男は守られるのが常識の貞操逆転世界で、唯一魔法を使えるようになったので、全力で女の子達を守っていたら激しく執着されるようになってしまった   作:タンポポ西田

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第4話 隣国の公爵令嬢

「喜べ、ユークリッド。お前に()()が届いている」

 

 放課後。俺は学院長室に呼び出された先で丸められた一枚の紙を受け取る。

 

 こうして、学院長であるフォーゲル・ハリストンに呼び出されて丸められた紙を渡される時は決まって機密性の高い()()だ。

 

「今回の雑務は西南国境沿いで誘拐が起きてな。秘密裏に入国した隣国の公爵令嬢が人質になっている。速やかに雑務をこなせ。詳細はこの紙を確認しろ」

 

 昼間はアイリスさんからの雑務で共に身体を重ねた。アイリスさんはとても満足している様子だった。

 

 結果としてアイリスさんの固有魔法『COVERT(隠密)』を手に入れることができた。

 

 折角であれば新しい固有魔法を使ってみたい。

 

 

「承知致しました」

 

 学院長から渡された雑務を一通り確認した後、俺は書類を机の上に置く。

 

 隣国とはギラファ帝国のことだろう。王国と友好的な国として真っ先に例があがる。

 

 その他の隣国は魔王軍との応戦のため鎖国のような政策を取っていたり、古くから王国と仲が悪かったりとしている。

 

 つまるところ、秘密裏に入国した隣国とはギラファ帝国のことを指している。

 

「承りました。早速ですが、雑務をこなしてきます」

 

 俺はその瞬間、王立魔法学院1年Fクラスの生徒ではなく国王直下秘密特殊部隊所属、ユークリッド・ヴェレミアとして行動することになる。

 

 とはいえ、さっさと雑務を終わらせないとクラスのみなさんから請け負った雑務が終わらなくなるから、さっさと片づけてしまいたい。

 

「それでは行ってきます――『FLY(飛翔)』『BOOST(加速)』」

 

 そうして、俺は窓から固有魔法を使って外に飛び出す。

 

「はぁ……本来ならお前も守るべき学生なのにな」

 

 窓から学院長室を出る直前、学院長のそんな嘆きが聞こえた気がした。

 

 * * *

 

「ここか」

 

 二時間ほど固有魔法を使って西南国境沿いに向かって飛んだ後、辺りは夜は包まれていた。

 

 目的の場所に着いた俺は、状況を把握するために見渡す。

 

「おそらく、あの建物か」

 

 目の前には麦を蓄えるための木造の倉庫がある。

 

 周囲には倉庫を見張っている人間が5人いる。

 

 とはいえ、この5人を制圧しても中にも敵がいると思っていいだろう。

 

「アイリスさん。お力をお借りします―—『COVERT(隠密)』」

 

 俺はアイリスさんの固有魔法を使う。

 

 COVERT(隠密)とは、気配はもちろん自身の魔力も遮断できる固有魔法である。

 

 姿が見えなくなるわけではないが、単独行動をする分には十分なアドバンテージになる。

 

 俺は木造の建物に近づく。

 

 建物の入り口を見張っている5人の人間は、見張ってはいるものの緊張感はない。

 

 ここが西南国境沿いの僻地(へきち)だからというのも関係あるだろう。見張りが油断してくれているなら好都合だ。試したいこともある。

 

SLEEP(睡眠)

 

 俺は固有魔法である『SLEEP(睡眠)』を使う。

 

 SLEEP(睡眠)は固有魔法ではあるが、実際使うとなると難しい。

 

 何故なら、SLEEP(睡眠)が一番効くのは意識外で数十秒当てなければいけない。

 

 熟練された相手であれば、魔力を察知することは容易い。 

 

 だが、COVERT(隠密)と併用しているならば話は別。

 

「うっ……眠気が……」

 

 建物の入口を見張っている5人はバタバタと冷たい地面を寝床に深い眠りの落ちる。

 

 一切の魔力を悟られることなく、音もなく制圧できた。

 

 しかし確実に敵を制圧できる反面、少し時間がかかってしまうのは難点ではある。

 

 だが人質を救出する雑務であれば、これ以上心強い組み合わせはない。

 

