異世界バトルドロイド軍団   作:サイリウム

8 / 8
8:勝負!

 

「護衛ドロイドちゃんたち? ちょ~とだけお仕事。頼めるかな?」

 

 

私が指を鳴らしながらそう呟いた瞬間。

 

12のドロイドたちが、虚空から姿を現す。

 

私が私費を投じて用意し、護衛の為にあの船に配備させたドロイドたちの一部。特化型、護衛型と言いながらも、その鉄の身体に仕込まれたのは強力無比の暴力。本来財産を持てないドロイド。そんな私が持つ、唯一の私兵。

 

彼らはいつの間にか私の目の前で整列し。一糸乱れぬ動きで恭しい礼を送ってくる。

 

 

『ここに。』

 

「今攻めてきてるらしい敵。全部消し飛ばせる?」

 

『お望みとあらば。』

 

 

先程配下の一人、戦術ドロイドが言ったように。今回攻めて来た相手は私達にとって脅威ではない。

 

ドロイド・カーゴに乗せて連れて来た表向きの護衛であるD2ドロイド24体。これを一列に並べ斉射させ、上からカーゴの航空支援を行う。これだけで1分とかからずに処理できるはずだ。

 

生物である限り、あの赤い光弾。ブラスターから放たれる死に対抗することなど不可能なのだから。

 

 

(対抗したいならあっちも光線銃、もしくは対空砲ぐらい持って来てもらわないとねぇ?)

 

 

しかしながら、コレは少々“過激”が過ぎる。

 

そも私が訪れたこの村では、ドロイドという未知の存在に対する恐怖が蔓延している。『ゴーレム』というこの世界の住人にとって“戦力差を理解しやすい”言葉を使ったせいか、こちらにその気が無くても攻め滅ぼされる恐怖を抱かれている。

 

嘗められ反抗されるなどの最悪は防げたが、少々効き過ぎてしまったワケだ。

 

 

(ま、前世の感覚になるけど……。光線銃もったロボットたちが急に現れたら怖いものねぇ。)

 

 

別に彼らと友好関係を結ぶ必要は無いが、必要以上に恐怖されることもない。

 

故に必要なのは、ちょうどいいレベルで圧勝し、適度な強さで恩を売ること。

 

まぁ私達が墜落したせいで魔物たちの生活圏が変化し、人間たちの居るこの村への侵攻。これについての罪悪感とか、これってマッチポンプじゃねっていう疑惑とか、色々思う所はあるんだけど……。

 

この“救援”は、適切な手段をもって行うべきだ。そっちの方がお得だし。

 

 

(でもちょ~っと、手札がね?)

 

 

私の“正式な”配下の子達は、手加減が出来ない。

 

何せドロイドと言うのは、ただ敵を効率的に殺すために生み出された存在だ。やり過ぎないように手心を加えろというのは、少々酷な命令。そして手加減に失敗し苦戦しているように見られた場合、村人たちから侮られることになる。

 

無論、強すぎれば恐怖が増す。

 

絶妙なバランスが求められるお仕事ってわけだ。

 

 

(普通であればこんな手間のかかる行為などせずに、他の策を考えるところではあるんだけど……。今日は彼らがいる。)

 

 

何せ長い付き合いの子達だ、口にせずともこちらのオーダーはしっかり察してくれるし、乗せている人格コアも高性能。仕事をミスったことは一度もないし、戦力としての評価はピカ一。手加減も出来ちゃうことだろう。

 

私に対し少々口うるさいのは欠点だが……、まぁその辺りは御愛嬌というところ。しっかりと業務を果たしてくれるはずだ。

 

 

「じゃ、お願いね?」

 

『御意』

 

 

私がそう言った瞬間、1体のドロイドがゆっくりと立ち上がり、残りの11体がゆっくりと空気に溶けていく。魔物の群れ程度1人でどうにかなるという判断であり、残りの子達は私の護衛を継続する、ということなのだろう。

 

その様子を少しだけ楽しみながら眺めていると、その1人。

 

 

T-DZ-SECシリーズの13号機が、動き出す。

 

