よくある男オリ主もの   作:SeA

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前話のランクマ周りちょっと変更しました。
よく考えたら格ゲーのランクマで一本勝負はひどすぎたので3ラウンド2本先取に変更です。
数行描写が増えただけなので読み直さなくて大丈夫です。


オリ主くん、出逢う

 叫び声がする。人と獣が混じったような不思議な声。そんな雄たけびを上げながら俺の目の前にいる身の丈3mを超える大鬼は右手に握った棍棒を叩きつけてくる。

 眼前に迫る棍棒の側面に手にした刀を叩くように振るう。ほんの少しだけ加わった力の流れによって棍棒の軌道が変化する。その間を抜けるようにして前へと駆けた。次の瞬間に後方の地面が爆発するように弾け飛ぶ。まともに受けることは出来ないな。

 まるで樹木のような太い足の間を走り抜ける。ついでに右足の親指を切り落とす。これで右足の指は中指しか残ってない。

 絶叫。 

 上方からさっき以上の声が響く。うるさい。

 振り返ろうとする大鬼の左膝を横一文字に切り裂く。やかましい叫びを上げながら膝と手を地面につく大鬼。やっと倒れた。なんで片足の指が一本しかないのに普通に立ってたんだこいつは。意味が分からん。さすがに納得できないぞ。

 膝から登り背中へ駆け上がる。背骨に沿うように刃を走らせながら頭部へと向かう。

 大鬼が首を捻りこちらを視認するよりも早くうなじを切り裂く。足りない。

 頭頂部まで登り、目玉に刀を突き刺しそれにぶら下がる。これでも足りない。

 溜息を飲み込み、大鬼の鼻に足をかけ全体重を籠めて刀を目玉の奥へと突き入れる。

 なにか硬いものに触れたと思った瞬間、大鬼の全身が光に包まれ消えていく。やっと終わった。

 

「……終わりか」

 

 大鬼から降りて地面に立ち、呟く。時間にして3分ちょっと。これはどうなんだ?

 

「おつかれさまー。いい感じのデータ取れたよー」

 

「そうか」

 

 上空から響く声に答える。

 月見ヤチヨ、この仮想空間ツクヨミの管理人だ。

 

「感想は?」

 

「……うるさかったな」

 

「ふむふむ」

 

「右足の指がほぼ無いのに普通に立っていたのは、なんだったんだ」

 

「そこはリアルとリアリティの差かなぁ」

 

「そうか」

 

 刀を払い、納刀。

 いつもの感触、慣れた感覚。

 

「今日は終わりか」

 

「うん! バッチリ! これなら次の中型アップデートでKASSENに組み込むのにいい感じ。ありがとね、タロー」

 

「別にいい。報酬目当てだ」

 

 軽く頭を下げて謝意を伝えてくるヤチヨにそう告げる。

 今回の新型牛鬼、だったかの体験テスターはそう難しいものではなかった。確かにアシスト機能前提だろう体捌きを要求されたが、面倒くさいだけで撃破は不可能ではなかった。

 

 もう何度目だったか、こんな風にヤチヨの頼みを聞いたのは。

 

「報酬ねぇ。……じゃあ、やろうか」

 

「ああ、頼む」

 

 鯉口を切り、抜刀。

 互いに向かい合い、一瞬の間をおいてから切りかかる。

 火が付く。胸の奥から熱が広がっていく。刀と傘が交錯するたびに心の内側が埋まっていく。

 

 感触に不満はある。得られる感覚に違和もある。でもいい。

 これでいい。これがいい。

 この程度でも、俺にとっては貴重なのだから。

 

 

 

 

 

 

 俺がツクヨミ(ここ)に来るようになって1年が経った。年をまた一つ重ね、学年も上がり、クラスメイトも変わった。

 生活環境に変化は特にない。平日は学校に行き勉学に努める。それ以外ではツクヨミでひたすらに斬って(遊んで)る。1年前から変わらない日常を過ごしている。

 

 ―――いや、変わらないと、思い込もうとしている。

 

「タローが今いるランクってさあ」

 

「レジェンダリーだな」

 

「うん。元々は無かったんだけど2年前に追加したランクなんだ」

 

「そうだったのか」

 

 ヤチヨとの一勝負を終え、2人で川辺に座り雑談をしていた。

 報酬として刃を交えたあと、ヤチヨはいつも俺との雑談を求めてくる。なにが楽しいのかはわからないが、それで彼女の気が済むのなら別に構わない。

 受けた恩は返すもの。そうするべきだと幼少の頃に散々叩き込まれた。

 こんなものが恩返しに該当するのか不明ではあるが。

 

「そうそう、そうなのです。ツクヨミの総ユーザー数がどれくらいいるか知ってる?」

 

「知らん」

 

 なんだったかいつか調べた時に見たような気がしなくもないが、覚えてない。

 どうでもよかったんだろう。

 

「今年で1億人超えたんだよねー。すごいでしょ」

 

「そうか」

 

「で、そんな規模のツクヨミで一番人気なゲームが『KASSEN』なの」

 

「ああ」

 

