男は守られるのが常識の貞操逆転世界で、唯一魔法を使えるようになったので、全力で女の子達を守っていたら激しく執着されるようになってしまった   作:タンポポ西田

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第11話 救出 / 陰謀の破綻sideブラッドゥ

「遅かったじゃない」

 

 ティターニア様は傷だらけだった。

 

 ティターニア様から頂いた片眼鏡(モノクル)の追跡魔法を追って、俺はティターニア様が(さら)われた場所にたどり着いた。

 

「申し訳ございません。大変お待たせしました」

 

 ただ誤算だったのは想像以上に敵が多かったということ。

 

 先に進むにつれここが赤血革命軍の拠点ということが分かった。

 

 赤血革命軍は王国に叛旗(はんき)(ひるがえ)そうとしている要注意団体。

 つまるところ、それだけ大きな組織ということ。

 

 事を大きく動かしてしまえば敵を刺激してしまう。そうなればティターニア様を危険に晒してしまう。そう思っての行動だった。

 

 しかし結果として、俺はティターニア様を傷つけることになってしまった。

 

 これは完全に俺の落ち度。

 

 単なる雑務すらこなせない自分が腹立たしい。

 

 やはり俺一人では、まだまだ非力だ。

 

「それで? 騎士くんは私が受けた屈辱を晴らしてくれるのよね?」

 

 ティターニア様は俺に尋ねる。

 

「それが雑務であれば喜んで」

 

 俺は答える。それが俺の責務だから。

 

「それなら騎士くんに雑務をお願いするわ。そいつをコテンパンにやっつけて」

 

「承知致しました。その雑務、必ずや遂行させて頂きましょう」

 

 俺はティターニア様に微笑んだあと、

 

「こんにちは、マダム。申し訳ありませんが、こちらのお方には所要の途中ですので、誠に勝手ながら解放させていただきます」

 

 俺は目の前の敵に振り返って、仰々しくお辞儀をする。

 

「マダムだなんて……そりよりもアンタ良い男だね。どうかね? そんな小娘より私の男にならんかね? 悪い思いはさせないよ。ヒッヒッヒッ……」

 

 俺のお辞儀に目の前の敵は下衆な笑みを浮かべている。

 

 それどころか、少しばかりか口から(よだれ)をこぼしている。

 

「申し訳ありません。貴女の要望には答えられそうにはありません」

 

「ちっ……アンタも若い女の方が良いのかい。馬鹿にされたもんだね」

 

「私は若くなくてもいっこうに構いませんよ。ですが、貴女は別です。正直、やりすぎましたね。赤血革命軍の長、ゴーテル・ライダー」

 

「ほぉ……私の名前を知っているなんてねぇ」

 

 ゴーテルはそう言ってニヤリと笑う。

 

 ゴーテルは笑ったあと、何かに気づいた様子で俺に尋ねる。

 

「それよりも貴様……どうしてここまで? 私の部下達は……?」

 

 ゴーテルは尋ねる。

 

「それはもちろん全員残らずお休みになられてますよ。あぁ、安心して下さい。誰一人として傷ついておりませんので」

 

 そう、言葉通り道中の敵は全員、()()()()であるTHUNDER(雷撃)で気絶している。

 

「てめぇ!! 女だったのか!! アタシを騙しやがって!! 絶対に許せん!!」

 

 ゴーテルは目を血走らせて叫ぶ。

 

 その後、ゴーテルは杖を空に掲げる。

 

「来い!! アシッドスライム!! やつらの息の根を止めろぉ!!」

 

 ゴーテルがそう叫ぶと、杖の先に紫色の魔法陣が展開される。

 

『GUMOOOOOOO!!』

 

 すると、奥から体調3メートルほどの紫色をしたスライムが現れる。

 

「ヒーッヒッヒッ! 分かるかね!? こいつはA級指定モンスターのアシッドスライム。私の固有魔法はどんなモンスターでも使役できるテイムの魔法……こいつで、お前らを姿形がなくなるまで溶かしきってやる!」

 