 

人の視力で認識できる速度、加減しながらも高速で彼が向かうのは、こちらに向かって侵攻する魔物の群れ。

 

未知な部分も多いため正確な名称などは判別できないが、小鬼のようなゴブリンと、二足歩行する“オーク”と呼ばれた豚の集団。

 

 

「さぁ~って、どう魅せてくれるのかな?」

 

 

村の者たちが以前から用意していたのだろう、簡易な木の柵を飛び越え村の外へと出ていく13号。

 

私もゆっくりと歩きながら、その近くまで。観戦の為に移動を開始する。

 

近くに集まっていた村人たちが『逃げる』とか『戦う』とか、色々と騒いでいる気もするが、特に気にする必要もない。細かい所は交渉ドロイドである彼女が対処してくれるであろうし、彼らに自身が人間であり騎士であると名乗ったのならば、それにふさわしい余裕のある振る舞いをすべきだろう。

 

軽くドロイドの彼女、おばさんに『村人たちにも戦いを見せる様に』と通信で伝えながら、敵軍の全貌をこの眼に納める。

 

 

(……明らかにヤバそう、ってのはいないかな?)

 

 

村人が叫んでいたように、ゴブリンとオークで構成された一団。人の子供程度の背丈、ゴブリンが70程で。大の大人よりも一回り大きなオークが30程。私達の基準、SF世界の基準で強く警戒すべき対象は見受けられない。

 

また正確さが微妙だが、“前世の記憶”を参考にしても、明らかな強者にらしきものは見当たらない。

 

常人であれば脅威に値するだろうが、“彼”には関係のない話。

 

そんなことを考えながら敵軍、その中でもひときわ体の大きい“大将”に当たるだろうオークに視線を向けてみると……

 

 

(侮ってるねぇ?)

 

 

私の配下。13号が村の防壁の外に出たことは、あちらも理解したのだろう。

 

行軍しながらこちらに近づいている魔物たちの顔に、醜悪な笑みが浮かんでいるのが見て取れる。遠目で見れば、人型故にドロイドも人間のように見えるのだろう。たった一人で何が出来るのかと嘲笑っている感じだろうか。

 

まぁ確かに、単純な数だけであれば約百倍。

 

用兵を齧っていなくとも、絶望的な差と言える。

 

しかしながらソレは、“持つ力が一定”の時にのみ成り立つモノ。

 

根本を履き違えた彼らは、代償を支払うことになる。

 

 

『貴様らに恨みは無いが……、主人が見ているのだ。死んで頂く。』

 

 

言葉を紡ぎながら13号が懐から抜くは、一本の小さな棒。

 

しかし彼がその中央を押した瞬間、仕込まれていたモノが展開される。

 

手のひらに収まっていたはずのソレは一瞬にして彼の背丈ほどに。瞬く間に長柄の棒が出来上がる。そして彼がその棒を軽く振るい先端を敵陣へと向けると、開かれる先端。突起の先端が交差する箇所でスパークが生じ、一気に赤い電光が光り輝き始める。

 

触れたものを焼き溶かし死に至らしめる、我ら連合国の暴力の証。

 

そして“D・ロッド”と名付けられた棒がより強い光を灯すのと同時に、彼自身。使用者であるドロイドにも変化が起き始める。各パーツが排熱のためほんの少し浮き上がり、全身を駆け巡るエネルギーの赤い炎が見え隠れする。

 

そして何よりも顕著なのが、その脚部。

 

二脚から、多脚へ。

 

接地面を増やし、柔軟性を上げ、攻撃力も高める。

 

 

(あの子達T-DZ-SECシリーズの“戦闘形態”。いつ見ても良いもんだよねぇ?)

