異世界バトルドロイド軍団   作:サイリウム(夕宙リウム)

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6:少女とコミュしよ

 

「なるほど、エリンちゃんか。良い名前をしているね。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

「それで少し開けた場所に作られた村で生活している、と。……ふむ。」

 

 

眼前の少女から情報を引き出しながら、色々と精査していく。

 

この場には部下の戦術ドロイドたちや、傍に立って更なる言語解析を行っているおばさんドロイド。後は私の護衛として隠れてる特化型ドロイドの子達がいるのだが……。こういった“対話”は、トップである私の仕事だ。

 

この星から見れば私達が正に“エイリアン”であることを考えると、たとえ彼女が何の力を持たない少女であろうとも、気を配らなければならない。今後どうなるかは解らないけれど、この星の情報を何も持っていない状況で“侵略者”扱いされるのはご勘弁だからね。

 

ま、それに相手は一般的なヒューマノイド。前世のホモサピエンスを彷彿とさせる人間さんだからね。姿かたちが一番似通ってる私の方が親近感抱かれて、情報引き出しやすいでしょって話。

 

 

(んで、軽くどんな村か聞いてみたけど……、そこまで文明が発達している様には見えないかな?)

 

 

彼女の服装からある程度推察出来ていたが、やはりこの星の文明。より正確に言うならば、彼女が所属する村の技術レベルはかなり低いことが伺える。

 

何せ彼女が見に付けている服は、確実に“手作り”のもの。産業革命によって生じた大量生産、“既製品”の匂いを感じさせないものだ。彼女がまだ知らないだけ、と言う可能性もあるが、幾つか質問してもあまり要領を得ない様子。

 

前世の基準で考えるならば、“中世”。よくある異世界ヨーロッパ的な文化だと推察できる。

 

 

(どういう意図での質問か解ってないみたいだったけど、村での1年の生活を聞いてみれば、ソレに近しい感じだね。)

 

 

一瞬だけおばさんドロイド、交渉及び翻訳ドロイドであるXV1P-T-9000に視線を送ってみるが……。すぐに信号。嘘をついているか否か、という質問に対し、『NO』の一言を送り返してくれる。

 

まだ断定はできないが、この星のレベルについてはある程度理解できたと言えるだろう。

 

 

「あ、あの……。」

 

「うん? どうかしたのかい?」

 

「そ、それでお姉さんは、なんてお呼びすれば? き、綺麗なお洋服を着ていらっしゃいますし。お、お貴族様なのでは……?」

 

「私が? あはー! “帝国”じゃないんだから! 一介の軍人、それにド……」

 

 

おそらく話の途中で落ち着いて来て、私や隣にいるおばさんの服装に目が行ったのだろう。かなり怯えながら、そう口にする彼女。

 

確かに私達の服装は、彼女の物と比べて各段に凝っていると言えるだろう。何せこちらはSF世界の住人なのだ。彼女にとっての“上位者”が貴族であるのなら、そのように間違ってもおかしな話ではない。

 

ま、正義の連合国軍。民主主義系の軍属である自身からすれば、軽く笑い飛ばせるジョークだ。クソ皇帝の名の元に結束しているらしい帝国であれば、貴族という時代遅れの称号もあるだろうが、こっちは民主主義。そんなもの存在しないし、そもそもドロイドが貴族とか無理だろう。

 

そんなことを考えながら、自身の種族のことを口にしようとした瞬間。横にいたおばさんから通信が入り、スピーカーをすぐさま落とすように警告される。

 

……どしたの? ……あ、色々ややこしいし今後不利益を喰らうかもだから、“人類”として振舞え?

 

あ~、りょ。そう言う事ね?

 

 

『あらあらあら! さすがエリンちゃん! いい目の付け所ね! 特にアタクシのこの服、とってもきれいでしょう? それにこの人の服も……、まぁマシな方ね。流石式典用という所かしら? ま! アタクシからすればもっと着飾るべきなのですが! 特に髪! 何ですかソレは!!!』

 

「え~、いいじゃんポニテ。それに、普段ストレートで流してるだけだから、メリハリ出てて良くない?」

 

『良くありません! 全く! 顔は良いのですから、もっと美というモノをご理解されるべきかと! もっと編み込むとか、お団子とか。色々あるでしょうに!』

 

「あ、あの……。」

 

 

マシンガンのように言葉を吐き出し続けるおばさんに、若干引いてるエリンちゃん。

 

おばさんの意図。私が途中で口を止めたという違和感を、言葉の濁流で押し流そうとする意図は理解できるのだが……、たぶん9割ぐらい本気で喋ってるし、私の髪を弄らせろという強い意思を言葉の節々から感じる。

 

いやまぁセットとか自分でするには時間かかり過ぎるし、任せるのは良いんだけどさぁ。絶対お前私のことオモチャにするじゃん?

