな不平不満を漏らすことはあったが、ルーちゃんが纏めてくれた魔物処理マニュアルに則り、丁寧に分割。
(砲兵ちゃんたちが張り切って吹き飛ばし過ぎたせいで使い物にならない奴は焼却処分。使えるモノは分解して冷蔵処理。偶にD1ドロイドが一緒に燃やされたり、凍らされたり、分解されたりしたけど、その辺りは通常運転。良い感じに回収して、一旦ウチの船の倉庫にまで持ち帰ったんだけど……。)
マッドがね、うん。
「めーっちゃ張り切ってんだよね、アイツ。」
『酷く不安ですわよね、アレ。』
『我が神。その御意志に逆らう意図はございません。しかしあの存在は、早急に排除した方が……』
「……ミーちゃんに止められてたから会ったこと無いのだけど、そこまでヤバいの? その、マッドというのは。」
「『『うん、ヤバい』』」
その心意気はね、いいんですよ。根っこは医者ってことは解る奴ですし。
ただ手段が間違っているというか、持っている知識が駄目というか、その存在がこの世に存在していいのかっていうか……。例の如く、あのマッドは私達が採取してきた魔物素材を『人体パーツ』の一つ。もしくは早急な治療が必要な患者としてみなしており、隙を見ては勝手に倉庫から持ち出していく姿が発見されている。
一応こっちから申請出せば好きなようにやらせてあげるよ? って通達を出したので、最近は何かする前に私に報告してくれるようになったんだけど……。倉庫を勝手に野戦病院に改造して、色んなパーツをとっかえひっかえくっつけようとしてたんだよねぇ。
「なんかこう、人間のことをドロイドと同じように見てるタイプの医者でね? 人の脳ミソが悪く成ったら、違う生物から引っこ抜いて来てくっつければ治ると思ってんのよ。」
「……"シスターちゃん"や、"おばさんちゃん"なら治るの?」
『えぇまぁ。性能は下がりますがD1ドロイドの頭部でも稼働は可能です。』
『同じくですわ。本社の競合他社である『ンャチタナア社』を褒めるのは嫌ですが、その互換性の高さは事実ですもの。……というか"おばさんちゃん"ってなんですの!?!?!?』
「え……? だって、おばさんって名前なのでしょう?」
後ろで怒り散らかしてる交渉ドロイド、もといおばさんを半ば無視しながら、整理を続ける。
まぁ早い話。素材が大量にやって来たことによって、マッドの暴走癖が途轍もなく酷くなった、って感じだ。一応私直属の"拷問官"的な立ち位置なので、良い感じに手綱を握りながら管理しているのだが……。偶にこちらの目を盗んでやらかしそうで酷く不安な相手でもある。使い方さえ間違わなければ有能な奴なんだけどね……。
「正直モヒおじの所で全部素材捌きたいんだけど、『お前今ウチが金欠なの知ってるだろ?』って断られちゃったし。私達の情報を国やら他ギルドやらに流すので忙しいみたいだから、当分こっち保管かなぁ。」
「いくらギルドでも無い袖は振れないものね。ミーちゃんが売った竜素材のせいですっからかんでしょうし。……国相手のお商売。ミーちゃんの言う『死の商人』のお仕事ができる様に成れば、買い取ってくれる窓口も増えると思うわ。それまでの辛抱ね。」
「だねぇ。」
とまぁ、そんな感じだ。
私達が死の商人。雇い主の敵に等しく死を与え、その報酬としてこの星の鉱山を手に入れられるようになるには、まず雇い主。国や貴族などの鉱山所有者に、"情報"が届かなければ意味がない。モヒおじも言っていたが、この星の技術レベルは未だ発展途上。情報伝達方法が限られている以上、最低でも一月は足踏みを強いられることになるだろう。
ま、その間にルーちゃんが開発してる『私達のSF技術とこの星の魔法技術を組み合わせよう!』って研究が進むわけだ。魔法ブラスターを発展させた武器は勿論。この星独自の鉱石を用いた特殊ドロイドの開発。魔物素材の有効活用の確立など、やることはいっぱいある。退屈することはないだろうね~。
(それに。対魔族で頑張ってくれた"偵察ドロイド"。彼らをそのまま外で情報収集させることで、"ちょうどいい鉱山"の場所も探らせてる。急ぐ必要はないし、のんびりやらしてもらいますかね?)