「その中にSETSUNA(1 VS 1)SENGOKU(3 VS 3)KASSEN(7 VS 7)の各種があるけど、やっぱ母数が多いからプレイヤー数も多いわけ」

 

「だろうな」

 

「だから最高ランクのマスター1に到達する人も結構多くてねぇ。その中でも格差が出来ちゃってたから、これはもう一つ上のランクを作らないとダメだなってなったんだー」

 

「そうだったのか」

 

 今はあまりそこまで大きな格差は感じないが、以前はそうだったのか。

 

「そんな感じで増やしたのがレジェンダリーランク。他のランクとは違う唯一のレート戦方式」

 

「他ではないのか」

 

「ないよ。最高ランクまで到達した人だけがレート戦に臨めるようにしてる。そこまで行った人達のモチベ維持も兼ねてね」

 

「なるほど」

 

「そんなこんなで実装された超最高ランクがレジェンダリー。タローは昇格条件はちゃんと覚えてる?」

 

 問うてくるヤチヨ。

 さすがにそれくらいは覚えてる。よく行くしな。

 

「マスター1での最新50戦での勝率7割、だったか」

 

「そ。ぶっちゃけ賛否というか否は多かったんだけど、結果的には良かったよ」

 

 実力がありすぎる人が無双しちゃうことも減ったしね、なんて笑うヤチヨ。

 

「タローは最低ランクからマスターまで無敗で駆け上がっちゃったのがアレだったからちょっと話題になったってのはあるけど、チートって疑われそうなくらいに強い人は他にいなくもないんだよ」

 

「確かに。レジェンダリーで手強いのに当たった覚えは数多い」

 

 うんうん、と頷いたあと空を見上げるヤチヨ。

 それに倣い、俺も空を見上げる。

 どこからかトンビの鳴き声が聞こえた。

 

「でもタロー、初めてレジェンダリー行った時、無双したよね」

 

「斬りまくったな」

 

「タロー、アプデ入ったら負けるようになるって言ったよね」

 

「弓や銃を得手とする相手にはな」

 

「……対戦相手に遠距離型、全然いなかったもんね」

 

「そうだな。そこは俺も君も考えが足りなかったな」

 

「…………タロー、シーズン後半にレート戦始めたのに最終的にトップ100に入ってたよね」

 

「知らん。覚えてない」

 

 その言葉にガックリと肩を落とすヤチヨ。

 仕方ないだろう。勝敗や順位なんてものに関心は無いんだ。

 溜息を吐き、こちらをジトっとした目で見るヤチヨ。言いたいことがあるなら言え。

 

「考えてみたら当たり前だけど、高ランクのSETSUNA(1 VS 1)で遠距離型が多いわけなかったんだよねー」

 

「ほとんどいなかったからな」

 

「SETSUNAは半径約20mのインスタンスエリアでの対決。スタート地点はランダムだけどプレイヤーはエリアの中心から対角に配置されるようになってるし高低差も無いようになってる」

 

 屋内、屋外問わず。様々な場所での決闘。

 いつだかあった滝壺の前なんて場所は、なかなか騒々しかったが。

 

「半径20mは、遠距離型には狭いよねー」

 

「みたいだな」

 

「撃ってる間にみんな接近しようとするから距離稼ぐの大変だしね。単発火力型は連射出来ないからすぐ近接戦になるし、連射型は火力を大きくは盛れないようにしてるし」

 

「現実を基準とするのなら距離を取った攻撃は強いんだが、ゲーム(ここ)ではな」

 

SETSUNA(1 VS 1)はともかく、他のモードだと強いんだけどね。遠距離専門職が一人いるだけで勝率目に見えて変わるから」

 

 いつだかヤチヨに聞いたな。売り文句は『広大なフィールドを駆け巡ろう』だったか?

 

「ギミック武器で遠距離仕込んでる人は多いけど、サブ武器扱いでの持ち込みになるから武器性能落ちるんだよね。対応力は増えるんだけどねぇ」

 

 銃が仕込まれてる剣は、剣が強くて銃が弱くなり。剣に変形するような銃は、銃が強くて剣が弱くなる。そんな感じだったか。

 

「そんな状態の人が多いレジェンダリー、タロー負けなしだったもんね」

 

「ああ」

 

「アプデ前はラウンド落としたこともあったのに、アプデした後は高ランク帯でもラウンド取られなくなったね……」

 

「俺の思った通りの俺の剣を振るえるようになったからな。後れをとる謂れはない」

 

「遠距離相手には負けるようになったはずなのに、遠距離武器担いでくる相手がいなきゃそうなるよねー」

 

「そうだな」

 

 2人で空を眺めていると唐突に周囲が暗くなった。

 夜になったらしい。

 仮想空間らしい出鱈目だな。

 

「シーズン始めはレジェンダリーに人はほとんどいない。だいたいいつも限られた人だけ。なんたって、まずマスター1まで上がって50戦しないといけないから」

 

「そうだな。いつも初日は人がいない」

 

「でもタローは初日で昇るもんね」

 

「そうだな」

 

「そして、やりすぎた」

 

「ああ。きっと、そうなんだろうな」

 

 斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬った。

 だから、失敗した。

 

