「おいっす~! どうどうルーちゃん、進捗は!」
「あら、ミーちゃん。良い所に来たわね。順調よ。」
そんなことを言い合いながら、私達が見上げるのは巨大なカプセル。ほら、よく人体実験してる組織とかでよく見るのあるでしょう? 円柱型で中に人とか入ってる奴。
んで、肝心のその中に入ってる子なんだけど……。
(例の魔族軍に所属してた、女魔族ちゃん。運よくマッドに脳みそ弄られてなかったから、全パーツ回収して再構築したんだよね~。)
今回の『生体ドロイド』開発だが、少々倫理的に問題のあるプロジェクトとなっている。
何せこの星で回収した死体を改造し、更なる兵力として産み直そうとしているのだ。もしこの星に人権団体でもあれば、確実に連日連夜のデモが行われていたことだろう。というかちょっとウチのドロイドたちにも悪影響が出るかもので、あんま公に出来ない感じの奴でもある。
テロリスト扱いしてうやむやにしてるけど、魔族って私達の基準じゃ普通に『人類』の枠組みだからねぇ。
(私達『連合国』に所属するドロイドからすれば、魔族を『帝国軍』とすれば色々問題無くなるというか、上から下までヤル気になってくれるんだけど……。)
もしそれをした場合、魔王が治めているらしい魔王国はこの星の地図から簡単に消えてしまう事だろう。
そもそもの話、私達には『船』という選択肢が存在している。“デスドミニオン”と名付けられた5km級の巨大戦艦で、現在私達が滞在している船だ。その大きさから1隻で様々な役割を熟せるように設計されたコレは、勿論惑星攻略能力も有している。頭上から大口径のビーム砲をポコポコ撃ってるだけで相手が勝手に死ぬ、って感じの奴ね?
確かに今は船のエンジンが故障中で、真面に浮き上がるのも難しい状況なのだが……。
(私が魔族を帝国軍と呼称した瞬間。"爆撃"が決定。多分種族が絶滅するまで、最悪その国の大地だけ綺麗に切り抜かれる……。)
マッドのような私の命令を無視する奴。
シスターのように拡大解釈しうる奴。
おばさんのように上手くルールの抜け穴探す奴。
私の船に所属するドロイドには、色々な奴がいる。
というか私が特徴的な面白い奴を集めたせいで、画一な筈のドロイドたちが無駄にバラエティ豊かになっている。そんな奴らのことだ、敵がそこにいるならぶっ殺せばいいじゃんと即座に行動する奴は確実に出てくるだろう。
私がガチガチに固めておけば違反者は出ないだろうが、私は自分のことをあまり信用していない。確実にどっかでミスることだろう。
(常に“戦闘状態”を維持すれば問題ないけど、どっかで疲れて緩みそうなんだよねぇ。)
私も高位戦術ドロイドだ。出来ないことは無いが、中身は人間。
この10年で気のゆるみからやらかしかけたことは星の数だけあるし、マジでやらかしたのは両手の指で数えきれないほどある。そのたびに臨機応変に生き抜いてきたので、それがミクニちゃんの有能さを表してるんだけど……。マジで有能だったら最初からやらかさないよね、っていう。
(まぁともかく、私達に魔族を殺しに行く理由は無いんだよねぇ。)
敵に情けも容赦もかけるつもりは無いが、目に見える敵全てをこの世から消していくほど、血に飢えているわけでもない。
なにせ偶々最初に出会ったこの星の知的生命体が『人間』であり、その人間と魔族が敵対していたからこそ、戦ったのに過ぎないのだ。まぁ明らかにヤバい覚醒し始めてるルーちゃんが人間族で、彼女の好感度を稼ぐために人間側に付いてるってのもあるけどね~。
とまぁそういうわけで。魔族くんたちを必要以上に殺す必要は無いのだ。
殴りかかって来るのであれば核弾頭打ち込むくらいの気概で反撃するが、あちらが『ゆるちて♡』と謝りながら鉱山とかくれるのならば、仲よくしてあげるだけの慈悲がある。
「ミクニちゃんとしてはそういうスタンスなんだけど……、ルーちゃん的には大丈夫そう?」
「えぇ。ミーちゃんの考えに口を出すつもりはないわ。明らかに間違っていたら注意くらいはするけど、あちらが私達を攻撃しないのなら戦う理由なんてないもの。それに、個人的な恨みも無いしね。」
「なら良かった。」
思考を途中から発声入力し、ルーちゃんにも聞こえる様にしてみれば。帰って来るのはありがたいお言葉。以前同じ様なことを聞いた気もするが、あの時と今の彼女の立場は違う。大事な確認でもあるし、複数回行っても問題はないだろう。
そんなことを考えながら、タブレット片手に色々しているルーちゃんへと視線を向ける。
(……これも何回か言っている気けど、やっぱりこの子の能力色々おかしいよね?)