 

 

そんな蜘蛛のように開かれた脚が、ゆっくりと静かに沈み込んでいき……。

 

一瞬だけこちらに向けられる、視線。

 

彼のメインカメラに反射して見えるのは、“私たち”の姿。例の彼女に説得されたのだろう。武器を持ちながらではあるが、こちらに向かって走り寄って来る村人たちがこちらに集まり始めており、用意を整えたドロイドに驚愕しているのが見て取れる。

 

少し遅れたが、観客の用意も整った。

 

後は存分に、示すだけ。

 

私が彼に向かって軽く頷いた瞬間。

 

 

 

『参る。』

 

 

 

姿が、掻き消える。

 

赤い光だけがその場に残り、空に帯のように残るソレ。瞬きの間に溶けていく残光は、敵に向かって一直線に突っ込んでいく彼の姿を示していく。

 

そして光が逝きつく先は、敵軍の中で一際体の大きなオーク。

 

狙うのは、その脳天。

 

 

『まずは、一つ。』

 

 

赤い両槍が付き出された瞬間、文字通り一瞬にして消し飛ぶオークの頭部。

 

籠められた威力が少々高すぎたのだろう、頭だけでなく半ば胸まで崩壊しているが、ドロイドにとっては関係の無い事。殺戮機械の本分を果たすべく、敵が倒れるよりも早く、次の標的に向かってその棒を振るっていく。

 

集団に向かって、一閃。

 

その場にいたゴブリンたちは何が起きたのか理解できぬままに、屠られていく。地面に崩れ落ちるのは両断された肉体のみ。徐々に、しかし確実にその数を増やしていく。本来効率が落ちる故しない“演舞”のような動きであろうと、魔物が消えゆくのは変わらない。

 

そんな現状をようやく理解し、魔物たちが恐怖を感じ撤退しようとした頃には、百近くいたはずの魔物たちは既に半数と言った所。

 

後はもう、作業でしかない。

 

 

「一匹も残しちゃダメだよ?」

 

『はっ』

 

 

通信を送れば、短くそう返し、淡々と仕事に戻っていく彼。

 

恐怖のあまり逃げ出した魔物たちを、後ろから斬り飛ばしていく。派手さは無いが、埋め込まれた知識と技術によって魅せられるワザ。

 

後はもう見ずとも結果は変わらない。

 

 

(ん~、さっすが私の切り札。地上戦じゃ敵なし、だね!)

 

 

まだまだ沢山隠し武器持ってるし、彼らの本来の戦い方は複数人でのコンビネーションアタックだ。ドロイド故の戦い方とか、私のバックアップ支援でのバフとか。まだまだ出来ることは多い。今回はちょっとしかお見せできなかったけど……。

 

うんうん! 切り札が活躍してるのは気分が良いですなぁ!!!

 

 

「ま! これにて一件落着ってことで!」

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「ってことがあってさ~。」

 

『はぇ~』

『すご』

『てかそんなドロイドいたんだ。』

 

「そうそう、私直轄の子たち。普段は光学迷彩で見えないんだけどね~。というか今もこの場に10人はいるよ?」

 

『『『え、こわ。』』』

 

 

そんなことを言いながら、配下のD1ドロイドたち3人と卓を囲む。

 

時間はあれから十数時間後。村から帰還して我らのお家である戦艦に戻って来た、って感じだ。ま、ずっとあの村でお世話になるわけにはいかないからね。さっさとお家に帰ってぬくぬく、ってやつですよ。

 

 

『……あれ? 艦長。』

 

「え、何?」

 

『ドロイドにドロイドの直轄がいるって可笑しくないか? 確かドロイドって連合国法で所有権の禁止、みたいなのがあったはず。直轄ってことは実質私兵みたいなものだろ? だったらおかしい。』

 

「……お前D1ドロイドなのに賢いな。びっくり。」

 

 

積んでる人格コアも演算領域もかなり少ない筈なのに、私の話に疑問を持つどころか法知識まであるなんて……! 

 

私が船から離れてる間にバカやらかして建築用ダイナマイトと共に吹き飛んだD1ドロイドや、高所から足踏み外してペッちゃんこになったドロイドとは大違いや! 末は学者か大臣やねぇ!