「シーズン始めの数日はどうしたって人数は少ないから、マッチング相手も絞られちゃう」

 

「ああ。そして俺は斬りまくった」

 

「そうしたら相手も思うよね『なんとか対策しなきゃ』って」

 

「……そして、対策が見つかった」

 

 弓である。

 そこそこの火力と連射性。威力減衰距離を考慮すると銃よりも弓がいい、らしい。ヤチヨが言うには。

 

「だから新シーズンが開幕してからの数日という短い期間の間だけ弓が流行るようになった」

 

「そうだな」

 

「でもシーズン開始から一週間もすれば人も増えて環境も元通りになる、はずだったんだけど」

 

 そうだ。俺に勝つための対策であり、他の大多数のプレイヤー相手への対策ではなかった。だからマッチングする相手が増え対戦相手が限定されなくなれば元に戻り、俺も存分に斬り合えると思ったんだが。

 

「タロー、弓どころか銃で撃たれても普通に弾くもんね」

 

「遅いからな。実際の物を体験したことはないが、現実と違って音よりも遅いくらいの速度だろう」

 

「そりゃゲームだからねぇ。そこをリアルにしちゃうと銃が最強になっちゃうし」

 

「そうだな」

 

「で、そんなタローに弓で勝つにはカスダメでいいからダメージ与えて判定勝ちに持ち込まないといけないんだけど」

 

 その通りだ。

 俺には相手を斬れない以上ダメージを与えられない。つまりは勝てない。

 だが相手は遠くから一方的に射掛けダメージを与えてくることが可能だ。

 

「でもタロー弾くし躱すから、ノーダメでHP同値のまま延長戦に持ち込んでたでしょ」

 

「そうだな。初期はそれが多かった」

 

 3ラウンド時間を稼ぎ切ってからの延長戦。

 延長戦ではルールがそれまでと異なり、時間経過でエリアが縮小され範囲外に出ると大ダメージが発生するようになる。

 そうするとどうなるか。答えは極めて単純である。

 ひたすら弾いて待ってれば相手から近づいてくるので、そこを斬る。それだけ。

 

「タローに勝つための手段は見つけたけど、それを為すためには技量がいる。ではどうするか」

 

「鍛錬だな」

 

「うん。レートを減らしてでもタローに挑んで弓の腕前を磨いたりする向上心の持ち主がたくさんいたね」

 

「そうだな」

 

 そして徐々に延長戦に持ち込めなくなり、敗北が目に見えて増えていった。

 

「うんうん。そしてタローを倒して弓の腕前を磨いたみんながそれからどうしたかっていうと」

 

「人が増えても弓を握ったままになるようになったな」

 

「うん。そのままメイン武器として扱うようになったんだね」

 

「そうだな」

 

「で、それに対抗するための高機動回避型の短剣持ちが増えた」

 

「ああ」

 

「攻撃範囲が短くて基本ダメージが小さい武器種はクリティカル判定大きくしてるし、短剣はスキルに回避系統多いからね。弓狩りにはピッタリ」

 

「らしいな」

 

 斬り合ってる最中に吹っ飛ぶような不思議な動き(スキル)で回避されることはあるが、俺は近づいてきたところを斬るだけだから特に思うところはない。短剣相手に切り結ぶ、なんてこともあまり無いしな。現状では手応えの軽い、技量がまだ足りてない相手が多い。時間が経てば満足できる腕前の相手も増えるのだろうが。

 

「つまりタローが暴れまくった結果、SETSUNA(1 VS 1)では人気のない弓が最高ランクであるレジェンダリーでだけ異様に流行り、それを狩るための短剣が流行るという不思議な環境に変化した」

 

「ああ」

 

「そして純粋な近接型が減った結果、タローは満足出来なくなった」

 

「……そうだな」

 

 結局のところ、考え方が違い過ぎたのだ。

 俺は戦えれば、斬り合うことさえ出来れば良かったのだが、他の人は勝利を求めていた。

 

 弓の相手をするとただ渇くだけだった。敵意が、殺意がただただ遠い。射られた瞬間は心に火が付きそうになるがそれも一瞬だけ。火が付きそうになった分だけ逆に渇いていった。

 短剣の相手は弓よりはマシ、という程度。弓と戦うことを前提としているからか近接戦での技量が甘いのが多い。それでも普段から短剣を主武装として使っていただろうプレイヤーと戦えれば多少は満足できるが、まだそこまでの技量の持ち主は少ない。時間さえあれば増えるだろうが今の段階では物足りないのが多い。 

 

「タロー、最近大丈夫?」

 

「大丈夫、とは?」

 

「この前ちょっと対戦ログ覗いたら、あまり笑ってなかったよ」

 

「……そうだな。火が付くような戦いが、最近は少ないからな」

 

「…………そっか」

 

「ああ」

 

 会話が途切れ、沈黙が流れる。

 隣り合って座りながら、2人静かに星の煌めく夜空を眺めていた。

 

「モブ敵相手じゃ、タローって満足できないの?」

 

「あれが相手だと少し難しいな」

 

「それってなんで? タローと斬り合えるようなのも色々いたと思うけど」

 

「あれらは、君と違うからな」

 

「……ヤチヨと?」

 

