男は守られるのが常識の貞操逆転世界で、唯一魔法を使えるようになったので、全力で女の子達を守っていたら激しく執着されるようになってしまった   作:タンポポ西田

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第5話 雑務の後に

「昨日は良くやった。女王陛下もさぞお喜びだったぞ」

 

 引継ぎる範囲まで後処理を終えた俺は学院長に報告をしにきた。

 

 とはいえ、なんだかんだ。日付を跨ぐことになってしまったのは不覚。

 

「もったいないお言葉。俺はあくまで()()をこなしたまで。褒められることではございません」

 

「その()()をこなしてくれているおかげで、大事(おおごと)にならなくて済んだのだ。

 

 ただ、唯一予想外だったのは、ヴィルヘルム・ティターニア公爵令嬢の存在。

 

 俺個人としては雑務の都合上、ティターニア公爵令嬢をたまたま助けたに過ぎない。

 

 しかしながら、助けてから引継ぎをした後までやたらと俺の側で探るような視線をしていた。

 

 とはいえ、俺にもヴィルヘルム・ティターニア公爵令嬢にも都合がある。

 

 ヴィルヘルム・ティターニア公爵令嬢は獲物を見るような目で俺を見ていたが、雑務を終えた俺はさっさと帰還した。

 

「今日は無理せず休むが良い。明日からまた頼むぞ」

 

「結構です。俺には他の雑務が溜まっているので、本日も出席させて頂きます」

 

 今から向かえば、おそらく一時間目の授業には間に合うだろうから。

 

「ダメだ。お前にとって託されている雑務は大事かもしれないが、お前自身の所属を忘れるな。学院の生徒である前に、国王直下秘密特殊部隊所属だ。処理に一刻を争う()()が出てきて、万が一しくった場合、お前はこの学院にいさせられなくなる。そのことは、お前だって理解しているだろう??」

 

「……承知致しました。それでは今日に関しては大事を取ってお休みさせて頂きます」

 

「それでいい」

 

 俺が渋々了承すると、学院長は溜息を混じらせて頷いた。

 

「そういえば、主犯の三人はどうなりますかね?」

 

「……主犯の三人というのは、男潰しの狂犬達(ケルベロス)のことを指しているのか?」

 

「えぇ……もちろんです」

 

 俺は学院長の言葉に頷いて肯定する。

 

 学院長は無言で眉をひそめる。

 

 言葉に出さなくても何故と問われている気がした。

 

「彼女らは許されないことをしましたが、同じく女性であることも変わりないので」

 

「そういえば、お前はそういうやつだったな」

 

 学院長は呆れたように溜息を吐く。

 

「なら、教えてやる……とは言ってもいつもと一緒だ。今回は国際問題にも発展しかねない出来事なのは理解できるはずだ。いくらお前の願いでも隣国側(向こうさん)が納得しなければ意味がない話。つまるところ、これから裁判にかける。正式な判決が出るまでは拘留というのが流れだ。今回も変わらない――というつもり()()()

 

 その瞬間、学院長は苦虫を嚙み潰したように顔を引き()らせる。

 

「つもりだった……ですか。何か煮え切られない言い方ですね。何かあったのですか」

 

「何かあったもなにも……()()()()死んだよ。今朝に。おそらく口封じだ」

 

「まさか……亡くなったのは城下の地下牢です?」

 

「あぁ、その城下の地下牢だ……表向きは捕まった男潰しの狂犬達(ケルベロス)はたまたま偶然、三人とも自然死をした。ということになった。そんな訳はないがな」

 

「……なるほど。我が王国に内通しているやつがいる可能性があるのですね」

 

 誰にも気づかれず、三人とも始末するのは難しい。 

 

 何故なら、潜伏のスキルを使ったとしても、結局は牢の前にいる看守に気づかれる。

 

 万が一気づかれず牢の中に入ったとしても、牢獄の中にいる囚人が気づけば、結局看守に気づかれる。

 

 つまり、朝まで気づかれなかったということは、内通している人間の仕業と考える方が妥当だ。

 

「まぁ、そういうこった。という訳で、裏で手を引いているやつがいる以上はまたお前が雑務に駆り出される未来も遠くない。なにせ、今回の件で女王陛下は心中穏やかではないらしいからな。人間にせよ魔王軍にせよ……王国の敵には変わりないからな」

 

「肝に銘じておきます」

 

