普通なウマ娘の、フツーじゃない日常   作:ローマン

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じんめん犬と寮長 後編

 

 

 

 

「どうしました!? タンホイザさんたち……っ!?」

 

「イ、イクノ〜……!」

 

「ど、どうやら、人面犬は本当にいたようだね……!」

 

?「おや、ここは私の娘ぐらいの子が多いんですね……」

 

 

 

 私の悲鳴を聞きつけたイクノが直ぐに駆け寄ってきてくれたけど、彼女も人面犬の姿を見て恐怖の色を隠しきれていなかったみたい

 

 って、おんや? 自分の娘さんと同じぐらいの子とは……?

 

 

 

「も、もしかしてあなたは、人面犬さんなのですかっ!?」

 

「えぇまぁ、私がじんめん犬ですが……」

 

 

 

 意外とあっさり認めてくれた

 

 見た目のインパクトは強いけど、悪い妖怪ではないのかも

 

 

 

「そういえばフジ先輩とイクノにも、じんめん犬の姿視えてます?」

 

「あぁ、私は未だに信じられないが……」

 

「実在したのですね……」

 

 

 

 妖怪のはずなのに、イクノたちにも視えてる

 

 本当に妖怪なのか怪しいところだけど、こんな人間の言葉を話せる犬なんて御伽話でしか聞いたことがない

 

 ひとまず、話を聞いてみようかな

 

 

 

「それにしても、じんめん犬は意外とおじさんなのですねぇ〜……」

 

「おじさん……確かにそうですよ、確かに。おじさんで……すいま千円!!」

 

「「「お、オヤジギャグ……!!!」」」

 

 

 

 じんめん犬がおじさんのような声と喋りだったことを指摘したら、光り輝くようなオヤジギャグを披露した

 

 

 

「……なんてね。」

 

「イクノ、もしかしなくてもこの人って……」

 

「ただのおじさんですね。」

 

「とりあえず、警備員の人に通報を……」

 

「ま、待ってくださいよ! 私だって、好きでじんめん犬やってるわけじゃないんですよ……」

 

 

 

 う〜ん、じんめん犬といっても、やっぱりおじさんだし……警備員さんに任せた方が良いような気もするけど……

 

 けれど、自分の意思じゃないのにじんめん犬をやってるっていうのは、どういう意味なんだろう〜?

 

 

 

「皆、大丈夫なのかい!? 凄い悲鳴が聞こえたけど……!」

 

「って、え? もしかしてそこにいるのって……」

 

「……そちらはご友人ですか?」

 

「わぎゃぁっ!? で、出たぁぁっ!!?」

 

 

 

 ここで私たちの叫びを聞いたヒシアマゾン先輩、ネイチャ、ターボも合流した

 

 あはは……ターボは相変わらず怖がってますなぁ……

 

 

 

「ヒシアマ、信じられないだろうと思うけど……」

 

「あぁ、実在したんだね。じんめん犬……」

 

「タ、ターボは怖くないぞっ……!」

 

「というか、意外とじんめん犬って歳いってるのね……」

 

「ネイチャ〜、どうしよっか?」

 

「どうしようって言われても……」

 

「……皆さんが良ければ、一杯付き合いませんか?」

 

 

 

 その様子は、まるで後輩を酒の席へ誘うおじさんそのものだった

 

 でも身体は犬なのに、お酒大丈夫なのかな……

 

 

 

 

 

 

___________________

 

 

 

 

「おっちゃん、この娘たちにもジュース頼むよ。」

 

「あいよ。」

 

 

 

 私たちがじんめん犬に連れられてやってきたのは、学園近くのおでんの屋台

 

 じんめん犬は日本酒を頼んで、私たちにはオレンジジュースを頼んでくれた

 

 少し人数は多いけど、皆で詰めて屋台の長椅子に腰掛けると、じんめん犬は話を始める

 

 

 

「私はねぇ、元々おっさんだったんですよ。」

 

(今もおっさんな気がするが……いいのかい?)