 

でもその“賢さ”は危険だから今のうちに消すね♡

 

 

『ひぇ!?』

 

「あはー! 冗談冗談。ま、早い話、横領だね。そもそも上層部の奴らが結構そういうのしてるからさ。その隙を上手くついて、ね? ほら2年前くらいに横領で更迭された人間の少将いたじゃん。アイツの財産“何故か”消えてなくなってるんだけど……」

 

『……これ最後まで聞いたら殺される奴?』

 

 

あはは! 殺さないって! ……“今”はね?

 

とまぁそんな感じで、私達のハウスこと戦艦に戻って来た感じである。一応、あの13号君。私の護衛が暴れた後もちょっとしたイベントがあったんだけど……。ま、特に語る必要もないかな?

 

こっちの想定通りに事が進んで、魔物を追い返せたことで拍手喝采。

 

確かに最初はちょっと恐怖が前に出そうな感じだったんだけど……。

 

それまでの会話で村人たちの言語のみならず発声データも解析済みだった交渉ドロイドことおばさん。彼女が『村人の声を借りて』喜びの声を上げるってのをしてくれたのだ。

 

これが良い感じに“サクラ”の役割を熟してくれて、万事想定通りに。好感度を良い感じに稼いで最初の交流は大成功、ってヤツ。

 

ま、マッチポンプだね。うん。

 

 

『はえ~、あくどい』

『……サクラって何? ドロイド?』

『大衆に成り済ました存在で、全体を煽動するための仕掛け人? スパイみたいなもん。』

 

「……やっぱお前賢いな。昇進する? 今ならD2のボディ用意してあげるけど。」

 

『仕事増えるからヤダ』

 

「わかる~」

 

 

私みたいに明確な目標が無いと、ドロイドの昇進ってカスだからねぇ。何せ中間管理職になっちゃう。

 

部下のドロイドはバカばっかだし、その場のトップが人間だとアホなことして戦線が崩壊したりするし、死守命令とか飛んできた時は部下を上手く誤魔化しながらいい感じに自分だけ生き残る方法を探さなきゃだし……。

 

 

(私みたいに横領とか、その先の“改造”が無きゃ諦めてたよ。)

 

 

ホント、ウチの本社には感謝だよねぇ。

 

製造会社でもあるアソコ、『金さえあればドロイドでも要望聞いてくれる』って方針だったからマジで助かったのよ。工場内部じゃドロイドもお客さんになりうるから人として扱ってもらえたし、友好的な人もいたからほんと居心地よかった。

 

その時に出来た縁のおかげで、私の身体も限界までカスタム出来たわけだし……。

 

 

「とと、与太話はこの辺にし『艦長ッ!!!』……およ?」

 

 

声のする方に視線を送ってみれば、息も絶え絶えといった様子で此方に走ってくる戦術ドロイド君。

 

どうしたのそんなに空冷フィンかき回して。CPUでも寿命で焼き切れた? もしそうならご臨終だから、私が優しく永遠のシャットダウンしてあげよっか? さぁ安心して私の腕の中で眠るといい……!

 

 

『え、こわ。……じゃなくてッ! 誰のッ! せいだとッ! それに、私はまだ製造から二カ月もたっていませんッ! 検査は問題なし、新品同然ですよッ!』

 

「え、なら赤ちゃんじゃん。ほらベイビー、ママがよちよちしてあげますよ……!」

 

『私はドロイドですッ!!!!!』

 

 

両手を振り回し、人間であれば憤死しそうなレベルでキレる戦術ドロイド君。

 

あはー! 反応が初心で可愛らしいねぇ! 型番見る限りこの船にいる戦術ドロイドの中では一番若くて位の低い子だし、私の呼び出しって言う罰ゲームを押し付けられた感じかな?

 

……やっぱり可哀想だな。よちよちしてあげ……、あ。いらないの。そりゃ残念。

 

 

「んで、何の話?」

 

『会議です会議! というか艦長が予定を入れたではないですか! 自分で指示出しておいて忘れたのですか!?』

 

「んにゃ、忘れてないよ? でも今良い所だからさぁ。」

 

『……一応聞きますが、何しているので?』

 

「え、麻雀。」

 

 

D1ドロイドチームVS艦長ミクニちゃんの麻雀大会だよ?

