念能力?原作知識?いや、ここジャポンなんですけど?   作:ドラゴンスキー

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プロローグ

 

「サツキ部長!今日も一段とオカルトチックで、ミステリアスで、超絶可愛いです!」

「うるさい、豚!変態!あんたももう副部長なんだからしっかりしなさい!」

 

ドゴォッ!と、放課後の地味な部室に小気味いい肉撃音が響き渡る。

我がオカルト研究部の部長であるサツキ先輩の容赦ないローキックが、副部長であるゴウダ先輩の脇腹にクリーンヒットした音だ。

 

「ありがとうございまッ!」

 

床に転がり、恍惚の表情で親指を立てるメタボ先輩。様式美である。通報の一歩手前だが、これがペガサス高校オカルト研究部の、いつもの日常だった。

 

私・・・リナ=カンザキは呆れ果てた息を吐きながら、窓際の席に視線を向けた。

そこでは、1年の同級生であるハルトが、何事もないかのように静かに本を読んでいる。その隣では、同じく1年のミウが、とろんとした眠たげな目で遥斗の顔を覗き込んでいた。

 

「ハルトくん、何読んでるのぉ〜?」

 

「ん? ああ、これ? ジャポンの古い怪談集だよ。ほら、この『隙間男』の話とか、結構オカルト部っぽくないか?」

 

ハルトは嫌な顔一つせず、そっと本を閉じてミウに応じている。完全なるスルー技術。伊達にこの部活で数ヶ月を過ごしていない。

よくスルー出来るモノだ、とハルトをジッと見つめていると私の視線に気づいたのか、ハルトが少しこちらに身を寄せ。

 

「慣れだよ、リナ。慣れ」

 

ハルトが私を見て苦笑する。

さすがは私と同じ被害者だからか順応するのが早い。出会ってまだ数ヶ月だが、最近ではずっと昔から友達だったかのような感じがする。中学からの友達のミウとも仲良く話しているからだろうか?

原因は分からないが悪いことではないので別にどうでもいいか。ミウのことについて思い出していると本人であるミウがハルトの後ろから眠たげな目でひょっこり顔を出した。

 

「リナ、おつかれぇ〜。はい、チョコあげるぅ」

 

ミウがのんびりとした調子で、私のポケットに個包装のチョコレートを突っ込んできた。

この子はやっぱり天然なところがある。のんびりした口調で話し、いつも眠たげな目をしているし、たまによく分からないことを言うのも中学からのことなので今更だ。

まあそんな天然なところも今ではミウの好きなところなのだが。

 

「……ありがと。っていうか、ハルトもよく部長に捕まったわよね。私なんか、『君、なんか霊媒体質っぽいから合格!』って言われて、オカルト研究部に引きずり込まれたっていうのに」

「俺はほら、部長と中学同じで交流あったから・・・。そのまま拉致。断る隙もなかったよ」

「あー・・・。それはご愁傷様ね」

「そっちもね・・・」

 

はぁと2人してため息を吐く。

そんな2人の傍らでミウはニコニコとしている。

 

「え~?でも、楽しいからいいじゃ~ん。寝ても良いしね~」

「あんたは寝れればいいんでしょ。って、寝たいならわざわざ部活に入らなくても帰って寝ればいいでしょ」

「リナがいるし、こっちの方がいいよ~」

 

うぅぅうう!こういうところ本当にもう!

 

「・・・・・!まあ、私も?それなりには楽しいし?」

「リナ、照れてるのか?」

「リナ照れてる~」

「うっさいわよ!フン!」

 

ワイワイ、ガヤガヤ。

オカルト研究部の部室に楽しげな声が響く。いつもの日常。

変わらない毎日。

 

「あんたたち楽しそうね~?私も混ぜなさいよー」

「リナミウ尊い・・・。尊さで力が沸いてくるよ・・・!」

「そんなに力が有り余っているならそこの窓からでも飛び降り、なさい!」

「本日2度目のキックありがとうございまッ!・・・いや、ここ3階ですけど!?」

「それが?」

「酷い!ああでもそんな蔑んだ目も素敵です!」

「ゴウダ先輩頑張ってね~」

「ミウさん!?もう飛び降りることが確定しているかのように言うの止めて貰えます!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな、少し変わっているけれど、どこにでもある平和な放課後。