「ああ」

 

 モブ敵。ヤチヨに頼まれて相手した大鬼なんかは確かに強かったし、弓やら銃も持ってたりはしなかった。故にヤチヨも俺がそれで満たされるのではないかと思ったのだろうが。

 

「あれは、感情が無いからな」

 

「感情?」

 

「殺意や敵意といった表現でもいい」

 

「えっと、別にヤチヨもそういうのはタローにないよ……?」

 

「ああ。だけど俺を見ている」

 

 ポカンとするヤチヨ。

 この説明だとわかりずらかったか。

 

「なんと言えばいいか……。そうだな、君は俺と遊ぼうと傘を振るう。共にこの時間を楽しもうという思いがある。それが切り結べば伝わってくる。君が俺という個人を認識して感情を向けているのがわかる、とでも言えば伝わるか?」

 

「あー、まあ、なんとなく?」

 

 それでいい。俺も上手く言語化できる自信はない。

 

「だがあの大鬼にはそれがない。ただ斬られたから叫ぶし、まるで痛そうなポーズを取っているだけで別に本当にそういうわけではない」

 

「それはまあ、そういうプログラムだしね」

 

「だから、案山子に対して剣を振るってるような気分になる」

 

「そっか、なるほどねー」

 

 実力は申し分ないんだが、中身がないのがな。

 それさえあれば文句どころか他にはなにもいらないんだが。

 

「ところでヤチヨ。君は、君を作れないのか?」

 

「ん? どういう意味?」

 

「そのままだ。君のように心のあるAIを作成することは出来ないのだろうかという質問だ」

 

 それが可能であるならば、俺はそのAIとひたすら殺し合う(遊ぶ)んだがな。

 

「それは、まあ無理かな」

 

「無理か」

 

「うん、無理」

 

「そうか。……では君を作った人物、あるいは団体だろうか。そちらと交渉は出来ないだろうか」

 

「それも、無理かな。ヤッチョの出生については最重要機密ですのでー」

 

「そうなのか」

 

「もちろん! 女の子は秘密があるほうがキレイになるんだよ。だからヤチヨは美人でしょ」

 

「そうか。俺にはよくわからないが君が言うならそうなんだろう」

 

「なにそれ、ひっどーい」

 

 からからと笑うヤチヨ。

 その横顔を眺めながら改めて思う。これがAI。これが人工的に創造された心持つもの。俺が持ち得ないものを備えているもの。世界とは本当に進んでいるな。

 

「無理を言ったな、すまない」

 

「ううん、気にしないでいいよ」

 

 会話を止め、夜空をまた2人で静かに眺めていると少し強い風が吹いた。

 風が吹きヤチヨの髪が宙を泳ぐように靡く。まるで風と戯れているような光景だった。

 この少女は風と仲が良いんだな。なぜかそんなことを思った。

 

 どうでもいいことを考えていると、ヤチヨがふと口を開く。  

 

「タローにさ、前から一個聞いてみたいことがあったんだけど、いい?」

 

 唐突な質問に視線をヤチヨに向けたまま、無言で先を促す。

 珍しいことを言うものだ。俺に答えられるものなど大して無いというのに。

 

「タローの大事な人が誰かに連れ去られようとした時に、タローはそれを防ごうと立ち向かいました。それは何故でしょうか?」

 

 シンキングターイム、そう言ってこちらを見やるヤチヨ。

 俺は、こちらを見つめる双眸を見返し答える。

 

「まず前提がおかしい」

 

「え……?」

 

「俺には大事な人なる存在はいない。前提が間違っている以上、俺には答えられない」

 

 よって、そもそもそんな状況が起こらない。

 考える意味すらない。

 

 その言葉を聞いて呆れるような目を向けたあと、目を伏せながら口を開くヤチヨ。

 さて、なんだろうか。

 

「じゃあ、ヤチヨなら……?」

 

「なに?」

 

「タローの友達のヤチヨが攫われそうになったら、どうする……?」

 

 思いもよらぬことを口にするヤチヨの顔をマジマジと見る。

 視線は下に向けられたまま、嚙み合わない。

 

「まず、一つ聞きたいんだが」

 

「……うん」

 

「君は、俺の友達なのか?」

 

「……………ん?」

 

「友達、に関して俺は詳しくないがその関係性には友情なる感情が相互に必要ではないのか?」

 

「…………んん?」

 

「俺はそういった感情に関してはわからん。である以上俺達は友達と呼べる関係とは異なるのではないかと思うんだが」

 

「えっ、待って待って待ってっ!」

 

 唐突に大きな声を出し、こちらの言葉を遮るヤチヨ。どうした?

