男は守られるのが常識の貞操逆転世界で、唯一魔法を使えるようになったので、全力で女の子達を守っていたら激しく執着されるようになってしまった 作:タンポポ西田
「なんで、この学院に男がいるの?」
ここは王立魔法学院1年Fクラスの教室。
俺以外のクラスメート……いや、学院全体で見渡しても男は俺しかいない。
そのせいか、クラスの女の子は全員、俺を好気な視線か軽蔑の眼差しのどちらかを送っている。
「あー、とりあえず自己紹介だな。この度、この1年Fクラスに転入してきたユークリッド・ヴェレミアだ。というわけで後はよろしく」
ポニーテールの担任、もとい、ドロシー・ソルティアは気怠そうに言う。
ずいぶんと投げやりなパスだけど、俺は緊張を誤魔化すように咳払いをして席を立つ。
「初めまして。ユークリッド・ヴェレミアと申します。見ての通り男です。色々と思うところはあるかもしれませんが、これから仲良くして頂けるとうれしいです」
俺は短く、簡潔に挨拶をするが周囲の反応は芳しくない。
それもそうかと思いながら、俺は苦笑する。
「まぁ、そんなこんなで、みんな、仲良くしろよ。あと、ユークリッドの席は一番奥の空いているところな。窓際のところがお前の席だ」
一番奥の席がぽつりと寂しそうに空いている。
どうやら、そこが俺の席らしい。
転校生とはどの世界でも常に注目を浴びやすいが、
俺が注目を浴びているのは転校生だからというだけではない。
俺が指定された席に腰をかけた後、一人の女生徒が手を挙げる。
「先生、ご質問よろしいでしょうか?」
「ん? 手短に頼むよ? リリア・タルタロス君」
長くウェーブがかった金髪をしたリリアという女生徒はスンとした表情で質問を投げかける。
『どうして、男であるユークリッド・ヴェレミアはこの学院にいるのでしょう?』
「そりゃあ、学院長が許可をしたからだろう」
「そ、そういうことを聞いているのではありません!! 私は男である彼がこの学院にいる理由を聞いているのです!」
リリアは担任のドロシーの回答に言葉を荒げて続ける。
「ここは由緒正しき王立魔法学院——魔法を学び、極める場所です! それなのに、
リリアは机をバンっ! と叩いて不満を現れにする。
そう、この世界では男は魔法が使えない。
理由はシンプルに魔法を使うために魔力が必要なのだが、男は魔力を持たない。結果として男は魔法が使えない。
鳥は空を飛んで、魚は水の中を泳ぐくらい、この世界では当たり前。
だから、この世界において
その義務を果たすために女性は15歳から18歳までを指定の教育機関で過ごさなければならない。
そして、この王立魔法学院は王国中のエリートが集まる教育機関だ。
それに加えて、この世界の男女比は1対300しかない。
生物的に強い影響なのか、子が産まれても女しか生まれず、男が産まれることは稀。
王国の戸籍調査では30万人の人口に対して、男はたったの1000人しかいない。
かと言って、男性だから重宝されているのかと言えばそんなことはない。
スタンスとしては守ってやるから、子を作るための義務を果たせという感じだ。
だから、魔法が使えない男がここに何をしに来たんだ? という意味で言うのならばリリアが口にした疑問はもっともな問いだと思う。
逆の立場だったなら、俺も同じことを思っても不思議じゃないから。
「んー、まぁ私も試験的にということしか聞いてないからな。ただ、男がいた方が
「腑抜けたを言っている場合ですか!! 私達はいずれ魔王軍と戦わないといけないのですよ!」
そう、この世界には魔王という存在がいる。
魔王とは魔族を統べる王らしい。
この世界の人類史において、もう千年近く対立をしており、不定期に人類の領土を襲っている。
そしてこの王立魔法学院は対外的には魔王ないし、魔族に対抗できる人材を育てる場所だ。
「まぁまぁ、リリアちゃん。別に目くじら立てなくていいじゃん」
銀髪でショートカットの女の子がヘラヘラとした笑顔を浮かべて、リリアをなだめる。
「アイリス・フォーミラー……貴女はヘラヘラしすぎなんです!」
アイリスと呼ばれた女生徒はリリアの言葉に返す。
「だって貴重な若くて可愛い男の子だよ?? アタシは先生の言うようにユークリッド君がいたら、モチベ上がるなぁ?」
うへへ……と鼻を伸ばしながら俺を見る。
「それに魔王軍と戦うことになったら、いつかアタシ達は死ぬかもしれないって。アタシはいつ死んでもいいって思えるような生き方をしたいんだって」
アイリスの言う通り、学院を卒業した生徒の死亡率は高い。
なんでも、5年以内の死亡率はおおよそ80%ほど。
言い換えれば、使い捨ての弾丸のような扱いである。
そういう意味では蔑まれようとも男性の方が死なない分、扱いは女性よりもいいかもしれない。
