異世界バトルドロイド軍団   作:サイリウム

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5:戦闘開始!

 

 

『……了。第389臨時偵察小隊、攻撃ヲ開始シマス。』

 

 

通信を終え、小隊を担当する戦術ドロイドからの命令を受けたD2ドロイドたちは即座に準備を整えていく。

 

今回の任務は、言わば“救出任務”だ。D2とD1で構成された彼らにそのような小難しい任務を熟すプログラムは書き込まれていないが、元々組み込まれているモノを使い、あり合わせで形にすることは可能だ。勿論、普段の彼らではそのような複雑な作業は行えないが……、今は戦術ドロイドからのバックアップがある。

 

その命中率の低さから誤射を案じ、ブラスターの設定は“非殺傷モード”に。それを確認した瞬間、3機のドロイドたちが一斉に動きだしていく。

 

 

『撃テ。』

『ブチ殺がすぜぇ!』

『血祭にあげろー!』

 

「ぎゃッ!?」

「ギャギャッ!!!」

 

 

物陰からゆっくりとその姿を現し、ブラスターを乱射しながら動き出すドロイドたち。

 

D1、そしてD2ドロイドの弱点と言える関節部の弱さ。それに伴う“歩行速度の遅さ”という問題から、非常にゆっくりとした動きではあったが……。文字通り光速で飛来するエネルギー弾と共に現れた鋼鉄の兵士は、ゴブリンたちに衝撃を齎した。

 

なにせ放たれた光が地面へと突き刺さった瞬間、一瞬にして草木が消し飛んだのだ。幾ら知能が低いゴブリンたちと言えど、その威力は簡単に理解できる。

 

 

『ソノ民間人ヲ解放シロ。』

 

「ぎゃ!」

「ギャギャ!」

「ギャーギャギャ!」

 

 

安価なブラスターの命中度、そしてドロイドの照準システムの信頼性の低さ。それを逆手に取り、敢えて“救助対象である少女”に照準を向けてブラスターを放つドロイドたち。

 

戦術ドロイドというか、その上である“高位戦術ドロイド”からの指示を実行した彼らの弾丸は、案の定少女を逸れて打ち抜かれていく。地面に当たり、木々に当たり、そしてようやくゴブリンの1体に当たり、全身に電流を迸らせながら地面に倒れ伏していく。

 

 

「……ギャ? ギャギャ!」

「ギャー!!!」

 

『敵接近、注意』

『ぶっころ!!!』

『殴り合いだ~!』

 

 

突如として出現したドロイドから逃げ出そうとするゴブリンたちだったが……。ドロイドの足が非常に遅いことから、悪知恵を抱く存在が現れる。既に何体かやられてしまった彼らだったが、数はゴブリンの方が勝り、速度や小回りも上回っている。

 

敵の脅威は“その手に握られている黒い金属”だと当りを付けた魔物たちは、ソレを奪い取るために動き出した。

 

そしてドロイドも、“対処”に向けて行動を始める。

 

 

(あ~、そっちね。りょ、んじゃこういう感じに動こうか、B2ちゃん。)

 

『……了。』

 

 

彼らドロイドは、言わば使い捨ての兵器である。多少の知能はあるが基本的に人に劣り、簡単な策にも嵌ってしまう弱さがあった。

 

確かにゴブリンの知能は言語を解さないレベルではあったが、これまでの原始生活の中で身に付いた“悪知恵”は脅威と言える。知能を強化されているD2はまだしも、D1ドロイドだけでは銃を奪い取られ敗北しても可笑しくない。故にここでゴブリンたちが退却せず、攻勢に出たのは少々“不利”な状況であったのだが……。

 

この戦いを眺めていた“頂点”が、直接指示を送る。

 

 

『行動ヲ開始セヨ』

 

『『らじゃらじゃ』』

 

 

その瞬間、弾かれたようにD1ドロイドたちが、味方であるD2ドロイドへと“銃を向ける”。

 

そして同時にD2ドロイドが掲げるのは、全身に施された強化装甲。

 

