男は守られるのが常識の貞操逆転世界で、唯一魔法を使えるようになったので、全力で女の子達を守っていたら激しく執着されるようになってしまった 作:タンポポ西田
「今回もご苦労だったな、ユークリッド」
ティターニア様を助けた赤血革命軍を壊滅させた翌々日の放課後。
俺は学院長と二人、学院長室の中で話をしている。
「いえ、とんでもございません」
学院長は『はぁ……』と重たい溜息を吐いた後、
「突然、ヴィルヘルム・ティターニアがここに来た時は何事かと思ったよ」
ティターニア様を助けた後、学院長室までティターニア様を運んだ。しかもティターニア様が傷ついた姿で。
学院長が驚いたのも無理はないだろう。ティターニア様は隣国の公爵令嬢である。その隣国の公爵令嬢が被害に遭ったとなれば学院の責任もなりかねない。
しかし、今回に関してはティターニア様が望んだこと。
その説明も含めて、ティターニア様から学院長に説明をしていただき、今回は事なきを得た形となっている。
「やはり学院長に後処理を頼んで正解でした。おかげで色々と助かりました」
ティターニア様のことであったり、一夜で潰した赤血革命軍の複数の拠点についてなど諸々の対応を引き継いで頂いた。
緊急事態とはいえ、すぐに対応してくれた学院長には感謝しかない。
「とはいえ……まさか王国内に仇名す赤血革命軍を一人で壊滅させたとはな。結果として、あの組織に囚われていた人たちも全員救出。女王も大喜び。はぁ……大変だっただろう。あの組織は拠点が多すぎる。まったく……いくつあるか数える気にもなれんよ」
「73拠点です」
「……まぁ、いい。相変わらず、化け物だな」
学院長は『ふっ……』と呆れたように息を吐く。
数の話ではないと、そう言いたげだった。
「さて、今回の功績を称え、女王陛下から勲章授与の打診が来ているがどうする?」
「いつものように辞退でお願いします。功績を立てることが目的ではないので」
「分かった。そのように伝えておこう」
学院長は淡々と言う。
俺が断ったのは一度や二度ではないから慣れたものなのだろう
「それにしても珍しい。いつものユークリッドであれば、雑務と言われたものだけしか実施しないではないか。それが今回はどうしてだ?」
「どうしても何も、今後のリスクを伸ばしにしておくメリットはありませんから。結果としてティターニア様にも危害を加えられてしまった訳ですので」
正直、油断していたところもあったと言わざるを得ない。
敵は魔王軍だけではない。そんな中で、物事を完璧にこなすことができなかっただけでなく、俺の宿願である『女性が傷つかない世界』と相反する結果となってしまったのだ。
そんな相手を残しておいたら、確実に俺の宿願の邪魔だ。
だとするならば、俺が取る行動は決まっている。
「ほぉ、本音は?」
俺の言葉に学院長は見透かしたように尋ねる。
「いえ、紛れも無い本音ですよ。そこに嘘、偽りはありません」
嘘は言ってない。
ただ、ティターニア様を傷つけた敵と、ティターニア様を傷つけてしまった自分自身に腹が立っただけ。
そういう意味では俺もまだまだ子供なのかもしれない。
「そうか。そうゆうことにしておいてやろう」
学院長はそれ以上追及してこなかった。
ただ、俺が何も言わなくても学院長には察せられている気がした。
とはいえ、やることさえやっていれば文句は言われない。
今回は
赤血革命軍という組織が王国内から消え去った。
ただそれだけのこと。
「あぁ、それとヴィルヘルム・ティターニアは多少の打撲はあれど治癒魔法で怪我は治っている。大事には至っていないようだ。とはいえ、ある程度安静は必要だがな」
「そうですか……報告頂きありがとうございます」
治癒魔法は万能ではない。大事に至っていないというのは後遺症がないということ。
ただそこも運が良かったと言わざるを得ない。
何故ならティターニア様は魔封じの枷を付けられていた。
つまり文字通りの丸腰。
それに加えて、相手は年老いた女性だとしても、多少なりとも肉体強化の魔法を使っている。