 そう意味ではCOVERT(隠密)は魔力を消せる上、気配もなく近寄れるSLEEP(睡眠)とは相性がいい。思った通りだった。

 

「さて、先に進みますか」

 

 俺はCOVERT(隠密)を使ったまま、建物の中に侵入する。

 

 すると、目の前には縄で拘束されている長い黒髪の女の子——秘密裏に入国した隣国の公爵令嬢と、その令嬢を囲うように4人の女がいる。

 

「誰だ……って、なんだ男か」

 

 令嬢を囲うように4人の女の内、一人の女が俺を見ては下衆な笑みを浮かべる。

 

「ってか、誰だ? ここに娼那(しょうな)を呼んだのは」

 

 そう別の女が三人に質問を投げかける。

 

 しかし、他の三人は首を振る。

 

 おそらく、四人の中でリーダー的な立ち位置なのだろう。

 

「とはいえ、見ちまったもんはしょうがねぇな。せっかくなら、わたしら全員でお前さんを回すのも悪くはないが……悪いがお前さんには死んでもらう」

 

 そう言って、赤い魔法陣を展開する。

 

「いやいや、お頭……! 待ってくださいよ!」

 

「なにさね」

 

 お頭と呼ばれたリーダー的な立ち位置の女が、赤い魔法陣の展開を止める。

 

「待機してる間は暇なんですから、ヤっちまいましょうよ!」

 

 おそらく、ここでやっちまいましょうは性的な意味合いなのだろう。

 

「はぁ……好きにしな。相変わらず、アンタは男に節操がないね」

 

「へっへっへ……どうせアタイらに殺されちまうんだから、最後くらい気持ち良くしてやらなきゃバチが当たるってもんですわ!」

 

「何言ってんだ。アンタは男が苦しませてヤルしか脳がないんだから」

 

 お頭と呼ばれたリーダー的な立ち位置の女が呆れながら溜息を漏らす。

 

「そりゃあ、魔法すら使えない男はアタイらにおもちゃ当然。苦しめて、イカせてやった後に殺してやんですわ! 死ぬ直後には盛大に()()()()()のが最高に面白いじゃないですかい!」

 

 そう言って、女はキラキラと目を輝かせる。

 

「ククク……好きにしろっていったばかりだからだな。アイツが殺しちまう前に楽しみたいやつは先にやってな……アタイも殺す前に気持ちよくさせてもらうからな」

 

 お頭と呼ばれた女は下衆な笑みを浮かべる。

 

「ちゅう訳で、お互い気持ちよくなろうや。最後に良い思いさせてやっからよ」

 

『ヒヒヒ』と下衆なニヤケ顔をして、女の一人は服を脱ぎだす。

 

 この女が言っている意味が痛めつけながらやるのか、それともテクノブレイク(絶頂の果てに殺す)のかは分からない。

 

 ひょっとしたら両方の意味なのかもしれない。

 

 普段であれば、雑務として喜んでお受けしていたのだが……、

 

「申し訳ありません。折角の嬉しいお誘いですが、ご遠慮させて頂きます」

 

「何を言ってんだ。お前に拒否権はないんだよ」

 

 俺の言葉にさっきまで下衆なニヤケ顔をしていた女は明らかに不機嫌な表情になる。

 

「いいから、早く脱げ。こっちの気が冷めない内に。じゃねぇと殺しちまうからな。まぁ、後で殺すんだけど」

 

「それは残念です。俺も死にたくはないので抵抗させて頂きましょう。THUNDER(雷撃よ)

 

 俺は指を弾いて()()()()であるTHUNDER(雷撃)を放つ。

 

「ぎゃ、ぎゃぁぁぁあああああ!!!」

 

「え? は??」

 

「み、ミーシャ!!」

 

 俺が放った()()()()であるTHUNDER(雷撃)はミーシャと呼ばれた女に当たると、血管を巡って地面に抜け落ちる。

 

 人間の身体の内、全身の水分は70%ほどある。

 

 それは異世界に行ったとしても変わらない。

 

 つまるところ、俺は一撃でミーシャと呼ばれた()を排除した。

 

「国家重要指名手配のリーン・オデッセイ、シルク・ファイネス、ミーシャ・ハルバルト——通称、男潰しの狂犬達(ケルベロス)。貴女たちはやりすぎた。男だけでは飽き足らず、同じ女性にすら殺しを厭わない。貴女たちは俺が理想とする世界に邪魔だ」