 

まぁそんな感じで話し続けていると、エリンちゃんの纏う雰囲気が変化したことを察知。大きなため息をつきながら、おばさんが話し始める。

 

 

『はぁ、全くもう……。あぁごめんなさいエリンちゃん、驚いたでしょう?』

 

「あ、いえ。全然……」

 

『この人、色々とダメなお方でね? みんな苦労しているのよ。……それで、貴女の質問なのだけど。“部分的に合ってる”というべきかしら?』

 

「部分的?」

 

 

先程の私とエリンちゃんの会話。私が村などについて一方的に質問を投げかけ、それに対して彼女が言葉を返すというやり取り。

 

ソレをずっと録音していたのであろうおばさんは、既に彼女の性格や癖を見抜いたのだろう。すべての言葉が“適切に”届くよう、細かなイントネーションや雰囲気を変えながら、言葉を紡ぎ始めている。それも、私達ドロイドの目から見ても“わずか”としか言えない違いの中で。

 

流石交渉専用のドロイドだな、うん。……でもちょっとこわい。

 

 

『まずエリンちゃん、王様は解るかしら?』

 

「え、あ、はい。」

 

『流石ね。それで、この王様なのだけど……。沢山部下がいらっしゃるでしょう? その下にお貴族様だったり、役人様だったり。そして勿論、お貴族様も偉いわけだから、沢山部下がいらっしゃる。こう、階段みたいな感じね。ほら、エリンちゃんの村にもお貴族様の部下、役人さんが来たりしたでしょう?』

 

「あ、はい。見たことあります!」

 

 

彼女の反応を見ながら言葉を紡ぎ、適宜教師のように褒めることでより情報を引き出していくおばさん。

 

さっきの言葉だけで彼女の村がどこかの貴族に属しており、この周辺が王による統治形態がとられていることを把握出来たワケなのだが……。大丈夫かな? ウチのドロイドって帝国嫌いというか、民主主義以外を悪としてる子が多いんだよね。特にお馬鹿なD1ドロイドたち。

 

おばさんは積んでるコアが結構良い奴だから心配はないんだけど……。他の奴らが暴走しないように手綱ちゃんと握るよう言っておかなきゃ。

 

まぁそんなことを考えていると、更におばさんの話が進んでいたようで。

 

 

『それで、この方のことなんだけど……。簡単に言えば、“王様直属の騎士団、その騎士団長様”ってところかしら?』

 

「き、騎士様!?」

 

『ほんとは少し違うのだけれど、大体そんな感じね。偉いのは偉いんだけど、ちょっと方向性が違うというか……。お野菜と果物みたいな違いかしら?』

 

「いやそれじゃ解らんだろ。」

 

「い、いえ! 解ります! 大丈夫です騎士様!」

 

 

かなりキラキラした視線を此方に向けながら、声を上げる彼女。

 

き、騎士じゃないんだけどなぁ……。

 

というか騎士とか言われると、もっと正当な正義の騎士というか。遥か彼方の銀河系のドロイドぶち殺し光線剣の皆様が過るから勘弁してほしいんだけど……。

 

確かに私達の銀河にはいなかったけどさぁ、いざドロイドになっちゃうと、マジでアレ怖いの。よく正義って名乗ってるけど、所詮私達って『正義(笑)』な連合軍ドロイドだからね? あの人たちから見れば連合国も帝国も普通に処罰対象なのです、はい。お互い裏でヤバい事いっぱいしてるし。

 

だからその呼び方はやめてほしいんだけど……。そうなると『なんて呼んでもらうか』って話になるんだよね。

 

 

(そも。おばさんが考えてる通り、ドロイドしかいない私達の弱点は“ドロイド”であることだ。)

 

 

母国とも呼べる連合国でもそうだったんだけど、私達ドロイドに人権というモノは無かった。

 

実績を上げればある程度の配慮はしてもらえるんだけど、給料は出ないし、勿論選挙権とかもない。造物主と、被造物。その超えられない差というモノが存在していた。

 

んでまぁそんな“被造物”な私達は、事故で辺境の惑星にやって来た訳なんだけど……。やっぱりと言うか、“ドロイド”であることを理由に嘗められる可能性が出てくるわけだ。多分機械とか言っても意味を理解してくれないだろうけど、『この鉄くれ風情が!』とかね?