「それはそれとして……いくら上の命令とは言え、よりユークリッドを危険なところに送り出さなければいけないこっちの心労も考えろってんだ。あのクソ馬鹿女王め……。チッ。今のは失言だったな。忘れてくれ」

 

 学院長は頭を抱えながら盛大に悪態を吐く。

 

 とはいえ、ここまで分かりやすく感情に出すのは珍しい。

 

 なんだかんだ言って、俺のことを気にかけてくれているのは嬉しい。 

 

 しかしながら、

 

「学院長はご理解頂いておりますが、俺の目的は女性が傷つかない世界を作ること。そのためなら俺はなんでもしますよ。それが俺が死ぬかもしれない内容だとしても」

 

「分かってるから、嫌なんだ」

 

「そうは言いながら、俺の宿願のために協力して下さるのですから。俺は学院長のことを好ましく思ってますよ」

 

 俺がそう言うと、学院長はまたまた深い溜息を吐いて、

 

「良いことを教えてやる。いくら男が下だからと言って、妙齢の異性を口説くもんじゃない。年を重ねれば重ねた相手ほど痛い目に合うぞ。それとも実際に教えやった方がいいか?」

 

 学院長はそう言いながら、服を少しはだけさす。

 

「ご忠告ありがとうございます。それが雑務であるならば喜んで」

 

「馬鹿もの。まったくお前は可愛げがない。少しは恥ずかしがったりしたらどうだ。それにな、女を口説きたいのなら私ではなく、イリスにやってやれ。アイツは意外と単純だからな。いつの時代も恋は盲目なのは変わらないものだよ」

 

 そう言いながら学院長は微笑む。

 

 なんだかんだ言いながらも、学院長は娘の幸せを願っている良い親だと思う。

 

「承知しました。しかし、学院長が素敵なのは変わりないですよ」

 

「黙れ。もういいから、お前さっさと部屋に帰って休め」

 

 学院長は『しっしっ』と手を振り、退出を促す。

 

 嘘ではないのだが、これ以上言ってもかえって怒らせてしまうだろうが、お暇させて頂こう。

 

「それでは失礼させて頂きましょう」

 

「あぁ、そうしろ。もしも何かあれば別途伝えるから、そのように」

 

 俺は学院長の言葉に一礼して学院長室を出る。

 

 俺は言われた通り、自室に戻ることにした。

 

 自室への帰り道、俺は学院の廊下を歩きながら考えを巡らせる。

 

 やはり、王国内に内通者がいると思って間違いないだろう。

 

 今回のヴィルヘルム・ティターニア公爵令嬢の訪問も秘密裏のもの。

 

 しかし結果は誘拐という形になってしまった。

 

 もちろん、()()()()ヴィルヘルム・ティターニア公爵令嬢が男潰しの狂犬達(ケルベロス)に狙われてしまった……という可能性も存在する。

 

 だが、王城の地下牢に幽閉した男潰しの狂犬達(ケルベロス)は口封じのために殺されてしまった。

 

 つまり、意図的に情報を流した人間がいるということ。

 

 ネガティブに考えるならば口封じのために殺すことも(いと)わない。そんな組織が相手の可能性も視野にいれなければいけない。

 

 それに今回はヴィルヘルム・ティターニア公爵令嬢(隣国の要人)が狙われたが、次回以降、この王立魔法学院の生徒が狙わないとも限らない。

 

 それが知っている相手が狙われる可能性を考慮すると、しばらくは良い気分になれなさそうだ。

 

 ……だとするならば、早急に片を付けたいところだ。

 

 とはいえ、現状は待ちの状況だし、今個人的に調査に繰り出して学院長にバレても面倒だ。

 

 だったら、部屋で大人しくしているのが最善だろう。

 

「おや、お客さんですか」

 

 俺は自室の扉の前に立って呟く。

 

 人の気配があったから。

 

 誰かは分からないが、気配を隠そうともしないところを見ると敵ではないらしい。

 

 おそらくだが、エリス(会長)かクラスメートのアイリスさんあたりだろう。

 

 そう思って、俺は何も知らない振りをして自室の扉を開く。

 

 するとそこには、

 

「昨日ぶりだね。隣国の騎士くん。君を襲いに来たよ」

 

 部屋の扉を開けると、ベッドの上に長い黒髪の美少女——ヴィルヘルム・ティターニア公爵令嬢が右手を挙げて笑みを浮かべていた。

 

 彼女の恰好(かっこう)は日中だとしても薄着であった。

 

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