 アシッドスライムはA級上位相当のモンスターだ。

 基本的な物理攻撃は吸収し、生半可な魔法攻撃は通じない。

 しかも全身が毒ということもあり触れただけでもこちらがダメージを背負いかねない。

 普通の人間、ましてやただの学生風情が相手をしても敵わない――本来であれば。

 

「騎士くん。私は貴方のことを信じるわ」

 

 ティターニア様は俺に微笑む。

 

「騎士くんだったら倒せるでしょ?」

 

 当たり前の話。ティターニア様が後ろいる以上、俺は一歩たりとも引けない。

 

「もちろんです」

 

「それじゃあ雑務よ。あのモンスターを倒しなさい」

 

「その雑務、承りました」

 

 俺はゴーテルとアシッドスライムに向き直る。

 

「おいっ! くだらん雑談は終わったか!? だとしたら死ねぃ!!」

 

 ゴーテルは魔法陣を展開したままの杖を振る。

 その動きに連動してアシッドスライムは俺と委員長に向かって歩き出す。

 

「それでは――雑務の時間です」

 

 俺はゆっくりと息を吸って、

 

潜在能力強化(オールアップ)

 

 ティターニア様の固有魔法を展開する。

 

「それって、私の魔法……?」

 

 ティターニア様は驚いたような表情を浮かべる。

 

 俺は気にせず紫色の魔法陣を展開した。

 

CHARGE(充電)

 

 時間が進むにつれ、俺が展開した魔法陣は大きくなる。

 

UNLOCK(解放)

 

 そのまま展開した魔法陣がパキンと音がする。

 

『GUMOOOOO!!!』

 

 俺の魔法への危険を察知してアシッドスライムが咆哮を挙げて攻撃を繰り出そうとする。

 

 だが、もう遅い。

 

BLAST(衝撃)

 

『————』

 

 魔法陣から解き放たれた魔法は、魔力の波となってアシッドスライムを包みこむ。

 そしてそのまま、アシッドスライムは塵芥となって消え去った。

 

 少しばかり張り切りすぎたせいか、部屋の壁面を吹き飛ばしてしまったが……。

 

「なっ!? アタシの可愛いアシッドスライムちゃんが!! 絶対に貴様だけは許さ――」

 

THUNDER(雷撃よ)

 

「ガババババババ……!」

 

 叫ぶゴーテルに、俺は間髪入れずにTHUNDER(雷撃)を放つ。

 

 すると、ゴーテルは感電したまま身体を痙攣(けいれん)させ倒れる。

 

 これでひとまずの雑務は終わった。

 

「これで一段落ですが、その前に少々失礼致します」

 

 俺は胸ポケットから鍵を取り出して、ティターニア様の両手についている手枷……『魔封じの枷』を外す。

 

 手が自由になったティターニア様は驚いた表情を浮かべて俺に問う。

 

「な、何故そんなものを……?」

 

「私は国王直下秘密特殊部隊所属の者ですので、女王陛下直々に(たまわ)っているだけですよ」

 

「ふふふ、騎士くんって本当に面白い人だわ」

 

「滅相もありません。それよりもティターニア様。出口まで行きましょう」

 

「えぇ、そうね。それじゃあ折角だしエスコートして頂戴」

 

「承知致しました」

 

 俺はティターニア様の手を取ると、甘えるような形で俺に左腕に右腕を絡ませる。

 

「まさか。私の固有魔法を使えるなんてね。分かってはいたけれど、騎士くんっていくつ固有魔法を使えるのかしら」

 

「申し訳ありません。それはお答えできかねます」

 

 いくつと言われると、数えるのが大変になってしまうから。

 それに、

 

「そうね。騎士くんは国王直下秘密特殊部隊所属ですものね。実質国家機密みたいなものね。隣国のティターニア(お客さん)には言える訳がないわね。これ以上は深堀りはしないわ」

 

「ご配慮感謝致します」

 

「それに安心なさい。私は最初に会った時にも言ったとおり、受けた恩は必ず返すわ。もちろん今回のこのことを抜きにしても私と騎士くんの秘密は守るわ」

 