 

 

(別にソコは慣れてるからいいんだけど、こっちは軍属。“連合国軍”と見做さないのは結構不味い。連合国の影響下に無い星系とはいえ、国が嘗められるとそれ相応の対処をしなければならないのが、軍なのだ。)

 

 

その他、起きるうる色んな問題を考えると、人に近しい見た目を持つドロイド。そしてこの戦艦に騎乗していたドロイドたちのトップである“私”を『人間』とすることは、そうおかしな話ではない。

 

急に現れた何するか解んないドロイド軍団よりは、トップが可愛い美少女で話せばわかってくれそうなドロイド軍団じゃ、明らかに後者の方がいいでしょ? って奴。

 

んでまぁ話を戻しまして。私の『人間としての名前』なのですケド……。

 

 

「うん、ミクニ。ミクニって呼んでくれる? 騎士って呼ばれるのはあんまり好きじゃなくてね? というか実際は色々違うというか、解り易い言葉に置き換えてるというか……。」

 

「……? ミクニ様、でいいんですか?」

 

「そ! お願いね?」

 

 

HT2-392。後ろの数字から取って、ミクニちゃん。うん、良いんじゃない?

 

あ、そこの戦術ドロイド。安直すぎるとか考えない。不敬罪で軍法会議に掛けるぞ。え、理不尽? 今は本部と通信取れないでしょ? この場合色んなモノが一番位の高い奴に一任されるでしょ? そう、つまり今は私が法。

 

故に裁判長も私、検察も私、弁護人も私。今なら秘匿裁判で全て闇に葬るけど……。

 

お、撤回する? ならばヨシ!

 

 

「んでまぁ色々脱線しちゃって悪いんだけど……。そもそもエリンちゃんってさ、何で一人森の中にいたの? 多分だけど、あのあたりが危ないって解ってたよね? 武器持ってたみたいだし。」

 

「……あッ!」

 

 

え? お母さんが御病気で薬草取ろうと思ってた?

 

あ~、うん。ドロイドとしては、連合国民でなくても民間人の保護はとっても大事ですね。何せ次の選挙に死ぬほど関わって来るので。

 

特にこういう『未開星系の人類にも優しく手を差し伸べる連合軍ドロイド』みたいな人気に繋がりそうな案件を目にすると、死ぬほど行動したくなるプログラムがありますね。はい。私はoffにしてるけど、なんか必要そうなので今onにしますね。

 

……それ先に言いましょ!? メディックッ! メディッークッ!!!!

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「だからさぁ! 徒歩で行こうよ徒歩で! 歩かせろ!!!」

 

『だから駄目と言っているでしょう!? 貴方は我々唯一の高位戦術ドロイドなのですよ! そも、艦長が安易に外に出ようとしないでください! 我々としてはあの“ヒューマノイド”との会談も本意ではなかったのですよ!』

 

『……我らも賛同できない。どれだけ万全に整えようとも確率は決して0には成らない。少なくとも、外出されるのであれば相応の護衛、そして装備を整えるべきだ。決して徒歩での移動は認められない。』

 

「“あ、あの……。”」

 

 

欠片も解らない言葉、多分外国の言葉を矢継ぎ早に口にするミクニ様。

 

それに対し、かなり怒ったような口調で話す緑色の鉄人形さんに、静かに諭す様な声で話しかける何処かから急に現れた黒い鉄人形さん。意味は全く解らないのだが……、ミクニ様が諭されていることは何となく理解できる。

 

色々と不安になってしまったので、つい声を出してしまうが……。

 

 

『大丈夫よ、ワガママ言ってらっしゃるだけだから。』

 

「そ、そうなんですか?」

 

『えぇ。あの人、頭では解っていても敢えてふざけることがあるのよねぇ。感情を優先するタイプと言うべきでしょうか。確かに有事では頼りになるんでしょうけど、総合的に見たら……、直轄の戦術ドロイドたちは哀れねぇ。』

 

 

濃い桃色の服で着飾った鉄人形さんが、私にもわかる言葉でそう教えてくれる。

 

確かにあのお方、ミクニ様を始めて目にした時はなんというか、言い知れない恐怖があった。まるで何かに作られたかと思うほど整った顔に、白く透き通った絹のような髪。そして『グンプク』と言うらしいとても綺麗な衣。お貴族様ではないらしいが……、私達のような村人が思い描く“とても身分の高い人”が彼女だった。

 

そんな身分の高い人、役人や貴族は私達からすれば恐怖の対象。だからとっても怖かったんだけど……。

 