──だったはず、なのだ。この時までは。

 

 

「ねえ、ミウ。ちょっと相談なんだけど」

 

ある日のことだった。

私はチョコの包み紙を剥きながら、ふと思い立って隣の親友に声をかけた。

 

「ん〜? なぁに〜?」

 

相変わらず眠たげな目をしているが今日はまだ寝ていないようだった。

といってもいつも寝ているわけじゃないが、最近は夏に近づいてきてクーラーを付け始めたからか気持ちよさそうに寝ていることが増えた。

だからまだ寝てないのはラッキーだ。

 

「ここ最近さ、妙に身体が疲れるのよね。しっかり寝てるはずなのに、なんか、身体からじわじわ体力が漏れ出してるっていうか……常に全力疾走したあとみたいにダルいの。・・・・・オカルト的に、なんか悪い霊でも憑いてると思う?」

 

オカルト研究部に所属しているが、あまりオカルトは信じていない。

信じていない・・・が、ここ最近はいろいろな方法を試しているが妙に疲れるのだ。夏バテにはまだ早いし・・・。

それこそ何かオカルト的なことが起きているんじゃないかと疑うくらいには参っていた。

・・・オカルトなんてバカバカしいと思っているけれど、本当のピンチになったら普段神を信じていない人も神頼みするというし、私もそういう思考になっているのかもしれない。

 

ミウへの相談はただの体調不良の相談のつもりだった。病院に行けと言われるか、部長が怪しいお札を持って飛んでくるか、どちらかだと思っていた。

だが、ミウはトロンとした目を少しだけ見開いて、私の身体をじっと見つめた。

そして、いつもののんびりした口調のまま、ズバッと言ったのだ。

 

「うーん……霊のせいじゃないよぉ。なんかね、今のリナ、身体から『もやもや〜』って温かいのがすっごい漏れ出してる気がするんだよねぇ。だから疲れちゃうんじゃない? あんまりその力、お外に出さない方がいいんじゃないかな〜?」

「・・・・・」

 

たまに出てくる、よく分からない話がここで来たわね・・・。

もやもや? 力?

相変わらずの天然ね、と私は心の中でツッコミを入れかけた。

けれど、みうの濁りのない瞳があまりにも真剣で、私は言葉を呑み込んだ。

 

お外に出さない。つまり、内側に閉じ込めるイメージ、だろうか。

 

試しに、身体の表面から陽炎のように立ち上っている(ような気がする)目に見えない熱を、ぐっと皮膚の内側に押し留めるように意識してみる。

 

「・・・んぅ?」

「そんな感じ~?もっとだよ~。もっともっと、頑張れ~」

「うぐ、うぐぐぐぐぐぐ・・・・・!」

 

より意識してみる。

その瞬間。

すーっ、と、嘘みたいに身体の重みが消え去った。

 

「え……?」

 

軽い。さっきまでの鉛のような倦怠感が、綺麗さっぱり消えている。

 

「あ、本当だ……なんか、すごっく楽になった。ありがと、ミウ。あんた、たまに予言者みたいなこと言うわね」

「んへへ〜、お役に立ててよかったよ〜」

 

 

ミウは嬉しそうに笑って、また机に突っ伏して寝る体制に入った。

身体が楽になった私は、その日の夜、泥のように深い眠りに落ちた。

 

──そして、私の日常は、跡形もなく崩壊することになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を見た。

いや、夢なんて生易しいものじゃない。脳みそに直接、冷たい濁流を流し込まれるような、圧倒的な「記憶」の暴力。

 

並行世界。地球。漫画。アニメ。

『HUNTER×HUNTER』。

ゴン。キルア。クラピカ。レオリオ。

幻影旅団。

そして、世界を裏で支配する超常の力──『念』。

 

「はっ……!!!!」

 

ガバ、と跳ね起きると、自分の部屋のベッドの上だった。

全身が冷や汗でびしょ濡れになっている。心臓が早鐘のように鳴り響いていた。

 

「な、何今の……。漫画? 念能力……? 私たちの世界が、お話の中の世界……?」

 