標準的ドロイドと言えるD1ドロイドを元に開発されたD2ドロイドは、その知能だけでなくボディにも改修が施されている。D1ドロイドの特徴である柔軟性を失うこととなったが、全身に施された盾のような金属板たち。まるで鎧のようなそれは、“角度”によってビーム兵器を“跳ね返す”。

 

本来彼らの頭脳であれば不可能なコトであったが、今回指揮に入るのは“未来予知”すら可能とする高位戦術ドロイド。D2ドロイドは送られてきたデータ通りにその体を動かし……。

 

 

『撃テ』

 

 

D1ドロイドが、発砲。

 

その銃口から放たれた光弾は寸分たがわずD2ドロイドへと殺到し、そのすべてが“跳弾”する。

 

そして弾かれた光弾が行く先は、ゴブリンたちの脳天。本能に由来する勘から広く展開しドロイドたちに襲い掛かろうとした魔物たち。その場にいた全員の意識を、完全に、一瞬にして消し飛ばしてしまう。

 

戦闘、終了だ。

 

 

『……状況終了。』

 

『流石! 全員死んだぜ!』

 

『……殺シテイナイ』

 

『タイチョー、息の根止めようぜ! 悪即斬!』

 

『許可シナイ、民間人ノ保護ガ優先。』

 

 

命中率が安定しないブラスター、その跳弾をもって敵を一瞬のうちに無力化する。

 

自分たちのトップである“艦長”の指示と計算能力に内心驚愕しながら、血の気の多すぎるD1ドロイドを諫める部隊長。帰ったら他の同型機であるD2ドロイドに愚痴ろうと思いながら、今回の目標こと要救助者。民間人の少女へと近寄って行く。

 

 

『我々ハ連合軍ドロイド、第389臨時偵察小隊デス。イマ、縄ヲ解キマス。ジットシテクダサイ。』

 

「んッ! ん~ッ!!!」

 

『……ホドケマセン』

『タイチョー、俺やろうか?』

『…………頼ミマス。』

 

 

自身の所属を明らかにしながら接近し、地面に倒れながら藻掻き声を上げる少女の縄をほどこうとするD2ドロイド。

 

しかしながらその全身装甲が邪魔をするのか、全くもって解けそう無い。結び目の先端を摘まもうとするが、何度もすり抜けてしまう。それを見かねたのか、声をかけ代わろうとするD1ドロイド。その申し出に幾分か悩んだようだが、自身では不可能なことを悟ったのだろう。防御力と引き換えに器用さを失った自身の手を少し忌まわしく思いながら、部下に任すD2ドロイド。

 

それにより、まず口に覆われている布から外されるのだが……。

 

 

「蜉ゥ縺代※縺上□縺輔>!!!」

 

『……失礼、共有語ハ使エマスカ?』

 

「菴戊ィ?▲縺ヲ繧九?縺薙o縺?!!!」

 

『コ、言葉ガ解リマセン……。』

『何語だコレ? 解る?』

『いや無理。』

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

『んまァ~! 可哀想に! こんな無骨なドロイドたちに囲まれて、さぞ怖かったことでしょう! これだからンャチタナア・オートマタのドロイドは駄目なんです! すぐにアタクシが解析してお話出来る様にしますからねぇ!!!』

 

「ねぇ、あのおばさん連れて来たの誰?」

 

『艦長です。』

 

「そうだった……。」

 

 

はい、というわけで現地ヒューマノイド。

 

もといこの星で一定以上の知能を持ち、何かしらの言語を使用しているであろう存在を保護した私達は、その対象である少女を現在設営中である拠点まで連れてきていた。

 

本音を言えば救出したあの場でコミュニケーションを取って、彼女が暮らす場所とかに案内して貰ったり、無力化したゴブリンたちをどう対処したらいいかを聞けたら良かったんだけど……。まぁ案の定というか、普通に言語が通じなかった。

 

 

(まぁ連合国にも帝国にも影響受けてない星が“同じ言語”使うわけないからねぇ。)