あの怒られてる? 姿を見る限り、とても愉快な人なのだろう。

 

 

(でもこれを視たら……、絶対口に出来ないなぁ。)

 

 

そう思いながら視線を向けるのは、巨大な鉄の塊。

 

いや巨大では到底表現できない様な、何か。

 

視界一杯に広がる“鉄の壁”であり、所々様々な色の光が瞬き、空飛ぶ小さな物体がその側面を動き回っている。ミクニさんたちの言葉で言う、“センカン”なるもの。大きく開いた場所からはさっき私を助けてくれたような鉄人形さんが何人も出たり入ったりしていて、多分奥行きも凄いのだろう。

 

もし教会の人が見れば、“神が作り上げた山”と呼ぶような巨大な存在。

 

 

(たぶん、いや絶対にヤバい奴。お貴族様や王様よりも、もっと偉くて凄い人だ。)

 

 

この眼の前に広がる物体が一体何なのかは解らない。けれどこれが自然に生まれるわけがないというのは、魂で理解できてしまう。この巨大な鉄の壁は人の手によって作られたもので、持ち主はあの人。ミクニ様だ。

 

こんなの見せられたら、もう何も言えるわけがない。

 

確かに私はお貴族様の屋敷も、王様のお城も見たことはない。けれど確実に、この“センカン”より小さい。というかコレよりも凄くて大きいモノを持っている人はいないだろう。それこそ本当に神様ぐらいじゃなきゃ、いやもしかすると神様でも持っていないかもしれない。

 

何故か普通にお話してもらったが……。おそらく本来なら口を利くことすら許されない存在が、彼女なのだろう。

 

 

『あ、別にそう言うのじゃないわよ? あの人も仕える人がいるし。』

 

「つ、仕える人!?」

 

 

こ、こんなに凄いものを持ってるのに、誰かに仕えてる!?!?!?

 

 

『どっちかと言うと組織かしら? まぁ“同じ括り”の中では一番偉いお方ではあるのだけれど、それ以上に上の人もいっぱいいるって感じかしらね。』

 

「う、上……。」

 

『ま、気軽に話しかけてあげなさいな。そっちの方が好みでしょうしね。』

 

 

正直全く理解が出来ないというか、スケール感が大きすぎて欠片も解らないのだが……。最後に言われたことは、なんとなく理解できた。

 

何せ、さっきまで行われていた言い合い。それで最終的に負けてしまったのだろう。鉄人形さんたちに言い負かされ、ふてくされているミクニさんの姿がここから見えるのだから。内容が理解できなかったのでこの考えが合っているかどうか解らないが、そう外れていない気がする。

 

この綺麗な話し方をする女性のような鉄人形さんが言う通り、対等に話すことを好まれる方なのだろう。……出来る気はしないが。

 

 

『あ、そうそうエリンちゃん。少し聞きたいことがあるのだけれど。』

 

「え、あ、はい。私で良ければ……。」

 

 

そんな感じで、この桃色の鉄人形さん。なんでも“キュウセン”? という名前の人の説明に応えていく。どうやら解らない単語の擦り合わせがしたかったようで、彼女の持つイメージを口頭で教えて頂き、それに私が返すという感じだ。

 

私としても、それぐらいどうってことない。というかさっきあのゴブリンたちから助けてくれたのが、この人たちなのだ。大恩人に対するお返しとしては全然足りないレベルだろう。

 

キュウセンさんの質問に答えながら、どうやったらお返し出来るかと考えていると……。鉄の壁、“センカン”の方から大きな音が聞こえ始める。

 

 

『カーゴを出すぞ! 発艦用意!』

『らじゃらじゃ』

『オーライ、オーライ』

 

『馬鹿! そっちは修理中だ! こっち!』

『だが命令ではこっちだぞ?』

『いや違う! こっちだ!』

 

『……結局どっちだ?』

『ムズカシイ……。ア、オマエ、ハッチアケテ?』

『らじゃらじゃ』

 

 

沢山の鉄人形さんたちが動き出し、鉄の壁の扉らしきものを動かし始めているのが見える。相変わらず言葉は全く解らないのだが、途中から何故か言い合いを始めたり、変な方向に走り出したり、壁にぶつかったりしているのだが……。

 

大丈夫なのだろうかと思い、桃色の鉄人形さん。キュウセンさんの方に視線を向けるが……。顔らしき部分に両手を当てて天を見上げている。

 

 