 

「タロー、ヤッチョのこと一体全体どう思ってたの!?」

 

 妙なことを聞く。どうもなにもないと思うが。

 

「世界の管理人とその世界に寄生している害虫だと思っている」

 

 俺にしては珍しく正鵠を射た認識だと思う。 

 だがヤチヨにとっては違ったようだ。不思議と険しい顔をしている。

 

「なんていうか……。ああ、いやタローってそんな感じかー……」

 

「違ったか」

 

「……この一年、数ヶ月ごとだったとしても会って話して遊んで(戦って)、そんな関係だったのに害虫って。タローはホントにタローだねぇ」

 

「……そうか」

 

 正直そう言われたところで、俺には理解できないことに変わりはない。

 だが、

 

「君にとってこの関係は、友達と呼べるものだったのか?」

 

「ヤッチョは、そう思ってたよ」

 

 頬を膨らませながら言うヤチヨ。俺の返答は不満だったようだ。

 それにしてもそうか。

 そう、だったのか。なるほど。

 

「初めてだ」

 

「?」

 

「―――人生で初めて、友達が出来た」

 

 そんな普通の人のような関係性を俺に構築出来るとは思っていなかった。

 これまで生きてきて、こんなにも不思議な出来事に出くわすことになるとは想像していなかった。まるで俺の人生じゃないみたいだ。

 

 奇妙な感覚になりながらもヤチヨを見ると、どこか唖然としている様子。

 なにか変だっただろうか。

 

「あーーーーー、なる、ほどねぇ……。そっかぁ」

 

「どうした」

 

「ううん。なんでもない。―――ではでは、改めてお聞きします! タローの友達のヤチヨが攫われそうになったら、どうする?」

 

 再度の質問。

 なら、答えは簡単だ。

 

ヤチヨ(AI)を攫おうとする相手への対処法を俺は持ち合わせていない。よって静観だ」

 

 ガクッと口に出しながら地に崩れるヤチヨ。

 声をかけようとするよりも前に体を起こし、詰め寄ってくる。

 

「なんかこう悪のAI軍団! 悪のAI軍団がツクヨミに攻め込んできてヤッチョのことを力づくで連れてこうとしてる! みたいな感じっ! タローの持ってる刀で相手を斬れる! 戦えるものとするっ!! 以上!!」

 

 眉を吊り上げながら俺を見て叫ぶヤチヨ。何故こんなに必死なんだ今日は?

 ふと思った疑問を投げ捨て、質問について思考を回す。

 

 悪のAI軍団、なるものを上手く想像することは出来ないが言わんとすることはわからなくもない気がする。軍団と呼称するくらいなら数も多く、このヤチヨの創った世界(ツクヨミ)で管理人たるヤチヨの力を上回り連れ去ろうとする集団。しかも刀で斬れる。

 なるほど。

 なら、答えは簡単だ。

 

「―――ヤチヨの救援という(てい)で参戦。そして自己の為に戦う。ヤチヨの優先順位はその次だ」

 

 これ以外にない。

 ヤチヨは俺の友達、らしいが俺の欲求を満たせるかどうかという場面ではそんなものはどうでもいいものだ。

 まず第一は斬り合い、殺し合うこと。それが俺にとっての絶対的な判断基準だ。友達というものを自身の中でどの位置に置くべきなのかはわからないが、とりあえず殺し合いよりは絶対に下だ。俺が(人でなし)である限りこれが変わることはない。

 

「俺の回答は以上だ。これで君の疑問を晴らせただろうか」

 

「…………うん、バッチリ。スッキリさっぱりわかっちゃったよ」

 

 遠くを眺めながら、どこか晴れやかにそう告げるヤチヨ。

 

「…………タローはさ、()()()()()()()()()()()()()()()んだね」

 

「……なに?」

 

「私はタローのこと優しい人だって思ってたから。困った時助けに来てくれる人だって思ってた」

 

 俺が、優しい?

 どうした、なにを言っている? 

 

「ただ知らなかっただけで、実は違った。前も、タローは最初からこうだったんだ。そう思ってた」

 

「ヤチヨ?」

 

 こちらの呼びかけに答えず、自嘲するように言葉を重ね続けるヤチヨ。

 

「―――()()()()()()()()。私がどこかで歯車をそうと知らずに入れ替えちゃってたんだ。私がどこかで輪廻の流れを壊しちゃったから、その歪みがタローに表れてしまったんだね」

 

「……どうした、さっきから何を言っている?」

 

 理解が出来ない。話が繋がらない。

 一体なにを口にしている?

 

「べーつに、ただの愚痴だよ。聞き流しちゃってー」

 

「愚痴?」

 

「そ、愚痴。ここまでいろーんなこと頑張ってやってきたつもりだったけど、最後にやらかしちゃってたことに気付いちゃったっていう愚痴。タローにはどーでもいいことだよ」

 

「……そうか」

 

「うん、そう。だから忘れて。本当に貴方にとってはどうでもいい話だから」

 

「……了承した」

 

 まあ、構いはしない。

 疑問はあるが、興味はない。どうでもいいことを考えるつもりは俺にはない。

 忘れろと言うなら忘れよう。

 

「あ、そうだ。タローこれあげる」

 

 言葉と共に俺の目の前にウィンドウが展開される。

 いつも見たり操作するものとは違う画面だ。端にはTicketの文字。これは?