……といっても、私個人としてはちょっと暇な時間が続きそうなんだよなぁ。
さっき上げた物事は、所謂『軍団長』としてのお仕事だ。ドロイドたちの長としてこの星での活動を万全にするための作業であって、ミクニちゃん個人の余暇を十全に楽しむものではない。ほら、私ってどっちかというと享楽主義みたいなものでしょう? 面白いのだ~い好き、って感じの。
「……そういう意味ではあえてマッドを暴走させるのはアリか?」
『わ、我が神?』
『正気ですか艦長!?』
「いや艦内パンデミックとかありきたりだけど暇つぶしには良さそうじゃん。それに、それだけやらかせばマッドも大人しく……、はならないか。」
一瞬魔石を使った『死体の動かし方』を彼に教えようと思ったが、どう考えても悪い方向。マッドが暴走しまくって彼を破壊処分せざるを得ない状況になりそうだ。
アイツに取っちゃ動かない死体を動けるようにする、患者を完治させるのって至上命題だからね。もし教えちゃったらすべての素材をアンデッドにするまで止まらない厄災になってしまうだろう。本人からすれば動かなくなった患者の"治療行為"だから、全くの悪意無しで邁進するってのもタチが悪い。
……でもコレ、活用方法はありそうなんだよなぁ。
「ルーちゃん、そこんとこどうなの?」
「……倫理的にはアウトね。ただミーちゃんが望むなら何でもやるわよ。私は。」
「んふー! だよね!」
覚悟ガンギマリの目で、こちらを見つめてくるルーちゃん。視界の端でおばさんが引きまくり、シスターが対抗して熱い視線を送ってきている気がするが、一旦放置。ルーちゃんに続きを紡ぐように視線でおねがいをする。
「まず死体の活用方法だけど、大きく分けて2種類存在するわ。専門外だから、詳しくは無いのだけれど……。集めた死体に怨念や魔力を込めることで新たな魔物として再誕させる『アンデッド化』と、死体を素材とし弄りまわした後に魔石を嵌め込むことで使い魔にする『キメラ化』ね。」
手っ取り早く戦力を確保できるアンデッド化と、高い技術を必要とするが強力な存在を作り易いキメラ化。ルーちゃんが言うにはこの二種類が主な死体の活用法らしい。両者ともに思いっきり外法なようだが、彼女の目を見る限り、私が『やって♡』と言えば、即座に研究を開始しそうな強い意思が見て取れる。
まぁ、『アンデッド化』に関しては例のスパイ君の脳ミソから引き出しているので、私もやろうと思えばできるのだが……。
「個人的に興味があるのは『キメラ』の方かな? 私の想像が間違ってなければだけど……、かなり私達の技術と親和性が高い。いわば……『生体ドロイド』かな?」
「……なるほど。ミーちゃんの技術であるブラスターやジェットパック。後はシールドやそれを支える炉心。これを人体に組み込み改造人間としながら、魔石による稼働を実現させたキメラってことね。動力源を2種持っているようなものだから、安定性は抜群。それに魔石の稼働を辞めて電力だけの稼働を可能と出来たのならば、ドロイドが持つ魔力隠密性をも手に入れることが出来る。勿論キメラでもあるから、素材次第で強力な魔物の能力も使える。……とっても素敵な"お人形"ね?」
「でしょう?」
互いに悪い笑みを浮かべながら、嗤い合う私達。
彼女の言う通り、この『生体ドロイド』計画はかなり良質な戦力を手に入れることが出来るだろう。その融合に多少の手間はかかるだろうが、上手く行けば私達が持つSF技術の良さと、この星独自の技術が合わさった素敵な戦力を手に入れることが出来る。
それに、この計画の"素材"はこの星で産まれ生き長らえた『人』を根本としている。
これすなわち、学習期間を必要とせず人間の中に放り込むことが出来る、と言うわけだ。ドロイドでは不可能な、人間たちの中に入り込み情報を抜き出すという諜報活動。この利点は計り知れない。確かに現在偵察ドロイドたちによる光学迷彩を用いた諜報活動も行っているが、これだけでは少々限界がある。
何せ対象が頭の中にだけ秘めている情報を手に入れるには、聞き出す人間がいなければ成立しないのだから。
「……となると、使う素材はミーちゃんが手に入れた女魔族の死体と、ドラゴンの素材が良さそうね。男だと警戒されちゃうでしょうし。骨格はミーちゃんが持ち込んだ金属で何とかなるでしょうけど、外側は人間らしくした方がいいわよね? 切り替えられるようにしちゃう?」
「だねぇ。とりあえず最初の1体なわけだし、ちょっと豪勢に行ってみよっか。」
「となると、埋め込む機械も選別しないとね。メカニックの彼らにも手伝ってもらうとして……。」
そう言いながら、この星の魔女には似合わないタブレットを取り出し、色々と思案し始めた彼女。
確か専門は薬学と魔道具だったと思うのだが、その指先は一切の迷いなし。電子的にそのタブレット内に意識を送り込み、中を覗いてみても問題は欠片も無し。非常に実現可能性の高い計画が粛々と汲み上げられて行っている。
まぁこの子の能力は色々と天元突破してるし、気持ちが十全な時は専門外でもバケモノな成果を発揮する、ってワケなのだろう。明らかに倫理観0な計画なので、喜んでいいのか解らないが。
(どんな存在に仕上がるかは解らないけれど、戦力増強には成る。……監視だけはするとして、このままお願いするとしましょうかね?)