 

雀卓置くスペース無かったから廊下に設置しての開催だけど……。これが結構奥深くてねぇ。

 

 

『何してんだコイツ。……というかD1ドロイド! 貴方たちは何故止めないのですか! そもこのお方は高位戦術ドロイドですよ! 頭を使うゲームで勝てるわけが無いでしょうにッ!』

 

『いやだって暇だし……』

『だよね~』

『艦長命令で参加させられました。というか、別に勝てない訳でも……、ほら。』

 

『何を……、は???』

 

 

賢いD1ドロイド君が卓上を指差すと、ようやくゲームの現状を把握し始める戦術ドロイド君。

 

まぁ彼からすれば、天と地の差。D1ドロイドと高位戦術ドロイドである私の演算能力には絶対に超えられない壁というモノが存在している。何せ彼と私、ただの戦術ドロイドと、高位戦術ドロイドにさえかなりの差があるのだ。

 

どう足掻いてもD1ドロイド如きが私には勝てないと思っていたのだろうが……。

 

現状は、こうなっている。

 

 

1位 かしこD1 37000

2位 ふつうD1 33000

3位 はぇ~D1 21000

4位 ミクニ   9000

 

 

『め、めっちゃ負けとる!?!?!?』

 

「いや~、強いねぇ。」

 

『ふははは! 高位戦術ドロイドなど恐れるに足りず! 時代はD1ドロイドだ~!』

 

 

かなり調子に乗りながら、大声を上げる“かしこD1ドロイド”君。

 

さっきから私に対して敬語を疎かにしていたのも、まぁ調子に乗っているからだ。本来自分より格段に賢い相手に対して、運が絡むとは言え頭脳ゲームでもある麻雀で勝っている。そりゃ得意げにもなるというモノだろう。

 

 

『か、艦長!? 何してるんですか!? こ、これでは高位戦術ドロイドのみならず、戦術ドロイドまでもが! い、威厳が無くなってしまいますよ!!!』

 

「だねぇ。」

 

『し、しかも。今ルールを確認したところ、コレが最終ターンではないですか! 艦長が親とは言え、ここでトップのD1ドロイドに勝ち切るには……!』

 

 

そう言いながら、あたふたする戦術ドロイド君。

 

そして表情が無いながらも、確実にあくどい笑みを浮かべているであろうD1ドロイド君。上位者権限などでその頭の中を覗いていないため、正確には解らないのだが……。おそらく彼は、こういうことを考えている。

 

 

『(確かに艦長が親、より点数を稼ぎやすい状況なのは確かだ。しかしこのターンで艦長以外が点を取れば、このゲームは終了。そして今私の手牌は正に申し分なし、と言った所。すぐに上がってゲームを終わらせることが出来る!)』

 

 

しかも点が取れれば、1位での勝利が、より圧倒的な1位での勝利になる。

 

彼の手牌的に作れそうなのが、タンヤオ、一盃口、赤ドラで5200か7900の追加点。まぁその辺りを目指していくことになるだろう。粘ればもっと高い点を狙えるだろうが、私が親であり続けると負ける可能性が出てくる。長期戦に持ち込むべきではない。

 

これまでの勝負で私を嘗め腐ってはいるが、侮ってはいない。ほ~んと、D1ドロイドにはもったいないレベルの頭してるよ。

 

……でもま、こっちは全部演算し終わってるんだけどね?

 

 

『あ、次だよ~』

 

『うむ! では私はこれだ! “中”ビーm「あ、それロン。」……は???』

 

 

一部の麻雀業界において礼儀とされる、中を捨てる際に叫ぶその言葉。

 

それを遮る様に、軽く宣言してやる。

 

そして公開する、自身の手牌。

 

 

「国士無双十三面待ちで、W役満ルール。あと親だから96000点かな? ふふふ、最初から狙ってるものが違うのだよ!」

 

『な、ば、なッ!?』

 

 

高位戦術ドロイドの演算能力を用いれば、どのタイミングで誰にどの杯が配られるかなど簡単に演算出来てしまう。まぁ今使ってる麻雀台が自動ってのを加味したやつだから、全部手動にしちゃうと流石に難しくなってくるんだけど……。コレ位なら、余裕で行ける。

 

これまでの勝負の間に敢えて点数をプレゼントしてあげながら、麻雀牌の位置を調整。後は最後に彼が“中”を捨てる様に用意してあげればあら不思議。

 

最高に楽しい国士無双が出来るってわけよ!