元々距離感がおかしな子ではあったが、それ以後の技術開発もヤバいことになっている。
最初の魔法銃の開発もそうだが、その後の魔法ブラスター、魔石の成型技術の開発と表に出れば確実に歴史に名を遺すであろう発明の連発だ。マジで何であの辺境の町に小さな魔道具店を開いていたのか解らないレベル。彼女を囲んで確保していなかったこの国の上層部がミジンコか何かと勘違いしてしまうレベルだ。
んで、その後。というか私が『生体ドロイド』の話をしてからの成長もヤバい。
(あの場での彼女は、生体ドロイド開発。この星でいう所の『キメラ』に関しては専門ではないはずだった。そこは間違いない。)
知識としてキメラのことは知っていて、死体をいじくり新たな存在に作り替えるって基本は解ってた。そこに私達のドロイド技術を埋め込むことは不可能ではない、という想定も出来ていた。
でも、彼女の言葉はそのレベル。かなり深い所まで考えていたが、“予想”に過ぎない。
前世の感覚で言えば、素人が『車にジェットエンジン付けたらメッチャ速く走れるよね!』って言ってたような感じである。確かに速度は速くなるだろうが、それを実現するのにはどうしたらいいか解らない感じの状態。それが、あの時の彼女だった。
(でも次の日には普通に開発を開始して、ある程度形にしてきてるんだからほんとにバケモノよこの子……。)
彼女が最初に求めたのは、閲覧権。
ウチで補完してるエイリアン含む様々な人体に関するデータや、マッドによって解剖されたことで知見が深まった魔族関連の医療データ。
後はドロイド製作にまつわるデータや、ウチの銀河でもやっていた義手や義足関連の情報。ドロイド技術を人体に適応できるか否かについてのデータ群に関する許可だ。
私としては特に問題ないし、そもそもD1ドロイドとかが勝手に閲覧して遊び出したら困るってことで、許可制にしてただけ。彼女に求められた分だけでなく、それ以外の色々なデータをこっちで纏め、そのまま手渡したのだが……。
「次の日にはマッドの所から輸送されてきた“この子”を生前の姿に再構築。んで研究開始から2週間である程度形にするとか……。逆にルーちゃんは何が出来ないので?」
「ふふ、これも全部ミーちゃんのおかげよ? 貴女と出会ってから、本当に世界が広がったの。出来ないことなんて何も無い、そう思えるぐらいの全能感がを常に感じてる。これこそ“超親友パワー”ね……!!!」
「ア、ハイ」
なんか怖いのでもうそれでいいです。はい。
……もしかしてこいつに船のエンジン見せたら数日で復旧できるんじゃね?
もしそうだったら本気で彼女を“取り込んで”永遠の命を与えるというか、“吸収”ルートが出て来ちゃうんだけど、ちょっと色々怖いのでこの件は考えないようにしておく。彼女なら喜んで受け入れそうだが、これやっちゃうと連合国どころかウチの本社にも狙われる可能性出てくるから……。
うん、忘れよ! ……忘れた! ヨシ!