「ありがとうございます」

 

 俺は頭を下げる。ティターニア様は一貫していた。

 

 少なくとも、『私はやられたらやり返すのが主義なの。もちろん、受けた恩も必ず返す主義のつもりよ……近い内にどこかで会う機会が用意させてもらうわ』と、言った時から、少なくともティターニア様は俺に便宜を図ろうとしている。

 

 そのことには感謝しかない。

 

「でもこれだけは言わせて頂戴。騎士くんが私の魔法を使った時、とても嬉しかった。ゴーテル(アイツ)を一緒に倒している気がして……今の私、とても気分が良いわ」

 

「そう仰って頂けるなら幸いです」

 

 ただ、俺にはやらないといけないことがある。

 

「それよりも残りの()()を片付けなければいけないので……失礼しても?」

 

 それは今回の雑務のけじめ。

 

 ティターニア様は俺の言葉の意図を察して微笑む。

 

「ええ。しっかりお願いね」

 

「承知致しました。お任せ下さい」

 

 さぁ、後は残りの雑務をこなすだけ。

 せめて……ここから先は完璧にこなしてやろう。

 

 ティターニア様に手を出したことを後悔させてやるために。

 

 * * *

 

「なんなんだ一体!!」

 

 私、ブラッドゥは赤血革命軍、フレッツ支部の管理室の中でそう叫ばずにはいられなかった。

 

 赤血革命軍の拠点は50以上ある。50から先は数えていない。

 

 全ての地区に秘密裡に拠点を構えることで、いつでもこの王国をひっくり返すために。

 

 その全ての別拠点に魔法具で連絡を取ろうとしても、一切の応答がない。

 

 こんなことはありえない。

 

 だって今朝までは連絡が取れていた。

 

 それに別拠点に魔法具で連絡を取ろうとしても、一切の応答がないということは、赤血革命軍のボスであるゴーテルにも連絡が繋がらないということ。

 

 連絡が繋がらなければ全容の把握もできない。

 

 折角、()()()()()()()として赤血革命軍の組織を焚き付け、王国を内側からめちゃくちゃにする計画が台無しになる。

 

 そうなってしまえば、私が魔王様から怒られてしまう。

 

 だが、それはそれとして……すごく嫌な予感がする。

 

 しかしその予感は直ぐに的中した。

 

『ズドォォォオオン!』

 

 という地響きの音と共に、赤血革命軍フレッツ支部の拠点が揺れる。

 

「なんだ!??」

 

 私はまたも叫ぶ。

 

 すると、通信用の魔法具が『ザ……ザザ……』と不気味なノイズを走らせながら繋がる。

 

『ブラッドゥ様!! 大変です!! 侵入者です!! う、うわぁぁぁぁぁぁああっ!』

 

「おい!! 詳細を話せ!! 返事しろ!! おい!! くそっ!!」

 

 ただ分かるのは侵入者がいるということだけ、いくら奇襲をかけたからとはいえ、単独とは考えられない。

 

 つまり、複数犯……組織だっての行動だろう。

 

「舐めた真似をしやがって」

 

 どこの誰だかは知らない。

 

 私の崇高なる計画を邪魔したのだ。即ち、それは我々魔王軍に手を出したと同義。当たり前だが、生かして還す訳にはいかない。

 

 ただ、心の片隅に嫌な予感だと警報を鳴らす。

 

 他拠点と連絡が取れていない原因が、今まさにここにあるかもしれないから。

 

「やってやらぁ」

 

 私は管理室の扉を開けて廊下を出る。

 

 すると、廊下に1人だけ見知らぬやつが立っている。

 

「誰だ!!」

 

 私は声を荒げる。今日は叫びすぎて喉が痛い。

 だが、廊下に立っている見知らぬやつは私の問いには答えなかった。

 

「申し訳ありません。今は貴女の質問には答えられません。雑務の時間が押しているのでね。それでは良い夢を」

 

「は? 男……?」

 

 私はその一言を最後に意識を刈り取られたのであった。

 

 

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