 

「月見ヤチヨのフリーパスライブチケット、一回分」

 

「ライブ?」

 

「ライブ。ミニライブでもコンサートホールでのライブでも使えるチケット。一回限りだけどね。どんなライブにだって無料で入れちゃうウルトラチケット。誰かにあげたりしたらダメだよー」

 

 月見ヤチヨのライブチケット。

 その価値を俺はまったく知らないが、ヤチヨの言を信じるならば貴重なものなのはわかる。わからないのは何故そんなものを俺に渡すかだ。

 

「ヤチヨ、俺は」

 

「―――ヤチヨに興味が無い。でしょ」

 

「そうだ」

 

 俺は月見ヤチヨに興味は無い。

 ヤチヨと会話をすることに思うことなどない。だって彼女は俺と戦って(遊んで)くれる。

 ヤチヨの頼みをきくことに不満などない。だって彼女は俺と斬り合って(遊んで)くれるのだから。 

 でも、それだけ。

 それ以上では、ない。

 

「俺は、君のライブに行くことはないぞ」

 

「知ってる。でもあげる」

 

「……なぜ?」

 

「悪あがきだから」

 

「悪あがき?」

 

「やけっぱちの悪あがき、だからそれはタローにあげる。もし万が一使う機会があったら使って」

 

 お願い、なんて言ってほほ笑むヤチヨ。

 さっきの会話に続いてまたしても意味も意図も不明な言葉。そして贈り物(チケット)

 少し困惑するが、頷く。

 

「了承した。万が一があったなら使わせてもらおう」

 

「うん、ありがと」

 

 そんな機会は訪れないだろうが、別に受け取ったところで支障はない。必ず観に来いというなら話は変わっただろうが。

 

「ネムッテ! ネムッテ!」

 

「ありゃ、時間だね」

 

「そうか」 

 

 ヤチヨの肩にいる謎の白い生物らしきものの声を聴き、スッと立ち上がるヤチヨ。

 視界の端の時計を見る。日付もそろそろ変わる頃合いか。

 俺も立ち上がりつつ、口を開いた。

 

「ではな」

 

「うん、今日は色々ありがとねタロー」

 

「いや、礼を述べるのはこちらのほうだ」

 

 よくわからない贈り物まで貰っているのだし。

 

「そう? ま、いいけど。―――おやすみ、タロー」

 

「ああ」

 

 短く別れを告げ、()()()()

 いつもの殺風景な自室。

 スマコンを外し就寝の準備、明日もまた学校がある。面倒くさい。

 床に横になり目を閉じ、今日あった不思議な出来事を思い出す。

 友達か。俺にそんなものが出来る日が来るなんてな。

 

 そんなどうでもいいことを考えながら、眠りについた。

 

 

 

 

 

 

『おめェ、おれと同じだな?』

『その不愛想な無表情は鏡で見飽きた。他人が何を考えてるのか欠片もわかりゃしねェんだろ』

『他人が楽しいって言ったことがわからない。嬉しいと笑う光景が理解できない。美味いと言われる料理を食ってもなにも思えない。綺麗な景色なんてのを目にしたところでただの風景としてしか感じれない。悲劇を目にしたところで胸の内から湧き上がるものはなにもない』

『何を見ても何をしていても心の底が埋まらない』

『他人の気持ちに、これっぽっちも共感できない』

『他のやつらと同じものを得たいのに、そもそもそれを認識することすら出来やしない』

『妙な話よ。息子は人間が生まれたが、孫はクソが生まれたか。これが格差遺伝ってやつかァ?』

『人を斬って斬られて、殺して殺される。そんなわけのわからねェもんを栄養素として喰わなきゃ生きていけないド外道が、おれ達よ』

『おめェみたいなのを憐れ、って言うんだったか。こんな時代、こんな国に生まれちまってよ』

『おれ達は人でなしだ。頭がイカれて狂ってる人間の形をしてるだけの畜生以下のゴミクズ』

『おれに会わなきゃ自分がカスだってことを一生気付かずに、その胸の穴を一切埋めることのないまま絶望と虚無感を抱きつつも自分を人だと誤認しながら死ねたもんを』

『諦めろ。おめェの人生はおれに出会ったときに終わった。おれという同類を知った以上、これまでのようにてめェは自分を人だなんて思う日は二度と来ない』

『おれ達に幸せなんてもんはない。理解できない。このあとは腹空かしたままくたばるか。そこらで殺人鬼にでもなってとっ捕まるかだけだ』

『あァ、紛争地帯で傭兵ごっこは諦めろ。おめェはおれと同じだろうから銃じゃ満足出来んぞ。あれは殺意が遠いから喰い足りねェ。撃たれたところで逆に腹ァ減るだけだ』

『ま、おれが生きてる間は相手してやるよゴミムシ。竹刀や木刀なんてオモチャじゃなくて真剣使って剣の相手してやらァ。おれには物足りねェがおめェは初めての満腹体験だ。精々味わっときな、おれがくたばったら二度と喰えなくなるんだからなァ』

『人になりたいなんてもう考えるんじゃねェぞ。そんなもん何十年かけたって無理なんだからよ』

『おめェはこれから一生、生まれたことを後悔するんだ。この地獄に生まれたことを延々となァ』

 

 目を覚ます。

 生活感がなく、物が極端に少ない自室。その中心で体を起こす。

 随分と懐かしい夢を見た。

 友達、なんて普通の人のようなものを得られたからだろうか。もしかしたらそれを戒める為に夢を見たのかもしれないな。

 