だけど少なくとも、俺はそうは思わない。
「そもそも、私達はFクラス。学院の中で一番下の落ちこぼれ。だったらさ。なおさら、楽しんでおいた方が良くない?」
「い、今はFクラスなだけです!! まだまだ挽回できますもの!!」
アイリスの言う通り、王立魔法学院はAからFまでのクラスに
つまりこの、1年Fクラスは1年生の中では一番下のクラスに位置付けられている。
「まぁ……なんてことを言ってもな、ユークリッドには色々な
担任のドロシーは仲裁をするように淡々という。
「あーね。そりゃあそうだよね」
ドロシーの言葉にアイリスは納得した様子だった。
この世界において、その反応が普通だ。
「とはいえ、お前たちにとっても悪い話じゃないはずさ。なんだかんだ言っても若い男子は貴重なのも事実だろ?」
ドロシーはそう言うと、クラスがざわめき始める。
「あぁ、そうだ、ユークリッド。この朝のホームルームが終わったら、早速で悪いけど雑務のことで学院長が呼んでっから後で向かってな」
「分かりました」
いきなり学院長から呼ばれるのってどうなの? みたいな声がチラホラ聞こえるけれど、俺は知らない振りをすることにした。
「という訳で、ホームルーム終わり。ユークリッド以外は1時間目の授業の準備をしろよ~」
そういって、担任のドロシーは教室から出る。
その後、朝のホームルームの終わりを告げる鐘が鳴り響いた。
「さて……俺も行くか」
そう言って、俺が席から立つとリリアが俺の席の近くに来た。
「一言だけ言っておくわ」
リリアは敵対心を出しながら告げる。
「私は他のみんながチヤホヤしたって、私は絶対に認めないから。それだけよ」
リリアはそう言って、自分の机に戻る。
「ははは……ずいぶんと嫌われたもんだな」
俺は苦笑して、教室を出る。
そのまま、俺は学院長室に向かう。
まだ王立魔法学院に転入したのは初日だけど、学院長室の場所だけは覚えた。
5分ほど廊下を歩くと学院長室の前に着く。
廊下を歩いている最中、他の女生徒達が俺に変な視線を送ってくるのが気になったが……それはこの学院に入る時から覚悟はしていたこと。
俺は学院長室の扉をノックして声をかける。
「学院長。ユークリッド・ヴェレミアです」
「あぁ、入れ」
俺は入ると、青色の髪をした長いツバの帽子をかぶった女性に頭を下げる。
フォーゲル・ハリストン――この王立魔法学院の学院長であり、俺自身の
「御用だとお伺いしましたが、いかがいたしましたか?」
「待っていたよ……と言いたいところだが、早速で申し訳ないが少し
「もちろんです。それで今回の雑務は?」
俺は学院長に尋ねる。
「あぁ、南東にあるニール山脈から招かねざる客がいらしてようでな……すまないが丁重にもてなしてくれ」
「かしこまりました。それでは早速ですが行ってきます」
俺は学院長室の窓の扉を開けて、外に飛び降りる。
この世界は本来であれば男は魔法は使えない。
だが、唯一の例外が存在する。
『
俺は足元に魔法陣を展開して、急加速で空を飛ぶ。
そう、この世界では唯一、俺だけが男で魔法を使える。
そうして、30分ほど飛翔した後、南東にあるニール山脈に辿り着く。
「来たか。待ってたよ」
上空には軽鎧を着た飛行魔法を使っている女性がいる。
俺はその軽鎧を着た飛行魔法を使っている女性に声をかける。
「国王直下秘密特殊部隊所属、ユークリッド・ヴェレミアです。
「こちらは国王直下騎士精鋭部隊隊長、フレア・ミールミッドだ。前方500メートル先にB級相当のモンスター、ブラッドゴーレムの群れが観測されました。この付近で配属されている前線部隊ではやや荷が重いかと」
「承知しました。それでは早速ですが片づけましょう」
前に目を凝らすよと、赤黒い岩の塊が移動しているのを理解する。
なるほど、あれが
俺は紫色の魔法陣を展開する。
『
時間が進むにつれ、俺が展開した魔法陣は大きくなる。
『
そのまま展開した魔法陣がパキンと音がする。
『
巨大な魔力の波がブラッドゴーレムを包みこみ、一撃で消し去る。
これで
するとフレアさんは
「いやぁ……さすがだね。この世界で唯一魔法を使える男性。並みの女じゃ相手にならないでしょ」
フレアさんはニヤニヤとした表情を浮かべながら耳元で囁く。
「ねぇ、ユークリッド君。今度お姉さんと夜のデートに付き合ってよ。前はすごくよかったから」
「お褒めに預かり光栄です。フレアさん」
「それなら、夜のデートは?」
「前向きに検討しておきます」
「つれないなぁ。一回も二回も変わらないじゃないか」
フレアさんは口を膨らませて抗議の意を唱える。
「とりあえず、俺は帰りますよ。この後、授業があるので」
そう言って、俺は学院に戻る。
ダメだ。俺はもっと強くならないといけない。
俺の目的である、女の子が誰も傷つかない世界にするために。