 

 リーンとシルクはミーシャと呼んだ女の元に駆け寄ることに必死で、俺の言葉を聞いていない。

 

 だけど俺は関係なく続ける。

 

「それに貴女達は国家にまで敵に回してしまった。王国の意志は俺の意志と同義。あぁ、しかし安心して下さい。殺しはしませんよ。実際、あそこの方も気絶しているだけ。ですが――後で死んだ方がマシという気分にはなると思いますが」

 

 俺はあくまで雑務をこなすだけ。

 

 大事な後処理は王国の仕事。俺はあくまで繋ぐだけ。

 

「お、お前!! 男じゃないのか!!? なんで!?」

 

 シルクは俺を見て叫ぶ。

 

「ばかっ! アタイラは騙されたんだよ!! 男が魔法なんて使える訳ないだろ!!」 

 

 シルクはパニックになっていった。

 

 対して、リーンは手下のシルクを嗜めるほど、冷静さを表出す。リーンは腐ってもリーダーなのだろう。

 

 しかしながら、

 

「いえ。俺は正真正銘の男ですよ。とはいえ、これは国家機密ですが」

 

 俺は淡々と言う。

 

 先に男だと言っておかないと、後で対象を救出した時に厄介だから。

 

「さて、そろそろ雑務を終わらせましょう。他の雑務も溜まっているので」

 

 俺は両手に雷を纏った黄色の魔法陣を展開する。

 

「ひいっ!!」

 

「う、うおおおおっ!」

 

 二者、それぞれの反応をするが、どちらにしろ遅すぎる。

 

THUNDER(雷撃よ)

 

 俺は両手に雷を纏った黄色の魔法陣からTHUNDER(雷撃)を放ちリーン、シルクに命中させる。

 

「ば、馬鹿な……! 同時魔法詠唱(デュアル・マジック)……だとっ」

 

 リーンはそう言うと、バタリと地面に伏す。

 

 俺は今、目の前で縛られている令嬢の拘束を解いて尋ねる。

 

「隣国のギラファ帝国、ヴィルヘルム公爵令嬢でございますね?」

 

「え、えぇ……」

 

「この度は我が国での粗相、誠に申し訳ありません。ひとまず安全なところまでご案内致します」

 

 俺が頭を下がると、ヴィルヘルム公爵令嬢は困惑したまま俺に尋ねる。

 

「あ、貴方はいったい……どうして私のことを」

 

 色々と聞きたいことがあるのだろうが、時間が惜しい。

 

 だって俺にはまだまだ雑務が溜まっているのだから。

 

「俺はユークリッド・ヴェレミアと申します。文字通りの()()()()です。今回は国家の命を受けて伺いました」

 

「そう……感謝するわ」

 

 その答えだけでヴィルヘルム公爵令嬢は納得したようだった。

 

 ヴィルヘルム公爵令嬢は微かな笑みを浮かべていた。

 

 一歩だけ先を歩いた後、ヴィルヘルム公爵令嬢は俺の方を振り返る。

 

「あぁ、それとユークリッド・ヴェレミア」

 

「はい。いかがしましたか?」

 

 名前を呼ばれ、要件を聞く。

 

 ヴィルヘルム公爵令嬢は再びニヤリとした笑みを浮かべる。

 

「私はやられたらやり返すのが主義なの。もちろん、受けた恩も必ず返す主義のつもりよ……近い内にどこかで会う機会が用意させてもらうわ。このヴィルヘルム・ティターニアの名にかけて」

 

「えぇ……雑務とあれば」

 

「ふっ……雑務だろうが、なんだろうが、どう捉えてもらっても構わないわ」

 

 ヴィルヘルム公爵令嬢はニヤリと笑って、俺に向かって手を指し伸ばしエスコートを促す。

 

「承知致しました。それでは僭越(せんえつ)ながらお手を失礼させてもらいます」

 

「こういうのは黙って手を取るのが、帝国式の礼儀よ。覚えておきなさい」

 

「……承知致しました」

 

 俺はヴィルヘルム公爵令嬢の手を取り、この薄暗い木造の倉庫から出るのであった。

 

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