「っと! んで話元に戻すんだけど、この『生体ドロイド』。どんな感じ?」
「そうね……。この前のお茶会で伝えたと思うけれど、基本はドラゴンと魔族のミックス。そこにドロイドたちが持つ力を埋め込む方針よ。」
そう言うと、手元にあったタブレットを見せてくれる彼女。
コンセプトとしては、ドロイドとドラゴンの良い所を兼ね備えた人間っぽい存在。魔法に高い耐性を持ち、何故かウチのレーダー類を無視できる鱗で全身を覆いながら、高い魔力適性とブレス系能力を保持。そこにドロイドの強みである無限の動力源や、ブラスターにシールド。迷彩系はもちろん、一部のドロイドしか持っていないジェットパック系列まで。
まるで5歳児が強そうなものを人の身体にこれでもかと詰め込んだ存在。
『ぼくの考えた最強の人造人間』が、そこにあった。
「……なんかこう、ドロイドって言うよりも仮面のバイク乗りみたいなやつだね、コレ。脳改造前に脱出されて滅ぼされそう。」
「“ばいくのり”? また知らない単語が出て来たわ。」
「あ、ごめん。知らなくてもいい奴。」
「そうなの? ならいいのだけれど……。まだ私が“魔法”側な人間なのが原因でしょうね。ドロイド系の技術は勉強中で、少し解らないことが多いの。どうしても此方より、キメラに近い存在になっちゃいそうだわ。完全な融合を思いつけないこの無能な脳味噌が本当に憎たらしいわ。」
「いや、ルーちゃん?」
アンタが無能ならこの星のすべての生命が無能以下だよ!?
自分がどれだけヤバいことしてるか解ってます? 一応今回手渡したSF側資料とかも、専門医になるため大の大人が6年と8年かけるマジの医療技術とか入ってるからね? こうやって形に出来てるだけでバケモノなのよ。
「……そうかしら。」
「もうちょっと自信持とう? ほんと凄いんだから。」
「……ミーちゃんにそう言ってもらえるなんて、私は幸せ者ね。」
そう言いながら、何処か頬を赤らめながら笑みを浮かべる彼女。
褒めて貰ったことに対する照れの感情だと思うんだけど……。マジで大学で魔法学んでた当時の彼女の様子が知りたいです、マジで。その表情から褒められるの慣れてない感じだよね? なんで貴女ほどの存在が褒められ慣れてないの? マジでこの星解んない……!
「まぁ、起動まではもう少し時間がかかるわ。マッド、だったかしら? 彼に分解された体がくっつくまでまだ時間がかかるし、魔物素材。ドロイド素材も定着しきったわけじゃない。お披露目はまだ先、ね。それまでに足りない技術を学び直してより良いものに仕上げてみせるわ。」
「なる~。」
強く意気込む彼女に、あまり気を詰めないようにと軽く返しておく。
やる気になってくれるのはありがたい限りなんだけど……。
な~んかすごいものできそうで楽しみというか、途轍もないものが出来上がってきそうで恐怖しかないというか。色々と未来が不安になって来る。
まぁルーちゃんがたのしそうに作業を進めてるし、出来上がったものは確実に私の“利”になる。それに、完成までに彼女が構築するだろう新技術のことも考えれば……、うん。彼女にはこのまま頑張ってもらうことにいたしましょう。
(退屈しのぎのイベントが、“この国”で起きてるみたいだし! ゆるゆるっと待たせてもらいましょ~!)
◇◆◇◆◇
「数万レベルの“ゴーレム”を自在に操れる魔女、か。」
「陛下、詳細の方はご覧になりましたか?」
「あぁ。3万だろう? しかもドラゴン付きの。流石の魔族、圧倒的よな。」
チナボフ王国の首都、“ピリパ”。
ミクニ達が魔族の侵攻から守った町を所有する国家、その都にある王宮にて2人の男が言葉を交わしていた。
「どうやら余の“目”は想像以上に朽ちていたらしい。これほどまでの強者が未だ在野に残っていたとは。」
「これだけの大魔女です。我らの知らぬ秘匿の術を持っているのやもしれません。……まぁ個人的な意見を述べるのであれば、早急な刷新をお勧めいたしますが。」
「だろうな。」
陛下と呼ばれた男。彼は自身の諜報機関の失態を嘆きながら、手に持っていた書類を机の上に投げ捨てる。
何せ今回挙げられてきた議題は、国の根本が揺らぎかねない危険なモノ。
本来それを阻止し対策するはずの“目”が何の成果もあげていなかったことを考えれば、頭を抱え発狂していないあたり、その強い忍耐力を賞賛しなければならないレベルだろう。