脳裏に浮かぶのは、先の魔族との戦闘。
あの戦いのおかげで、私達は自分たちの立ち位置。この星におけるドロイドの"強さ"を再確認することが出来た。策を弄し数を揃え一斉に放つことが出来れば、大軍であっても撃滅することが出来る。正に埒外の強さであることだろう。
しかしながら……、例の隊長魔族の脳から得た情報により、『この星独自の埒外』が存在することも判明している。
(あんま詳細な情報は引き上げられなかったんだけど……。一部の異常な冒険者や、宮仕えの騎士。後はやっぱり魔王サマ。途轍もない強者ってのはいるもんなんだねぇ?)
私達が主戦場としていた例の銀河、SF銀河にも一定数存在していたのだが、たった一人で戦場を変えてしまうような存在は、普通に存在する。
途轍もない強さを持っていたり、滅茶苦茶用兵が上手かったり。その方向性はマチマチだが、そのすべてが警戒すべき相手であることは間違いない。まぁそんなヤバ気な奴に対抗するため生み出されたのが、驚異的な演算能力によって半ば未来予知が出来ちゃう私達『高位戦術ドロイド』だったり、そのハイエンドモデルな『ミクニちゃん』だったりするんだけど……。
(この星にも、似たようなものがいる。その程度は解らないけど……、警戒に越したことはない。そして、それに対抗するための更なる戦力増強は止めるべきではない。)
私達の基本戦術は数による平押し。
だがそのすべてがD1ドロイドだと、すぐに対応されて滅ぼされてしまう。
故により高い能力を持つD2ドロイドや、攻撃力と防御力を向上させたD3ドロイド。遠距離攻撃の砲兵ドロイドや、戦闘機乗りのパイロットだったり、後方で支えるドロイドがいるわけだ。多種多様な種類がいるドロイドをもって、数で押す。それで勝ち抜いてきたのが私達であり、母体である連合国。
……この基本戦術は、この星でも変わらない。
この星独自の技術を接収し、より高度なものとして形にし、戦力としながら軍団の中に組み込んでいく。その過程がどれだけ残酷なものだとしても、私達は戦争機械。戦うために生み出された存在だ。私個人には外法を忌避する感情があるのは事実だが、無視できる程度のもの。
使えるモノは、使う。
「あはー! どんなものが出来るか、楽しみだねぇ? ……あ、ルーちゃん。マッドが嗅ぎつけないように最重要プロジェクトにしてセキュリティ掛けるから。色々気をつけてね? アイツ見つけちゃうと勝手に量産しそうだし。」
「そう? あの"分解技術"があれば色々と楽になりそうだし、可能ならば合わせて欲しいのだけれど。」
「却下。なんかこう、ダメな化学反応が起きそうな気がする。」
『……なんでいつの間にか倫理観欠片も無い技術開発の話になってるんでしょうね? つまり人の死体と魔物の死体を捏ね回しながら成形して、中にドロイドのような機械化を施す、ってやつですわよね? 人の心……。真面目に退職したくなってきましたわ。』
『流石、我が神……!』
『同僚もアレですし……。』