 もう3年か。

 爺さんが死んでから3年経った。

 あれから血を流すことも、傷付けることも無くなった。爺さんが昔に貸しを作っておいたという医者のいる医院まで出血を雑に塞いだ状態で2人で歩いて向かう日常も無くなった。

 爺さんが死んで、俺は殺し合いが出来なくなった。

 爺さんが死んで、俺は唯一共感することが出来た他人がいなくなった。

 

 俺は、一人になった。

 

 どうでもいいことだ。

 世界にとって異端で異質で異常だったやつが一人世界から消えた。それだけ。

 きっとそれは世界にとっていいこと、だったんだろう。

 

 スマートフォンで時刻を確認する。いつもより随分と遅くに起きてしまったらしい。

 いつものように食パンを胃に流しこみ、制服に着替える。

 今日も学校だ。面倒くさい。

 『都内の進学校に通うために上京する』という建前でまともな家族から離れるために一人暮らしを始めたが、正直俺が学校に通う意味なんてありはしない。将来なんてものが欠片も見えていないというのに、勉学に励む理由なんてないんだから。

 

 玄関を抜け、外へ出る。

 なんとなく見上げてみると空は晴れ渡っており、建物の合間からは青空がよく見えていた。

 空を見たところでなにも感じはしないが、これが(人でなし)ではなくヤチヨ(心あるAI)なら美しいとでも思うのだろうか。

 わからないな。本当に。

 

 

 

 

 

 

 放課後。

 家へと戻り、スマコンを装着する。

 いつものようにログインしようとして一瞬だけ躊躇う。

 今日は、戦えるだろうか。

 最近は一方的に射掛けられるか、近づいてきた相手をほぼ一方的に斬って終わることが多い。俺と斬り合える技量を持っていたプレイヤーも近頃は弓や短剣を握ることが増えた。

 当然ではある。俺とは違って彼らは勝利を求めているのだから。

 俺のように戦闘自体が目的ではないのだ。

 そんな手応えのない戦いばかりで心が渇いて仕方ない。限界が近いと自覚している。

  

 あと、どれくらい持つだろう。

 1年前の時点でギリギリだった。ツクヨミのおかげで今日までは持った。でもこんな戦いにすらならないものばかり摂取し続けて、これからも我慢を続けることが出来るだろうか。

 そもそも、我慢を続ける理由なんて俺には―――

 

 ―――真っ白な病室。置かれた寝台。途切れなく鳴り続ける電子音。そして、ベッドの上で静かに眠るように横たわる老爺。

 刀を振るどころか握ることも叶わず、もはや人を傷付けることすら困難だろう枯れ木のような細い腕。

 碌に動くことも出来ず死を待つだけの時間。

 そんな絶望的な日々を送り、人生で唯一抱くことが出来た願いすら叶えることが出来ず死んでいった。

 なのに、なぜだ。

 あんたは俺の同類だ。そのはずだ。俺と同じ人でなしのはずだ。

 なんでだ爺さん。あんたはなんで、最期にあんな顔を―――― 

 

 ―――手に走った痛みによって意識が今へと帰ってくる。

 いつの間にか握りしめていた拳を緩めて、手のひらを見てみると微かに血が流れていた。

 なにをやっているのだか。

 自身に少しの呆れを覚えつつ、傷口を舐める。この程度の傷ならこれだけで十分だ。

 気を取り直して()()()()()。もう行こう。

 戦えさえすれば落ち着く。そうしたらこんな馬鹿なこともうしないだろう。

 

 

 

 

 

 

 マッチングした。弓使いだった。

 ひたすら矢を弾いてのHP同値での延長戦。範囲爆破(ウルト)でダメージエリアへ押し出され終了。

 マッチングした。短剣使いだった。

 接近してきたところを斬る。それを2ラウンド。それで終わり。

 マッチングした。弓使いだった。

 弾き、躱しきれずに微ダメージ。タイムアップでの判定負け。

 マッチングした。弓使いだった。

 HP同値による延長戦。ウルトを溜めきれずに逃げ場を無くして多少の抵抗を試みてきた相手を斬り捨てて勝利。

 マッチングした。弓使いだった。

 矢を弾いているとゲージが溜まったので試しに身体強化(ウルト)を使ってみた。超高速で近づいて一撃与えたところで強化時間が終了。追撃する前に相手に逃げられ、またもや遠距離射撃。近づかれたら逃げる。当たり前だ。1ラウンド目はダメージ判定で勝ったが2、3ラウンド目は負けた。

 

 マッチング開始ボタンをタップしようとして、指が止まった。

 今後もずっとこんな風に過ごすんだろうか。俺はもう、望んだものを手に入れられないんだろうか。

 少しの間だけ、未来を想像してみる。

  ―――きっと、これからずっとこうなんだろうな。 

 

 ふと脳裏に爺さんの言葉がよぎった。

 

『おめェはこれから一生、生まれたことを後悔するんだ。この地獄に生まれたことを延々となァ』

 

 一生、このままなのか。

 心は埋まらず、冷えて、渇いたまま生き続けるのか。

 これからずっと、 

 