(魔族との戦線が開かれている北部。そこから遠く離れた場所にある南部にて、魔族軍3万が突如として出現? はッ! 夢であればどれほど良かったか。)
この国の王である彼が考える通り、魔族には魔物を操る力を有している。
だからこそ大量の魔物を引き連れ此方に攻め込んでくるのは想定内だったのだが……、問題はその場所。魔族との殺し合いが起きている場所から遠く離れた南部で報告されたのが、最初の問題だった。
これすなわち、国中に魔族がスパイとして隠れ住んでいたことの証明である。戦線が近い北部ならまだ理解できたが、発見されたのは正反対の南部。魔族たちが国内を自由に動き回り、反対側まで到達している。
既に敵の諜報網が出来上がっていることの証明だった。
(王が玉座で頭を抱えているのも奴ら想定内か? さすが魔族、性格が悪くて大変助かる。)
そしてこの証明は、自国で運用していた防諜。諜報などを担当する組織が魔族のスパイに対して何の成果もあげられていなかった、ということも意味している。
スパイといっても、単に敵から情報を抜いてくることだけが仕事ではない。自国の情報を守るのも、スパイの使命。しかしそれが全くできていなかったとなれば……。いっそのことすべて解体した方がマシなレベル。
王である彼の前に座る“宰相”がそう諌言するのも、可笑しなことではないだろう。
(防諜も出来ず、人材の拾い上げも出来ぬ。今の組織の長を国家反逆罪として処刑するのは当然として……、後任はどうするか。通常であればその部下を引き上げるのであろうが、おそらく能力は似たり寄ったり。かといって優秀な人材は……)
「陛下。後任探しもよろしいですが、この“ミクニ”の対処を先にすべきかと。他国に取られればコトですぞ。」
「……すまんな。少し考えすぎていたようだ。」
宰相に思考を遮られたことを不満に思いながら、大きく一息。
手元に置いてあったどす黒いほどに濃く煮だされた茶を口へと運びながら、今回の本題に付いて思考を回していく。
無論、ほぼ“単身”で魔族3万を殺し切った大魔女。ミクニのことだ。
「陛下の“目”が慌てて報告してきたのを見ると、12000の特異なゴーレムを単身で動かし。ゴーレム自体も魔法を使用可能。火によって強大な迫りくる壁の作製と、光弾の射出。最低でも二種、使える様です。」
「眉唾物だと断じたかったが、ギルドからも同様の報告。正確に言うならばギルドの方が先に同様の情報を上げてきている。……事実か。」
王である彼が抱える戦士の中にも、強大な魔法使い。やろうと思えば似たような炎の壁を作ることが出来る魔法使いと言うのは、存在している。一発当たっただけで相手が即死するらしいこの凶悪な光弾も、探せば似たようなことが出来る者がいるだろう。
この程度であれば、伝承を紐解けばもっとヤバいのもいる。そこまでは彼らの強い注目を浴びることはない。せいぜい諜報機関がまたエグイ戦力見落としてたな、で済んでいた。
けれどそれが使役物。ゴーレムとなってくれば、話は変わる。
「一万以上の兵が、相手を即死させる魔法を放つ。ソレも耐久力に優れたアイアンゴーレムが。……恐ろしいほどに“戦争”向きですな。」
「兵が死ぬ可能性が下がるどころか、兵の存在が危ぶまれるレベル、か。」
彼らはゴーレム。いや“ドロイド”を直接見たことは無かったが、詳細を聞けば何が出来るか。そしてどう扱うかぐらいは簡単に想像することが出来た。
このゴーレムの配備にどれだけの金銭を必要とするのかは王と宰相という特異なタッグをもってしても難しかったが、いざこれが普及してしまえば今の経済どころか文化すらも変化してしまう存在。
使えば身を守ることはできるが、使い過ぎれば身を亡ぼす毒薬であることも、理解していた。
「……歩兵より安ければ傑作ですな。」
「その時はこの王冠を貴様にくれてやろう。」
「おっと、断頭台も一緒に付いてくるのでしょう? ご勘弁を。」
もしこのゴーレムの配備費用が兵士一人の育成より安かった場合。その瞬間軍への価格破壊が成立する。
なにせ確実に単なる兵士よりドロイドの方が強いのだ。魔族との戦線を抱え、周辺国との戦争すら視野に入れなければいけないこの国にとって、常に国庫は火の車。その負担が極端に減るとなれば、担当者が飛びつかない訳がない。