 

 

連合国にも存在するヒューマノイド、私の前世で言う所の“ホモサピエンス”に近しい存在なため、その発声から何かしらの言語を使っていることはすぐに解ったのだが……、流石に意味が解らない。

 

というわけで急遽ビークル。輸送用の小型船を派遣し、ドロイドと一緒に此方にお招き。必要ないとは思うけど、防諜の為に戦艦の中ではなく、現在設営中の拠点。お外の方にお招きした感じだ。まぁ彼女からすれば謎のドロイドが急に自身を連れ去ったわけなので、最初は死ぬほど怖がっていたみたいなんだけど……。

 

椅子に座らせたりお茶を出したりしていれば、こちらに敵意が無いことは理解してくれたのだろう。見た感じ、ようやく落ち着いてくれたようだ。

 

 

(まぁそんなわけで、互いのやり取りを効率化するため、言語の解読。それをするために専門のドロイドを呼びつけたわけなんだけど……。)

 

 

それで登場したのが、先ほどの“おばさんドロイド”。

 

正式名称、XVP-T-9000。交渉及び翻訳専用のドロイドだ。帝国軍を捕虜にした時や、帝国領地を占領した時、もしくは未知のエイリアンと接触した際に“交渉人”となる役目を与えられた存在である。私達戦術ドロイドとはまた違った方面にはなるが結構優秀なドロイドであり、未知の言語の解読まで出来ちゃう優れもの。

 

私と言うか、私達の製造元である“ンャチタナア・オートマタ社”を毛嫌いしていることを除けば、マジで完璧なおばちゃんだ。

 

 

「……めっちゃ煩いんだよねあの人。」

 

『同意します。』

 

「戦艦の『標準装備』扱いだし、壊れてないからそう簡単に“配置転換”出来ないのがなぁ。というかそもそも配属前に各ドロイドの性格なんて解るわけないし。どうしようもない。……というか連合軍の大半ってンャチタナアのドロイドなわけだし、普通製造時に廃棄しない?」

 

『聞こえてますわよ小娘ッ! これだからンャチタナアのドロイドは!』

 

 

ぷりぷりと怒りだしたおばちゃんに向かって、両手を上げて降参の意思を示しておく。流石に戦闘中に彼女が話しかけてくることは無いのだが、基本的に顔を合わせた瞬間、お小言のマシンガンを頂くことになる。

 

まぁポンコツ筆頭のD1ドロイドの愚痴が大半であるため、そこに関しては納得しかないのだが……。

 

 

「それでおばさん、解析の方はどんな感じ?」

 

『おばさんではございません! アタクシにはXVP-T-9000という立派な型番があるのです! そのように呼ぶのならせめて“お姉様”と呼びなさい! せっかくンャチタナアのドロイドにしては可愛らしいボディをおもちなのです! 礼節を知るべきかと!!!』

 

「へいへい。」

 

 

何処か貴族の女性を思わせるボディを揺らしながら、そう口にする彼女。

 

比較的ヒューマノイドに似た体躯を持ち、ドロイドにしては珍しく衣服を纏った彼女。その節々から彼女の製造元である企業、その大本となったとある惑星の貴族の装いを思わせるが……。まぁその辺は気にせずとも良いだろう。面倒だし。

 

……というか私のことカワイイって言った? 言ったよね! でしょ~! 金掛かってんるだよこのボディ!

 

 

『下世話! まったく貴女ときたら! ……ふぅ、まぁいいです。それで此方の少女に関する言語解析ですか、粗方完了しておりますわ。少々語彙が足りないかと思われますが、それは適宜修正していけば良いでしょう。』

 

「ほんと? 仕事が早いねぇ。」

 

『ケバ・ジモ星系の少数民族がお使いになる言語と少々似通ったものがございました。文法も銀河共有語に近しいものですし、そう難しいものではないでしょう。プリセット化しておきましたので、ご使用いただければ幸いですわ。』

 

 

そういうと、貴族のような一礼を此方に送って来る彼女。

 