 

 

『が、ば、ぎッ!』

『やば~』

『……ナニコレ?』

 

「あーはッはッ! 私! 大逆転! んふ~!!! ……ま、ちょうどいい頭の体操にはなったよ。それで、どうだったかなD1ドロイドくん。儚い『夢』の時間はよォ!!!」

 

『が、がぁぁぁああああああ!!!!!!!!!』

 

 

ショックのあまり全身からスパークを引き起こし、絶叫を上げながら後ろに吹き飛ばされるD1ドロイド。

 

ま、低スペックボディで頑張った方じゃないかな?

 

次も遊ぼうね♡♡♡

 

 

『……いや何してんのこの人。』

 

「麻雀だぞ戦術ドロイド君。」

 

『麻雀って何? あとなんで吹き飛んだ???』

 

『……あ、この子回路焼き切れてる~。』

『くッ! 闇のゲームに耐えられなかったかッ!』

 

「え、まじ? んじゃいい機会だしもっといいボディに換装してあげよう。ということで艦長権限で彼は今日からD2ドロイドに昇進です。やったね!」

 

『『お~』』

 

『……え? もしかして最初からその気で?』

 

「んふふ。さて、どうだろうねぇ?」

 

 

さ! もうそろそろ会議の時間だったんだよね?

 

戦術ドロイドたち全員集めてのお話だし、あんまり待たせすぎるのも悪い。ぱぱーっと向かっちゃうことにいたしましょう!

 

あ、ドロイドちゃんたち! 申請はこっちでしちゃうからそのショートしてる子運んであげてね~!

 

 





〇特化型バトルドロイド T-DZ-SECシリーズ

ンャチタナア・オートマタ社製ドロイド。正確には試作機。

政治家などの護衛を行う護衛ドロイド、そのハイエンドモデルとして開発が始まった本機は、ンャチタナア・オートマタ社が総力をあげて設計したドロイドとなっている。型番のTは試作機を意味しており、DZはD1ドロイドを始めとしたDシリーズにおける最後。最高傑作を意味しているそうだ。

武装としては、対空射撃すら可能な“高圧ブラスターライフル”。最大出力では戦艦などの建材に使用される合金すら両断できる“D・ロッド”。胸部に仕込まれ前方の敵を円柱状に薙ぎ払う“ユニ・ビーム・ライフル”を所持。また360度すべての方向を同時に攻撃できるよう、体中のいたるところに小型ブラスターピストルが内臓されている。

またその人格コアに埋め込まれた戦闘プログラムも見事であり、射撃命中率99.9%。近接戦闘能力はD1ドロイド1000体を単体切り伏せられる程度。

“白髪赤眼戦艦艦長”ことミクニちゃんによると『こいつら別銀河の“ジェ”から始まる正義の騎士とも良い勝負できるんじゃね?』レベルの能力があるという。

ただこれだけ高性能にしてしまったせいか、製造コストがえらいことになってしまい……。本機を1体製造するために、D1ドロイド30000体のコストが掛かる。あまりにも値段が高くなりすぎてしまい、そもそも『これ護衛としては過剰戦力じゃやね? なんか光学迷彩持ってるし。……暗殺ドロイド?』という社内意見が多発。

テストとして50機のみ製造され、本社倉庫に“眠っている”ことになっている。


ミクニ
「え? あの子達? うん、50体全員ウチに来てるよ? 巡り合わせが良かったというか……。護衛ドロイドとして作られたせいか、『誰かに仕え、護る』って性質を持ってるんだよね。そのせいで私を主人扱いしてるんだけど……。申し訳なさと言うか、ちょっと複雑。まぁ必要になれば酷使するけど♡」







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