『これだからンャチタナアのドロイドは……ッ! そこのッ! そこの戦術ドロイド! 貴方の担当でしょうが! 部下の指示位しっかりしなさい! 今はお客様もいるのですよッ!!!』

 

『いやしかしXV1P-T-9000殿。一応彼らも頑張って……』

 

『ソコ、滑りやすいぞ』

『どこー?』

『足元だ、テープ貼ってあるだろう。注意しろD1。』

『あしもと……? え、あ、わぁぁぁ!!!!』

 

 

キュウセンさんが近くにいた緑色の人に話しかけた瞬間。

 

何処か抜けた『ワー!』という声が周囲へと響き渡る。そして其方の方へ視線を向けた瞬間、地面へと落ちていく鉄人形の姿が。どうやら高所での作業をしていた所……、足を滑らせてしまったようだ。

 

それを見てつい声を上げそうになるが、それよりも早く鼓膜を震わす破壊音。

 

地面に叩きつけられ、沢山のパーツが地面に投げ出されてしまう。

 

……だ、大丈夫なんですか?

 

 

「またか……。あ、ごめんねエリンちゃん。騒がしくしちゃって。」

 

「あ、いえ! 全然! 全然大丈夫です! ……そ、それで、あの人は?」

 

「ん~? あぁアイツね。見た感じコアまではイカレてなさそうだし、病院行きかな? 10分くらいしたら新しい体で戻って来るよ?」

 

「そ、そうなんですね。良かっ……、10分!?」

 

 

え、あの。全身バラバラになってますよあの人!?

 

頭とか真っ二つですし、腕とかバラバラに成り過ぎて原型とどめていませんよ!? そ、そんなに早く治るモノなんですか!?!?!?

 

 

「まぁ安価なD1だしねぇ。人じゃないから直すのも早いのよ。しかも自動だし。……さ! アレは置いといて! エリンちゃん、“足”の準備が出来たよ!」

 

 

彼女がそう言うと、周囲に響き渡る轟音。

 

その音のする方、上へと視線を向けてみれば……。

 

ゆっくりとこちらに降りて来る、羽の生えた鉄の箱。

 

 

「ドロイド・カーゴ。ちょっと乗り心地は悪いけど……、これでお母さんの所、超特急で向かっちゃおっか!」

 

 

宙に浮くソレが、こちらに視線を向けていた。

 

 





〇ドロイド・カーゴ

DDA-LA99、通称ドロイド・カーゴ。

トルマリスタン・ヘビー・エンジニアリング社が開発したドロイド専用ガンシップ。連合国軍に於いて多数配備された物資輸送及び戦闘機であり、空対地上、空対空という複数の役割を果たせる機体。連合国においてドロイドが配備された時期と同時に配備され始め、現在まで活躍している傑作機。

長方形の箱型ボディに羽が付いた簡素な設計であり、全長25m、全高10m。必要乗員はD1ドロイド2機となっており、機体後方の“カーゴ部分”。その最大ドロイド積載量はD1ドロイドで300体。両側面にドロイドたちを格納できるハッチが取り付けられており、どんな場所でもドロイドを展開させることが可能。

武装としては対人用ビーム砲が機体両翼に4門ずつ、機体前面に高出力ビーム砲が2門備えられており、歩兵として地上を走るドロイドたちの支援をメインとしながら、敵戦闘機との戦闘もある程度行うことが出来る。ただ本機の主目的は“ドロイド輸送”であるため、対戦闘機の勝率はお察し。

ちなみに、ドロイドのみを輸送する想定なので騒音が酷く、同時にカーゴ部分への揺れは非常に酷い。常人が乗れば「次の瞬間には空中分解するのでは?」と思うくらいには酷い。でも死ぬほど丈夫。整備無しで2000時間ぐらい飛ばしても壊れない模様。


今回は特別輸送任務にて使用。巨大なカーゴの中には、

空飛ぶ鉄の箱に「ぴゃぁぁぁ!!!」という悲鳴を上げビビりまくっている少女
外を歩き回り魔物の観察などをしてみたかった内心不満たらたらの艦長
貴人としての振る舞いを忘れず新たに得た言語データの解析を続けるおばさん
随行員としてついて来たが死ぬほど居心地が悪い戦術ドロイド2体
護衛としてついて来たが全員光学迷彩を起動中な“特化型ドロイド”12体
威圧及び表向きの護衛として連れてこられたD2ドロイド24対
患者がいると聞いた何も知らないメディカルドロイド

を全て起動状態で輸送した。

パイロットは暇していたらしい大隊長ことD1-HP-1193と、その配下だった模様。





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