そんなことになれば、気が付けば軍全てがドロイドに置き換えられる日はそう遠くない。そして暴力装置を乗っ取られた国の末路は、総じて滅亡。生き残るために王冠を先んじて投げつけたくなる王の気持ちは、十二分に理解できることだろう。
「……個人で万単位を用意できているのだ。コストはそう高くあるまい。あり得そうなのが本当に怖い。」
「やろうと思えば、普通に国が盗れますな。英雄級の兵を動かせばこちらも対処可能ですが、魔族との戦線が崩れるのは必至。無様に王座にしがみついて国を滅ぼした愚君として歴史に名を遺すか。抵抗せずに明け渡した暗君として遺すか。自由に選べますぞ?」
「やめい。」
手を軽く振りながら、先ほどのお返しといった表情を浮かべている宰相の言葉を遮る国王。
彼自身、無いとは思っているのだが、どうもひどく悪い予感がし続けている。もしかするとこのゴーレムの制作にかかるコストは此方が思うよりも軽くて、今回発見された一万近い兵力の数百倍の数を持っていて、その指揮者たるミクニも桁違いの能力を持っている。
そんな無いと思えるような想像を、してしまうのだ。
この星の常識では正気を疑われる内容であったが、ここで選択を間違えればすべてが終わる様な悪寒が、彼の首筋に延々と飛来していた。
「して、陛下。どのように応対いたしますかな? あの地は陛下の直轄地ではありませんが、こと戦線が開かれていればこの王国全体多大な被害が出ていたことでしょう。相変わらず貴族は煩いでしょうが、正統性はあります。」
「……軍に囲い込むのはやめておこう。」
「その心は?」
「これだけ戦向きの力を持っていながら、未だ売り込んできていないのだぞ? そんなことすれば他国に逃げてしまうだろう。」
言葉の裏に『お前も理解しているだろう?』と付け足しながら、そう言う王。
彼の言う通り、強大な力を持ちながらも自分から売り込んで来ないというのは、国や国が出せる対価に興味を抱いていないからに他ならない。単に他の国の方が条件が良かったり、戦自体が嫌だったり、誰かに仕えるのが嫌だったり、そもそも研究がしたいので誰かに仕える気が無かったり。本当に様々なことが考えられる。
ソレもやりよう次第では簡単に国が盗れるだろう相手だ。考えられる可能性は大いにある事だろう。
「となりますと、直接会って確かめるしかないですな。陛下の“目”は使い物になりませんし。」
「あぁ。というわけで早速向かうことにする。……決して書類仕事が面倒な訳ではないぞ?」
「成程。では陛下が居ぬ間に私の戴冠式の用意を整えておきます。帰ってきたら臣下として扱き使って差し上げましょう。」
「だからやめい。……幸いなことに、ギルドから彼女の欲するものは聞き出せている。少々“解りやす過ぎる”がな。」
「……それはそれは。」
厄介そうですな、と顔をゆがめることで返答の代わりとする宰相。
今回の情報を上げて来たギルド、冒険者ギルドは国際的な対魔物相互組織だ。世界中に広がり、人類の敵である魔物や魔族に対する情報を集め、排除するために動いている。しかしながらその根本は“営利組織”、金次第でどんな存在にでもなりうるのが、冒険者ギルドだった。
流石にその成立目的から魔物などに利する行為はしないが、金さえ払えば望み通りの情報を流すことも可能。そんなギルドが、『ミクニは研究の為に鉱石、もっと言えば鉱山が欲しいみたいだよ』という情報を流しているとなれば……。
「はてさて、何が出るのやら。最低でも“不干渉”以上を引き出さないと、不味いであろうなぁ。」
〇ミクニちゃんの反応
いや国なんていらないし、マジで鉱山欲しいだけなんだけど……。まぁ偵察ドロイドでそっちの王宮というか、今の会話筒抜けだし? あっちから来てくれるのなら全然ウェルカムだし? くれるモノくれるならそれ相応の仕事はするけどさぁ。
お、どした戦術ドロイド。急に通信送って来て。何かあっ……
は!? マッドが持ち場離れて勝手にルーちゃんの『生体ドロイド』区画に入ろうとしてる!? ばッ! お前アイツ監視しとけって言ったじゃん! キメラとかアンデッドの情報知っちゃうと明らかに量産し出すから隠すって言ったじゃん! いつか自力で辿り着いちゃうかもだけど、それまでは頑張って秘匿するって通達したじゃん! あ~~~、も~~~! 護衛ドロイドちゃんたち! 現場に急行! マッド拘束して元の持ち場に叩き込んできて! 早急! ほらハリーハリー!