『おれ達に幸せなんてもんはない』

 

 ウィンドウから離れるように、指を下げた。

 仮想の空を見上げる。

 満点の星空だった。それを見て思い出すのは自身にとって唯一の友人を名乗る少女。

 いつだったか彼女はこの空を指さし綺麗でしょ、なんて言って自慢していたな。

 きっと綺麗、なんだろうな。俺にはわからないが。

 

「世話になった。感謝している」

 

 どこにも届かない、届けるつもりのない言葉を口にする。

 ここは遊び場。みんなの居場所。

 本来なら頭のおかしい狂人が来ていい場所では無かったんだ。ただそれだけの話。

 ここに俺の居場所は最初から存在していなかった。

 ―――でも、確かに俺はツクヨミ(ここ)に救われていた。

 

 ()()()()()

 スマコンを取り外し、着の身着のまま部屋から出る。

 玄関に鍵をかけたりもしない。もうここにいる理由もない。

 

 ―――死のう。

 この世界に、俺の居場所はない。

 前からわかっていたはずだったのに、ずっと目を逸らしていた。

 存在しないものを、もしかしたらあるかもしれないと自分を誤魔化していた。

 でも、もう無理だ。

 これ以上は耐えられない。

 ツクヨミのおかげで1年持った。1年耐えられた。でも限界だ。これ以上待とうが探そうが、俺が求めるものなんてこの世のどこにもありはしない。

 

 アパートの階段を降りる。

 さてどうしようか。

 交通量が多い場所にでも行って車道に飛び出そうか。

 高いビルでも登って飛び降りようか。

 まあなんでもいい。どうだっていい。もう終わるんだから。

 

 階段を降りきり、道路に向き直ると―――

 

 ―――七色に光る電柱を力いっぱい押し込む女子高生がいた。

 

「……………………」

 

 目元を擦り確認する。スマコンは装着していなかった。つまりAR表示がされているわけではないらしい。

 それを踏まえてもう一度視線を前方へと向ける。そこには、

 

 ―――七色に光る電柱を力いっぱい押し込む女子高生がいた。

 

 思考に空白が生まれた。

 なんだこれは? 本当になんだこれは?

 過去最大級の疑問に脳を支配されながら、女子高生の様子を窺う。

 

 よく見ると女子高生は電柱に生えてる竹の装飾の扉を抑え込もうとしているみたいだった。

 なんで電柱に扉があるんだ、とか。

 なんでその扉が内から開こうとしているんだ、とか。

 なんかこの女子高生どこかで見覚えあるような気がするな、とか。

 この女子高生なんか焦った表情でこっち見てくるな、とか。

 色々あったが、どれだけ観察しても状況を理解できる気がしなかった。

 

「ぐおっ、うっ、力づくかい」

 

 どこか見たことあるような女子は電柱に力負けしたようで、扉が開かれた。

 扉の奥にあったのは、小さなベッドにクッション、幼児、いや乳児用だろうと思われるおもちゃ、そして―――

 

「ふぇ……ふぇ……」

 

「あ、赤ちゃん?」

 

 ―――赤ん坊、である。

 

「ん???」

 

「なぜ……?」

 

 その異常な光景に思わず声を上げてしまった女子高生と俺に、答えを返してくれるものはどこにもいなかった。

 




オリ主くん/タロー
なんか近接戦なら負けないタイプの戦闘狂。やり過ぎて環境変えちゃったやべえやつ。そのせいで苦しんでるんだけどね。延長戦はAPEXとかの最後の円収縮のあれイメージ。
ヤチヨの頼みであるテスターに都合のいい男。SETSUNA以外やらないから実装前からモブ敵の情報持ってても活用しないし、知り合いと呼べる相手がいないしSNSもやってないからリークしたりもしない。その上で実力はあるというなかなか便利なオリ主くん。
メンタルが実は超無理限界ギリだったオリ主くん。主食だったお爺ちゃんがいなくなってから3年、ずっと空腹を我慢してたが今後も一生このままなのかと思い未来に絶望して折れちゃった。お腹空いた。
そんな時に七色に光るゲーミング電柱ありける、しちゃった。どうするオリ主くん。

ヤチヨ
本当は前話からのこの1年オリ主くんに関わるつもりはなかったが、見た目や口調、性格はだいたい同じなのに、大抵のことはどうでもいい、殺し合いが栄養などとあまりにも自分の知ってるオリ主くんが言わなそうなことを言うので気になって自分で調査も兼ねて接触してた。
結果、同一人物の別人だと判定を下した。きっとこれまでの8000年のどこかで過去を変えてしまい、知らぬ間にオリ主くんの人生に影響を与えてしまって自分の知らないオリ主くんになっちゃったんだと判断。
現在やけっぱちモードに突入中。オリ主くんだけでなくこれからの彩葉とかぐやにもどんな影響が出てしまうのか不安で不安で仕方なくなっているのを空元気で無理くり誤魔化している。

電柱と戯れてる女子高生/同じクラスなのに名前を覚えられてない隣人
やっと喋った。これからいっぱい出番ですよ。

赤ん坊/名前はまだない
ついに登場。こっから先を書きたかった。
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