先程まで保護した少女にホログラム、何らかの映像を見せながら単語を引き出していたようだが、時間にして10分も経っていない。それなのにある程度のやり取りが出来る様に成るまで解析を進めているあたり、やはり有能という奴なのだろう。これで性格が良ければ完璧なんだけど……、あ、睨まれた。な、なにも悪いことは考えてないですよ~。

 

脳内で軽くふざけながら、共有のデータファイル。戦艦に乗せてあるサーバーの中に用意されたソレを開き、適応していく。ものの数秒のうちに私の中に新たな言語が埋め込まれ、相互のやり取りが可能となった。

 

……相変わらずドロイドってのはすごいよねぇ。言語学習にかかる時間が秒とか無法じゃん。これがあれば学生時代、英語の授業とか無双できたのに。

 

 

「っと、おふざけはコレ位にして。……“言葉はこれで通じているかな?”」

 

「“あ、はい! 大丈夫です!”」

 

「“なら、良かった”」

 

 

服装から見る限り、彼女の社会的な身分はそこまで高くない。

 

けれど、私達が欲するこの星についての情報を幾分か保有していることは確かだ。彼女が言語化することが難しくとも、彼女が暮らす共同体の“常識”となっているモノさえ見えてくれば、情報など幾らでもくみ取れる。

 

ドロイドとは言え、こちらも軍人。普段は着ない式典用の軍服まで持ってきたのだ。

 

 

「“見ての通り、我々は此方に迷い込んでしまったモノでね? 色々と教えて貰いたいことがあるのだよ。あまりこういう言い方はしたくないが……、助けてあげた礼として、答えてくれるかな?”」

 

 

 





〇交渉及び翻訳ドロイド XVP-T-9000

ララクラ・スティヴァーレ社製の交渉及び翻訳ドロイド、XV1P-T型の一機。

連合軍におけるバトルドロイドのシェア率はンャチタナア・オートマタ社、白髪赤眼戦艦艦長や、戦術ドロイド、D1・D2ドロイドを開発した企業に半ば牛耳られている。これは開発開始時期の違いや、企業経済力の差、またロビイング活動によるものがが大きいが……。ともかく連合国におけるドロイド市場は一強状態となっている。

それに風穴を開けるため、また新たな“販路”を開拓するために開発されたのが本機。

連合国における共通言語、銀河共有語は勿論。連合国に存在するすべての種族の独自言語、文化、礼儀作法がインストールされており、各種族ごとの心理学にも深い理解がある。帝国との交渉を行うため、一部ではあるが其方への情報も得ており、既に多くの実績を上げ、高い評価を得ている。連合国の艦船、その備品として必ず1機常駐させるほどと聞けば、その性能をご理解いただけるだろう。

また副次機能として未知のエイリアンと遭遇した時に備えた翻訳業務も担っており、分析しプリセット化した新言語を各艦船のデータベースに共有、その船に所属するドロイド全員にフィードバック出来る機能も保有している。今回はそれを使用した。


XV1P-T-9000は自認が妙齢女性のドロイド。

本来ドロイドであるため、衣服は必要としないのだが……。連合国軍の経理に『交渉に衣服は必要なのですわ!』とその“交渉人”としての能力をいかんなく発揮し、多種多様の貴族的衣装を経費で用意させている。

また、あまり使用されない『生身の人間が乗艦した時に使う客室』の一つに居座っており、半ば自室化している。一部の戦術ドロイドが注意しようとしたのだが、彼女から『貴方がたの艦長様も同じことしてますわよ?』と言われたため、放置中。おそらく今後改善されることはないだろう。

彼女がンャチタナア・オートマタ社製ドロイドを敵視するのは『彼女の製造元である本社が、ンャチタナアを敵視している』と言うのが大きな理由の一つだが、大体D1ドロイドがお馬鹿すぎるのが原因。そのため、D1ドロイド以外はガチで嫌っているわけではない。それ以外のドロイドであれば、状況次第では楽しくおしゃべりすることも可能だ。



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