そのダメージは決して小さいものではないだろう。
だから、しばらくはティターニア様のことを気にかけようと思う。
「学院長。特に
「あぁ、こちらからはない。下がっていい。何かあったらすぐに呼ぶ」
「承知致しました。お待ちしております」
そう言って、俺は学院長室の扉を開けて、廊下に出る。
「あ、ユークリッド君。少しいいかしら」
学院長室の扉を開けると、ティターニア様が扉の横に立っていた。
「ティターニア様。どうしてこちらに……」
俺はティターニア様に尋ねる。
とはいえ、ティターニア様には外傷らしい外傷は見当たらない。
治癒魔法のおかげということもあるが、想像していたよりも元気そうだった。
「騎士くん。貴方を待っていたのよ」
「わざわざお待ち頂かなくても、用立てあればお伺いしましたのに」
「私が来たかったの。他の誰かに雑務だなんだと言って邪魔される前に」
ティターニア様はそう言って俺の可憐に微笑む。
その微笑みは美しくも棘のある薔薇のように、危険な香りを漂わせていた。
「あれから……お身体大丈夫ですか?」
俺はティターニア様に恐る恐る尋ねる。
外見は大丈夫でも、内面に大きなトラウトとなっている場合もあるから。
「えぇ、おかげさまで」
とは思いつつも、それは俺の杞憂であった。
「まだ、騎士くんにお礼を言ってなかったでしょ?」
「お礼でございますか?」
「この間、私のワガママを叶えてくれたから。騎士くんが一人で赤血革命軍を壊滅させたことは既に聞いているわ」
「とんでもございません。これも雑務の範疇ですから」
正直、どこまでを雑務の範疇とするかなんて決まっていない。
しかしティターニア様の『私はやられたらやり返すのが主義なの。もちろん、受けた恩も必ず返す主義のつもり』という言葉の意味を考えるならば、赤血革命軍を壊滅させることのは、雑務の範囲と捉えても問題ないはずだ。
「それに……あれから考えたの。どうして騎士くんが私の
ティターニア様は優しい笑みを浮かべて続ける。
「きっとこれも女神様のお導き。だって結果はどうであれ、私と同じ固有魔法が使えるのだもの。あり大抵にいうなら運命ってこと。少なくとも私はそう考えるわ」
ティターニア様は楽しそうに言う。
普段のティターニア様からは想像できなさそうなセリフだった。
「だから、私は貴方と一緒にいたい。もちろん2番目だろうが3番目だろうが構わない。お父様にだって手紙でそう伝えたわ」
「ティターニア様はそれはお戯れが過ぎます」
仮にもティターニア様は公爵家の令嬢だ。
そんな手紙を送ってしまえば、
しかし、ティターニア様は俺の態度を見て察してか。
「安心なさい。ふふふ……これは私の意志。お父様も尊重してくれるわ。昔から好きにやれって言うのが、我が家の方針ですもの。それにこれからは『ティターニア様』だなんてよそよそしい言い方は止めて頂戴。これを雑務と捉えても構わないわ」
「……承知しました。ティターニア」
「よろしい。今後はそれでお願いね」
ティターニア様……改め、ティターニアは満足げに頷く。その後、俺の腕を抱き寄せて耳元で囁く。
「それともう一つ、雑務をお願い」
「お伺いしましょう」
俺はこそばゆさを耐え、努めて冷静に返す。
すると、ティターニアは目をトロンとさせて、俺に身体に体重を預けて言う。
「私は貴方ことが愛おしい。最初に出会った時からずっと……それに私のワガママを叶えて助けてくれてから騎士くんのことしか考えられなくなっちゃったの」
ティターニア様は頬を朱く上気させて、
「だから……ね? 責任取りなさい。これから私と騎士くんの部屋に行くから。今夜は私を満足させるまで寝れないと思いなさい」
絶対に拒否を許さない。そんな姿勢を感じた。
「分かりました。その雑務承りました」
あぁ、きっと今日も寝れないのだろう。
「ふふふ……これからもよろしくね」
そうして、俺とティターニア様の二人。
夜が更けて、次の朝陽が登るまで。
身体を重ねて、ベッドを軋ませるのであった。