馬鹿馬鹿しい。誰かの悪質な悪夢を押し付けられた気分だ。

動揺を静めようと、寝室のテレビのリモコンを押す。液晶画面が明るくなり、早朝のニュース番組が映し出された。いつもの女子アナウンサーが、心なしか引きつった声で原稿を読んでいる。

 

『──次のニュースです。極東時間の昨夜、ヨークシンシティの競売場周辺にて、大規模なマフィア襲撃事件が発生しました。現地からの情報によりますと、マフィアの最高幹部である「十老頭」が全員、死亡した模様です──』

 

「は?」

 

テレビのリモコンが、手から滑り落ちて床に高い音を立てた。

 

頭の中に流れ込んできた「漫画のストーリー」と。

今、目の前のテレビが伝えている「現実」が。

完全に、一致していた。

 

「嘘……でしょ……?」

 

ガタガタと、歯の根が合わないほどに身体が震え出す。

あの大虐殺が本当なら、あの蜘蛛の化け物たちが本当なら、この世界は、私が思っていたよりも1億倍は狂っていて、危険で、恐ろしい場所だ。

 

そして、昨日みうが言った「もやもやを外に出さないで」という言葉。

あれは、念の基本中の基本──『纏(テン)』そのものじゃないか。

 

 

いつもと同じ日常。そのハズなのに。

自分がどこか別の世界に紛れ込んでしまったかのような感覚を覚える。世界が捻れ、曲がり、歪む。

どうすれば。

どうしよう。

 

 

「リナー?朝ご飯出来たわよー?」

 

リビングからお母さんの声が聞こえる。

ハッと現実に戻されたかのように視界が戻る。

学校。学校に行ってみんなに会おう。

 

 

「みんなに……オカルト部のみんなに、話さなきゃ……!」

 

 

私は急いで制服に着替え、手早く朝ご飯を食べて、スマートフォンを掴みしめて家を飛び出した。

私の、私たちの、呑気で騒がしい「ジャポンでの日常」が、内側からメリメリと音を立てて軋み始めていた。

 

 

 







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キャラ紹介!
・サツキ=イチノセ
  ペガサス高校3年生。オカルト研究部の部長。明るく、気になったことはグイグイ調べるタイプ。3年生が卒業して同好会になったところを1年生3人連れてきて無事オカルト研究部として復活!ゴウダと2人きりのままなのは嫌だったので良かった。

・ゴウダ=サタケ
   ペガサス高校2年生。オカルト研究部の副部長。入学当初、美人な先輩目当てでオカルト研究部に入部。部に入ったからにはしっかり学ばないといけないと思い1年生のころはオカルト関係の資料を読みあさった。女子から変態扱いされているが、本当に嫌なことはしないし、めんどくさいことは自分から進んでやってくれたりするのでどこか憎めない。


・ミウ=インバ
  いつも眠たげで、口調も「〜だよぉ」「〜だねぇ」とのんびりしている。しかし、核心を突く時は「それ、死ぬやつだよ〜」などとズバッと言う。リナとは気が合う大親友で、リナが部長に連行される姿を「おもしろそ〜」と眺めて入部した。念に関しては知らないが出来てしまっているガチもんの天才。


・ハルト=アサクラ
  穏やかで人当たりが良く、誰とでも友達になれる。部長とは中学から交流があり弱み(中二病時代)を知られているため入部を断れなかった。入部したての時は部長に引きずりこまれたリナを不憫に思い、フォローしたり話したりしていた。それからリナ友達のミウも入部するようになって話すようになった。最近では寝る前にミウの方から話しかけてくれる。なお返事に困る質問は考えていたら答える前にミウが寝てしまうので即答するように心掛けている。

・リナ=カンザキ
  1年生。黒髪のセミロングに、少しきつめのツリ目。ジャポン市内のごく普通の制服を着こなしている。一見すると冷めてそうに見えるが、根は真面目で面倒見が良い。突然原作知識が流れ込んできてパニックになっている。ミウの傍に居てフォローすることが多かったことが関係しているのかは分からないが念が目覚めかけている兆候は出ていた。ミウのアドバイスにより念(纏)を習得。そのまま無意識のうちに発が発現していた。本人はまだ知らないが特質系。
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