 

「へ? じんめん犬は今もおじさんだぞ?」

 

「ちょ、ちょっとターボ。」

 

「良いんです、まずは乾杯でもしましょう。」

 

 

 

 ターボの言葉を気にするかに思ったけど、軽くあしらって私たちはじんめん犬と乾杯を交わした

 

 

 

「私、妖怪になる前は普通の人間のサラリーマンだったんです。」

 

(妖怪になる前は人間だったのも多いって、ウィスパー言ってたな〜。)

 

「実はリストラされたんですよ、32年も勤めた会社にいきなり。」

 

「それは……大変だったんですね……」

 

「その日は飲みまくりましたよ、帰ったらあなた方と同じぐらいの娘と妻に白い目で見られる、飲まざるを得ないって思うでしょう!」

 

「うんうん、分かるわ〜。アタシの店でも、似たような境遇の人いるし。」

 

「そういえば、ネイチャさんのご実家はスナックでしたね。」

 

「うちに帰ったら何と言い訳すればいいか……その直後、野が倒れてきて、私はじんめん犬になってしまったんです!!」

 

 

 

 んにゃ? つまりじんめん犬は、たまたま近くを歩いていたプードルと一緒に倒れてきた板材の下敷きになって妖怪になったってこと?

 

 妖怪の世界って、奥深だね〜

 

 というかじんめん犬、結構酔っ払ってますなぁ……

 

 

 

「でも、その時は嬉しかったんですよぉ〜!!」

 

「そうなのかい?」

 

「新しい身体を手に入れて新しい人生が始まったんだ!」

 

「フフッ、それは良かったですね。」

 

「でも、じんめん犬になってもおっさん扱いされて、それどころか仕事もないまんまだよ!!」

 

「あはは〜、大変だったんですなぁ〜……」

 

 

 

 じんめん犬、お酒が回って大将さんに絡んでるな〜

 

 そして身体をブルっと震わせると、近くの標識の下で……

 

 

 

「ちょっ、バカ……!」

 

「あわわ……!」

 

「あえ? 何でイクノ、ターボの目隠すの?」

 

「ターボさんにはまだ早いです。」

 

「おっと……」

 

「何やってるんだい、全く……」

 

 

 

 じんめん犬は、壁際で用を足していた

 

 私たちから距離は離れていたとはいえ、流石にこの景色は私たちには毒過ぎるので、急いで目を背けた

 

 

 

?「ちょっと、お父さん?」

 

「はい?」

 

?「駄目じゃないか、こんなところで。」

 

 

 

 じんめん犬に話しかけていたのは、警察官2人

 

 やっぱりじんめん犬の姿って、普通の人間にも視えてるんだ……

 

 あれ? でもお巡りさん2人は、じんめん犬のことを普通のおじさんだと思ってるみたい

 

 これって、マズいのでは……?

 

 

 

「す、すみません! というか、私犬ですし……ワンワン!」

 

「ちょっと署の方に行こうか? お父さん。」

 

「えぇっ!? 私、何もやってないですよ!?」

 

「はいはい、署で聞くからね。」

 

「あっ! そうあなた!!」

 

「私?」

 

 

 

 やはり言い訳は通用しなかったみたいで、じんめん犬はパトカーに押し込まれていた

 

 その時ふと私たちの姿が視界に入ったじんめん犬は、私に向かって何かを投げてきた

 

 それはじんめん犬の妖怪メダルだった

 

 

 

「あ、ありがとう!」

 

「それでは皆さん、チックショー!!」

 

「あ、連れて行かれちゃった……」

 

 

 

 こうしてじんめん犬の叫びが響き渡る中、夜の見回りは終了するのでした

 

 

 

「はぁ、何だか凄いのと顔見知りになっちまったね……」

 

「フフッ、けれど悪い時間ではなかったかな。」

 

「それでは、私たちも戻りましょうか。」

 

「……zzz〜」

 

「ターボ? おーい……?」

 

「あはは、もう遅いから寝ちゃってるわ。」

 

 

 

 急遽決まった見回りだったからか、ターボは夢の世界へ片足を突っ込んでいた

 

 ターボはヒシアマゾン先輩に任せて、私たちはフジキセキ先輩に先導されながら寮へと戻った

 

 じんめん犬、警察の人に捕まっちゃったけど、大丈夫だよね……?

 

 むん

 

 

 

 

 

 







 先日、妖怪ウォッチで様々なキャラクターを演じられた坂東尚樹さんの訃報がありました

 本小説はアニメで登場した順に妖怪を登場させており、本来はツチノコ登場のお話を投稿予定でしたが、坂東さんの唯一無二な演技がとても印象的だったじんめん犬を中心にしたエピソードを前後編で描かせていただきました


 今まで多くの妖怪たちに命を吹き込んでくださり、ありがとうございました

 心よりご冥福をお祈りいたします





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